期日偽装契約書を作成か 沼津・淡島ホテル 詐欺破産の疑いで逮捕の社長ら5人

2021.9.24

 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現・AWH)」の破産手続きに関し、同社の財産を債権者の不利益になるように処分したとして沼津署と静岡県警捜査2課に破産法違反(詐欺破産)の疑いで逮捕されたAWHの親会社の社長ら5人が、AWHの借地権の移転日を偽装した契約書を作成していたことが、23日までの関係者への取材で分かった。同署などは5人が正当な手続きを装い、借地権が没収されることを免れようとしていたとみて調べを進める。

22日、破産法違反容疑で運営会社社長が逮捕された「あわしまマリンパーク」。多くの人がイルカショーを見ようと待機した=23日午後、沼津市内
22日、破産法違反容疑で運営会社社長が逮捕された「あわしまマリンパーク」。多くの人がイルカショーを見ようと待機した=23日午後、沼津市内

 関係者によると、契約書は私文書で、AWH、グループ会社の淡島マリンパーク、地権者の3者で交わされたという。債権者から破産手続きの申し立てが行われた2019年7月3日より前の日付を記載。申し立て時には既に借地権がAWHから淡島マリンパークに移転していたかのように偽装したとみられる。県警は契約書など関係資料を押収したという。
 逮捕されたのは、AWH親会社の保証事業会社「オーロラ」(名古屋市)の社長(52)=東京都港区六本木6丁目=、AWH社長(61)=函南町平井=、淡島マリンパーク社長(48)=神奈川県横須賀市鴨居2丁目=ら5人。
 5人の逮捕容疑は共謀して19年10月上旬ごろ、AWHの破産手続きに関し、同社が地権者から借り受けていた借地権について日付をさかのぼって解約するとともに、無償で淡島マリンパークに移転させ、AWHの財産を債権者らの不利益になるように処分した疑い。
 AWHは19年12月20日、静岡地裁沼津支部から破産手続きの開始決定を受けた。

 ■「経営に不透明さ」 地元観光関係者ら指摘も
 淡島ホテルの旧運営会社を巡る事件で、会社役員ら5人が破産法違反(詐欺破産)容疑で逮捕されてから一夜明けた23日、地元の観光関係者は「破産手続きの開始決定前後から経営の不透明さを感じていた」と指摘した。一方で、県外にも知られたホテルだけに「健全な経営に変わって」と求める観光関係者や関連施設の利用者もいた。
 オーロラ傘下の別会社が運営している同ホテルと「あわしまマリンパーク」は23日、通常通り営業し、同パークは多くの観光客でにぎわった。運営するグッドリゾートの担当者は「現在、事実関係を確認中で弁護士を入れて話を進めている。運営に与える影響は一切ない」とした。
 同ホテルは高級リゾートホテルとして1991年に開業したが「最近は景気のよい話は聞かなかった」と近隣に住む男性(33)は語る。地元経済人の間では「AWHの経営実態がつかみにくくなり、新たな取引をためらう傾向にあった」との声も聞かれる。
 ただ、同ホテルは近年、人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」の登場人物の実家が経営するホテルのモデルになったことでファンの宿泊も増えていた。熊本県から訪れた男子大学生(21)は「(同アニメの)『聖地』として残ってほしい」と願った。
 沼津市内の観光関係者の1人は「全室スイートルームで富士山が見え、インバウンドにも対応できるホテル。健全な経営に変わって地元の観光を率いてほしい」と話した。

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