グルタチオン研究・治療(認知症・アルツハイマー)
他のすべての抗酸化物質は、グルタチオンがなければ十分な役割を果たせません。
そのため科学者はグルタチオンを「すべての抗酸化物質の母」と呼びます。
Jimmy Gutman博士
もくじ
1. グルタチオンを枯渇させる物質を避ける
グルタチオンレベルを高める努力の前に、まず可能な限りグルタチオンを消費してしまう要素を失くすこと。
以下の物質を完全に避けることはできないが、生活スタイルを変えることで暴露を最小限にすることができる。
- アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)、他の医薬品
- アセトン、溶剤、塗料除去剤
- 石油、石油製品
- 重金属
- (水銀(歯科用アマルガム、ワクチン、入れ墨)、鉛、カドミウム、銅など)
- 農薬、除草剤
- 栄養添加物、防腐剤 (サラミ、ホットドッグ、ハム、ボローニャ、スモークフードなど)
- 人工甘味料 (アスパルテーム)
- 合成の食品着色料
- ベンゾピレン類(タバコの煙、バーベキュー、燃料排気など)
- アルコール
- 家庭用化学品 (合成のお香、着色された洗剤、布用柔軟剤、空気清浄剤、モスボール、カビ除去剤、洗剤、漂白剤、芝生や植物の肥料など)
- 家庭用化学品 (鍋やフライパンのテフロンコーティング、プラスチック容器、スズ缶のライニング、その他の食品包装)
- ホルムアルデヒド、スチレン(複写機およびトナープリンタ)
- 上水道の塩素
- 医療用X線
- UV波
- 電磁界(EMF)(テレビ、ビデオ、無線LAN、電気機器)
- 産業汚染物質
2. グルタチオンを高める食品の摂取
食事はグルタチオン増強の土台
グルタチオンの代謝は複雑で、多くの因子や代謝経路と連動して産生される。
そのため、まずはサプリメントなどでの直接補給するよりも、食事バランスを整えて不足する栄養化合物を補充することが先決。
バランスのとれた食品は、体内グルタチオンを高めるための土台作りといえるだろう。
食事中によるグルタチオン増加の半分以上は果物と野菜に由来する。
肉からのグルタチオン供給は4分の1以下[R]
グルタチオンレベルを高める食品
- ブロッコリー
- カリフラワー
- 芽キャベツ
- アスパラガス
- パセリ
- ケール
- クレソン
シアノヒドロキシブテン
アブラナ科植物すべて
アブラナ科植物は単にシステインが豊富というだけでなく、1-シアノ-2-ヒドロキシ-3-ブテン(CHB)が含まれることで、還元型グルタチオンの上昇を大きく引き起こす。
グルタチオン濃度が2~7倍に上昇
ラットにシアノヒドロキシブテン(CHB)を200mg経口投与、還元型グルタチオンが2~7倍上昇[R]
グルタチオンが豊富な食品
- オレンジ
- りんご
- 洋なし
- アボガド
- トマト
- グレープフルーツ
- 人参
- だいこん
- ほうれん草
- カブ
含硫アミノ酸(システイン)を多く含む食品
- ホエイプロテイン
- 玉ねぎ
- にんにくくるみ
グルタチオン生成遺伝子を活性する食品
- 緑茶
- フィッシュオイル
- レスベラトロール
グルタチオンの材料であるメチオニンを摂るべきか?
メチオニン → システイン → グルタチオン という経路で、メチオニンはグルタチオンの材料ではあるものの、ホモシステインに変換され→アテローム性動脈硬化、認知症リスクにつながるため積極的に摂取する必要まではない。
調理・加工食品の制限
ジスルフィド結合が解けていないシステイン同士が結合されたシスチンがグルタチオン合成に理想だが、調理や加熱、消化酵素などで簡単に壊されてしまう。
消化管での破壊は仕方がないものの、加熱、加工は最小限にして食品を摂取したほうがよいかもしれない。
治療レベルのグルタチオン濃度には工夫が必要
一方で、ほとんどの食品にグルタチオン自体が含まれているが、そのほとんどのグルタチオンが消化管でアミノ酸に分解されてしまう。(これはサプリもだけど)
またグルタチオンレベルを一定レベルから治療域にまで高めようとする場合には、食事だけでは難しく、工夫が必要になってくる。
3. グルタチオンの材料であるアミノ酸の補充
グルタチオン サプリメント
一般的にグルタチオンを経口摂取しても、腸管でアミノ酸に分解されてしまいほとんど効果がないといわれている。
しかし2013年の研究では、健康な成人54人にグルタチオン1000mg/日を経口摂取してもらったところ、6ヶ月後に30~35%のグルタチオンレベルの増加が見られた。投与終了後一ヶ月後に元のレベル(ベースライン)に戻った。[R]
グルタチオンの長期的な経口補給に効果があるのは間違いなさそうだが、Nアセチルシステインと比べると、コストがかかってしまうという問題がある。
また、システインが血液脳関門を透過し脳へ届くのに対して、グルタチオンは輸送体を必要とするため、一定量しか脳へ到達しない。
なるべく空腹時に摂取
N-アセチル-システイン(NAC)
グルタチオン合成の最も重要な材料
グルタチオン合成のボトルネック(律速段階)のひとつがシステイン(もうひとつはグルタミン)
これは食品などに含まれるシステインが、消化器を通過して細胞にまで届くことがむずかしいためといわれている。
ただし高齢者、または肝臓に疾患があると、NACからのグルタチオンの合成能力が低下する。
短い維持期間
N-アセチル-システインで増加したグルタチオンレベルは急速にピークに達し、数時間で減少するため、グルタチオンレベルを一日中維持することは難しい。
反動に注意が必要
Nアセチルシステインで急激に増加したグルタチオンレベルは、後に正常レベルよりも低下することがある。
サプリメント
なるべく空腹時に摂取
ホエイプロテイン
ホエイプロテインにはグルタチオン材料となるシステインが豊富に含まれる
(血清アルブミン、アルファラクトアルブミン、ラクトフェリン、ベータラクトグロブリン)
グルタミン
システインに次いで二番目に重要なグルタチオン前駆体であり、もうひとつの律速段階。
研究ではグルタミンを経口投与すると、グルタチオン濃度を上昇させることがわかっている。
高齢者および腎臓および肝臓疾患の患者には慎重に用いること。
グリシン
前駆体であるシステインとグリシンの補給により、高齢者のグルタチオンレベルが若者の94.6%にまで高まる!
MSM(メチルスルフォニルメタン)
ストレス後の補給
グルタチオンの材料である含硫アミノ酸(メチオニン・システイン)
MSMはインビボで酸化ストレスに応じてグルタチオン合成が促進され、グルタチオン酵素活性をアップレギュレートする。
ヒトでの研究では、激しい運動をした後にMSMを補給することで、非常に高いグルタチオンレベルを示す。
4. グルタチオン合成を促進する補助因子の摂取
栄養素・ミネラル
セレニウム
グルタチオンの抗酸化作用の多くを媒介するグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)酵素活性が低下するとセレン欠乏の有害作用につながる。
マグネシウム
グルタチオンの合成に重要な酵素γグルタミルトランスペプチダーゼの機能に必要。
グリシニン酸マグネシウム
亜鉛
亜鉛欠乏症は、特に赤血球においていて濃度のグルタチオンをもたらす。しかし高レベルの亜鉛もグルタチオンを減少させる可能性がある。
バナジウム
特定の条件下でグルタチオンをリサイクルすることがある。しかし高レベルではその毒性によりグルタチオンを枯渇させるかもしれない。
αリポ酸
グルタチオン合成とリサイクルに必要
αリポ酸はL-システインをL-シスチン(2つのシステインがバインドされたシステイン分子)に代謝することでグルタチオン合成を増加させる。(グルタチオン合成の律速段階に必要な基質)
またαリポ酸はグルタチオンの酸化型であるGSSGをグルタチオンに還元することができる。
S-アデノシルメチオニン(SAM-e)
メチレーション機能を高めグルタチオン産生の遺伝子発現を調整。
おそらく経口では脳のグルタチオンを高めるもっとも効果的な方法と研究者に提案されている。
低いアルツハイマー病患者のSAM-e
脳内のS-アデノシルメチオニンレベルは、アルツハイマー病患者において著しく低下する。[R]
ポリアミン生合成が過剰活性により、SAMeが低下
臨床研究
ドイツで発表された研究ではSAMeの摂取により、グルタチオンレベルを50%、抗酸化グルタチオン活性を98%増加させた。フリーラジカルが46%低下、in vitroでは過酸化脂質を55%阻害。インスリン抵抗性を減らす。[R]
サプリメント
冷蔵保管、長期保管不可
保管に注意、要冷蔵 空腹時摂取 他のビタミンBと併用すること(B6、B12、葉酸)
ハーブ類
ミルクシスル
グルタチオンの過酸化脂質反応を防ぎ、そのレベルを維持する。
その他
NADPH
メラトニン
脳、肝臓、筋肉、血清組織等多くの組織においてグルタチオンを上昇させる。
5. メチレーション回路の促進
グルタチオン合成に必要なメチレーション回路を促進する栄養素
どれかひとつが欠けてもグルタチオンの産生代謝に障害が生じる。
- ビタミンB群 B6、B9、B12、ビオチン、活性葉酸
- セレン(セレニウム)
- ビタミンC、E
- ベタイン
- メチル化サポートサプリメント
6.ライフスタイルによるグルタチオン増強
運動
有酸素運動、サーキットウエイトトレーニング、それぞれ単独でも、組み合わせでも酸化ストレスが減少。(GHS:GSSG比の変化により酸化型グルタチオンが抑制)
有酸素運動とサーキットウエイトトレーニングを組み合わせが、もっともその効果が高かった。[R]
リラックス
瞑想、ヨガによってグルタチオンレベルが高まることが研究でわかっている。
ただし、ずっと持続するわけではないため、効果を得るためには毎日の実行が必要。
7. 吸収加工されたグルタチオン製剤の投与
リポソームグルタチオン
高い吸収率
リポソームグルタチオンは脂質の中に封入されているため、消化管で分解されず血中に潜り込むことができる。
脳へ到達するグルタチオン
また、リポソーム化されていないグルタチオンだとわずかな量しか脳関門を通過しないが、リポソーム化されたグルタチオンであればより高濃度のグルタチオンが脳関門を通過し脳へ届くことが動物実験で確かめられている。[R]
長期保存不可
リポソームは製造日から数ヶ月以内に分解するため、できるだけ新しい物が良い。
リポソームは通常大豆を使っているためGMO商品に注意する必要がある。
一日 250mg×2回 (一包を半分ずつ)
自作リポソームグルタチオン
リポソームグルタチオンは超音波洗浄を使った自作が可能。
自作リポソームサプリメント(ビタミンC・グルタチオン・トレハロース等)
S-アセチル-L-グルタチオン
S-アセチル-Lグルタチオンの学術的情報は限られている。S-アセチル-L-グルタチオンは、アセチル基の薬物動態からの理論的な予測効果であり、L-グルタチオンよりも良いグルタチオン補給材となる。[R]
還元型のグルタチオン経口摂取での吸収率が1~3%に対して、アセチル-L-グルタチオンの経口摂取は90%を超える!?アセチルグルタチオンは脳関門を通過する?
二次情報なので確証はないが、本当ならアセチルグルタチオンが経口では最も認知症に効果のあるフォームであり、かつ最もコストパフォーマンスが高いサプリメントとなる。
抗ウイルス効果・細胞内への移行性
S-アセチル-L-グルタチオンは血漿中で安定しており、細胞内への取り込みが容易で、in vitro,in vivoでグルタチオンよりも高い抗ウイルス(HSV-1)効果を示している。[R][R]
ヒトリンパ腫への効果
S-アセチルグルタチオン処置は、悪性細胞のアポトーシスを誘導したが、正常細胞の生存率および成長には有意な影響を与えなかった。in vitro[R]
リポソーマルグルタチオンよりも保存性がよく、飲みやすいというメリットがある。
1錠~
8. グルタチオンの直接投与(点滴・直腸・舌下・ネブライザー)
グルタチオン点滴
3型の多くの患者で、グルタチオン静注による改善例が報告されている。
医薬品製剤であるため、限られた病院、診療所、美容クリニックなどでしか投与できない。パーキンソン病の治療としては比較的知られた方法。半減期は短く非常に短く平均14分。
通常は自費診療による点滴 一回数千円~1万円 投与量は1000~2000mg
定期的に継続的に投与する必要があるため、かなり高額となる。ReCODEプロトコルの患者は週二回程度投与例が多い。
パーキンソン病患者 グルタチオン投与前と投与後
グルタチオン坐薬
理論的にはグルタチオンが、消化管内で消化酵素などで分解されずに吸収させることができる。
胃癌患者への化学療法前の補助療法としてグルタチオン坐薬を投与。[R]
グルタチオン坐薬 ※日本からのamazon usでの購入は不可
GlutaMax (Glutathione Suppositories 500mg) 30 day supply
※リンク先は未トライ商品
グルタチオンを混ぜてグルタチオン坐薬を作ってしまう猛者もいる!
その他、海外ではコーヒーエネマ時にグルタチオンを混ぜるなどが試みられている。
DIYグルタチオン坐薬は、心理的な障壁さえ取り払うことができれば、最も低コストで効率的な方法かもしれない。
グルタチオンの舌下吸収
手軽な方法、吸収率は経口で摂取するよりも高い。静注やエネマよりも劣る。
しかし量が多いと口腔内に潰瘍ができるリスクが生じるため、基本少量摂取に限定される。
N・アセチル・システインよりも舌下吸収によるグルタチオン摂取が、生体吸収率が高く、酸化ストレスを低下させるとの研究がある。[R][R]
グルタチオン点鼻スプレー
グルタチオン点鼻スプレー200mgを投与、中期パーキンソン病患者の脳グルタチオンレベルが、45分後240%増加。[R]
鼻腔内グルタチオン個人使用の安全調査[R]
グルタチオン ネブライザー
グルタチオン溶液をネブライザーで肺や鼻腔から取り入れる方法もある。
参考サイト