転職時の自己分析のやり方
〈仕事への価値観を探るオリジナルシート付き〉
3つの軸で自分の価値観を知る!
新型コロナウイルスの影響によって、私たちの働き方や暮らし方に大きな変化がもたらされています。このような状況下で、人生や仕事で自分にとって大切なものを見つめなおす人も増えているのではないでしょうか。この記事では、自分の「軸となる志向性」を掘り下げるための自己分析のやり方をレクチャーします。年間150回以上、企業向けの面接官研修や転職希望者向けの転職ノウハウセミナーにて登壇実績のある平尾英治さんが制作した、40項目の仕事に対する価値観から自分にとって大事な価値観を選び取る「自己分析シート」をご紹介。あわせて、自己分析の結果を転職活動へどう活かすかを、転職のプロであるキャリアアドバイザーが解説します。
応募書類の材料だけじゃない、自己分析をする意味とは?
転職活動での自己分析は、履歴書や職務経歴書といった応募書類を書くためだけの作業と思われがちです。しかし、しっかりと自己分析をしておくと、応募する企業の選び方や自分の強みの伝え方、自分の希望する仕事内容、職場の雰囲気、労働条件が整理できて、転職活動をする上での判断基準にもなります。
さらに転職した後も、こういう期待や希望を持って自らこの会社を選んだのだという本質に立ち戻ることができるため、入社後のギャップを避けることにもつながるのです。
自己分析をするための「3つの軸」
自己分析には決まったやり方はなく、さまざまな手法があります。今回、気軽に取り組める自己分析のやり方としてご紹介するのは、仕事に対する自分の希望を以下の「3つの軸」で掘り下げていく方法です。
- ①仕事軸=「どんな仕事をしたいか」
- ②条件軸=「どんな条件をかなえたいか」
- ③環境軸=「どんな職場環境が望ましいか」
【チェックシート付き】40項目の仕事への価値観から志向性と軸が分かる!自己分析シート
それでは、実際に自己分析をやってみましょう。
▼手順1
まずは、仕事・条件・環境の「3軸の分類」欄は意識せずに、下のチェックリストを見てください。次に40項目の中で「大事にしている価値観」が自分に当てはまるものに○を、そうでないものに×を付けましょう。今までの経験をもとに判断してもいいですし、こうありたいという希望をもとにした判断でもかまいません。
▼手順2
次に、〇を付けた項目の中で特に大切にしたい価値観を5つ選び、1位~5位まで優先順位を付けます。
▼手順3
その5つをつなげて文章にすると、仕事に対する自分の志向性が客観視できます。自分が選んだ5つの価値観の内容や条件をさらに掘り下げると、より意味のある自己分析ができるでしょう。
40項目の仕事への価値観から、志向性と軸が分かる!自己分析シート
○/× | No. | 大事にしている価値観 | 3軸の分類 |
---|---|---|---|
1 | 専門性を深め、強みを活かす | 仕事軸 | |
2 | コミュニケーションを大切にする | 環境軸 | |
3 | 仕事を通して、社会に貢献する | 仕事軸 | |
4 | 自分が人間として向上し成長する | 仕事軸 | |
5 | お金を多く稼ぐ | 条件軸 | |
6 | 仕事と家庭生活の調和を図る | 条件軸 | |
7 | 昇進、昇格する | 条件軸 | |
8 | 組織・会社の発展、成長に貢献する | 仕事軸 | |
9 | リーダーとして力を発揮する | 仕事軸 | |
10 | 自分らしさを活かして働く | 環境軸 | |
11 | 困難な仕事にも挑戦する | 仕事軸 | |
12 | できる範囲で無理せず働く | 環境軸 | |
13 | 市場価値の高い人材となる | 仕事軸 | |
14 | 他人の役に立つ仕事をする | 仕事軸 | |
15 | 存在感のある人になる | 仕事軸 | |
16 | 人間的な魅力、人間力を磨く | 環境軸 | |
17 | 仕事オンリーの人生にしない | 条件軸 | |
18 | 自分の能力を最大限活かす | 仕事軸 | |
19 | 自分の役割・責任・使命を果たす | 仕事軸 | |
20 | 安定して働くことを大切にする | 条件軸 | |
21 | 仕事はそこそこで趣味を楽しむ | 条件軸 | |
22 | 環境の変化に柔軟に対応する | 仕事軸 | |
23 | 組織・会社に利益を生み出す | 仕事軸 | |
24 | 必要とされる人材となる | 仕事軸 | |
25 | 下位者から尊敬される人材となる | 仕事軸 | |
26 | 楽しんで仕事をする | 環境軸 | |
27 | ほかの人の支援を行う | 環境軸 | |
28 | 自分のキャリアを活かす | 仕事軸 | |
29 | 家庭を大切にすることを第一とする | 条件軸 | |
30 | 周囲から慕われる存在となる | 環境軸 | |
31 | 仕事にやりがい、意味を創造する | 仕事軸 | |
32 | 仕事を通して、自己実現する | 仕事軸 | |
33 | 人間関係を大切にしながら働く | 環境軸 | |
34 | 自己啓発を大切にする | 仕事軸 | |
35 | 下位者のロールモデルとなる | 環境軸 | |
36 | 成果、業績を上げる | 仕事軸 | |
37 | 次世代の人材を育成する | 仕事軸 | |
38 | 周囲から認められ評価される | 環境軸 | |
39 | 仕事で新しい価値を創造する | 仕事軸 | |
40 | 縛られずに自由に仕事をする | 環境軸 |
自己分析の手順2・3のイメージ
【解説】①仕事軸から分かること
下表の項目に○を付けた人は、3つの軸の中でどんな仕事内容に取り組むか、を大切にしているようです。
仕事軸の表
○/× | No. | 大事にしている価値観 | 3軸の分類 |
---|---|---|---|
1 | 専門性を深め、強みを活かす | 仕事軸 | |
3 | 仕事を通して、社会に貢献する | 仕事軸 | |
4 | 自分が人間として向上し成長する | 仕事軸 | |
8 | 組織・会社の発展、成長に貢献する | 仕事軸 | |
9 | リーダーとして力を発揮する | 仕事軸 | |
11 | 困難な仕事にも挑戦する | 仕事軸 | |
13 | 市場価値の高い人材となる | 仕事軸 | |
14 | 他人の役に立つ仕事をする | 仕事軸 | |
15 | 存在感のある人になる | 仕事軸 | |
18 | 自分の能力を最大限活かす | 仕事軸 | |
19 | 自分の役割・責任・使命を果たす | 仕事軸 | |
22 | 環境の変化に柔軟に対応する | 仕事軸 | |
23 | 組織・会社に利益を生み出す | 仕事軸 | |
24 | 必要とされる人材となる | 仕事軸 | |
25 | 下位者から尊敬される人材となる | 仕事軸 | |
28 | 自分のキャリアを活かす | 仕事軸 | |
31 | 仕事にやりがい、意味を創造する | 仕事軸 | |
32 | 仕事を通して、自己実現する | 仕事軸 | |
34 | 自己啓発を大切にする | 仕事軸 | |
36 | 成果、業績を上げる | 仕事軸 | |
37 | 次世代の人材を育成する | 仕事軸 | |
39 | 仕事で新しい価値を創造する | 仕事軸 |
各項目の内容を掘り下げて、どんなことに楽しみややりがいを感じてきたか、ご自身の実体験と結び付けて考えてみてください。例えば「14.他人の役に立つ仕事をする」を選んだ場合、「お客さまの笑顔を見たい」「マニュアル整理などをして部署のメンバーが喜ぶとうれしい」といった感じです。
転職活動で「やりたい仕事=職種」と考えてしまうと、自分が知っている範囲でしか次の選択肢を出せないでしょう。また、過去の経験でしか判断できず、可能性を狭めてしまいます。そのため、まず自己分析によって、職種にとらわれない広い視野で、自分がどんな仕事をしたいのかを洗い出しましょう。
また、上位5位に仕事軸から選んだ項目がなかった人は、自分のなかでの優先度が条件や環境にあることは意識しつつ、仕事軸のなかから選ぶとしたらどの項目になるかを考えておくとよいでしょう。
【解説】②条件軸から分かること
下表の項目に○を付けた人は、どんな条件で働くか、に重点を置いていることが分かります。
条件軸の表
○/× | No. | 大事にしている価値観 | 3軸の分類 |
---|---|---|---|
5 | お金を多く稼ぐ | 条件軸 | |
6 | 仕事と家庭生活の調和を図る | 条件軸 | |
7 | 昇進、昇格する | 条件軸 | |
17 | 仕事オンリーの人生にしない | 条件軸 | |
20 | 安定して働くことを大切にする | 条件軸 | |
21 | 仕事はそこそこで趣味を楽しむ | 条件軸 | |
29 | 家庭を大切にすることを第一とする | 条件軸 |
条件軸には、年収や休日、労働時間、勤務地、福利厚生といった企業で働くうえでの条件・要件が含まれます。
希望する条件は、年齢やライフイベントによって、変わっていくもの。今だけではなく、1年後、数年後、10年後など段階に分けて、どうなっていたいのかイメージしてみてください。
【解説】③環境軸から分かること
下表の項目に○を付けた人は、どんな環境で働くか、を大事にしています。
環境軸の表
○/× | No. | 大事にしている価値観 | 3軸の分類 |
---|---|---|---|
2 | コミュニケーションを大切にする | 環境軸 | |
10 | 自分らしさを活かして働く | 環境軸 | |
12 | できる範囲で無理せず働く | 環境軸 | |
16 | 人間的な魅力、人間力を磨く | 環境軸 | |
26 | 楽しんで仕事をする | 環境軸 | |
27 | ほかの人の支援を行う | 環境軸 | |
30 | 周囲から慕われる存在となる | 環境軸 | |
33 | 人間関係を大切にしながら働く | 環境軸 | |
35 | 下位者のロールモデルとなる | 環境軸 | |
38 | 周囲から認められ評価される | 環境軸 | |
40 | 縛られずに自由に仕事をする | 環境軸 |
「2.コミュニケーションを大事にする」「10.自分らしさを活かして働く」といった価値観をさらに掘り下げてみると、自分が働きたい職場の雰囲気や風土などが見えてくるはずです。例えば、同僚とプライベートでも仲良くできる職場や、個人の専門性を活かして切磋琢磨できる職場など、どんな雰囲気をもっている環境、どんな人が多いチームだと自分が働きやすいのか、よく考えてみましょう。
転職エージェントへの相談や診断ツールで自己分析
ここまでにご紹介した3軸のチェックシートによる自己分析以外にも、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談してみる、転職サイトの診断ツールを使う、といった方法もよいでしょう。
キャリアアドバイザーへの相談を通して、自分のこれまでの経歴を改めてふりかえることができ、アドバイザーからの問いかけをきっかけに、自分ひとりでは気づけなかった志向性やキャリア観を発見することができます。まだ具体的に自分がやりたい仕事が定まっていない状態でも問題ありません。カウンセリングは、オンラインや電話で全国から受けられるので、ぜひ活用してください。
dodaエージェントサービスとは?詳しいサービス内容を確認する
また、dodaでは「キャリアタイプ診断」や「転職タイプ診断」などの自己分析ツールも用意しています。「まだ転職活動は始めていない」という人も、Web上で質問に答えていくだけで自分の価値観や志向性が分かるので、気軽に診断してみてください。
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自己分析で分かった「自分の軸」の活かし方
仕事をする上で何を大事にしているかという「自分の軸」が明らかになったところで、次はdodaキャリアアドバイザーが転職活動での、自己分析結果の活用法を解説していきます。
①企業選びの目線がクリアになる
自己分析を終えた時点では、業界・職種はあまり限定せずに、幅広い視野で応募先を探してみてください。自分の軸や志向性が分かっていると、求人が探しやすくなり、自分の選択肢が広がります。具体的に応募先の広げ方がイメージできない場合は、キャリアアドバイザーに相談していただければ、志向性や軸を活かしたさまざまな方向性をご提案します。
自分の価値観の優先度も把握していると、一部が合致しない企業でも転職の緊急度によっては妥協できる点が分かるはずです。また、希望の条件や仕事に対するこだわりをあらかじめ整理できていれば、キャリアアドバイザーに相談する際も、伝えるべき自分の志向性が明らかになっています。自分の希望に沿った転職先を紹介してもらえる可能性が高くなるでしょう。
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②「転職理由」「志望動機」「自己PR」に活かす
自己分析の結果は、応募書類や面接でよく聞かれる「転職理由」「志望動機」「自己PR」に活かせます。
志望動機や転職理由には、仕事軸で選んだ項目が活かしやすいでしょう。その項目の具体的な「やりがいや喜びを感じた過去のエピソード」を掘り下げ、どんな結果を出したのか、周りの反応はどうだったのかまで伝えると、説得力が出るはずです。これから実現していきたい項目の場合は、応募先の企業であればその希望を実現していけるので志望していること、今の仕事で培ったスキルを活かせることを伝えましょう。
自己PRは、仕事軸を掘り下げて整理した事柄の中から、自分の価値観と合っていて、強みとして活かせそうなものを探してみてください。具体的には「コミュニケーション力」や「リーダーシップ」など、どの業界にも通用するポータブルスキルを伝え、応募先でどのように活かせるかを示してみましょう。仕事軸のなかに活かせそうな強みが見つからなくても、大切にしたい価値観であることに変わりありません。転職活動でアピールしようと考えている自分の強みと、選んだ価値観に矛盾がないかを確認しておくことは、入社後の働き方のギャップを抑えることにもなります。
また、面接の逆質問のシーンでは、自己分析で自分の優先したいことがはっきりしているとスムーズにいきます。時間がない状況でも、絶対に聞いておきたいこと、後回しでいいことを整理して質問できます。
③内定を受けるかどうか、迷ったときの判断軸になる
内定をもらった企業が第一志望ではなかったり、そもそも企業同士の優先順位が付けられていなかったり、面接などで聞くうちに希望とそぐわない部分が出てきたり…ということもあるでしょう。
内定を受けて後悔しないか迷ったときにも、自己分析の結果は判断する軸になります。ほかに内定をもらえた会社がないから、面接官と気が合って盛り上がったから…というような一時的なもので判断せずに、「自分の軸」を尊重して判断するようにしてください。
自己分析が難しい…という人はどうすればいい?
自己分析は、言葉にするのは簡単ですが、実際自分でやろうとすると難しいもの。前述したように、仕事軸に関しては十分に把握している人はあまりいないのが実情です。
特にキャリアパスが定まっていない方などは、スムーズに自己分析ができないかもしれません。そんなときには、エージェントサービスを利用して、キャリアアドバイザーと対話しながら客観的に自分の要望を把握するとよいでしょう。
<まとめ>
ここでは、40個の仕事に対する価値観から「自分の軸」を掘り下げる方法を紹介しました。ぜひ、ご自身の自己分析に役立ててみてください。
仕事に対する価値観は、年齢や環境に応じて変化する可能性があります。転職活動が続く中でしばらく時間が経ち、選考を受ける中で自分の優先順位が変わった…と感じたときは、改めて自己分析してみるのもよいでしょう。
取材協力
株式会社HRディレクション・パートナーズ代表取締役 平尾 英治(ひらお・えいじ)
米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japan キャリアカウンセラー
社団法人ビューティフルエージング協会認定 ライフデザイン・アドバイザー
企業・求職者向けの研修・コンサルタント業務を企画・設計し、自らも講師を務めるシニアコンサルタント。
【略歴】
1991年 株式会社リクルート(現・株式会社リクルートキャリア)に入社、HR事業部門に所属。 2012年 株式会社トライアンフ入社。 2014年6月 株式会社HRディレクション・パートナーズを設立し、代表取締役に就任。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
河野 智彰(こうの・ともあき)
国家資格キャリアコンサルタント
【経歴】
大学在学中から約10年間にわたりお笑い芸人として活動。その後、約2年間の生命保険の個人営業を経てパーソルキャリアに入社。dodaキャリアアドバイザーとして、若年層から会社役員まで幅広い転職者の支援を行う。主な専門領域はセールス、マーケティング、ITエンジニア、コーポレート部門など。
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