選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について
「選択的夫婦別氏制度」とは?
選択的夫婦別氏
現在の民法のもとでは,結婚に際して,男性又は女性のいずれか一方が,必ず氏を改めなければなりません。そして,現実には,男性の氏を選び,女性が氏を改める例が圧倒的多数です。ところが,女性の社会進出等に伴い,改氏による社会的な不便・不利益を指摘されてきたことなどを背景に,選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見があります。
法務省としては,選択的夫婦別氏制度の導入は,婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので,国民の理解のもとに進められるべきものと考えています。
検討経過等
2 夫婦の氏に関する問題については,これまでも政府が策定した男女共同参画基本計画に盛り込まれてきましたが,令和2年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画(新たなウィンドウが開き,内閣府男女共同参画局のホームページへリンクします。)においても,夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し,国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら,司法の判断も踏まえ,更なる検討を進めることとされています。
世論調査の結果
・選択的夫婦別氏制度に関する調査結果の推移(総数比較)[PDF]
・平成29年調査結果(性別)[PDF]
・平成29年調査結果(年代別)[PDF]
・平成29年調査結果(性・年代別)[PDF]
・平成29年調査結果(きょうだいの有無別)[PDF]
・平成29年調査結果(未・既婚別)[PDF]
・平成29年調査結果(子どもの有無別)[PDF]
世論調査の結果について,もっと詳しくお知りになりたい方は,内閣府大臣官房政府広報室の家族の法制に関する世論調査のページ(新たなウィンドウが開きます。)をご覧ください。
よくある質問
Q3 選択的夫婦別氏制度と例外的夫婦別氏制度は,どこが違うのですか。
Q4 なぜ,選択的夫婦別氏制度の導入を希望する人がいるのですか。
Q5 夫婦が必ず同じ氏を名乗ることになったのは,いつからですか。
Q6 選択的夫婦別氏制度が導入された場合,別氏夫婦と同氏夫婦では,どのような点が違ってくるのですか。
Q7 別氏夫婦は,婚姻届を出していない事実上の夫婦とは違うのですか。
Q8 別氏夫婦を認めたときの子どもの氏は,どうなるのですか。
Q9 別氏夫婦の子どもは,いったん決まった氏を変更することはできないのですか。
Q10 選択的夫婦別氏制度が導入される前に結婚した夫婦は,別氏夫婦になることができないのでしょうか。
A 現在は,男女が結婚するときは,全ての夫婦は必ず同じ氏(「姓」や「名字」のことを法律上は「氏」と呼んでいます。以下同じ。)を名乗らなければならないことになっています。選択的夫婦別氏制度とは,このような夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度に加えて,希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることも認めるというものです。
もちろん,選択的な制度ですから,全ての夫婦が別々の氏を名乗らなければならないわけではありません。これまでどおり夫婦が同じ氏を名乗りたい場合には同じ氏を名乗ることもできますし,夫婦が別々の氏を名乗ることを希望した場合には別々の氏を名乗ることもできるようにしようという制度です。
A 例外的夫婦別氏制度とは,夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度を原則としつつ,例外的に夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることも認めるという考え方です。このような考え方に基づいて制度を考える場合,様々なタイプのものが考えられますが,例えば,(1)夫婦同氏制度を定める現行民法の規定を本文とし,夫婦別氏制度をただし書の形式とすることで,原則と例外の関係を明らかにするとともに,(2)例外である別氏夫婦から原則である同氏夫婦への転換のみを認める制度とすることが考えられます。
A 選択的夫婦別氏制度では,同氏夫婦と別氏夫婦についてどちらが原則であるかということは明示しておらず,両者を対等なものと位置付けていました。
これに対し,例外的夫婦別氏制度とは,夫婦は同氏が原則であり,別氏となるのは夫婦の氏の在り方としては例外であるという考え方ですから,この点で選択的夫婦別氏制度と異なることになります。
このような考え方は,夫婦が同氏であるという原則は,今日に至るまで多数の国民の支持を得てきた制度であるという点を重視するとともに,新たに制度が導入された場合であっても,別氏を選ぶ夫婦は少数であると考えられることを踏まえたものと思われます。
なお,一口に例外的夫婦別氏制度といっても様々なタイプのものが考えられるということは,Q2において述べたとおりです。
A 夫婦が必ず同じ氏を名乗ることとしている現在の夫婦同氏制度の下では,夫婦の一方は結婚のときに必ず氏を変えなければならないことになります。
ところが,結婚のときに夫婦の一方が必ず氏を変えなければならないことによって,(1)代々受け継がれてきた氏を大切にしたいという感情を持つ人が増えていることから,一人っ子同士の結婚のような場合に,氏を変えることが事実上結婚の障害となったり,(2)結婚に際して氏を変えることによって,本人の同一性が確認できなくなり,職業生活上不利益を被るといった事態などが生じています。
そこで,夫婦の双方が氏を変えることなく結婚することができるようにする選択的夫婦別氏制度の導入を希望する人がいるのです。
A 夫婦が同じ氏を名乗るという慣行が定着したのは,明治時代からだといわれています。明治31年に施行された戦前の民法では,戸主と家族は家の氏を名乗ることとされた結果,夫婦は同じ氏を称するという制度が採用されました。明治時代より前は,そもそも庶民には氏を名乗ることは許されていませんでした。第二次世界大戦後の昭和22年に施行された民法では,「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」とされました。これが,現在の制度です。
A 別氏夫婦と同氏夫婦とは,夫婦が同じ氏を名乗っているか,別々の氏を名乗っているかという点が違うだけで,その他の点では両方の夫婦に違いはありません。
もちろん,夫婦間の権利義務や子どもに対する親の責任や義務についても,別氏夫婦と同氏夫婦とで異なるところはありません。
A 別氏夫婦も,同氏夫婦と同じように婚姻届を出している法律上の夫婦であって,婚姻届を出していない事実上の夫婦とは違います。
現在の夫婦同氏制度の下では,夫婦は必ず同じ氏を名乗らなければなりませんので,夫婦で別々の氏を名乗りたい場合には,婚姻届を出して法律上の夫婦となることができません。
しかし,選択的夫婦別氏制度が導入された場合には,法律上夫婦が別々の氏を名乗ることも認められますから,別々の氏を名乗りたい夫婦も婚姻届を出して法律上の夫婦(別氏夫婦)となることができるようになります。
A いろいろな考え方がありますが,平成8年の法制審議会の答申では,婚姻の際に,あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており,子どもが複数いるときは,子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。
A 平成8年の法制審議会の答申では,別氏夫婦の未成年の子どもが両親の婚姻中に自分の氏を両親のいずれか一方の氏に変更するためには,特別の事情の存在と家庭裁判所の許可が必要とされています。また,子どもが成年に達した後は,特別の事情がなくても,家庭裁判所の許可を得れば氏を変更することができるとされています。
A 平成8年の法制審議会の答申では,制度導入前に結婚した同氏夫婦は,一定期間内に戸籍法の定める手続に従って届け出る等の要件を満たすことによって,別氏夫婦になることができるとされています。
ちなみに,この問題は,新しい制度が設けられる場合に経過措置をどのように考えるかという問題ですから,選択的夫婦別氏制度という考え方を採るかどうかという問題とは直接の関係はありません。