バブル崩壊以降、日本経済全体が縮小過程に入り、「失われた10年(20年)」などと言われているのはみなさんご存知のとおりです。低迷に陥っているのは、別に出版業界だけじゃありません。というかもっと急激な縮小を経験している業界は、たくさんあります。
市場規模の変化をビジュアルに表示する「市場規模トレンド」で、建設業を調べると、以下のように、一時はピークの半分近くまで落ち込んでいることがわかります。
この場合の「音楽産業」には、電子配信、カラオケ、ライブなどもすべて入っていることに注意してください。それでも、落ち込みが続いているのです。
これらと比べて、電子配信を加えるとほぼ横ばいに向かいそうな出版界というのは、なかなかどうして健闘しているように思うのは私だけでしょうか?
(なお、詳述しませんが、「出版年鑑」の統計は取次経由で販売された商品のみを対象としており、出版社による直販品や、出版社→アマゾンの直取引による販売品は含まれていません。さらにいうなら、インプレス総研の電子書籍統計にも、iOS/Android向けのノベルゲームアプリは含まれていないと考えられます。)
長々と書いてしまいましたが、このあたりでまとめてみましょう。
実は「電子を含めて横ばい」というのは、米国の書籍市場がたどった道でもあります。下記は最新の米国書籍統計です。
米国の一般書市場(黄色)は、電子書籍(緑色)を抜くと、この数年「右肩下がり」です。しかし、電子書籍がその縮小分を補ったので、「横ばい」を維持しているわけです。
日本も米国と同じシナリオをたどっていると考えても、まったく不思議ではありません(実は英国でも同様のことが起きています)。逆に考えると、こうも言えます。つまり、米国・英国の経験が教えるのは、「電子書籍を拡大しないと、市場は縮小するばかりである」ということなのです。
こう考えると、電子書籍の市場予測は、出版界にとって「今後こうなる」という推定ではなく、「今後こうしなければ死ぬ」という予言みたいなものなのかもしれません。
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