難易度の高い森鴎外「舞姫」からの読み問題。「心が荒む」の「荒む」はなんと読むの?

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★日本語★
問題:森鴎外の短編小説「舞姫(まいひめ)」をご存じかと思います*1。役所から国民の税金で留学させてもらっているにもかかわらず毛唐の女と懇(ねんご)ろになり、露見して身分を失うも友人の支援で立ち直るというハッピーエンドの話でしたね。若干違っていたかな*2。
■舞姫はダンサーを意味するらしい。「舞姫」は近代文学史上の2大ダンサー小説のうちのひとつといわれます。もう一編は言わずと知れた川端康成の「伊豆の踊子」です。
■冗談はともかく、舞姫は文語で書かれていますので少し読みにくい。現代語訳も出ているのですが、こちらは少し感じが出ません。
■本日は「舞姫」の中で使われている漢字の読み問題です。訓読みのものばかりを集めてみました。次の漢字は何と読むでしょうか?
[い]「掩う」
[ろ]「濺ぐ」
[は]「荒む」
[に]「漲る」
[ほ]「聳える」
(答えはずっと下↓ スクロールして下さい)



























★日本語★
正解:各項目を参照してください
説明:[い]「掩う」はおお(う)と読む
■「おおう」は、たくさんの漢字があてられています。「大辞泉」では、「覆う/被う/蔽う/蓋う/掩う」と5種類が掲載されていました。「覆う」以外はあまり見かけません。「棺(ひつぎ)を蓋う」という言葉はたまに目にするかな。棺桶に蓋をすることだそうです。「棺を蓋うて事定まる」という慣用句があるようです。死んで初めてその人の価値が確定するといった意味でしょうか。
□「掩」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「エン、おおう、かくす、とる」という字音・字訓があります。「掩護(エンゴ)」という熟語をつくります。「守る」という意味らしい。「掩護射撃をする」などと使われます。「援護射撃」とおなじ意味です。
□「舞姫」の中では、「掩う」は次のように使われていました。「…この青く清らにて物問ひたげに愁を含める目の、半ば露を宿せる長き睫毛に掩はれたるは、何故に一顧したるのみにて、用心深き我心の底までは徹したるか」。主人公が一目惚れした美少女エリスの目は、長いまつ毛に掩われていたようです。視界の邪魔ではなかったのかしらん。
[ろ]「濺ぐ」はそそ(ぐ)と読む

■「そそぐ」にもたくさんの漢字があてられています。「大辞泉」では、「注ぐ/灌ぐ、雪ぐ/濯ぐ」の4種類があげられていました。「濺ぐ」は掲載がありませんでした。
□「注ぐ」と「灌ぐ」は、「水をかける」とか「流し入れる」、「涙を流す」といった意味があります。「雪ぐ」と「濯ぐ」は「すすぐ」とも読むらしい。「汚れを水で洗い落とす。水で清める」といった意味があります。「汚名を雪ぐ」は、汚れてしまった名前を真実を明らかにすることで清めるという意味でしょうかね。
□「濺ぐ」は、「そそぎかけて濡らす」ことだそうです。常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば、「セン、そそぐ」という字音・字訓があります。
□「舞姫」の中では、「濺ぐ」は次のように使われていました。「エリスが生ける屍(しかばね)を抱きて千行(ちすじ)の涙を濺ぎしは幾度(いくたび)ぞ」。美少女が狂ってしまったあとの愁嘆場ですね。
[は]「荒む」はすさ(む)と読む

■「すさむ」は、「心の持ち方・行動などが乱れてきて、ゆとりやおおらかさがなくなる。とげとげした状態になる」という意味だそうです。「粗雑になる」といった意味もあります。
□「荒」という漢字は、常用漢字表では「コウ、あら(い)、あ(れる)、あ(らす)」という音読み・訓読みがありました。漢和辞書「字通」によれば、「コウ、あれる、すさむ」という字音・字訓があります。
□「舞姫」の中では、次のように使われていました。「我學問は荒みぬ」。2段落続けてこの短い文を先頭に置いています。学問が荒むというのはどんな状態でしょうかね。粗雑になるという意味かな。身が入らなくなるという意味かな。
[に]「漲る」はみなぎ(る)と読む
■「漲る」は、「水が満ちて、あふれるほど勢いが盛んになるさま」だそうです。力や感情などの様子を描写する際にも用います。「学習意欲が漲る」なんて使われます。
□「漲」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「チョウ、みなぎる」という字音・字訓があります。熟語はたくさんつくるようですが、現代頻繁に使われる言葉はありませんでした。
□「舞姫」の中では、次のように使われていました。「…晴れたる空に夕立の音を聞かせて漲り落つる噴井の水…」。噴井は噴水の意味らしい。
[ほ]「聳える」はそび(える)と読む
■「聳える」は、「山などが非常に高く立つ。そそりたつ」という意味だそうです。最近では高層ビルとかスカイツリーを表現する際によく使われます。
□「聳」という漢字は、常用漢字表には掲載がありません。漢和辞典「字通」によれば「ショウ、そびえる」という字音・字訓があります。よく使われる熟語はありません。
□「舞姫」の中では、次のように使われていました。「…雲に聳ゆる樓閣(ロウカク、高層の建物)の少しとぎれたる處(ところ)には…」。
◆参考*1:HP「図書カード:舞姫」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/card2078.html
◇*2HP「舞姫 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%9E%E5%A7%AB
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞泉
◇Yahoo! J Dictionaries 大辞林
◇辞書「字通」白川静、平凡社

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2011年09月27日 08:12
やくみつるさんが、だれの本だったが忘れましたが、文語体の分厚い本を毎日寝る前に声に出して読んでいるそうで、わからない漢字を辞書で探すので一日に進むのが数ページで、2年たってもまだ読み終えてないとか。
クイズ番組で難しい漢字を読んだり書いたりするのは、そのせいかと関心しましたが、本人はボケ防止とか言って照れてました。
ねこのひげ様<素町人
2011年09月27日 20:41
コメントをありがとうございます。

 たしかに辭書を引くという行為はボケ防止になりそうですね。それもPCで検索するのではなく、ちゃんと紙の辞書をめくるのがいいらしい。

 わかってはいるのですが、ついつい面倒臭くて、「大辞泉」も「字通」もみんなデジタル方式のものを使ってしまいます。
(^^;)

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