無様屈服ワンちゃんばかりのこの世界で俺は巨乳好き   作:クゥン

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夏の魔物はいつもそこにいる

 

 

 

 先日新たな知見を得たことにより、世界は広がった。

 そう、メスガキではない女児を確認したということに他ならない。

 

 『メスガキではない女児を確認した』という言葉で広がる知見、狂ってると思いませんか。

 だがそんな知見でも、今の俺には極めて重要な情報なのは間違いない。

 

 恐らく、あくまで恐らくだが、現在メスガキではないと判断しているのは4人。

 『小野寺 雛』、『蜜川 美樹』、『蜜川 芽衣』、そして『一ノ瀬 愛佳』。

 この4人だ。先輩は正直カウントしていいか悩むが……

 

 今までの遭遇数から考えると、4人というのが多いのか少ないのかは判断に困る。

 だが少なくとも、俺にとって重要な存在であることは間違いない。

 あるいは、この世界の法則を解き明かすなんらかの鍵なのでは?という期待を抱いていた。

 

 

 

 

 

 ……が、考察はすぐに暗礁に乗り上げた。

 

 というのも、この4人の共通点が全く分からない。

 

 

 彼女らと出会ったのはそれぞれ、俺が中学生、大学生、つい最近とバラバラ。

 年齢も小、中、大学生とバラつきが大きい。

 性格も元気、大人しい、ダウナー、あの先輩と個性豊か。

 出会った場所も統一性が無い。

 

 

 強いて挙げるなら『容姿が良く、外見が幼いこと』だが、これはこの世界では多くの女児が該当する。

 してしまうんだぁ……

 

 4人の共通点もそうだが『この4人とメスガキの違い』もこれに通じる。

 違いと言えば……挑発的な行動を取らないことだろうか?

 先輩は取るけど。

 

 しかしそれは行動の違いであってメスガキかどうかの違いではない。

 

 彼女らの違いは何か。そこにたどり着くには、未だ情報は足りていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海行きてぇっすね」

 

「行きましょっか」

 

 

 たったこれだけのやり取りではあった。

 しかしこの夏の茹だるような暑さに、俺達の頭は限界まで熱されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 走る鉄の箱の中。ガタンゴトン、と線路が響く。

 

 夏の暑さと海恋しさにいても立っても居られなくなった俺達は休日を合わせ、電車に乗って海へと向かっている。

 

 並んで座っているのは半袖なのにスカートにフリルが山ほどついた黒ロリ服の女と、黒いチノパンに白いポロシャツのThe・大学生やってますという男。

 

 車内に俺たち以外の乗客はいない。

 しかし仮に、見知らぬ第三者がこの二人を見たらどう推測するのだろうか。

 俺には考えもつかないしなるべく考えたくない。

 

 つーか先輩はゴスロリ脱げよ。命に関わんだろ流石に。

 

 

「そのフリル盛り見てるだけで暑ぃっすよ先輩」

 

「夏コーデだからいいでしょぉ別にぃ。私は夏でもゴスロリ貫くわよ」

 

 

 確かに先輩は半袖だが、それでも黒ロリィタは見てるだけで熱気がする。

 それでもやめない先輩の拘り、素直に尊敬する。

 頼むからやめてくれ。

 

 

「にしても海久しぶりーっ。楽しみーっ!」

 

「足パタパタして、はしたないっすよ。でも……そうっすね、確かに楽しみです」

 

 

 メスガキではない、気楽に話せる相手を得た今、俺の心は安寧を得た……とはいかない。

 結局この世界がメスガキ同人世界であることに変わりはない。

 今だって、俺の警戒心は高まり続けている。

 

 

 

 

 

 なぜか?

 

 電車を利用する度に『奴ら』が現れるからだ。

 

 そう、『電車』というシチュエーションはメスガキが極めて発生しやすい場所ということだ。

 

 

 

 電車に乗ると『100%』、そう驚異の『100%』で目の前にミニスカートの子供が座る。

 その目的は言うまでもないだろう。

 釣られた大人(負け確)を無様屈服腰ヘコ犬にする為だ。

 

 

『おじさん今どこ見てたの~?キッモ♡』

 

『みっ、見てないがっ!?』

 

『別に何とは言ってないけどぉ?慌てちゃってぇ、すっごい怪しい人みたいだよぉ?』

 

『うっ……それは……その……』

 

 

 こんなのが車内にポップする。

 その後は1ペアになり電車を降りてどこかへ行くまでがセットだ。

 俺のいる前でやらないでくれ……頼む……車内では静かに……

 

 俺は基本的に寝たふりやスマホを見てやり過ごすから目を合わせたことは一度も無い。

 が、奴らが浮かべている表情、想像に難くない。

 大げさにニヤつき、獲物が罠にかかるのを今か今かと楽しみにしているのさ。

 

 『それが見えたら終わり』とはよく言ったものだ。

 おもしろジャンルおすすめピエロとは恐怖の格が違う。

 

 

「たまには電車もいいわねぇ。なんか新鮮で、ノスタルジックになっちゃいそう」

 

「子供料金先輩……」

 

「ストファの負けキャラみたいな顔にしてやろうか」

 

「すんません」

 

 

 その時、ふと疑問に思った。

 先輩はメスガキではないと思われるのは理解している。

 

 

 

 じゃあ『この人がメスガキに会ったら』どんな対応をするんだ?

 

 

 

 ……いや、人の心配より、まずは自分の心配だな。

 今はまだ電車に乗り始めてすぐ。

 その内奴らは俺の目の前に現れるだろう。

 

 その時に備え、警戒は怠らないようにしなくては……

 

 

 

 

 

 

 

 

 日差しが、強い。

 燦々と、焼くような日差しが砂浜を照らす。

 久しぶりに見た海は、どこまでも青かった。

 

 砂浜に思っていたより人は少なく、家族連れが何組か。

 俺達のように友人同士で来る、という人はあまり見かけない。

 シーズンはばっちりだと思うが、平日はそんなものなのだろう。

 

 お互いに荷物を海の家のコインロッカーに預け、今は先輩の着替え待ち。

 俺は元々着こんでいたから、荷物を預けて先に待っている。

 

 

 

 だが、そんなことよりも俺を悩ませていることがある。

 

 

(一度も……メスガキと会わなかった……)

 

 

 ()()()()()()

 

 そう、電車というメスガキに最も近い場所で、一度もメスガキ同人展開と遭遇しなかった。

 

 

(どうしてだ?こんなことは今まで一度もなかった)

 

 

 あれほどまでに怯え、恨んでいたと言ってもいいメスガキ。

 それに会わなかったことで悩むとは、なんともおかしな事だ。

 日差しの元考え事をするのも辛いが、やはり考えずにはいられない。

 

 

(……先輩がいるから、なのか?いや待て、決めつけるには早ぇか)

 

 

 今までとの違いはやはり、一ノ瀬先輩の有無。

 

 ここから想定される条件はなんだ。

 メスガキではない女児といること?

 あるいは異性といること?

 

 ダメだ、異性と出かけた回数が少なすぎてなんのあてにもならない。悲しいぜ……

 

 

 

 それからしばらく頭を捻るも、思い当たる節が先輩の同伴以外に思いつかない。

 先輩に固有の因子があるのか、あるいは……

 

 そうこうしている内に少し向こうから先輩が走ってくる。あっ、髪縛ってる。

 遠目ではっきりしないが、黒いビキニにフリルをあしらったような感じか?

 なんだ、随分ゆっくり走って……

 

 

「お待たせぇー。待ったぁ?」

 

「ううん、今来たと……こ……」

 

 

 ……は

 

 え、待って

 

 でかい

 

 えっ、でかいッ

 

 

「? どしたの?」

 

「あ、いやぁ、なんでもないっす。ウッス」

 

 

 考えが何も纏まらないし纏まるわけがねぇ!!

 こう、ぽよんって感じ。フリルビキニ越しの主張がとてもとても強い。見るからにでかい。

 

 普段ゴスロリだからスタイルとか分かんなかったけどこんな凶悪なもん隠してたのか……ッ!?

 まさか、先輩は『擬態型』で『危険な(アブナい)』ヤツだったのかッ!?

 

 いやいやいやいや、明らかに身長と不釣り合いだろぉ!!

 

 こういう時は素数を数えるんだろ。ギャレンになる為の基礎訓練だ……3!

 

 

「なーによぉ。可愛い先輩の水着よぉ?何か言うことあんじゃないのぉ?」

 

「……ちょっと視界から外れてもらっていいっすか」

 

「泣くわよっ!?ガチで泣くわよ私っ!?」

 

 

 お、落ち着け。落ち着け俺。

 先輩をそういう目で見るなんてあり得ねぇだろ常考。

 考えてみろ、俺は誰と結婚したいって言ってた?

 それを考えてみれば自ずと……

 

 

 二つ年上の → 一つ年上 ○

 

 おっぱいがデカい → デカい ◎

 

 タレ目 → ややツリ目 △

 

 ダウナー系 → それ以上に気が合う ◎

 

 お姉さん → 背は低いが姉気質ではある ○

 

 

 

 

 待ってくれ

 

 ……マジ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか、後輩が急に黙っちゃった……

 

 

「ど、どしたの?顔赤くないっ?熱中症っ?」

 

「いえいえ気にしないでください。熱中症とか言わないでください。泳ぎ行くんすよね行きましょホラ」

 

 

 いっ、いつになく押しが強いっ。

 ……まぁ、何もないならいいんだけど。

 

 

「まっ、いいか。よーし後輩。泳ぐわよっ」

 

「そういや先輩、どんくらい泳げるんです?」

 

 

 おっ、そこ聞いちゃう?

 ふふん、これでも私はね……

 

 

「泳げない」

 

「えっ」

 

「25m泳ぎ切ったことない」

 

「……浮き輪借りてきますね」

 

「よろしくぅっ!」

 

 

 そいえば完全に言い忘れてたわね。

 私、足のつくプール以外怖くて行けないの。

 後輩もいるから今日は大丈夫かなーって……ごめんねっ。

 

 小走りで海の家に駆けていく後輩をゆっくり歩きながら追いかける。

 

 

(分かってはいたけどねぇ……)

 

 

 ()()

 手足はそうでもないけど、身体は全体的に細い。

 痩せぎす……とまではいかない、と思うけど。

 

 

(はぁ、嫌な予想って当たるのねぇ)

 

 

 合法的に服を引っぺがすにはやはり海でしょと思ったはいいけど……余計なことしたかも。

 でも水着着るのを嫌がってるわけじゃないし、コンプレックスとかそういうんじゃない感じ?

 

 さっきからちょい挙動不審気味だけど、そっちは関係あるのかしら?

 

 

「せんぱーい、借りてきました……なにゆっくり歩いてんすか……」

 

「ごくろー♪」

 

「顔が良くてよかったっすね」

 

「えっ、顔良くなかったらどうなってたの私」

 

 

 ……思えば後輩、かなーりいい奴よね。

 ゲーム強いし、趣味も会うし、気のいい奴だし。

 さっきは痩せぎすって言ったけど……正直ちょっと……そういうの嫌いじゃないというかぁ……

 

 

 

「あー……後輩に浮き輪引かれてたゆたう海はサイコーね……」

 

「さいですか。まぁ、確かにいい景色ですけど」

 

「どこまでも海……綺麗……」

 

「いや語彙力」

 

 

 ……まずい、夏の魔物に心操られてる感あるわぁ。

 ちょっと話題変えよそうしましょ。

 

 

「ねぇ後輩、ちょっと聞きたいんだけどー」

 

「ん?どしたんすか改まって。スリーサイズなら秘密っすよ」

 

「誰が聞くか」

 

 

 興味、ないことも、ないけど……

 でも今はそれじゃなくてっ!!

 

 

「ねぇ、私のこと好きぃ?」

 

「……えっ、なんすか急にマジで」

 

「いいから答えなさいよぉ。最近チヤホヤされてないからそういう感情に飢えてんの」

 

「そんな雑な振りあんの?」

 

 

 けけけ、精々悩んでひねり出した答えを笑ってやるわ……!

 

 

「んー……そっすねぇー……」

 

「悩むってことは嫌いってことぉ?」

 

「いえ、どっちかと言えば好きっすね」

 

「そ、そう……」

 

 

 け、結構ストレートに言うのねこいつ。

 ちょっとビックリしちゃったじゃないの。

 

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

 

 後輩は一呼吸おいて、しんみりとした口調でそう言った。

 

 

「……あんたとどう向き合ったらいいか、分かんねぇ」

 

「……向き合う?」

 

 

 やっぱりこいつの言うことはよく分かんない。

 何か抱えてるってことは分かるけど、それを共有しようとはしないから。

 

 でもああ、またそんな目をする。

 あんたはたまに、すごく寂しそうな目、するのよね。

 

 

「色々あるんすよ。でも、そーだなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今まであった人ん中じゃ、一番好きかもしんね」

 

「……ッ!」

 

 

 いっ、今、こいつっ!!

 ニカッって!イケメンしかやっちゃいけない笑い方したっ!!

 か、顔に出てないわよね私ッ!?

 

 一瞬トキめいちゃったとかないからねッ!?

 

 

「まっ、まぁ?私可愛いしぃ?性格最高だしぃ!?当然よねぇ!?」

 

「なに急にキレてんすか、情緒不安定ですか?」

 

「はっ倒すわよっ!!」

 

「はいはい浮き輪の上で暴れないでくださーい」

 

 

 こっ、この……っ!

 後輩が生意気言いおってぇ……っ!!

 見てなさい、帰りの電車じゃこうはいかないわよ……っ!

 

 

「……あっ、そうだ先輩。水着、すっげぇ似合ってます」

 

「今っ!?……誉め言葉なら貰っとくけど」

 

「可愛くてびっくりしました。見た時は思わずなんも言えなくなりました」

 

「ほーーーーん……中々に褒め殺すじゃない」

 

「思ったこと言ってるだけっすよ」

 

「そ、そう?……えへへ……」

 

 

 ……悪い気は、しないわねっ。

 

 ま、なにはともあれ!

 

 今日は楽しく遊び倒すわよーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ先輩。おやすみなさい」

 

「おっ、おやすみなさい……っ」

 

 

 

 私、愛佳さん

 

 今後輩と同じ旅館の、同じ部屋で寝てるの。

 

 ……どうしてこうなったっ!!??

 

 

 




 ここまでお読み下さりありがとうございます。

 感想欄で世界観への疑問点がありましたが、小説中で明かされないと判断したため、こちらでご説明させていただきます。


 Q.どうしてこの世界の大人はわからせ物の本やグッズが無いのに『分からせる』という概念を持っているのか?

 A.この世界の『分からせてやる』という言葉は女騎士の『くっ、殺せ!』と同じです。
 『メスガキにいいようしてやられるか!俺は屈さないぞ!』という極めて高潔な精神で己を律しているのです。根拠はないです。

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