袈裟に切るとしたら、袈裟に切るんだよ。
斜めではなく。このように。
叩きもせず、切ると言ったら、切る。
切ると斬るは、広義と狭義で漢字の使用法
が異なる。
漢字の原意としては、「切」は切断の事で
あり、「斬」はメスのように切り裂く事を
指す。
しかし、広義においては、刀術でキル事を
「斬る」と書く。切断か切開かは区別しな
い。
そして、刀で人を殺害することを「斬る」
と言う。「奴を斬れ」とは「Kill him.」の
事なのだ。
「斬る=殺す」である事をアメリカ人の
友人は「ぐうぜんkillと同じ音で意味も同じ
なので、とても驚いた」と言っていた。
私の場合は刀術においては「切」と「斬」
をすべて区別して記載している。
剣道連盟はすべて「切」のみで表現を公式
には統一しているので、試験解答などで
「斬」の漢字を使うと厳密には×だ。
まして、全国審査の高段者の試験では、
一言一句、文章のみならず、句読点まで
規則、教科書の記載を暗記しないとなら
ない。論語や法律条文のように。でない
と全剣連では、いくら実技が満点でも昇段
審査に合格しない。
剣道連盟では座学の学力にも重きを置いて
いるのである。学を成さない者には段位を
与えない。
しかし、人間は、少年老い易く学成り難し
であるので、お年を召した方たちは皆様
いかさまぬかに汗して奮闘しておられる。
しかし、大切なことは、剣技だ。
剣技無くして何の剣士か。
「切る」と口にするからには、きちんと
「切る」のである。
なぜ、切らずに叩くのか。
叩けなどとは、教科書にも書いてないし、
指導者も誰一人そうは言っていない。
切れと言ったら切るのである。
抜けと言ったら抜くのだ。
やれと言われたことをきちんとやれずし
て、剣持つ己の士魂、士道たるや那辺に
ありしや。