コンゴ民主共和国・南キブ州で武装勢力同士の戦闘後、使用されなくなった教会(2020年10月11日撮影、資料写真)。(c)ALEXIS HUGUET / AFP

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【AFP=時事】中央アフリカのコンゴ民主共和国の東部地域で、魔術を使ったと名指しされた女性が住民らに殺害されるケースが急増している。地元当局者と活動家が明らかにした。

 南キブ(South Kivu)州の地元当局者によれば、9月初めから3地区で女性8人が焼き殺されるなどのリンチ(私刑)を受けた。

「私たちの記録では、今年6月から9月にかけて、魔術を使ったという告発は324件に上っています」と、南キブ州のNGO「メディアで働く女性連合(Association of Women in the Media)」のメンバー、ネリー・アディジャ(Nelly Adidja)さんは言う。

 カレへ(Kalehe)地区だけで告発件数は114件に上り、このうち女性5人は生きたまま火を付けられ、他にも武装した「自警団」に連れ去られて行方が分からない女性が4人いる。

 南キブ州をはじめとする東部3州は長年、武装集団に支配されてきた。その多くは、四半世紀前の地域紛争の影響で台頭した組織だ。

「魔女狩り」の急増は国家統治の空白状態から生じていると、南キブ州の州都ブカブ(Bukavu)にある「農村開発高等研究所(Higher Institute of Rural Development)」の所長を務めるボスコ・ムチュキワ(Bosco Muchukiwa)教授(社会学)は言う。

「国がその基本的な使命に失敗しているからです。警察や司法機関がやるべきことをやっていない」と指摘する。

 ムチュキワ氏によると、魔女狩りをあおっているのは「バジャカジ(bajakazi)」と呼ばれるいんちき祈祷(きとう)師や自称霊能者だ。ほとんどが地元の女性で、自分には魔女が見分けられると言い張っている。

「うそなんです。あの連中に特殊な力はない。自分が操っている人々の従順さに付け込み、信奉者を増やし、自分の名声を高めて村での影響力を強めようとしているのです」とムチュキワ氏は言う。

■リンチを禁じる法は適用されず

 弁護士で議院規則の専門家ムヒンドゥ・シクワニネ(Muhindo Cikwanine)氏は、解決策は「ペテン師たちの祈祷所を禁止すること」だと主張する。

 2014年に南キブ州議会でリンチを禁じる法律が可決されたが、一度も適用されず、州民に対する適切な啓発運動も行われなかったとシクワニネ氏は言う。

 カバレ(Kabare)地区の行政担当主任タディ・ミデロ(Thadee Miderho)氏は、今年に入ってから6人がリンチを受けて殺されたことを明らかにした。ほとんどが60歳以上の女性で、バジャカジに魔女だと名指しされていた。

 ミデロ氏によれば、2年前には、魔女だと告発した側11人が逮捕され、6か月間収監され、職業を替えると約束して釈放されたが、その後、何人かは当局に隠れて以前と同じことを続けている。

 検察官は、殺害の実行犯を突き止めることはほぼ不可能だと話しているという。

「リンチが行われるといつもそうですが、村の首長は『みんな』がやったと言うだけで、名前を明かそうとしません」とミデロ氏は話した。

■「魔女狩り」に加わる子どもたち

 教師で人権活動家のシャシャ・ルベンガ(Shasha Rubenga)さんは8月16日、「魔女狩り」を目撃した。カフジビエガ国立公園(Kahuzi-Biega National Park)の外れにあるシィフンジ(Cifunzi)という人口約2000人の村でのことだ。

「月曜日の朝5時ごろでした。若い男性たちがリストを持って村中を回っていました。リストには、65歳以上の女性19人の名前が書かれていました。女性の占い師に魔女と名指しされた女性たちです」とルベンガさんは振り返った。

 大半の女性は自宅から逃げ出すことができたが、家々はその後、破壊された。兵士が空に向けて銃を発砲して群衆を追い散らし、そのおかげで難を逃れた女性たちもいた。

 だが、7人の子を持つ年配の女性1人が若者たちに取り押さえられるところを目撃したという。

「女性は殴られ、ガソリンを浴びせられ、マッチで火を付けられました」とルベンガさんは証言する。

 これが起きたのは村の中心部で、10歳にもならない子どもたちも、残虐行為に加わっていたという。

「中には、大きな棒を持った5歳の子もいて、その棒で、女性の焼け焦げた体をひっくり返しているのが見えました」とルベンガさんは話した。

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