レバノン、混乱に拍車=組閣断念、政府不在11カ月
【7月16日 時事通信社】レバノンで昨年10月に新首相に指名され組閣を目指していたハリリ元首相が15日、組閣を断念した。レバノンでは昨年8月に首都ベイルートで200人以上が死亡する大爆発が発生。ディアブ内閣が責任を取り総辞職したが、その後も11カ月にわたり正式な政府が発足できない異常な状況が続く。政治空白に加え経済の混乱と社会不安も増し、「破綻国家」に陥る危機を迎えている。
ハリリ氏は14日にアウン大統領に各宗派の均衡などを考慮した24人の閣僚名簿を提出。両氏は15日に再び会談したが、ハリリ氏は「重要だと考える人選で修正を求められた。合意が無理なのは明白だ」と語った。
18の宗派が混在する「モザイク国家」のレバノンでは権力配分が事前に決められ、慣例として首相はイスラム教スンニ派から選ばれる。しかし、宗派対立や各勢力の駆け引きが常に激しく、政権発足までの紆余(うよ)曲折は珍しくない。大爆発後にはアディブ駐ドイツ大使が首相指名されたが、組閣難航で約1カ月後に辞退。このため、いったんは辞任したディアブ氏が暫定首相を務めている。
レバノンは昨年3月にデフォルト(債務不履行)を宣言。新型コロナウイルス禍や大規模爆発の被害もあり、通貨の対ドルレートは約1500ポンドから約2万ポンドに暴落した。燃料や電力が不足し、輸入に頼る食料や医薬品なども欠乏が慢性化。ベイルート在住の活動家ルラ・タレジさんは「複数の災禍が同時に襲う『パーフェクトストーム』だ」と憤る。
旧宗主国フランスや米国は迅速な改革や組閣を支援実行の条件にしている。しかし、政治腐敗が深刻で、国際社会の要請に応じる見通しは立っていない。(c)時事通信社