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魔宮回生・プロローグ


八重垣いちこ: …………大社から通達が来ました。
ツッチー: 「龍宮洞」だな?
八重垣いちこ: ええ……龍宮洞の封印が解除されたとのこと。普通に入るだけなら許可もいらないそうです。
ツッチー: ほぉ~チケット無しでか。それはどういう意味だろうなぁ。「いつでも来ていいよ」ってことか、それとも……「早く来い」なのか。
八重垣いちこ: ……今回に限っては後者でしょうね。今後の作戦行動に関わる重要な何かがあるらしいと……。
ツッチー: お前さんは相変わらずそれ以上の話は聞いてねえのか。
八重垣いちこ: ……ええ。噂では龍宮洞での実験結果の検証が私たちの任務になるようだというくらいです。懐かしいものが見れるかもしれないとも聞きました。
ツッチー: 懐かしいもの? ったくよくわからんが、その実験は神宮が主導で動いてる儀式だったよな?
八重垣いちこ: そうですね。龍宮洞を完全閉鎖してまで行っていたものです。
ツッチー: そもそも危険な場所だというのに……それでも行くのか?
八重垣いちこ: 大社も検討の上で神宮との共同実験が行われたのでしょうから、相応の成果を見込んでいるはずです。見届けない手はありません。それに──
八重垣いちこ: 私は御魂ふつさんを信用していますから。
ツッチー: ケッ、オレっちは大社も神宮もそいつも信用ならねぇぜ。
八重垣いちこ: そうですか………。
ツッチー: だがよ、八重垣いちこのことは信用してるつもりだ。オレっちも付き合ってやるぜ。なぁ刀匠、お前さんもそうだろ?
八重垣いちこ: ………皆さん、ありがとうございます。

魔宮回生・その1「既知の冒険」


御魂ふつ: ひ~ひっひひひ、ようこそ~新生「龍宮洞」へ!
ツッチー: ほぉ~、アトラクション責任者じきじきのお出迎えとは痛み入るねぇ。
八重垣いちこ:
御魂ふつ:さん……早速なのですが、詳しい説明はここで聞けるのですか?
御魂ふつ: いやぁ~できれば最深部で話したいね。いっちゃんに見てもらいたいんだ!
ツッチー: 神宮の肝いりでどれほど生まれ変わったもんかと思ったが、たいして変わってなくて拍子抜けだぜ?
八重垣いちこ: ……しいていえば壁面の明るさが少し増したくらいでしょうか。
ツッチー: ところで単純な疑問なんだが、せっかくエレベーターがあるんだ。下まで一気に降りりゃあよくねえか?
御魂ふつ: う~ん、ま、注入したエネルギーの効果と影響範囲を検証するのが目的だからさ。ひとつひとつ、ね!
御魂ふつ: あと、今は下の方でエレベーターが機能してるか怪しいから。
ツッチー: おいおい……機械のメンテもしねえで、なんのためのリニューアルだよ……。
八重垣いちこ: 最深部に近づくにつれて故障率が上がるのでしょうか。憑喪は閉鎖前と変わらない印象ですが……。
ツッチー: せっかく閉鎖前に制圧寸前のところまで持ってったのに、なんで回復の時間与えてんだ……。
御魂ふつ: いやいやぁ~そこまで時間を与えた覚えはないよん。神宮が与えたのはエネルギーだけさっ!
ツッチー: はあっ!? だからわざわざ憑喪に栄養つけるとはどういうことだ!
御魂ふつ: 注入対象は龍宮洞本体だけどねぇ、ま、憑喪の復元にもある程度使われてしまうのは織り込み済み。
八重垣いちこ: なるほど。我々は最深部へ行くための露払いということですか。
御魂ふつ: だってねぇ、さすがに神宮の人材だけじゃ潜るのに時間がかかるし。主戦力である大社にお願いするよ!
ツッチー: 都合良く使いやがって。
八重垣いちこ: ………あめのさんはどうしたんでしょうか。龍宮洞には──
御魂ふつ: あめちゃんは忙しくてねぇ。こっちの実験の検証が終わり次第、大役が控えてるんだけど……詳しくは道すがら聞かせるよ。
ツッチー: さらっと同行する気か。まぁ道中は長くなりそうだし、色々聞かせてもらうぜ。
御魂ふつ: 行こう行こう! いざって時、これくらいの憑喪を突破できなければ、この後の作戦自体が成立しないもん!
八重垣いちこ: ……そうですか。これもまたあなたの言う検証の一部、ということですね。
ツッチー: ケッ、見せてやろうじゃねえか! 討伐隊の底力をよ!

魔宮回生・その2「遡行限界点」


八重垣いちこ: …………先ほどこのようなモノを拾ったのですが、龍宮洞では初めて見るモノです。
御魂ふつ: ホント? 見せて見せて! よ~しよしっ! うまくいってる!
ツッチー: 何だこりゃ? 形だけなら禍魂……か。サイズと柄が違うが。
御魂ふつ: これも禍魂だよ! ただし「殺生石」と同じ由来のね。
八重垣いちこ: 材質は魂鋼……これは「不活性の魂鋼」と呼んでいたものですね?
御魂ふつ: そうそう! いや~実はね、恥ずかしいことに長い間この区別がついていなかったの。
ツッチー: オレっちには今でもつかねぇぞ。見た目じゃない判別法があるのか?
御魂ふつ: 普通の方法じゃ無理! 必要なエネルギー量が大きすぎ!
ツッチー: なんだよそれは……。
御魂ふつ: 神宮が龍宮洞で魂鋼の形状復元実験をしてたのは知ってる?
八重垣いちこ: まさか鏡の欠片……「浄玻璃鏡計画」ですか?
御魂ふつ: そうそれそれ! 魔鏡を触媒として魂鋼に記憶された形状の復元を促すやつ。憑喪の自己復元能力の応用ね。
ツッチー: おい……もしかしてそれが今──
八重垣いちこ: ええ、龍宮洞に出てくる一部の憑喪や妖刀鬼女はその名残でしょう……。
御魂ふつ: それはそれ! で、やっぱり得られた結果は不完全なものだった。本来目指したその先へ進めなかった!
ツッチー: 目指した先……?
御魂ふつ: 神宮が目指しているのは、大天狗衝突以前への日本列島の再生だ!
ツッチー: んなことできるわけねえだろ!?
御魂ふつ: そうそう。できるわけない。そうなんだよねぇ~。できるわけなかった。
八重垣いちこ: できないのは…………大天狗由来の魂鋼を使っているから?
御魂ふつ: 大正解! だって魂鋼が復元すべき衝突以前の日本の形を記憶している筈もないからねぇ。
ツッチー: よくわからんが、んじゃなんでいつまでも実験してたんだよ。
八重垣いちこ: 神宮がそれでも考えを捨てなかったのは実例があったから……それは、真剣少女がいたから……そうですね?
御魂ふつ: ひひひ、大量の憑喪がやってきたみたい! まずは討伐頼むよ~!

魔宮回生・その3「刀に宿るもの」


御魂ふつ: 神宮では最初、「真剣少女」なんてものがまともに出来上がるなんて微塵も思ってなかった。
ツッチー: ほぉ~、そうかい。大社に先を越されてさぞ悔しかったろうな。
御魂ふつ: そだねぇ。現代兵器で倒せなかった憑喪がなぜか神剣名刀でなら斬れた、までは良かったんだけど。
御魂ふつ: でも、なぜ、そもそも、魂鋼で形を真似れば名刀のコピーができると考えたのか。
八重垣いちこ: いま真剣少女の鍛刀に使う魂鋼は、「大天狗」か憑喪に由来したものなんですね。
ツッチー: ま、あれだけじゃ足りねえから水増しに他の鉄も入れるがな。いずれにせよ敵と同じ素材で対抗するのは常識的な考えだろ。
御魂ふつ: 一理ある。じゃあ真剣少女の使う剣技が妖術じみてるのは、魂鋼に憑喪の情報も混ざりこんでいるからって知ってる?
ツッチー: ああん!? さっきから聞いたことねえ話を次々と……。
御魂ふつ: ひひひ。で、鬼女化するとその性質がより顕在化するよね。でも、憑喪にまで戻った例はないだろう?
ツッチー: そりゃお前、くくる術が強力だってのと、なにより刀だけじゃなく真剣少女がいるからだろ。
御魂ふつ: ホントにぃ? そもそも人の形をした「部分」は何なんだ? 刀を打てば湧いて出るあの「形」は。
ツッチー: あん? 何ってだから刀と縁を結んだ少女だろ?
御魂ふつ: めでたいねぇ。といってもこの話を本質的に理解できるものはこの世界には少ない。結局、いいように記憶を改善されるからねぇ。
八重垣いちこ: ………………。
御魂ふつ: いっちゃんは知っていたんだね。大社が刀匠に提供する魂鋼にはあらかじめ「何か」を混ぜてあるって。それが大天狗飛来以前の「情報」だって。
御魂ふつ: そうでもなきゃ都合よく打った刀に適合した少女なんて見繕えるはずがないよねぇ。憑喪に戻ることもない。上手いこと考えたもんだ。
ツッチー: なんだそれは……?
御魂ふつ: そんなことだろうと思ってたけど、大社がなかなか情報を出さないから無駄に苦労したよん。大天狗飛来以前の少女の──ま、もういいや。
八重垣いちこ: ……秘密を知って怒ってはいないのですか?
御魂ふつ: 怒ってるよ。それがわかってれば「浄玻璃鏡計画」の間違いにもすぐに気がついたのに。
御魂ふつ: でもね、刀と人の記憶がごちゃごちゃになってる理由がわかってスッキリしたよん。
ツッチー: こっちはスッキリしないどころじゃねぇ…! 憑喪を蹴散らすまでちょっと待ってろ!

魔宮回生・その4「星は二度降る」


村雲ごう: ……あなたたちは、どこへ行く、の?
村雲ごう: ここは、堂々巡り、どこへもいけない……。
村雲ごう: この先に……出口なんて、ないのに。
八重垣いちこ: 私たちは見つけます。必ず。 村雲ごう ……そう。見つけたら、教えて。
八重垣いちこ: ………………ええ、必ず。
ツッチー: 行ったか…………。
御魂ふつ: 残ってた浄玻璃鏡の欠片から再生したのかな? 律儀に受け答えしなくていいのに……さて何の話の途中だったかな?
ツッチー: 結局、真剣少女の鍛刀に何かが使われてるとして何だってんだ。
御魂ふつ: そこが重要だった! といってもそれも魂鋼さ。ただし大天狗由来のものより古い魂鋼。真剣少女が誕生した以上、これは明らかなんだ。
八重垣いちこ: ……それが「殺生石」であると?
御魂ふつ: そう! 「殺生石」と「大天狗」、巨大隕石は地球に二度に分けて落ちたわけだよ。
御魂ふつ: ひひひ、あとの問題はそれがどんな形でどれほど分布していたか……いずれにせよこの事実が確定したとき、ふつはその幸運に身震いした!
ツッチー: どこが幸運だ! 一発目は恐竜を絶滅させたって話だし、二発目は日本を壊滅させてんだぞ。世界だってもう……!
御魂ふつ: じゃあ恐竜には申し訳ないけど「人類にとっての幸運」と言い換えよっか! もちろん結果はどちらも甚大だけど、二発目はねぇ。
八重垣いちこ: 最初に比べると規模が小さかった。人類が生き残れる程度に……というわけですか。
ツッチー: …………そう言われりゃそうなのか。そのおかげで反撃するだけの猶予が生まれたと。
御魂ふつ: その通り! でも猶予は一度だけじゃないんだぁ。ふつたちは二度の猶予をもらってる。
御魂ふつ: 一発目と二発目の間に6550万年、そして二発目から今まで。人類史にとっては一発目の方がはるかに大きな意味を持っている。
八重垣いちこ: 6550万年……小型哺乳類から人類に進化し、文明を手に入れるまでの猶予ですか……?
御魂ふつ: これは実にきわどいタイミングだったと思うね!
八重垣いちこ: そして、大天狗がもっと早く落ちてきていたら人類はなす術なく確実に終わっていたと。
ツッチー: 生き延びているのは真剣少女のおかげか。しかし、複雑だぜ……ある意味「殺生石」が真剣少女の生みの親か……。
御魂ふつ: ある意味どころか「完全に」だよ。そして真剣少女だけじゃなく「人類が」、だ。これからもそうであり続ける。うまくいけば、ねっ!


魔宮回生・その5「秘術・大返し」


御魂ふつ: 憑喪が現れるようになってから、いわゆる幽霊等の超常現象の話も急増したのに気付いてる?
ツッチー: ああ……壁についた血の手形や謎の人影とか色々な。その対応に真剣少女たちがいつも苦労してるぜ。
御魂ふつ: 長年、神宮ではそれが何を意味するのかについて研究してきたんだよ。
八重垣いちこ: ……なるほど。憑喪以前の日本における妖怪や怪談も含め、それらの現象は魂鋼が関係しているんですね?
御魂ふつ: うん。例えば壁の手形なんかは、成分を調べたところ赤サビ、つまり酸化鉄だとわかった。
ツッチー: ん? 物性があるのか……しかも鉄……。
御魂ふつ: 指紋まで取れることだってあるんだよ? それがきちんと実在の人物のものと確認されたこともある。ただし本人は死んでたけどね。
八重垣いちこ: ……死んだ人物の手形が復元されたと?
御魂ふつ: そうだね。いっちゃんが言った通り、神宮はこれを魂鋼の性質による現象だと結論づけたんだ。ヒントになったのは「魔鏡」という技術だね。
ツッチー: 魔鏡? 隠れキリシタンが持っていた、光を当てると壁にマリア様が映ったりする鏡のことか?
八重垣いちこ: 歴史的にはもっと古く、いわゆる銅鏡もそうだと言われてますね。
御魂ふつ: そう。原理としては裏に彫り物をした鏡を研磨すると厚みの差に応じて鏡面に微妙な凹凸ができ、光を反射した時にそれが光の濃淡となって像を結ぶというものだ。
御魂ふつ: で、魂鋼で作られた鏡に特殊な条件下で一定量のエネルギーを注ぎ込むと鏡の表面に凹凸が生まれることがわかった。そこにはある過去の場面が映ったんだよ!
ツッチー: う~ん、カメラみてえなもんに聞こえるが……。
御魂ふつ: いやいや、もっと凄いよ! 原理が魔鏡と同じということは、この鏡の表面にはごく微妙な凹凸だけど「立体」として過去の事象が再現されていることになる! この意味わかる?
八重垣いちこ: エネルギー量を増やすことで、そこに映っていた物や住んでいた人の姿を完全に取り戻すことが出来る……と。
ツッチー: そういうのが中途半端に目撃されてんのが幽霊の正体で、それを推し進めたのが神宮の計画なのか!?
御魂ふつ: そう! それが「浄玻璃鏡計画」なのさっ!
八重垣いちこ: ………………。
ツッチー: クソッ……なんとなくだがわかったぜ。それで「殺生石」由来の魂鋼には日本を再生する可能性があるんだな?
八重垣いちこ: エネルギーの量と与え方次第で、魂鋼を過去のある時点の形に戻すことができる……しかし、そのエネルギーは尋常な量ではありません。
御魂ふつ: そうだね! 今回の龍宮洞の実験だけでも結構大変だったし。
ツッチー: このご時世にエネルギーの調達のあてもねえし、やっぱり絶望的な計画だ。
御魂ふつ: もちろんあてはあるよん。下準備はもうずっと前から続けてる。図らずしてだけどね。
八重垣いちこ: ふつさん、あなたが言う下準備とは……これまでの真剣少女と憑喪との戦線拡大を指しているのですね? 東に向かい、龍脈を暖めて……その先にあるのは……。
御魂ふつ: ひひひ、その通り! 日本の再生は日本自身にやってもらうんだよ! 正確には日本に練り込まれてる「殺生石」にね!
八重垣いちこ: しかし! 龍脈が活性化すれば「殺生石」は元の姿を取り戻します…! それに、あなたたちが頼ろうとしているのは──
御魂ふつ: 大天狗が落下した場所にあったモノ……霊峰、富士!
御魂ふつ: 大天狗によって吹き飛んだけど、奴は日本を再生するだけのエネルギーを蓄えてる。あとはきっかけのもうひと押しがあればいい……ひひひ。


魔宮回生・その6「霊峰再生」


ツッチー: 待て待て! 富士の再生はいい。だが、そこから出てくる化け物次第じゃ、結局日本は更なる打撃を受けるぞ!?
御魂ふつ: いいかい、人類は殺生石の治りかけの傷口の上で生きてきた。大天狗が落ちてショック療法となったわけだけど、最終的には地球にぶつかる前の状態に戻ることになるだろう。
ツッチー: そうなっちゃ日本は終わりだ。6550万年前の日本列島すら存在しない世界だぜ。
八重垣いちこ: いえ、その前に「殺生石」が体験したあらゆる出来事が逆再生のように再現される………まず治すのは「大天狗」につけられた傷からなんですね?
御魂ふつ: そう! ま、「殺生石」の元の形がどんな存在なのか興味がないわけじゃないけど、そこに至らせるわけにはいかない。
ツッチー: つまり再生を途中で終わらせて、憑喪の上前をはねようってわけか!? そんな制御できっこねえ、無謀すぎるぜ……!
八重垣いちこ: そうですね……。6550万年分の尺度に比べたら、私たちが望む時間など一瞬……というのもはばかられます。
ツッチー: だから、龍宮洞での検証実験か。6550万年巻き戻すストップウォッチを目押しで止めるための!
御魂ふつ: ひひひ、わかってきたねぇ! ま、真剣少女が手を出そうが出すまいが、どのみち「殺生石」の再生はいつか始まってしまうんだけどさ。
八重垣いちこ: 閉鎖環境である龍宮洞なら計算が立つ……数少ない練習の機会というわけですね。
フランベルジェ: やっぱりうちのにらんだ通りやったな。ここがキーポイントっちゅうわけや。
ツッチー: ……フランス娘じゃねえか。お前さんも神宮総出の実験が気になったのか。
御魂ふつ: ああ、フランちゃん! もろはちゃ~んにくっついて神宮まで押しかけてきた以来かな? ま、今回もろはちゃ~んはお留守番してもらってるけど。主に信憑性の問題で。
御魂ふつ: でも、いや~フランちゃんが持って来てくれた情報、助かったよ! あれを見れば残された時間がないのは誰の目にも明らかだったからね!
ツッチー: なんだそれは……フランスから何を持って来た?
フランベルジェ: 正確には太平洋からの超望遠写真や。あんたらには以前会うたとき言わんかったけどな、富士のお山が再生しかかっとる。
八重垣いちこ: 「大天狗」の傷が治り始めている? ……すでに始まっていたのですね。
フランベルジェ: 「終わりの始まり」ゆうやつや。
ツッチー: 冗談じゃねえ! 終わる前にこっちが終わらせてやるぜ!
フランベルジェ はは、うちは今回はさっさと避難するつもりやけど、しかしなぁ……この写真、この再生の具合見てもおんなじこと言うてくれるやろか。
ツッチー: なんだこりゃ!? いくつもある噴出口からマグマがとぐろを巻くみてえに出てきてやがる……まるで絡み合ってる血管、いや──
御魂ふつ: そう、これは「心臓」と言っていいね! 龍脈からの流れが富士に集まって溶岩の憑喪となって噴き出しているのさっ!
ツッチー: ちくしょう……絶対終わらせてやる。富士山が目安と言うなら、3776mになった瞬間がまさに再生を止めるタイミングだな? だが──
八重垣いちこ: どう止めるのか、ですね。
御魂ふつ: そんなの龍脈のエネルギー供給を遮断すればいい。富士山の再生を担ってるこのとぐろのような憑喪を倒してね。
ツッチー: ケッ、簡単に言ってくれるぜ……!
フランベルジェ: ちなみに確認した噴出口の数は八個や。なあ……龍宮洞の階層は八、徘徊しとる妖刀鬼女も八体……なんやこの偶然は?
八重垣いちこ: 龍宮洞は前哨戦というわけですね。八……ふつさん、ここに来て、ですか。
御魂ふつ: うん。大社も富士を巣くうこの憑喪を「八岐大蛇(やまたのおろち)」と名づけるつもりだよ。あめちゃんが忙しいわけ、わかった?


魔宮回生・その7「今が消えても」


村正せんこ: 私のために仕事を作ってくれてたみたいね。
ツッチー: よう「妖刀狩り」、助かるぜ。なにやら龍宮洞に出る妖刀鬼女は放っておけねぇみたいだからな。
村正せんこ: 大社から聞いたけど練習なんでしょ? でも、いいかげん何度も同じ相手を斬る仕事も飽きてきたわ。
ツッチー: まぁじきに終わる、はず……?
村正せんこ: なんで語尾が疑問系なのよ……たまには違うものも斬ってみたくなるわ。じゃあね。
ツッチー: ったく、あいつの言う通りだぜ。下りて来たのはいいが、憑喪の数が一向に減りゃしねえ。
八重垣いちこ: 確かに……理論通りの再生なら底に近づくほど、憑喪も減少していかないとおかしいですね。
御魂ふつ: 周囲の瓦礫はだんだん整っているし、う~ん、ふつたちのように動くものには作用にタイムラグがあるのかもしれない。境界域の状態は予測が難しくてね。
ツッチー: なあ……全部が元に戻るって意味を考えてたんだが……。日本は再生される。だが、それは憑喪だけじゃなく真剣少女だって一人残らずいなくなるんじゃないのか?
御魂ふつ: 当然そうなるけど。それがどうかした?
ツッチー: 十分どうかしてるだろ! オレっちはてっきり土地と憑喪だけが元に戻るもんかと──
御魂ふつ: そんなご都合主義があるわけないよん。魂鋼に関わる全てをリセットするんだから。あ、時間が戻ると言ってもタイムスリップやタイムリープなんてものとは違うからね?
御魂ふつ: 時間転移、そんなことが出来るならふつが知りたいくらいだ。時間は先へと進む。ただ、土地も憑喪も人間も、そこにある何もかも振り出しに戻すのさ。
ツッチー: 人間もって……真剣少女だけじゃなく大天狗飛来後に生まれた奴もいるだろ。そんなのも全部ひっくるめて無かったことにしようってのか!?
御魂ふつ: もちろんできる限りの対策は取るよ。生き残っている住民の国外避難で済むならそれもいい。
御魂ふつ: だけどねぇ、魂鋼の分布と「日本雛形論」のことも考えると、大返しが発動した場合の影響範囲は正直予測がつかない。だからこその検証。不測の事態は少しでも削る。
ツッチー: ……………………。
ツッチー: …………いちこ、お前はそれでいいのか?
八重垣いちこ: …………失ったモノの方が多い今なら、一つの選択……と考えます。
ツッチー: いちこ、オレっちが聞きてえのはお前さんの気持ちだよ。
八重垣いちこ: ……真剣少女たちは大天狗の被災者です。そして今は術と名で縛られたかりそめの姿と言っても間違いではありません。
八重垣いちこ: 私は……彼女たちに本来の姿を取り戻す機会が訪れるなんて夢でしかないと思っていました。だから──
御魂ふつ: もうひとつ勘違いを正しておくけど、これはやむにやまれぬ決断ということだよ! 東に「橋」が架かれば悩んでる暇などなくなるんだから!
八重垣いちこ: だから、それでも納得できたなら、戦いの意味は変わることでしょう。でも、まだこの世界でやり残したことがあるのではとも思います……。
ツッチー: 橋の向こうへ行くか戻るかはそんとき決めなきゃならねえか……。
ツッチー: ま、わかったよ。どうせオレっちには決定権はねえ。いちこと刀匠に従うまでだ。
御魂ふつ: よしよし。どっちにしろいっちゃんにはやってもらわなきゃならないことがあるからね。多分、最後に。
八重垣いちこ: ………ええ。憑喪より先にこの世に生まれた真剣少女はいません。
ツッチー: ? まさか、肝心のゼロアワーに八岐大蛇を止めるのは──
八重垣いちこ: 私の役目になることでしょう。八岐大蛇の一部たる天叢雲剣としての……。


魔宮回生・その8「深奥入城」


八重垣いちこ: ここが最下層ですね……この奥に実験の成果が……。
御魂ふつ: その筈だね! でも、その前にみんな~、体調に問題は無い? ちゃんと記憶はある?
ツッチー: ああ、多分な。これが夢の中だとは思いたくねぇ。
御魂ふつ: うんうん! ここで記憶を失えばもう憑喪と変わらないよ。
ツッチー: !?……ふん、あいつみてえにか。やべえ奴らがいるぞ……! 左文字みよし ふふ、あら私たちに構ってくれるの? 火傷してもいいのかしら? 月山童子 う………ア……………!
ツッチー: 月山童子……!
左文字みよし: よしよし。そうね、アナタも燃やし尽くしたいわけじゃないんだよね? 私と一緒にいれば大丈夫よ。
月山童子: ギ………よ……。
左文字みよし そう、良い子ね。私の言うこと聞きなさい? そうすればアナタが望む世界が甦る。私が見せてあげるから。
ツッチー: お、おい! どこへ行く!?
左文字みよし: どこって……どこでもいいじゃない。私って縛られるのが嫌いなの。
ツッチー: あいつら……奥へ……。
八重垣いちこ: 月山童子……彼もまた「大天狗」の犠牲者の一人ですね……。
御魂ふつ: やっぱりもう人としての意識はないか。あの妖刀鬼女と一緒にいれば暴れることはなさそうだけど。
ツッチー: なあ、オレっちが知る限り、月山童子をここで見た覚えはねぇ。あいつも再生したのか?
御魂ふつ: そうかも知れないし、龍宮洞自体は海に口を開けてるわけだからね。上空から新たに入って来たとも考えられる。
御魂ふつ: それに「龍宮」とは竜王の居城のことだよ? 龍の名に惹かれて来たとか、あるいは注入されたエネルギーの匂いを嗅ぎつけたか。
八重垣いちこ: ……そうでしょうか。みよしさんが言っていたように私は彼の人としての部分が望んだのだと思います。ここにある筈の「懐かしいもの」を見たくて……。
御魂ふつ: なるほどねぇ。龍に見える部分も元は月山ヤマトの人面疽というのなら、人面疽ってのは癌細胞のような魂鋼の複製エラーか不具合なのかも。う~ん、実に興味深い。
ツッチー: つうか魂鋼に欠陥があるかもしれねぇなんてどうすんだよ。変なことが「大返し」中に起きでもしたら……。
御魂ふつ: ひひひ、例えば太平洋上に日本列島がもう一個できたりとか?
御魂ふつ: それも面白そうだねぇ。そこではみんなで仲良く平和に暮らすのさ。剣はスポーツや趣味として学び、少年少女たちは学校なんかへ行っちゃったりしてね!
ツッチー: ハッ、おいおいなんだよそれ、ゴキゲンな不具合だな。
八重垣いちこ: それは夢のある話かもしれません。ですが……私はこの世界も大切にしたい。優柔不断で申し訳ありませんが、最後のその時までは……。
ツッチー: ああ。でもま、ここはせっかくの龍宮だ。楽しい夢の一つも見てえよな。お前さんもそうだろ、ヤマト──

「いつか見た世界」


御魂ふつ: ほら、見てごらんよ! 来たるべき未来の姿を……!
ツッチー: なっ!? ほ、本当に町が……こんな海底に「大天狗」が落ちてくる前のままの町があるなんて……。
八重垣いちこ: 町の中に憑喪が見当たりません……これが実験の成果だというのですね……。
御魂ふつ: 素晴らしい! 龍宮洞が呑み込んだ瓦礫と魂鋼に保存された過去の形状はほぼ復元されているようだね。果たして復元率は──
御魂ふつ: !? な、なんだぁ!?
ツッチー: 失敗……か?
御魂ふつ: ………………………………………。
八重垣いちこ: そういえば……あの町には憑喪がいませんでしたが、人も見当たりませんでした。それが叶わなければ意味は……。
御魂ふつ: 人? いや、そうか! ひひひ……そうだよ。そうだよ!
ツッチー: 一人で納得してねえで理屈をつけろ!
御魂ふつ: この龍宮洞で回収していた「大禍魂」……そう、勾玉の形状は胎児を模した物という説がある。
八重垣いちこ: まさか、これが復元途中の人間だと言うのですか!?
御魂ふつ: むむむ、やはり生命体の再生復元にはタイムラグかエネルギーに差があるということか。これはもう少し検証が必要なようだね。さっそくエネルギー調達を頼まないと── br>御蔵ぼっこ: ほいほ~い! エネルギーね! たしかに承ったわさ!
ツッチー: ぼっこ!? いたのか、お前……!
御蔵ぼっこ: あら、お忘れ? 神出鬼没、招福万来がうちのウリなんだよ!
御魂ふつ: ひひひ、さっすが座敷童の本領発揮だね。 br>御蔵ぼっこ: ま、この依頼は大変だから店の方はしばらくお休みになりそうだけど、神宮にはその分も払ってもらうんだわさ!
ツッチー: こいつが幸運の女神ってわけか……なんとか成功することを祈るぜ。
八重垣いちこ: あらためて確認しますが、この計画がうまくいったとして……誰も私たちがしたことを覚えてはいません。存在にすら気付かないでしょう。
ツッチー: それで、本当にいいんだな?
八重垣いちこ: ……………ええ、今は。
御魂ふつ: 大いなる実験の結果を見届けられないのが、かな~り残念ではあるけどね。さ、ひとまずこの場に長居は無用だ。
ツッチー: ああ、ここで見たことを忘れる前に引き上げるとするか。そして新たな舞台、東へ!

取自“”
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