TRUMPは末満健一氏のライフワークである吸血種(ヴァンプ)にまつわる舞台シリーズです。
第1弾の『TRUMP』から始まり、2020年時点で『黒世界』が最新作です。

このサイトは個人的なひとり言を綴っただけのものですので、間違いや見解の相違等は色々あるかと思いますがご容赦ください。

もともとはシリーズを追っている内に、全体の相関図がないかなぁとネットで探しつつ自分で繋げていったのですが、折角つくったので公開してみることにしました。


まずは(なるべく)ネタバレ無しの概略から・・・
※公開順、再演等は除く。


TRUMP
 クラン(収容施設)での繭期の少年達の話。

LILIUM
 クランでの繭期の少女・少年達の話。

SPECTER
 とある村で起こった連続殺人事件の話。

グランギニョル
 繭期の少年少女失踪事件を追う話。

マリーゴールド
 とある母と娘の話。

COCOON 月の翳り
 クランで起こった事件の話。

COCOON 星ひとつ
 『月の翳り』の後のクランでの話。

黑世界
~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~
 リリーの彷徨の話。順番は『雨下の章』→『日和の章』の順がしっくり来ると思います。

概略からしてネタバレ無しが難しいので、殆ど書けません・・・




観劇順について

TRUMPシリーズは単発でも楽しめるようになっていますが、通して観ていくと人物(Vamp)関係がどんどん繋がっていくのが醍醐味ですね。
順番は、やはり公開順に観ていくのがいいかなと思います。
全部観るのが大変なら『TRUMP』とできれば『LILIUM』『SPECTER』は核になる物語なので観ておいた方がいいでしょう。
あとはお好みで。




ここから先は根幹に関わるネタバレが相当数出てきます。
これから観る方は、ネタバレを見てしまうと面白さが半減すると思いますので、ここでページを離れることを強くお勧めします。


既に繭期を拗らせている方は以降をご覧ください。


















【ネタバレ】相関図です。
シンプルにしたかったので色々省略しています。細かい説明も無しです。
出生→死亡も表現したかったのですが、配置の関係で断念しました・・・









シリーズも長くなってくると観たのが結構昔の作品もあったりします。
黒世界を機に、物語の時系列順に観直してみました。
記憶があやふやになってた所も繋がっていって別の楽しみ方ができました。


以下(おおむね)時系列順です。



TRUMP

ソフィ・アンダーソンが廃墟に現れるところから始まります。不老不死である事は冒頭で明かされ、いかにして不老不死になったのかが物語の核になると思います。

TRUMPシリーズは、前半はコミカル部分も含めながら進んでいって、後半からの怒涛の展開が持ち味ですよね。その中で「そうだったのか!」というポイントが待ち受けています。

『TRUMP』の「そうだったのか!」ポイントは勿論、アレンとメリーベルの話が100年前だった事でしょう。
(勘のいい方なら気づいたかも知れませんが)

なので時系列的には、『TRUMP』内の2つの時代の間に『SPECTER』や『グランギニョル』が入ることになります。(廃墟シーンを含めると時代は3つ)



SPECTER

ソフィ・アンダーソンの出生にまつわる話。
まずは臥萬里が登場するのですが、臥萬里は『TRUMP』で死んでいるので、その前の話なんだろうなと推定。
中盤には臥萬里の以前の名前がソフィであることが明かされます。(しかも奥さんの名前がリリー!)
そして終盤、ソフィの名前を貰おうとしていたノームが、ハリエットが産んだ子供にソフィと名付けます。
ここが『TRUMP』で臥萬里(ノーム)がソフィに馴れ馴れしかった理由ですね。

クラナッハが追い求めた「永遠に枯れない花」。後のソフィも同じように取り憑かれていきます。
しかも同じ方法(不死者の血液)を使って...



グランギニョル

ウル・デリコの出生にまつわる話。
なかなか人物関係が複雑です。
ウルがダンピールである事は『TRUMP』で分かっているので、スーが母親なのは分かるとして、父親が誰か?
結局、グランギニョル(残酷劇)の首謀者であるマルコ(ダミアン・コピーでもある)が父親なのですが、元の名前がこれまたウル。しかもマリア・フラとの間に不倫の子を作っている。そうすると、アンジェリコとウルは腹違いの兄弟!
次々に衝撃の事実が発覚していきますね。



COCOON 月の翳り

ラファエロ・デリコとアンジェリコ・フラが決裂する話。
『TRUMP』でこの二人は犬猿の仲として描かれているのですが『COCOON』の時点ではクランで再会した友達。そこから憎悪の対象へと変貌していきます。


COCOON 星ひとつ

物語の流れとしては『TRUMP』と同じで、ウル・デリコ視点寄り。(アレンの話は回想シーンになる)
ソフィがクラウスのいるクランに送られた理由などが加えられています。



マリーゴールド

『LILIUM』の前の話ですが、『LILIUM』を観ていないと理解しづらいかも知れません。
ダンピールの少女が出てきた時点で彼女がマリーゴールドだろうと思えるのですが、早々にガーベラという名前だと明かされます。そうするとマリーゴールドの出生の話なのか?
しかもウルまで出てきてさらに混乱します。
最終的にはガーベラがマリーゴールドという名前になってクランに向かうところで終幕。

ちなみに『グランギニョル』のキキはマリーゴールドの祖先でしょう。(未来を予言されている)
同じ女優が演じてるし...



二輪咲き

『LILIUM感謝祭』の演劇パートとして上演された短編舞台。
※一般発売されていなかったのでオークションで入手して観ました。
『LILIUM』ではシルベチカとキャメリアは恋人同士ですが、実は恋人だったのはシルベチカの別人格リコリスだったという話。



LILIUM

横たわるシルベチカが立ち上がってソロの歌から静かに幕開け。
物語は、クランからシルベチカがいなくなった事を中心にミステリーっぽく謎が深まる展開になります。
真相は、この疑似クランはファルス(実はソフィ・アンダーソン)が永遠の繭期を共に過ごす仲間が欲しかった為に作った「共同幻想ユートピア」だった。シルベチカはそれを拒絶し自ら命を絶つ。
クライマックスは、ファルスとリリーとの対峙で壮絶な殺戮へ。
そしてリリーは望んでもいない不老不死の体になってしまいます。

一度観終わった後に観返してみると冒頭のシーンはシルベチカが身を投げた場面だった事が分かります。
そう言えば舞台中央で横たわる姿は、『TRUMP』のアレンやソフィを彷彿させますね。



黒世界

不老不死となったリリーの彷徨をオムニバスにした音楽朗読劇。
末満健一の脚本と別の6人の脚本による12編の短編で構成されています。
短編で1話ずつ完結するのですが、数話は話が繋がっています。




音楽について

TRUMPシリーズの音楽を担当しているのが和田俊輔氏。
名曲ぞろいなのですが、その中でも重要な曲が「ライネス」。
クライマックスシーン(大抵は悲劇)で効果的に使われています。
(『TRUMP』では冒頭のソフィのダンスシーンでも流れます)
ライネスは「取り返しのつかない過ち」を犯すときに流れる曲だそうです。
「ハァーィ、ハァーーィー・・・」みたいに聞こえる歌声が流れてくると「来たぁ!」と思いますね。
聞いている分には歌詞がよく分からないですが「Wryness, slyness・・・」と続きます。
※「ライネス TRUMP」などで検索すれば出てくるので興味があればググってみてください。

『TRUMP』のキャストパレード「星の轍」の歌詞で「月の翳りが囁く・・・」とか
『LILIUM』のラスト前の曲「永遠の繭期の終わり」で「グランギニョルの幕は閉じる・・・」など
後の作品のタイトルになるフレーズが出てきたりして「おぉ!」となりました。
「星の轍」は『マリーゴールド』の中でウル(キャメリア)がスローテンポで歌うのですが、なかなか良いです。『黒世界』でのスロー「少女純潔」もじっくりと聞かせてくれます。

『LILIUM』と『マリーゴールド』は良い曲が豊富にあります。
オープニング「Forget-me-not」や、4人で歌い上げる「我は守護者なり」などがお気に入りです。




ウル

複数の作品で結構いろいろ出てくる「ウル」。整理しておきましょう。
まずは『TRUMP』で登場するウル・デリコ。(多分)ソフィの唯一の友達。
そのウルの実の父親の名前がウルで、母スーは産まれた子供に父と同じ名前を付けます。
(父ウルはダミアン・コピーとなって、さらにマルコに成り代わっています。)

ソフィは自分の血液を精製し、Vampに投与すると不老となる薬を作り出します。
(ただし不死には出来ない)
この薬を「ウル」と名付けます。

『マリーゴールド』でもウルが出てきますが、実際はキャメリアを「ウルごっこ」させていただけ。




イニシアチブの考察

物語で重要なキーとなることが多い「イニシアチブ」。
Vampが別のVampを噛むと、噛んだものと噛まれたものの間に主従関係が生じます。
何々をしろ、のような単純な命令から、記憶の改ざんも出来たりします。イニシアチブって凄い!

『グランギニョル』の中でイニシアチブの実験が行われています。
・空を飛べ、のように不可能な命令は実行されない。
・イニシアチブにより潜在能力を引き出すことができる。
・1人のVampを複数のVampがイニシアチブを掌握している状態で、
 相反する2つの命令が発行された際は、意思の強い命令が優先される。
 同じ命令を重複されると、その効力が増す。

ここで思い出すのが『LILIUM』でのソフィ(ファルス)とリリーの関係。
リリーは、ウル(薬:ソフィの血液)を摂取し続けたことによりソフィと同化します。
そのため、ソフィがイニシアチブを掌握していた他のVamp達を、リリーも操ることができます。
クライマックスで、ソフィよりもリリーのイニシアチブの方が強い事が描かれていますが、
ソフィはリリーを噛んでいるのに、なぜ同化したリリーの方が強いのか?
この理由は明示されていません。
想像するに
・リリー:純血、ソフィ:混血、の力の差?
・ソフィは血を抜いて常に貧血なので力が弱まっている?
と、いう所でしょうか。
また、リリーはソフィを跪かせていますが、ソフィのイニシアチブも掌握しているのか?も、気になりますね。(リリーは噛んでいないのにイニシアチブが取れる?)

『二輪咲き』のシルベチカの別人格であるリコリスにはイニシアチブの影響を受けず、シルベチカが消された記憶も持ち続けています。


イニシアチブは逆らう事ができるのか?
『マリーゴールド』や『グランギニョル』で、逆らおうとする場面は出てきます。
逆らい切れるかどうかは分かりませんが(アナベルは命令の途中で死亡)若干は余地があるようです。




TRUE と FALSE


TRUMPは、TRUe of vaMP で真なる吸血種。不老不死の体です。

ソフィは『LILIUM』でファルスと名乗ります。
『LILIUM』の登場人物は皆、花の名前なのでファルスも花(昼顔らしい)ではあるのですが、
TRUE に対する FALSE(まがいもの)の意味の方が強いのでしょう。
「僕はTRUEなんかじゃない!」と言っています。