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インタビュアー・今回ヤクザ映画に戻ってきたのはどういう理由なんですか。
北野武・ヤクザ映画しばらくやりたいなと思ってたんだけど、その前にヤクザ映画ばっかり撮ってると言われるのも嫌なんで、しばらく違う映画を撮ってたんだけど、あまり評判がよくなくて、前よりもいいヤクザ映画を撮れそうなんで撮った。
インタビュアー・今回のアウトレイジという映画なんですけど、ヤクザ映画の範囲というかジャンルの境界線を極端なところまで押し広げようとする意志が感じられたんですが、その見方はあってますか?
北野・暴力の使い方とかを極端にしたのは、よくいわれているヤクザ映画から飛び出そうとは相当思った。
インタビュアー・今回は一人の主人公に焦点を当てた物語ではなく群像劇という形になっているのが特徴だと思うんですけど、これはどういった狙いがあったんですか?
北野・自分が主役でやることはよくある映画になる可能性があるんで、自分は傍役で、他のメンバーでいかに構成できるかで台本を作っていったんで、誰か主役だか傍役だかわからないような出番にした。あとで撮影が始まったらあまりにも自分の出番が少ないんで増やした。
インタビュアー・監督はご自身の演出される作品で主演されるっていうのはどういうところが気に入ってますか?
北野・他にうまい人がいることは間違いないんだけど、もしその映画が当たった場合、自分が損すると思った(笑)
インタビュアー・非常に印象的なシーンで歯医者のシーンがあるんですけど、監督は歯医者に行くのは嫌いですか?
北野・あのシーンは自分が歯医者に通っていて思いついたんで、あれは痛いと思う。
インタビュアー・バイオレンスというテーマをとりあげることに魅力を感じているのは?
北野・男と女を取り上げるのも暴力もエンターテイメントのひとつだと思ってて、自分は恋愛映画よりも暴力のほうがうまいかなぁというだけで。
インタビュアー・アウトレイジの中で描かれるヤクザ社会の中で服従であるとか、支配であったり、裏切りがテーマとして大きく扱われていると思うんですが、これはヤクザ社会に特有のものというより日本社会に共通するものとして切り取ったものなんでしょうか?
北野・ヤクザの親分子分の関係というのは封建制、戦国時代のやり方であって、その流れは日本の企業の中でそういう部分を利用して成り立っているというのはかなりあると思う。
インタビュアー・今作で描かれるヤクザはお互い敬意を欠いています、また外交官も馬鹿にした扱いです。日本文化特有のリスペクトというものがない描き方、それは意識して描かれたのですか?
北野・外交官の問題は日本の裏社会ではわりかし有名というか常識で、その人たちを利用して悪いことをしているというのは日本の犯罪組織でよくある話。自分はそういうことを壊し始めた時代が始まっているなぁと、リスペクトがなくなった時代になった。
インタビュアー・敬意の欠如というのは広く一般の日本社会に広がっていると感じてアウトレイジで描いたのでしょうか?
北野・今かなりアジア的な、儒教的な思想というのがなくなってきて、最近よく起こる事件は子供が実の母親父親を殺す事件がやたら目についてきた。親の権威とか尊敬されることがなくなってきた。かなりひどい時代になってきたなぁということ。
インタビュアー・今回アウトレイジでもうひとつ特徴的なことはセリフの多さだと思うんですけど、今までの北野作品というのは寡黙な登場人物が多かったんですけど、今回は全員が全員しゃべり倒すというか、どういうところを意識してこういう形にしたんですか?
北野・自分は出身がスタンダップ・コメディアンなんだけども、それも二人でやるやつで、セリフのかけ合いが自分の売れた原因。それだから映画ではセリフを言わぬように意識して作ったんだけど、だいぶセリフのないのを作ったので、今度はセリフをじゃんじゃんしゃべる映画にしようと。
インタビュアー・今でも映画を作るという作業を楽しんでますか?
北野武・半分半分(笑)
インタビュアー・メルシボク、キタノ。