議員殺害に衝撃、5年で2人目=「住民対話」見直し論も―英
【10月17日 時事通信社】英南東部で15日起きた下院議員刺殺で、警察は事件をテロと断定して捜査を進めている。報道によると、容疑者の男(25)はソマリア系英国人とされ、イスラム過激主義との関連も疑われる。英国では2016年にも女性議員が殺害されており、5年間で2人の議員が犠牲となったことに国内で衝撃が広がっている。
刺殺されたのは与党・保守党のエイメス議員(69)。地元選挙区の教会で有権者と対話していたところ、入ってきた男に刃物で複数回刺され、数時間後に死亡した。事件の衝撃は大きく、各紙は「民主主義への攻撃」などとトップ扱いで報道。教会周辺には住民が持ち寄った花束やカードが多数置かれ、ジョンソン首相は16日、パテル内相らと共に現場で献花し、哀悼の意を表した。
報道によれば、男は数年前、将来の過激化が疑われる人物に対処するための警察の特設部門に照会されたことがある。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中にネットなどを通じて過激化した可能性も指摘される。ただ、当局のテロ監視リストの対象には入っていなかったもようだ。
エイメス議員殺害は、16年に野党・労働党の女性下院議員が極右思想の影響を受けた男に殺された事件をほうふつとさせた。こうしたことから「議員の身の安全」をどう守るかが重要課題に改めて浮上。英議員は週末に地元で住民との対話の機会を設けることが多いが、事件を受けて「直接対話の見直し」を求める声も政界の一部で上がっている。パテル内相は「議員が威圧されてはならない」と早急な見直しを否定する一方、議員が地元で活動する際の警備体制を再検討するよう全国の警察に指示した。(c)時事通信社