そんでもって最終試験。
ぶっちゃけ、俺とピトーなどからするとかなり狭い格技場の様な所に集められた。
1対1のトーナメント形式らしい。なんかものスゴい形のトーナメント表だな。
なでりなでり、もみもみ。
「主様、耳は止めるニャ」
えーと、左から43、405、53、99、301、404、42、44、403か。
ピトーは最初はゴンと戦って、俺はヒソカか………あれ? 面接さっぱり考慮されてないような…。
「耳は嫌にゃ…」
仕方ない…ヒソカには悪いが勝たせてもらうか。
「み、耳は…」
断る。
「ニャー…」
ん? なんだネテロ会長の説明よれば一勝すれば良いのか。なら楽勝だな。やっぱりヒソカは退場頂こう。
殺害失格の勝ち上がりねぇ…随分、悪どい試験を考えつくもんだな。
「第一試合。ピトー対ゴン」
「行ってきますニャ」
「おう、殺すなよ?」
「わかってますニャ」
ピトーは俺の頬にキスしてから黒服の審判の言葉に続き、爪を伸ばしたり、戻したりしながらゴンの前に出た。
◇◆◇◆◇◆
開始の合図と同時にゴンはボクへ一直線に駆け出してきた。
「うニャ、威勢の良い子は好きだよ」
ボクは爪を伸ばすとゴンに向けた。
「ただし、手加減はしないよ?」
もちろん、念は使わないけどね。
ゴンが何か言い切る前にボクはゴンの後ろに跳び跳ねて移動すると全力で脚を後ろに振り上げた。
早くコッチ向かないかな? うずうず。
「なっ…」
ニャんと、念無しとはいえ一応、ボクが見えるのか。
確かに主様とヒソカが気に入っているだけはあるね。
ま、それとこれとは別の話。
ゴンが振り向いた瞬間、ゴンの腹にボクの脚がめり込んだ。
ジャストミートにゃん。
◇◆◇◆◇◆
「ゴンが"ボ"られた」
「ボってなんだい?」
「いや、なんかそんな凄い音がしただけ」
「アレを使ってないとは言えちょっとやり過ぎじゃないかな?」
ヒソカは視線に非難を込めて俺を見てきた。
ゴンが蹴られてぶっ飛んだ方向を見ると、コンクリート壁にめり込んだようで土煙を上げて見えなくなっている。
「アイツの息子がそんな柔な玉なわけないだろ」
煙が晴れると息絶え絶えだが、二本の足で地面を踏み締めるゴンがいた。
「ほらな」
普通なら即死級の一撃でも、壁への接触の寸前に適切な受け身を取れた…いや、取ったのだろうな。
親に似てやっぱり武道派か。
「これは……」
ヒソカの中でゴンの位置がまた上がったのだろう。口角が釣り上がっている。
島で食事中に聞いたのだが、自分のプレートを奪ったとの事でヒソカは偉くゴンに興味を持っているようだし。
よくもまあ、上位から数えた方が遥かに早い場所にいるヒソカからプレートを奪ったもんだよな。
「ところでだけど」
ヒソカは反りの強い円い曲剣を4本取り出した。うち1つには渇いた血が付いている。
「なんだそれ?」
「トリックタワーで僕に復讐してきた奴が使ってたんだ。無限四刀流と言うらしいよ」
「ふむ……」
無限四刀流ねぇ…ヒソカの肩にあった傷はそれで付けられた跡か。
そんな剣術流派は無いな。俺が知らないって事は我流だろう。
見たところ投擲用の武器、円形なのは飛ばしてから手元に戻しやすくするために見えるな。無限ってのはそれに多少の操作能力を使って確実に手元に戻らせるためってか。
「君なら技量だけで使えるんじゃないかな?」
「なるほどな」
とりあえず4本をジャグリングしてみた。
予想通りよく回る。投げれば対象を掠めながら、直ぐに手元に戻せるだろう。まあ、目の前ではピトーがゴンをボールにしてるからそんなことしないがな。
「…………うーん…なあ、ヒソカ?」
「なんだい?」
「これって曲芸じゃね?」
「やっぱり? 僕もそう思うよ」
「んー…」
ジャグリングしながら表情を変え、唸る俺にヒソカは目を向けている。
「28本だな」
「何がだい?」
「戦闘に支障が出ない程度にこれを回して攻撃出来る最大の数。両手で16本、両足で12本だ。それ以上はやる意味が無い」
「ククク…相変わらず化け物だ…」
そんなことをやっていると俺の顔に何かが飛んできたのでジャグリングを止めた。
拭き取ってみると掌が少し赤くなった。まあ、ゴンの血だな。
ピトーの方を見るとぶん殴られまくり、地面に伏せているゴンと、後ろに手を回し、尻尾を揺らしながら何か考えるように顎に手を当てているピトーがいた。
「ククク…相変わらず君の奥さんは容赦が無い」
「それがピトーの良いところだ。あれでもかなり手加減してるけどな」
「そうだね」
◇◆◇◆◇◆
試合開始から10分ほど経ったニャん。
ボクの目線の先にはお手玉にし過ぎてボロボロのゴンが地に伏せている。
加減してるけど頑丈だねー。全く参ったって言わないよ。
どうしよう…流石に主様ほど頑丈ではないからこれ以上は死んじゃうよ。
そしたら試験にも落ちちゃうし…。
それ以前に主様はゴンの事気に入ってるから殺したら不味いよね…折ったりとか、解剖も止めた方が良いし…。
そんなことを考えているとゴンがむくりと起き上がった。
「ニャんと…思ったより頑丈だねー」
「うぉぉぉぉ‼」
そんなことを言っているとゴンはボクへ向かって走り出してきた。
………………本当に人間かニャ?
そのまま、拳をボクに向け、振りかぶった。軌道的にボクの腹に目掛けてみたい。
ボクは腹にちょっと力を込めた。
「ッ!?」
ゴンの手から弾けるような凄い音が出た。
「にゃはは、ボクとっても硬いから気を付けてね。ってもう手遅れか」
虫の外骨格は伊達じゃないにゃん。
あーあー。骨とかグシャッと行っちゃったね。
オーラ纏ってなくても荷が重かったかな?
「仕方ないにゃあ…」
ボクはゴンに迫ると尻尾を伸ばし、腕を2~3周くるんだ。
"
オーラを普通のドクターブライスの倍以上消費する代わりに尻尾でくるんだモノなら直ぐに治せる。
ま、爆発で吹き飛んだ手とかは流石にこれだと治せないけどね。
精孔を開かないように直すのも大変だ。
「え? え…?」
突然、腕が治ったゴンは動揺している。
「うーん、それなら…」
ボクはゴンの首に両手を掛けるとそのまま持ち上げた。
「ぐっ!?」
「少しずつ首を絞めるにゃん」
そのまま、2分ぐらい抵抗していたがやがて力が無くなってきた。
ボクはそれを確認して手を解き、下に落とした。
「はぁ…! はぁ……! はぁ……!」
ゴンは地面に手を付きながら深呼吸を繰り返した。
「もう一回ニャ」
それを確認するともう一度首を絞めた。
◆◇◆◇◆◇
現在、ピトーが目の前でゴンに首を絞めては放すという単純な作業をし続けていた。
既にゴンに何も言わせずに12セット目に入っている。
「単純な拷問だね」
「ああ、だが道具を必要としない拷問ならかなり、確実性がある」
「その分、時間は掛かるけどね」
呼吸の制限、或いは停止。
どんな痛みよりも最終的にキツい拷問だ。
「"まいった"って言うにゃん」
そう言ってからピトーはゴンを落とした。
ゴンは呼吸を整えてから、強い眼差しでピトーに言葉を吐いた。
「イ…」
いや、吐こうとした瞬間に再びピトーに首を絞められ、持ち上げられた。
「ボクが聞きたい言葉の1文字目は"ま"、2文字目は"い"、3文字目は小さい"つ"。4文字目は"た"。他の言葉なんて要らないし、聞くきもないニャ」
そう言うとピトーはゴンに微笑んだ。
「後、30セット追加にゃん♪」
「君の奥さんイイねぇ……ゾクゾクするよ」
よせや、褒めるなや。
◆◇◆◇◆◇
約2~3時間ほど拷問が続いていた。
よくもまあ、首の骨を折らずに気道だけを的確に塞げるもんだ。
この試験がどれ程残酷なものかここにいる全ての受験者は理解したようで数人を除き、一様に顔を青くしている。
まあ、ここまで進んできた受験者がそう簡単にまいったというわけもないな。結果がこれだ。
「お、おい! もういいだろ! 止めさせてくれよ!」
レオリオ君(なんと十代らしい)が俺にすがるように寄ってきた。
「俺の妻に負けろと言えというのか?」
「う……それは…」
レオリオ君は悲痛な表情でゴンとピトーを見つめた。
「冗談だ………………ピトー」
ピトーの名前を呼ぶと、俺から見ると背中が見えるピトーの動きが止まり、手からゴンがこぼれ落ちた後、両耳がピクピクと動いた。
相変わらず細かい動きが可愛い…いや、それは今は置いておこう。
「もういいだろ。それだけやって吐かないんだから1日どころか1年掛けたってまいったなんて言わんさ。ピトーだって薄々気づいているだろ?」
本当に頑固なところがアイツにそっくりだ。それとその曇り一つない目。
本当に…よく似ている。
「はいニャ」
ピトーは俺に背を向けたままそう呟くとさらに言葉を続けた。
「ボクの負けだね。まいった」
その言葉が響き、暫く会場に静寂が訪れる。
そしてハッとした様子で審判がゴンの勝利を告げたことでその場の空気が再び動き出した。
「すまねぇ…真剣な勝負だったのに…」
レオリオ君は感情のままさっきのことを言っていたようで今は頭が冷えたのか俺にそんなことを言ってきた。
「気にするな。嫌なことをノーと言えるのは大切だ」
「サウロンさん…」
まあ、ぶっちゃけいい加減俺が飽きてきただけだったりするとは口が裂けても言えないな……ん? あれ?
俺は隣にいたヒソカがいつのまにか消えていることに今、気がついた。
アイツどこ行った?
それはまあ、良いか…それより…。
「負けたニャ…」
そう言いながらピトーは耳をしょげさせて俺の方に歩いて来ている。
それをどう慰めようか思考を凝らしているとゴンが立ち上がった。
その目に浮かぶのは…怒りだ。よくもまあ、あれだけされた後でそんな目が出来るもんだ。
「イヤだ!」
ゴンは一言そう言い放った。
それによりピトーの足が止まる。
「こんな勝ち方…」
まあ、予想はしていたが…勝ち方が気に入らないとでも言うのだろう。
どこまでもアイツ似なんだなと半ば呆れていると次の瞬間、ピトーから少量のオーラが噴き出した。
まあ、この場にいる全ての人物がオーラに呑み込まれるには十分過ぎる量だろう。
それによりゴンは言葉を吐けなくなった。
そのまま、ピトーはゴンに近付いて行くとしゃがみ、頭を優しく撫でた。
「そう言うの嫌いじゃないニャ。でももっと強くなってからお姉さんを楽しませるんだニャ」
こちらからは見えないが……ゴンの冷や汗と表情、そして焦点の定まらない目から察するにピトーの瞳はさぞや殺意に満ち溢れているんだろうな。
………………お姉さん(1歳ちょっと)。
「でも君の気持ちも少しは汲み取るとするニャ」
ピトーがゴンを手を撫でていた手をオデコに置いた。
「悔しかったら天空闘技場の251階で待ってるニャ」
次の瞬間、爆発音のようなものが響き渡り、ゴンの頭が凄まじい速度で背中から地面に衝突し、小さなクレーターを作った。
デコピンLv100である。
そんなこんなで第1回戦はゴンの勝ち(昏睡状態)で終了した。
◇◆◇◆◇◆
と、言うわけで第2回戦。ヒソカVS俺であるのだが…。
「ククク……」
目の前にはピエロではなく、黒スーツ姿の赤髪のイケメンが立っていた。
もう一度言おう。黒スーツ姿のイケメンが立っているのである。
会場の全員が思っているであろう事を代弁してやろう…。
「誰だお前」
「ヒドイな、君は何度も見てるじゃないか」
まあ、そうなのだがそれとこれとは話が別である。
そんな事は関係無いと言わんばかりにヒソカは内ポケットに手を入れた。
「ククク……"コレ"を使うのは久し振りだ」
さらにそう言いながら"裏面が金色のトランプ"をゆっくりと取り出した。
さらにヒソカの片手の甲にはさっきまで無かった"Ⅸ"という番号の刺青が小さく入っている。
「おいおい……こんな模擬戦で"
会場全壊するぞ…という言葉を俺は呑み込んだ。まあ、止められるのも面白くないしな。
俺は鞘から大型の片刃の剣を引き抜いた。
引き抜かれた刀身はびっしりと神字の紋様が隙間なく刻み込まれており、強度の水増しに貢献している。
「ククク……」
隠す気の無い殺気と歓喜を込めたヒソカの笑い声が聞こえてくるが、それを無視し、鞘をピトーへ投げると切っ先をヒソカへと向けた。
「簡単に終わってくれるなよ?」
「ご期待に添えるように頑張るよ」
「勝敗の決め方は……先に血が出た方が負けで良いか」
「賛成」
俺とヒソカが黙り、暫く静止した。
それでやっと審判は気付いたのか慌てて開戦の言葉が響く。
「だ、第二試合。サウロン対ヒソカ!」
次の開始の合図の直後、金色のトランプと片刃剣が交差した。
会場崩壊待った無し(確信)
~その他用語~
ジークフリード
とあるスーツ姿がトレードマークの暗殺組織のⅨ番の殺し屋に支給される