耕耘、施肥、堆肥すき込み・・・
結構大変な作業ですね。
耕耘だけでも省略できれば、ずいぶん楽になります。
いわゆる、不耕起栽培。
私も部分的に取り入れています。
そこで、今回はこれについて述べてみたいと思います。
耕耘の目的
不耕起栽培について語る前に、そもそも耕耘は何のためにやるのか考えてみたいと思います。
これには幾つかの理由が挙げられます。
1)表層の土を軟らかくして根張りを良くする
2)通気、通水性のため
3)前作の残渣を埋め込んで、植え付けの時の邪魔にならないようにする
4)表面を均一化して作業性を改善する
5)畝を整えて、排水しやすくする
6)雑草を防除する
7)堆肥や肥料を混合する
などがあります。
不耕起栽培の場合
上記のいろんな目的に対して、では不耕起栽培にすると実際に不具合が生じるのか、一つ一つ見ていきましょう。
1)2)の土の硬さや通気性に関しては、確かに不耕起栽培はどうしても硬くなります。
しかし、何年も続けていくうちに、根などの植物の残渣が増えたり、これを微生物が食べることにより土が軟らかくなっていくことが期待されます。
また、根穴やミミズなどの小動物のつけた穴により、通気性が改善されることも期待されます。
耕耘すると最初は改善されますが、作物を育てる過程で、雨や潅水によって土は締まって、水はけも悪くなってきます。
トラクターが通って鎮圧され、耕盤ができるという懸念もあります。
さらに耕耘すると、ミミズなどの小動物は数を減らしますし、植物の残渣も一気に微生物により消費されてしまい、結果的に有機物は減ってしまいますので、これらの効果が失われてしまいます。
3〜5)の前作の残渣の埋め込みや作業性については、やり方次第です。
始める時に最初に整形しておけば、畝立ては特に問題ありません。
また、輪作で根菜類を植え付けて、一旦リセットしても良いかもしれません。
不耕起栽培と言ってもいろんな方法があるので、これについては後述したいと思います。
6)の雑草防除については確かに問題で、何らかの方法で改善が必要です。
ただし、耕耘すれば雑草対策は万全とはなりません。
耕耘することにより、土の中に埋まった雑草の種子が表層まで出てきて、しばらくすると雑草がかえって増えることもあります。
逆に、不耕起栽培は基本的には土をあまり動かさないので、最初のうちこまめに除草していれば、その後はむしろ生えないとも言われています。
とはいえ、実際問題として、こまめに除草するのはかなり大変ですので、これについても後述したいと思います。
7)肥料の混合も、不耕起栽培では確かに困難です。
ただし、均一に肥料を土に混ぜるても全部効くわけではありません。
それよりも、作物の利用する部分に局所的に施肥した方が良いとの考えもあります。
肝心の収穫は?
こうしてみてみると、耕耘することにより得られるメリットは必ずしも多くありません。
不耕起よりも耕起の方が明確に良いのは、栽培初期の除草と土の軟らかさと言えそうです。
肝心の植物の生育や収穫については、何とも言えません。
耕耘の有無を比較した資料はいろいろあり、多くの場合は収穫が少なめになるようです。
特に、重粘土質の土壌の場合はそれが顕著なようです。
しかしこのような土地で不耕起栽培して、慣行農法以上の収穫をしている人もいます。
結局はやり方次第というのが実態のようです。
というわけで、いかに不耕起栽培の実際的な方法について述べていきたいと思います。
実際的な方法論
全く耕さない?
不耕起栽培の実際的な方法と言っても、確立されたものがあるわけでなく、人によりまちまちです。
例えば、
・トラクターでは耕さないが、鋤や鍬でこまめに畝を立てたり、土寄せしたりして土を積極的に動かす方法
・一度立てた畝は全く動かさない方法
・年ごとに、作付けする前にだけ土を耕して畝たてする方法
など、様々です。
それぞれの方法は、その土地の性質や気候風土、作付け品目によって柔軟に行うのが良いと思われます。
あまり原理主義的に、絶対に土を動かさない、等とは考えないようにしましょう。
施肥
耕さないと、肥料を土に混ぜ込みことができません。
従って、不耕起栽培では基本的には表層施用、かつ局所施肥ということになります。
定植の場合は、植え穴の中とか周り、株間などに施肥します。
あるいは、液肥などを用いてもいいでしょう。
全面に施さなくても、根が勝手に欲しいときに伸びてくるので、肥料の量も少なくて済み、合理的です。
ただし、リン酸分のような土の中で水に溶けて移動しにくい成分については、不耕起栽培を始める前に事前に全面施肥しておいた方が良いようです。
雑草防除
不耕起栽培では、耕すという手段を放棄している分、より難しくなります。
対策は、いろいろ提案されています。
一つには、黒色ビニールでマルチする方法があります。
これにより、雑草はほぼ抑えられます。
代わりに、潅水とか追肥をしにくいという問題があります。
また、夏場ですと温度が高くなりすぎることも懸念されます。
これらの対策としては、マルチを完全に固定せずに裾を開けておき、マルチの上に有機物をしくという方法が提案されています。
追肥はマルチの裾から入れます。
ただし、この場合は、マルチが風で飛ばされないようによほど注意しなければなりません。
別の対策としては、(ビニールを敷かずに)有機物をマルチすると言う方法もあります。
この場合は、雑草を完璧に防ぐのは困難です。
雑草を絶対生やすまいと思ってあまりに厚く敷きすぎると、肝心の作物に陽があたりにくくなります。
従って、他の方法と組み合わせる必要があります。
折衷案として、紙とか生分解性の資材でマルチングして、その上に敷き藁するという方法もあります。
私は新聞紙を使っていますが、やや手間がかかるのが難点です。
次の方法は、植え付け前までに草をぼうぼうに生やしておいた後、除草剤で枯らすというもの。
そうすると、枯れ草がマルチ代わりになります。
除草剤を使うことに抵抗のない人は、この方法でかなり抑えられるかと思います。
除草剤を使うのが嫌な場合は、畝立てした後に潅水し、雑草の芽を出させます。
そして、わずかに生えてきたところを見計らって、土の表面を軽く動かします。
あるいは米ぬかを撒いてみるとか、尿素などを濃いめに水に溶かして潅水するとか、でもいいかもしれません。
草が小さいうちでしたら、これでかなり除草できます。
ただし、雑草は発芽が均一に揃わないので、除草のタイミングがやや難しいという問題はあります。
以上のような様々な方法を組み合わせることで防いでいきます。
まとめ
不耕起栽培は、耕耘をしないという省力的な方法です。
これによるデメリットとしては、主に栽培初期の除草と土の硬さなどが挙げられます。
収穫量に関しては、不耕起栽培ではやや少なめともされますが、やり方次第と思われます。
不耕起栽培は、耕耘をしないといっても、その土地や状況に応じてき柔軟に土を動かすようにしましょう。
施肥は基本的には表層施肥や局所施肥とします。
雑草防除が一番の問題となるかと思いますが、様々な方法がありますので、いろんな方法を取り入れて複合的な対策で防除しましょう。
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