待ってた!みんなで同じ給食 横須賀市立中で開始 全員制検討広がる
神奈川県内で、公立中学校の学校給食のあり方が見直されている。給食を提供している学校の割合が、全国平均と比べても少ないなか、食育などの観点から、生徒全員で同じ給食を食べる形に移行したり、その方法を模索したりしている。
「みんなと同じものを食べて、感想を話せるのは良い思い出になる」。給食を食べ終えた横須賀市立常葉中学校3年生の長濱玄起さん(14)は満足げな様子。この日のメニューはカレーライスとわかめサラダ。佐野有花さん(15)は「楽しみにしていた。甘すぎず辛すぎず、おいしかった」と笑顔を見せた。
横須賀市は9月29日から市立中全23校で、生徒全員に同じ給食が提供される「全員制」を始めた。給食は7月末に旧市立平作小学校跡地に完成した市学校給食センターで作る。センター建設の総事業費は約118億円。このうち施設整備費は約38億円で、大半は防衛省による基地助成金(約27億円)が充てられた。2パターンの献立で約1万食が調理され、アレルギー対応も行う。センターから一番遠い中学校でも、出発後30分で届くという。
横須賀市ではこれまで原則弁当を持参し、牛乳が配給される「ミルク給食」だった。保護者からの要望などを受け、5年ほど前から主食やおかずなどを提供する給食への移行を検討してきた。市の担当者は「適切な栄養バランスや食育の推進、生徒が楽しく食事できることの3点を重視して全員制を決めた」と話す。
文部科学省によると、2018年5月時点で、公立中での給食の実施率は全国平均で93・2%(学校数ベース)。一方、県内は全国最低の44・5%だった。県教委によると、現在は県内33市町村のうち、川崎市など17市町村が全員制、8市が家庭からの弁当や配達弁当などを選べる「選択制」の給食を実施している。
一方、選択制の給食を実施している自治体のうち、全員制への移行を検討しているところもある。
相模原市は今月末まで全員制の実施に向けたアンケートを行っており、22年度以降に具体的な方向性を出すという。横浜市でも8月の市長選で初当選した山中竹春市長が公約に掲げたことで、全員制に向けた検討が始まっている。
横浜市では長年、家庭で用意した弁当を基本としてきたが、16年から選択制の配達弁当「ハマ弁」を導入。今年4月からはハマ弁を学校給食法上の給食と位置づけた。
だが、選択制であることには変わらず利用率は2割超。配達弁当を提供する業者側の体制にも限界があり、最大供給量は市内全生徒の3割にとどまる。一方で全員制を求める声は根強く、市民団体「横浜でも全員制の中学校給食があったら『いいね!』の会」が9月末に発表した中学校給食に関するアンケートでは、回答者1569人のうち約88%が全員制を希望した。
山中市長は就任後、実情を知るために連日、配達弁当を食べているといい「国際理解や季節行事を楽しめる工夫が凝らされ、食育そのもの」と評価する。その上で、配達式の利用率を上げることを含めた提供方法の検討に向け、生徒や保護者にアンケートを行い、年度内にまとめる考えだ。山中市長は「成長期の中学生全員に栄養バランスの整った給食を提供することが行政として必要。他市事例も参考にしながら検討したい」と話す。(松沢奈々子)
県内中学校の給食実施状況
・全員制
川崎市、横須賀市、小田原市、三浦市、厚木市、大和市、南足柄市、綾瀬市、二宮町、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、愛川町、清川村
・選択制
横浜市、相模原市、鎌倉市、藤沢市、逗子市、伊勢原市、海老名市、座間市
・全員制を予定
・検討中