飢餓状態で金属を猛烈に食べるバクテリア
チリは、世界の銅生産量の実に30%以上を占める産出国であり、銅生産はGDP(国内総生産)の15%を占める重要な事業です。
今回の研究を行ったのは、そんなチリで微生物を使った金属廃棄物処理の研究を行うバイオテクノロジー企業「Rudanac Biotec社」のCEOにして研究者のナダック・レアレス氏です。
彼女はもともと、鉱山における銅の抽出を微生物を使って改善する研究をしていました。
しかし、チリで問題となる金属廃棄物の汚染問題に対応するため、金属廃棄物を微生物によって処分する研究をはじめたのです。
彼女は標高4200mのタティオ間欠泉からバクテリアを採取し、これを使って実験をはじめました。
このバクテリアは「レプトスピリウム(Leptospirillum)」と呼ばれる鉄酸化細菌です。
このバクテリアは、金属濃度が高くても影響を受けないような酸性の環境で生きています。
そのため、金属の分解能力はもっていても、その欲求は旺盛ではなく、最初は釘を分解するのに2カ月もかかったといいます。
しかし、飢餓状態になった場合は、彼らはその環境に適応して自分自身を養う方法を見つけなければならなくなります。
レアレス氏は、2年間の試行錯誤の結果、バクテリアを飢餓状態にすることで、金属を食べるスピードを格段に上げることに成功し、わずか3日で釘を食べ尽くしてしまうように改良したのです。
それだけでも驚きの成果ではありますが、このバクテリアの生成物は、さらに意外な副産物も生み出したのです。