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episode4「重力の井戸の底で」
発売:2011年12月2日 脚本:むとうやすゆき 監督:古橋一浩 絵コンテ:古橋一浩/玄馬宣彦 演出:菱田正和./錦田慎也/京極尚彦 総作画監督:高橋久美子/玄馬宣彦


 メインタイトル『機動戦士ガンダムUC』


 メガラニカ 氷室
サイアム 「うむ……あぁ……」
ニュースキャスター 「ダカール・プレスセンターから、ニュース速報をお送りします」

 ダカール市街 ジムⅡ/ジムⅢ
《ジム部隊》《ネモ部隊》
 VS
《ジュアッグ》《カプール》
ジムⅢパイロット 「くるぞォ!」
ジムⅡパイロット
(通信)
「融合炉の停止を確認。誘爆なし!」
ジムⅢパイロット 「ハァ……ハァ……」
ジムⅡパイロット
(通信)
「高熱源反応、くる!」
ジムⅢパイロット 「ぬぉっ!?」

 ラー・カイラム ブリッジ
ブライト(通信) 「発進遅いぞ! 何やってる」
ブリッジ要員
(通信)
「状況知らせ!」
ブライト 「まさか、首都に攻撃を仕掛けてくるとはな……」

 シャンブロ
ロニ 「この時を、待っていた……」
「お父様、お母様……! ―――お前たちが、悪いんだ……!」
カークス(通信) 「ロニ。敵の増援が来る。もう充分だ!」
「陽動は成功した。あとはガランシェール隊からの連絡を待つ」
ロニ 「……了解」

 氷室
サイアム 「始まってしまったのだな……。早く収束させねば……」
ガエル 「は……。しかしながら、『ラプラスの箱』の鍵であるユニコーンは、旧首相官邸を消失させた先立っての交戦で消息不明。依然――」
「しかし、カーディアス様が選んだ者ならば……」
サイアム 「神の悪戯……いや、あやつの――人の祈りが為さしめたことか……」
「バナージ……我が血を引く者よ……」


 サブタイトル episode4「重力の井戸の底で」


 アメリカ南部 リムジン内
アナウンサー 「シャアの反乱以来、3年の間沈黙を守っていたジオン残党。突然のこのテロは、果たして彼らによる蜂起なのか。第三次ネオ・ジオン戦争の始まりを告げるものとする識者の声もあり、世界に不安が広がっています」
ブライト 「まったく。こんな時に、何故こんなところへ呼びつけられるものか……」
アナウンサー 「地球連邦政府の首都ダカールを襲撃――」


 マーセナス邸/オーガスタ研
ローナン 「言いがかりですな」
「3年前のラサとは違い、今度のダカールでは政府関係者にも多くの犠牲が出ているのです。……確かに、詮無い泥の掛け合いだ。ここはお互いにとって、より建設的な話をお願いしたい。ミズ・マーサ」
マーサ 「……では、手短に」
「あなたが保護している要人を、こちらに引き渡してください」
ローナン 「えっ――。何のお話だか」
マーサ 「それがお互いのため、御身のためです。ローナン・マーセナス議長」
ローナン(電話) 「……こちらはともかく、あなた方にとってのメリットは?」
マーサ 「ご想像にお任せします。搬送先は――」
ローナン 「……2時間後に、もう一度ご連絡いただきたい。火急の懸案があるもので」
マーサ 「……いいでしょう」
マーサ(独り言) 「詳しく訊いてみたいものだわ。ザビ家の遺児の処遇にまさる、議長の懸案というものをね」

 マーセナス邸 応接室
リディ 「…………」
「ご迷惑をお掛けしているんでしょうけど……。でも、彼女は――」
ローナン 「惚れたんだろう」
リディ 「……!」
ローナン 「そのために、軍を脱走してここへ逃げ込んで……。パイロットになりたいと言って家を飛び出したときと同じだ。まさか、お前が『箱』に関わっていようとはな……。お前は、マーセナス家の――真実を知らなければならない。こうなった以上、お前が生き延びる道は、他にない」
「……我らに、救いを。我らに――」

 マーセナス邸 部屋
アナウンサー 「現在、軍事・消防が、全力を挙げて――」
ミネバ 「私、どうしたら……。バナージ……」
「――無礼な! ……リディ」
リディ 「すまない……」
ミネバ 「……どうしたのです」
リディ 「情けない家だと、知った……」
「この家は……マーセナス家は、ビスト財団と合わせ鏡の存在だ……。そうすることで、この宇宙世紀を生きながらえてきた」
ミネバ 「…………」
リディ 「『ラプラスの箱』の流出を阻止するためならば、きっと手段を選ばない。君をまた人質にすることだって……! そうさせないためには、財団やネオ・ジオンより先に『箱』を手に入れるしかない。あるいは、その鍵を……」
ミネバ 「……壊すの? ユニコーンを」
リディ 「くッ……!」
「おれは、とんでもないところに君を連れてきてしまった……。君の力に、なれると思ったのに……! 何があっても君だけは守る。だからここにいてくれ。おれのそばに……おれを、独りにしないで――」
ミネバ 「…………」
.
リディ(回想) 「君……うちの人間になってくれないか。ジオンもザビ家も捨てて、マーセナス家の人間になるんだ。そうすりゃ親父だって…….。形だけでもいい、そうすれば、この不毛な争いは終わり、君も自由を手にすることができる」
ミネバ 「そんな自由、自由と呼べると思って……?」
 マーセナス邸 応接室
ローナン 「……すべて了解した」



 ニュータイプ研究所
マリーダ 「くッ……!」
マーサ 「プルトゥエルブ。貴女の名前でしょ? 返事をなさい」
マリーダ 「うっ……」
マーサ 「マスターの指示には従うものよ?」
マリーダ 「……あなたは私のマスターではない。従わせたいなら、再調整でも拷問でもしてみることだ」
アルベルト 「き、君ィ……。口のききかたに――」
マーサ 「あなたの再調整は難しいということがわかったわ。あまりにも完成されすぎている。でも、それでいい……。簡単に記憶を入れ替えられる人間に興味は無いから。私が欲しいのは……」
マリーダ 「ぁ……あぁ……!」
マーサ 「量産型キュベレイ。あなたたちの乗っていたマシーンね」
「人工的に作られたニュータイプ。マスターの言いなりに動く人形――」
「あなたの魂はまだ、あのマシーンの中に囚われている……」
アルベルト 「…………」
マーサ 「血を流すことしか知らない男が、戦う道具としてあなたを造った。命は女の胎(はら)から生み落とされるものなのに、不自然だと思わない?」
「私があのマシーンから、あなたを連れ出してあげる……」
マリーダ 「ハァ……ハァ……! ハァ……! ハァ……!
イヤァァァアア!! アアァァ!! アァァ!!」
アルベルト 「……!!」


 マーセナス邸 応接室
ローナン 「10日ほど前に地球に降下した、"袖付き"の偽装貨物船だ」
ブライト 「……ラプラスの史跡が破壊されたという話は聞いています。……その犯人というわけですか」
ローナン 「君の艦で見つけだしてもらいたい」
ブライト 「……つまり、ラー・カイラムを私的に使いたいとおっしゃる」
ローナン 「この船はインダストリアル7やパラオの事件にも関わっている。ロンド・ベル指令としては、ネェル・アーガマの安否も気になるところじゃないか? いまは、地球軌道上で足止めを食っている。参謀本部を介したビスト財団の差し金だ」
ブライト 「…………」
ローナン 「人質をとっていると思われたくないから、先に手の内を明かした。彼ら財団もこの船を追っている。我々が先に確保すれば優位に立てる」
ブライト 「……この船がなんであると?」
ローナン 「『ラプラスの箱』……そう呼ばれているものを、その船は積んでいる。確保するか、できない場合は破壊してもらいたい」
ブライト 「買いかぶられては困ります。たまたま本流から外れた道を歩いてきただけで、私は――」
ローナン 「一年戦争以来、ガンダムタイプの母艦の艦長を歴任していれば、ニュータイプ部隊の指揮官と目されても不思議はない」
ブライト 「自分の星回りは認めますが……」
ローナン 「才能を率直に示しすぎれば振り回されるというひとつの事例だよ」
「……それともうひとつ、君に頼みたい。軍でパイロットをやっている、不肖の息子がいる。彼を君の艦に――どうした?」
ドワイヨン 「失礼します!」
ローナン 「なんだドワイヨン。話が終わるまではと――むっ?」
ドワイヨン 「ミネバ様がお部屋から姿を消されました。いま付近を探索しております」



 砂漠(昼) ガランシェール横
フラスト 「すんません。俺が言えた義理じゃないですが、横っ腹を突き破ってモビルスーツを出す以外に手は……」
ジンネマン 「それは最後の手段だな。ガランシェールもお釈迦になる」
フラスト 「しかし、早いとこ味方と連絡をつけないと、敵に見つかっちまいます。陽動が成功したらしいとはいっても――」
ジンネマン 「よりによってダカールを狙うとはな」
フラスト 「気持ちはわかります。地球でくすぶってるのは、二度のネオ・ジオン戦争で一旗上げそこねた連中ばかりですからね」
ジンネマン 「このまま俺たちが音信不通になったら、次はどんな派手をやらかすかわからん、か?」
フラスト 「――東へ60キロほどいったところにオアシスがあります。モビルスーツでひとっ飛びして、そこから味方と連絡をとりましょう。ここは船をつぶしても――」
ジンネマン 「……慌てたところで、ユニコーンが動かないんじゃどうにもならん」
フラスト 「あの小僧をコックピットに縛りつけて、機体を運ぶって手もありますが、ラプラス・プログラムが示した次の座標が、とびきり面倒な場所ときてる……」
ジンネマン 「地図をよこせ」

 ガランシェール 備品庫
フラスト 「ったく、どういうんだか。なんでまたよりによって、お前なんか連れて! てめえッ! ユニコーンのパイロットだからって、自分だけは殺されないなんて思うなよ!?」
バナージ 「……そんなこと、思ってませ――」
フラスト 「くッ!」
バナージ 「うっ! かはッ……!」
「ハァ……ハァ……おれのせいだって、わかってます。おれがギルボアさんを――」
フラスト 「ああそうだ! 大気圏突入のさなかにユニコーンがしがみついてきても、奴ならちゃんと着陸させたろうさ!」
「……けッ!」


 ダイナー(夜)
老主人 「おごりだ、飲みな」
「いい食いっぷりだ。若い娘さんにしちゃあ、気取りがなくていい」
ミネバ 「……ぁ、ありがとうございます。いただきます」
老主人 「ここいらじゃ見かけないが、どこから来なすった?」
ミネバ 「……(上を指差す)」
老主人 「……スペースノイドか。そりゃぁ見かけんわけだ」
「観光かい? このあたりじゃ見るものもないだろうに」
ミネバ 「いえ。宇宙暮らしの身には、地面に足をつけているだけで嬉しいものです」
老主人 「わしらのような者には、この重力が疎ましくなることもある。宇宙へいけば、腰の痛みもとれるんじゃないかってな」
ミネバ 「……ずっと、地球に住んでおられるのですか?」
老主人 「ああ。いまさら離れられんよ」
「……わしらの世代は、爺さん婆さんから昔の惨状を聞かされて育っとる。そりゃぁ酷いもんだったらしい。それをなんとかしたくて、人は連邦政府を作り、宇宙移民ってやつを始めた。貧乏人だけが無理やり宇宙へ棄てられた、って言うやつもいるが、望んで出ていった連中も大勢いた。地球の自然が元に戻るまで、もう帰らないと覚悟してな。それも、一年戦争でほとんど元の木阿弥になっちまったが……」
ミネバ 「……救われませんね」
老主人 「……まぁしょうがない。すべて善意から始まっていることだ」
ミネバ 「善意?」
老主人 「連邦も移民も、もとは人類を救いたいって善意から始まってる。会社を儲けさせたり、家族の暮らしを良くしたいと願うのと同じで――」
ミネバ 「でもそれは、ともすればエゴと呼ぶべきものになります」
老主人 「そうかも知れんがね……。それを否定してしまったら、この世は闇だよ」
「自分を殺して全体のために働ける奴ってのもいるんだろうが、それはそれで胡散臭い。ネオ・ジオンのシャアとかな……。すべて人のためだと言いながら、隕石落としをやる……。本当は、人間を好きになったことがない男だったんじゃないかな」
ミネバ 「では、どうすれば――」
老主人 「さあなぁ。わしらには、そいつがわからなかった。努力はしたつもりだが、結局はツケを先送りにしただけで、あんたたちに何もしてやれんことを悔いながら生きている。わしには、そのコーヒーを淹れてやるだけが精一杯だ……」
「――んんっ?」
ミネバ 「……そうか。そうですね……。私に、やれること……」
「美味しいコーヒーでした。このコーヒーを飲めただけでも、地球に来た価値はあったと思います」
黒服 「オードリー・バーン様。ローナン議長がお待ちです。ご同道を」
老主人 「あんた……!」
ミネバ 「ミネバ・ザビである! 逃げ隠れするつもりはない。道を開けよ」
老主人 「…………」

 オーガスタ研
アルベルト 「…………」
「……!」
マーサ 「ミネバ・ザビをこちらへ移送させました。ユニコーンを奪い返すための餌になってもらいます。彼女も従うでしょう」
アルベルト 「……はっ」
マーサ 「命令はあなたから伝えるといいわ」
アルベルト 「ぁ、はい……」
「…………」



 アフリカ南部 砂漠(夜)
バナージ 「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
バナージ(回想) 「……なんで、おれなんです」
ジンネマン(回想) 「お前が一番暇そうだからだ」
バナージ(回想) 「無理ですよ、砂漠を4日も歩くなんて」
ジンネマン(回想) 「やりようはある」
バナージ 「…………。ぁ、うぁっ!」
ジンネマン 「バカが。のどが渇いてなくても、定期的に水を飲めと教えただろ」
バナージ 「置いていってください……」
ジンネマン 「頑張れとでも言ってほしいのか」
バナージ 「だから放っておいてください。もう嫌なんです、何かに関わったり利用されるの――」
ジンネマン 「そうはいかん。お前はパイロットだ。被害者根性でふて腐れるのはやめろ。墜とされたギルボアも浮かばれん」
バナージ 「……! こ、殺したかったわけじゃないッ! ダグザさんが死んで、頭の中が真っ白になって……。それが許せないっていうなら、ひと思いに――」
ジンネマン 「嘘だな」
バナージ 「……!」
ジンネマン 「お前の目は、そんなこと納得しちゃいない。自分の生き死には自分で決めるって奴の目だ。なら死ぬまでやせ我慢してみせろ。男の一生は、死ぬまで戦いだ……」
カーディアス
(回想)
「力を尽くせば、道はおのずと開ける――」
ダグザ(回想) 「お前はお前の役割を果たせ――」
バナージ 「やりました……。やったんですよ! 必死に! その結果がこれなんですよ! モビルスーツに乗って、殺し合いをして、今はこうして砂漠を歩いてる! これ以上なにをどうしろって言うんです! 何と戦えって言うんですか!」
「……くッ! ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
.
フラスト(回想) 「俺たちは、このアフリカで捕虜になった――」
「収容所じゃあ、協定もへったくれもない扱いを受けたが、そんなことはいい。ジオンはジオン。連邦にしてみりゃ、俺たちはコロニー落としをやった悪魔だ。お偉いさんたちが平和の話し合いを進める一方で、本国へ進駐してきた連邦の兵隊どもは、不満を溜め込んでいった。鬼畜ジオンは殺せ、女を抱きたきゃジオンで手に入れろ、って教えられてきた連中だ。鎮めるためには、生け贄が必要だった……」
「そしてある晩。ひとつの町が、突然押し寄せた兵隊どもに蹂躙された。命乞いをする年寄りも、泣いてすがる子供も、ひとり残らず殺された……。表向きは暴動を起こした住民を鎮圧したってことで片付けられたが……それがガス抜きだったことは、誰の目にも明らかだった」
「町の名はグローブ。そこに俺の親父とお袋がいた。キャプテンの家族……嫁さんと、まだ5歳になったばかりの娘さんも……」
「ジオンの再興で何が救われるって話でもないし、『箱』の中身が何だろうと知ったことじゃねえ。ただ……世界を呪って野垂れ死ぬか、終わらない戦いを続けるか。俺たちは、そのどちらかを選ぶしかなかった……」
 アフリカ南部 砂漠(夜)
ジンネマン 「……なんで泣く」
バナージ 「あんまり、綺麗で……」
ジンネマン 「地球が汚染されてるなんて話が、嘘に思えてくるな……。だが、ここいらの空も昔より汚れている。砂漠も、もうダカールの喉元まで迫っているらしい」
「すべて人間のやったことだ。乱開発に、コロニー落としや隕石落とし。人が自然から生まれた生き物なら、人が出すゴミや毒も、自然の産物ってことになる。このまま人間が棲めなくなっても、それはそれで、自然がバランスをとった結果ということなんだろう。自然に慈悲なんてものはない。昔の人間は、そいつを知っていた。ほかならぬ、自然の産物の本能としてな」
バナージ 「……だから、生きるために文明を作り、社会を作って身を守った……」
ジンネマン 「ああ。だがそいつが複雑になりすぎて、いつの間にか人は、そのシステムを維持するために生きなきゃならなくなった。挙げ句、生きることを難しくしちまって、その本末転倒から脱するために、宇宙へ新天地を求めた」
「そこでまた別のシステムってやつができあがった。宇宙に棄てられた者、スペースノイドに希望を与え、生きる指針を示すための必然。それがジオンだ。地球に残った古い体制はそいつを否定した。出自の違うシステム同士が相容れることはないからな。どちらかがどちらかを屈服させようとするだけだ」
バナージ 「……でも、連邦っていう統一政府があって、宇宙に百億の人が住んでいる世界なんて、きっと昔は夢物語でしたよね。そういう可能性も、人にはあるんじゃないですか……? ふたつの考え方が、いつかひとつになることだって――」
ジンネマン 「みんなが平等に束ねられたわけじゃない。はじかれて潰された連中の怨念は、いまでもこの地球にへばりついている」
バナージ 「哀しいことです、それは……」
ジンネマン 「……ああ、哀しいな。哀しくなくするために生きているはずなのに、なんでだろうな……」
バナージ 「……うぅッ」
ジンネマン 「……ん?」
バナージ 「……(すすり泣き)」
ジンネマン 「バナージ――」
バナージ 「わかってますよ。男が人前で泣くもんじゃないっていうんでしょう……」
ジンネマン 「……いや。人を想って流す涙は別だ。何があっても泣かないなんて奴を、俺は信用しない」
バナージ 「……(声を上げて泣く)」



 砂漠(昼) ガランシェール横
ジンネマン 「バナージ。……礼を言う」
バナージ 「えっ」
ジンネマン 「お前がいなかったら、俺も途中でへばっていたかも知れん」
バナージ 「そんな……おれは足を引っ張っただけで……」
ジンネマン 「意地を張り合う相手がいるってだけで違うもんさ」
フラスト 「またガランシェール隊に新メンバーですかい? キャプテンの悪いクセだ」
ジンネマン 「…………」
フラスト 「よーし! そこでストップ!」
ジンネマン 「上出来だ」
バナージ 「……キャプテン」
ジンネマン 「ん?」
バナージ 「おれ……『箱』をより良く使う方法を考えろって、ある人に言われたんです。もしかしたら……それがおれの……」
「どこなんです? ユニコーンが示した次の座標って」

 ガランシェール ブリッジ
フロンタル(通信) 「今度はトリントンか。次々と面倒な場所を指定してくれるものだ。カーディアス・ビストにかつがれているのではないかと、思いたくもなる」
「ダカールではご苦労だった、カークス少佐。君たち地球のジオン残存軍が目を引いてくれたお陰で、ガランシェールを守ることができた。感謝している」
カークス 「はっ、こちらこそ。ゼー・ズールは、多大なる戦力となりました」
フロンタル(通信) 「……君が、ロニ・ガーベイ少尉か」
ロニ 「…………」
フロンタル(通信) 「お父上のことは知っている。ハマーンの遺産を、よく完成させてくれた」
ロニ 「……大佐! 私の生は、父と母、その同胞たちの魂の無念を晴らすためにあります」
カークス 「ロニッ」
ロニ 「私たちに、トリントン攻撃の任を与えて戴きたいのです」
カークス 「……!」
ロニ 「角割れのガンダムをそこにおろせば、『ラプラスの箱』の所在がわかるのでありましょう?」
フロンタル(通信) 「私は、宇宙に拠点を置くネオ・ジオンを預かっている身だ。一年戦争以来、地球でゲリラ活動を続けてきた君たちに命令する権利はない」
ロニ 「では、止める権利もないと理解してよろしいんですね」
フロンタル(通信) 「マハディの遺志を継ぐ者に、加護あれと――」
ロニ 「ジーク・ジオン!」
カークス 「…………」
.
ジンネマン 「……大佐、よろしいのですか。ダカールのことといい、これでは――」
フロンタル(通信) 「キャプテンの危惧はわかる。だが、彼らはずっと待っていたのだ。止まった時の中で……」
「人は待つことにも慣れてしまう。そのまま待ち続けることも出来ただろう。だが、時は流れ始めた。カーディアス・ビストの手によって。放っておけばそれは、千々に乱れた濁流となる。そう思わないか、キャプテン?」
「そうさせないために、ガランシェールにもうひと働きしてもらいたい」
.
バナージ 「お願いします」
クルーA 「あいよっ」
ロニ 「……あなたが角割れのパイロット」
バナージ 「えっ」
ロニ 「『箱』の鍵ね」
バナージ 「……鍵?」
ロニ 「期待しているわ」
バナージ 「……?」
クルーB 「あれがダカールでデカブツを動かしてたんだとよ」
クルーC 「てぇしたもんだねぇ……」
(ほか、クルーたちのざわめき)



 ニューギニア密林 ジオン残党アジト
ジオン残党通信士 「カークス隊より入電!」
上官 「ダカールを襲ったやつらか」
ジオン残党通信士 「こいつは……旧公国軍の暗号です。第三次降下作戦……一年戦争で、最初の部隊が地球に降りたときの符牒だ……!」
上官 「なんと言っている?」
ジオン残党通信士 「連邦に、一泡吹かせる……? 協力されたし! ダカールは前哨である!」
上官 「……むんッ(拳を叩く)」

 世界各地
続々と現れるジオン旧MS部隊、ファット・アンクル部隊
ざわめく鳥たち、吠える犬。

 連邦潜水艦ボーンフィッシュ ブリッジ
《アクアジム》
 VS
《ゼー・ズール部隊》
 ブリッジ要員A 「ドルフィン2、信号途絶!」
艦長 「被害を報告しろ!」
ブリッジ要員A 「ソナー、爆音の沈静化待ち!」
ブリッジ要員B 「水害関係、異常なし!」
ブリッジ要員C 「動力、数値正常!」
ブリッジ要員A 「ドルフィン1、所属不明モビルスーツ2機と依然交戦中!」
艦長 「予備の機体は出せるか!?」
ブリッジ要員C 「注水完了まで、あと3分!」


 ガランシェール MSデッキ
トムラ 「味方が基地を制圧したら座標地点にこいつをおろして、次の情報開示を待つんだそうだ。アイバンが、護衛につくとよ」
「……どうした、バナージ?」
バナージ 「妙なんですよね。連邦のモビルスーツに、ジオンの武器がフィットするって……」
トムラ 「そりゃあ、どっちもユニバーサル仕様の規格を採用しているからな」
バナージ 「そういう部分では協調できるのに、何で戦争はやめられないんです?」
トムラ 「戦争やってるうちに、そういう部分だけこなれていったんだよ。効率がいいってな」
バナージ 「アナハイム社の都合ってことですか」
トムラ 「現場の都合でもある。現にいま、助かってるだろ?」


 ラー・カイラムに着艦するデルタプラス
リディ 「あれか……」
ダリル 「おぉ……!」
ナイジェル 「いい腕だ」

 ラー・カイラム 艦長室
ブライト 「本艦は、ニューギニアに進路をとる。連邦艦隊潜水艦・ボーンフィッシュが、コーラル海で消息を絶った。現場海域の様子から、撃沈された可能性が高い。問題の偽装貨物船と関係しているなら、会敵即戦闘ということもありうる」
「『ラプラスの箱』の確保が最優先とのことだが、そんな余裕はないかも知れん。気を引き締めてかかれ」
リディ 「はっ!」
「……ブライト艦長!」
ブライト 「なんだ?」
リディ 「自分を……特別扱いすることは、やめていただきたいのです。出自がどうであれ、自分は連邦宇宙軍のパイロットです! 危険な任務から外すようなことは――」
ブライト 「甘ったれるな!」
リディ 「……!」
ブライト 「その発想自体、貴様が自分で自分を特別扱いしている証拠だ。もとより貴様が何者だろうと、特別扱いするつもりはない。必要なら働いてもらう。……だが、出撃したら、必ず帰ってこい。それができたら、お前を当たり前のパイロットと認めてやる」
リディ 「……はっ」
(通信音)
ブライト 「……俺だ。つなげ」
「ブライトです。……なんですって!?」

 ガランシェール ブリッジ
フラスト 「なぜそこなんでしょうねぇ」
ジンネマン 「コロニーを落とした場所……。カーディアス・ビストめ、俺たちに人の破滅の足跡を見せようとでもしているのか……」
フラスト 「あの小僧なら大丈夫ですよ」
ジンネマン 「……だがあの機体で本気で歯向かわれたら、抑えようがない」
フラスト 「今のあいつは、キャプテンを信じきってます」
 ユニコーン
バナージ(心の声) 「……ロニさん」


 シドニー新湾沿岸地域 湾岸基地
《アクア・ジム》《ジムⅡ部隊》
 VS
《カプール》《ゼー・ズール》
《ゾゴック》《ザク・マリナー》
 同・沖合い
《シャンブロ》
 VS
《対潜空母ヒマラヤ》
《アクア・ジム部隊》
 トリントン基地
監視員 「海岸から巨大モビルアーマー接近! トリントン基地、応援を請う!」
《ガンキャノン・ディテクター部隊》《ガンタンクⅡ》
 VS
《イフリート・シュナイド》《ガルスK》《ザク・キャノン》
《ザクⅡ》《マラサイ部隊》

 シャンブロ/ザクⅠスナイパー
カークス 「ラセット! キャンドル! 散開しろ、次がくる! ロニ! 街は避けるんだ!」
ロニ 「遠回りする必要などありません。連邦にされたことを忘れたのですか」
カークス 「無用な犠牲を出す。冷静になれ!」
ロニ 「……了解。うッ……!?」
カークス 「どうしたロニ!?」
ロニ 「……お父様?」
.
カークス 「サイコミュの暴走……血を求めているとでもいうのか……?」

 ユニコーン
バナージ 「こんな……これじゃあ、虐殺じゃないか!」

 ラー・カイラム ブリッジ
ブライト 「シャアの後裔を自認する連中のやることとは思えんな……。数は!?」
女性オペレーター 「小型輸送機が4機と、中型のV-TOL船が上空にいるようです」
ブライト 「それが例の偽装貨物船……などという幸運、あると思うか?」
女性オペレーター 「敵の中継回線を受信しました!」
ブライト 「ダカールを襲った奴か」
「全艦、第二種警戒配備。モビルスーツ隊をスタンバらせろ!」
「……こいつらも『箱』に関係しているのか……?」


 デルタプラス/ジェスタ
リディ 「オードリー……君もおれも、生まれた家の呪縛から逃れることは、できないんだな……。ならばこれも悪あがきか」
ワッツ(通信) 「おい新入り!」
リディ 「……!」
ワッツ(通信) 「足を引っ張りやがるようなら、後ろからでも撃つ! 覚えとくんだな」
リディ 「いいチームですね。おれも入りたかった」
ナイジェル 「いつでも入れる。俺たち3人の誰かを、後ろから撃てばいい」
リディ(通信) 「覚えておきます」
ナイジェル 「パイロットは、上が阿呆でも信じて戦うだけのことだ。その点、俺たちはついてる。直属の上司にだけは恵まれたからな」
リディ 「ガンダム部隊の指揮官……。ガンダム……『箱』の鍵……」

 トリントン基地
ジオン残党兵 「まとめて片付けるッ!」
《ジムⅡ》《ガンキャノン・ディテクター》
 VS
《ドム・トローペン》《ドワッジ》《デザート・ザク》
 ガランシェール ブリッジ
バナージ 「何をやっているんですッ! ……ユニコーンを出します。ラプラス・プログラムの封印が解ければ、こんなことを続ける理由はなくなるんでしょう!?」
ジンネマン 「駄目だ。いま出れば対空砲にさらされる。掃除が終わるまで待て」
バナージ 「掃除って……関係ない人がたくさん死んでるんですよ! いいんですか!?」
ジンネマン 「作戦だ。いいも悪いもない」
バナージ 「……!」
ジンネマン 「行くな。……縛り上げて連れてきた覚えはない。こんなはずじゃなかったと思うのはお前の想像力不足だ。敵地を制圧するというのはこういうことだ」
バナージ 「関係ない場所を撃って、逃げる人を踏み潰して……」
「こんなの戦争ですらない。ただの怨念返しですよ! キャプテンはあの時、インダストリアル7でおれを撃たなかった。こんなこと、平気じゃないはずです!」
「やめさせてください。これが戦争だって言うなら、なんでおれを砂漠に連れ出したんです! なんでマリーダさんを助けたんです! あの人があなたをマスターと呼ぶのは、強化人間だからじゃない。おれがそうだったように、キャプテンに心を救われたから――」
ジンネマン 「黙れ!」
バナージ 「ぐはぁッ!」
ジンネマン 「お前を気にかけたのは『箱』の鍵だからだ。なびかせておいた方が都合がいいと思っただけだ」
「こんなのは戦争じゃないと言ったな、目を開けてよく見てみろ! こんなことが起こるのが戦争だ。主義も名誉も尊厳も無い! 殺す奴がいて殺される奴がいるだけのことだ。怨念返しの何が悪い! 俺たちの戦争はまだ終わっちゃいないんだ!」
バナージ 「そんなの……ジオンの町を焼いた連邦軍と同じ理屈じゃないですかッ!」
「ぐはッ!」
 トリントン基地
《バイアラン・カスタム》
 VS
《ズゴック》《ゼー・ズール》《ザク・マリナー》《カプール》
ズゴックパイロット 「グリーンス、いま往くッ!」
 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「ぬぉッ!?」
バナージ 「哀しいから……哀しくなくするために人は生きているんだって、あんたはそう言った!」
ジンネマン 「ぐぉあっ!」
「このガキ――」
バナージ 「あんただってわかってるんだ! こんなことしたって、何も報われないってことを!」
ジンネマン 「なんにも知らない小僧がぁッ!」
バナージ 「ぐぁッ! ――かは……ッ!」
ジンネマン 「俺は……俺たちはこの時をずっと待っていたんだ。今すぐ降りて手伝いたいくらいだよ!」
バナージ 「だからって……自分が地獄を見たからって、他人にそれを押し付けていいってことは――」
ジンネマン 「えええぇい!」
バナージ 「ぐはッ!くッ……」
ジンネマン 「その減らず口をやめないと、本当に――ぐッ!?」
バナージ 「……! ……! (叫びながら足蹴にする)」
ジンネマン 「こいつをなんとかしろアレク! フラスト!」
フラスト 「すんませんが、いま手が離せないんで。ご自分でなんとかしてください」
ジンネマン 「お前たち……ぐほぉッ!」
バナージ 「ハァ……ハァ……わからない……。おれには、わかりませんよ……」
「でも……わからないからって、哀しいことが多すぎるからって、感じる心を、止めてしまっては駄目なんだ。おれは……人の哀しさ……哀しいと感じる心があるんだってことを、忘れたくない! それを受け止められる人間になりたいんです! ……キャプテンと同じように!」
 トリントン基地
《バイアラン・カスタム》
 VS
《ゾゴック》《カプール》《ゼー・ズール部隊》
 ガランシェール MSデッキ
トムラ 「……バナージ?」
バナージ(通信) 「トムラさん、ユニコーンガンダムを出してください」
トムラ 「待機じゃないのかっ?」
 トリントン基地
《バイアラン・カスタム》
 VS
《デザート・ゲルググ》《マラサイ》《ザク・キャノン》《ドワッジ》
 シャンブロ
カークス(通信) 「ロニ、やめろ! 東側から出て、基地へ向かうんだ!」
 ユニコーン/ガランシェール ブリッジ
トムラ(通信) 「いいんですか!? いまおろしたら、狙い撃ちされますよ!」
フラスト 「…………」
ジンネマン 「…………」
フラスト(通信) 「"かまわん、小僧の好きにさせろ"……ですね、キャプテン?」
ジンネマン(通信) 「…………ふんッ」
バナージ 「キャプテン、ガランシェールの皆さん、お世話になりました」
「バナージ・リンクス、ユニコーンガンダム、いきます!」
トムラ 「パージ!」
バナージ 「おれは『箱』の鍵じゃない、人間だ」
「そしておまえは、人の力を増幅するマシーンなんだ。おまえはそのために作られた。人の心を、哀しさを感じる心を知る人間のために。だから、怒りに呑まれるな……!」




 シャンブロ/ザクⅠスナイパー
ロニ 「角割れ!? まだ早いぞ、ガランシェール! ……何ッ!?」
「あの子が裏切ったというの……?」
バナージ(通信) 「『箱』の封印が解かれる! あなたたちは引け!」
ロニ 「『箱』の鍵がなぜ邪魔をする!」
 トリントン上空
《バイアラン・カスタム》
 VS
《マラサイ》
 シャンブロ/ザクⅠスナイパー
ロニ(通信) 「カークス……!」
カークス(通信) 「ロニ、どうしたっ」
ロニ(通信) 「角割れが私を攻撃してきた……!」
カークス 「どういうことだ……んっ?」
カークス(通信) 「退き時だ、ロニ!」
ロニ 「私たちはずっと回り道をしてきた……邪魔をすれば踏み潰すッ!」
カークス 「まずいな……」
 空中
ワッツ(通信) 「おいおい、動く戦争博物館かよ!」
ダリル(通信) 「よくもまぁ、あんな機体で」
ナイジェル(通信) 「だからこそ気を抜くな。あんな執念は俺たちにはない」
 デルタプラス
バナージ(通信) 「なぜこんなことをするんです!」
ロニ(通信) 「そのために生きてきたからだ!」
リディ 「……!? バナージか!」


 シャンブロ/ユニコーン/デルタプラス
ロニ 「お前たちには感謝しているよ。ガランシェールが砂漠に落ちてくれたお陰で――」
ロニ(通信) 「積年の怨みを晴らすことができる」
バナージ 「……!」
ロニ 「もう手遅れだ。私を止めればすべてが本当に無意味になる」
「……道を開けろ! そして早く角割れになるがいい!」
リディ 「無駄なことを……!」
バナージ 「やめるんだ……。こんなことを繰り返していたら、心が壊れて人間ではなくなってしまう!」
ロニ(通信) 「黙れッ!」
「父も母も、ジオンの残党狩りで死んだ! 投降を許されず、殺されたんだ! なぶり殺しだ! 父の遺志を継ぐためだけに生きて、私はいまここにいる! 『箱』など開かずともいい。そんなことで晴れるほど、浅い怨みではないのだ! そこをどけえぇ――!」
バナージ 「ぐぁッ! くッ……!」
リディ(通信) 「バナージ!」
バナージ(通信) 「リディ少尉、あれを止めないと街が……!」
リディ 「ああ、だがあのパイロットに何を言っても無駄だ。破壊するしかない」
バナージ 「力ずくでは何も解決しません! ……彼女は囚われているだけなんです、本心じゃない! 止めてみせます!」
リディ 「……そうさ、囚われているんだよ。決して解けない血の呪縛にな……!」
.
バナージ(通信) 「聞いてくれ、ロニさん」
バナージ 「これは本当に君がしたいことなのか? 本当の君はそれでいいのか!」
バナージ(通信) 「……ロニさん!」
ロニ 「だって私には、もう、こうするしか……ほかに生きる意味なんて……無い」
バナージ(通信) 「見つけるんだ。憎しみや怒りが生きる意味なんて哀しすぎる」
ロニ 「理不尽には怒るのが人間だ。人は神じゃない!」
バナージ(通信) 「それでも……! 止めなきゃ駄目なんだ……!」
ロニ 「……!」
リディ 「……! 正気かバナージッ!」
「止まった……? くッ……!」
ロニ 「お父様、お母様……。私には……」

 ザクⅠスナイパー
カークス 「援護する! 撤退しろっ! く……」
「くっそう!」
 空中
ワッツ(通信) 「ぬぉわっ!? ぐっ!」
ダリル(通信) 「ワッツ!」
ナイジェル(通信) 「気を抜くなと言った!」
 ザクⅠスナイパー/ジェスタ
カークス 「残弾1か……」
「せえええぇい!!」
ダリル 「……こいつ!」
カークス 「ロニ……お前はぁッ! 俺たちのようにはっ……! なるなぁぁ!!」

 シャンブロ/ユニコーン/デルタプラス
ロニ 「ぐッ……! ぐはっ……!」
バナージ 「…………?」
ロニ 「カークスを殺ったのか……。連邦がまた奪った……私を守ってくれた人を! 最後の家族を!」
バナージ 「ロニさん!」
ロニ 「私の居場所はもう……ここだけだッ!」
リディ 「抗えないのさ……現実にはっ!」
バナージ 「おれは……おれは彼女を止めたい。止めなきゃならないんだ。ガンダム! おれに力を貸せ!」
【《ユニコーン》 NT-D発動】
 ラー・カイラム ブリッジ
ブライト 「ガンダム……」
 ジェスタ
ワッツ 「隊長、あれは!?」
ナイジェル 「ああ……」
 トリントン基地管理室
(ざわつくクルーたち)
 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「…………」




 シャンブロ/ユニコーン/デルタプラス
ロニ 「ぐッ! くっ……どけぇッ!」
リディ 「バナージ、何してる! 撃て!」
ロニ 「邪魔をするなぁぁー!」
「思い知れ、思い知れ、思い知れえぇ――! ……ッ!?」
バナージ(感応) 「この淀んだ黒い感覚……こんなものに染まっていくことに、意味なんか無いよ……」
ロニ 「……! うッ……ゲボぇッ!」
バナージ 「うッ! ぐっ……。呑まれては駄目だ、ロニさん!」
ロニ(感応) 「子供が親の願いに呑まれるのは、世のさだめなんだよバナージ……私は間違っていないッ!」
バナージ 「それは願いなんかじゃない、呪いだ!」
ロニ 「同じだ! 託されたことを為す、それが親に血肉を与えられた子の……血の役目なんだよッ! お前のその力も、親の与えたものだろうに!」
バナージ 「……!」
ロニ 「これは……! 私の戦争なんだァ――!」
リディ 「乗れ、バナージ!」
「うっ……! あの反射板の反応速度を超える必要がある。ビームマグナムは!?」
バナージ 「残弾1です!」
リディ(通信) 「一発勝負だな」
バナージ 「リディさん!?」
リディ 「やるんだ! ……街を守るには、それしかない!」
バナージ 「…………」
リディ(通信) 「迂回して正面から突っ込む! すれ違いざまに分かれて同時攻撃! 一点突破だ!」
.
ロニ 「ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……」
ロニ(通信) 「ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……!」
ロニ 「ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……」
バナージ 「ロニさん! 戻ってくれえ!」
リディ 「あきらめろ!」
ロニ 「ジーク・ジオン……ジーク・ジオン……!」
「ジーク・ジオン!!」
カークス(魂) 「ロニ……俺たちの戦争は終わったよ……」
ロニ 「ぁ……あぁ……ぁ……」
バナージ 「ロニさん――」
リディ(通信) 「バナージ!」
リディ 「このまま撃て!」
ロニ 「…………」
リディ 「可能性に殺されるぞッ!」
リディ(通信) 「そんなものッ」
リディ 「棄てちまえ!」
バナージ 「うわああぁぁぁ!」
 シャンブロ
ロニ(感応) 「バナージ……」
「…………哀しいね」
 ユニコーン
バナージ 「撃てません!!」



 ラー・カイラム ブリッジ
女性オペレーター 「巨大モビルアーマー、動き止まりました。他のジオン残党モビルスーツも掃討された模様。トリントン基地の被害を確認します」
ブライト 「……その前に、R008(ロメオ・エイト)に連絡を」
 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「フラスト……この空域から離脱だ」

 ユニコーン/デルタプラス
リディ(通信) 「……降りろ、バナージ」
「そのガンダムには捕獲命令が出ている。降りて機体を渡せ」
バナージ(通信) 「リディ少尉……」
リディ(心の声) 「お前さえいなければ、こんなことにはならなかったんだ……」
リディ 「……んっ?」
バナージ 「……ぁ」
リディ 「ぁ……黒い……!」
バナージ 「ユニコーン……!?」


 エンドロール 主題歌:B-Bird







 

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