甘利を狙え…! 岸田「経済安保」内閣に「中国が仕掛けるヤバすぎる工作」の中身 メディア、野党もターゲットになる
岸田「経済安保内閣」の衝撃…!
10月4日に発足した岸田文雄内閣は、「経済安全保障政権」だ。
一般にはあまりなじみのないこの言葉、どういうことかご存知だろうか。
「経済安保」とは日本の生存基盤、独立、繁栄を経済面から確保することである。
元来、日本は、国の生存基盤であるエネルギーや食料を海外に依存してきた。しかし、エネルギーや食料だけに限らず、経済のグローバル化や著しい技術革新の進展などにより、意識しないまま国の生存基盤を他国に依存しているものがある。
身近な例を挙げてみよう。
生活必需品を取り巻くリスクがあることをご存知か Photo/gettyimages
新型コロナの蔓延では「マスク不足問題」が生じた。日本はその生産の多くを中国に依存していた。マスクに限らずガウンなどの医療器具も中国に頼っていた。
こうした物資が世界で奪い合いになり、日本に輸入されなくなると、国民生活に多大なる影響が生じた。このため、内閣国家安全保障局内に2020年4月に新設された経済班は、マスク調達が最初の大きな仕事になったと言われている。
また、いまや生活必需品となったスマートフォンはどうだろう。
ミサイルよりも「効果的な攻撃」
コミュニケーションの手段としてだけではなく、決済機能としても欠かせなくなっている。国内で人気の高いiPhoneは、米国のアップルが企画開発し、台湾の鴻海精密工業などが製造しているが、もし、これが国内に入らなくなったら生活に支障をきたすことにもなるだろう。デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で国家の生存基盤は、サイバー空間にまで広がっているのだ。
「半導体不足」もそうだ。
日本の基幹産業である自動車の国内生産で減産が続くのは、台湾など海外に依存してきた半導体の供給が滞っていることが大きな理由だ。コロナ問題が収束した後も、もし日本への供給が意図的に止められたら、日本の自動車メーカーは国内で生産を続けられなくなり、国内では雇用問題が確実に起こる。
経済のグローバル化で「安全保障」に変化が起こっている Photo/gettyimages
こう考えてみれば、もし他国が日本の国民に心理的な打撃を与えようと考えれば、日本の領土をミサイルや航空機で爆撃するよりも、多岐の分野にわたる生存基盤をターゲットに攻撃する方が、効果は高いことが分かるだろう。
たとえば、金融機関や電力会社にサイバー攻撃を仕掛けて決済機能や電力供給を麻痺させれば、経済活動は停止し、国民生活に大混乱を招くのは必定だ。
すでに伝統的な陸海空の軍事力だけでは、国家の生存基盤は防衛できなくなった時代に来ていると言えるのだ。
経済安保内閣のキーパーソン
加えて、経済力をつけた中国の台頭により、世界のパワーバランスは崩れようとしている点を考えておく必要がある。特にインドアジア太平洋における中国のプレゼンスの高まりが、米中間の緊張関係を加速させており、たとえば、豪州が米英の協力を得て原子力潜水艦を保有する戦略に急遽変わったのは、明らかに中国対応だ。
豪州は今のモリソン政権が誕生する以前は、「紅く染まったオーストラリア」と呼ばれ、南太平洋に面した戦略的要衝のダーウィン港が、中国人民解放軍出身者が社長を務める嵐橋集団によって99年間の租借権が設定されるなど、領土の一部が中国に侵食されてしまった。
新型コロナの喧騒に隠れる形で、新たな世界秩序が構築される動きに、敏感なのが第百代首相に就いた岸田文雄氏だ。外相や防衛相も経験しており、外交や安全保障面の知識も深い。
10月4日、岸田内閣が発足した Photo/gettyimages
岸田氏が政調会長の任にあった2020年6月、ポストコロナ後の日本の強みと弱みを洗い出すために新国際秩序創造戦略本部が創設された。岸田氏はその取りまとめ役の座長に、信頼関係が厚い当時自民党税制調査会長の甘利明氏を指名した。
その甘利氏は、岸田氏から打診を受けた際にこう答えた。
「コロナ禍が収束すれば、DXが一層進み、人々の価値観や企業動向は世界的に大きく変化する。国際政治の場では新たな覇権を構築しようとする国が出てきて、民主主義を基盤とする国々vs.権威主義の国々の対立構図は深まり、世界の秩序は変わるかもしれない。こうしたビッグピクチャーの上で政策を作るのであれば引き受ける」
インフルエンス・オペレーションの恐怖
甘利氏が座長となって、同本部幹事長には山際大志郎氏(麻生派)、同本部事務局長には小林鷹之氏(二階派)が就任。このメンバーに加えて、17年4月から経済安保政策を練ってきたルール形成戦略議員連盟事務局長である中山展宏氏(麻生派)の4人が「チーム甘利」として自民党内の経済安保政策づくりをリードした。
20年12月に同本部からサプライチェーンの多元化・強靭化、国際機関を通じたルール形成への関与、経済インテリジェンス能力の強化など重点的に取り組むべき課題と対策を提言。各省庁が所管する業法の見直しを含め、22年の通常国会で経済安全保障推進法(仮称)を制定することも求めた。これらが自民党初の正式な経済安保政策である。
このほど、「チーム甘利」の小林氏が経済安保担当相、山際氏も経済財政担当相として入閣した。これが、岸田内閣が「経済安保政権」と呼ばれるゆえんである。
岸田政権のキーパーソン。自民党幹事長を担う甘利明氏 Photo/gettyimages
その経済安保政策の根幹には、日本がいかにして中国に毅然と向かい合い、渡り合うのかという問題意識がある。
このため、政策立案に当たっては、日本の各産業の強みと弱みを洗い出して現実を正しく直視たうえで対策を練る戦略的自律性と、国際社会にとって日本が必要不可欠な存在であることを強めていく戦略的不可欠性を重視した。
中国が「甘利を狙う」
菅義偉政権では、親中派の代表格、二階俊博氏が幹事長として党内を牛耳り、それに配慮していたが、甘利氏を幹事長に沿えた岸田政権では対中関係で変化が生じるに違いない。
岸田派の源流である宏池会は、安全保障的にハト派のイメージが強いが、岸田政権は経済安全保障政策を強く推進し、中国にとっては意外と手ごわい存在となるだろう。
中国の台頭で安全保障の考え方も変わってきている Photo/gettyimages
一方で中国の立場に立てば、経済安保政策のブレーンである甘利氏が最も厄介な存在となる。自民党ナンバー3の座から甘利氏を追い落とす工作を仕掛けてくる可能性があると筆者は見ている。
中国共産党が最も得意とする手法の一つが「インフルエンス・オペレーション(情報操作)」と呼ばれる工作活動だ。前述した豪州が「紅く染まった」大きな理由は、中国マネーの力によって、まずは在豪州の華僑ネットワークが「親北京化」され、そのネットワークを使って、豪州のメディアや政治家を篭絡していったからだ。
メディア操作
たとえば、元外相のボブ・カー氏を、中国マネーで設立したシンクタンクの所長に就けるなどして共産党擁護の論陣を張らせ、ラジオ局などメディアも実質、中国マネーの支配下に置いた。
中国は軍事的な活動よりも、こうして社会に影響力のある政治家やメディアを味方に付ける工作活動を重視している。その工作活動によって、豪州を親中国に染め上げて、準備淡々とダーウィン港の租借権を勝ち取った。「戦わずして勝つ」孫子の兵法が今でも引き継がれているのだ。
中国の対応に苦慮するオーストラリアのスコット・モリソン首相 Photo/gettyimages
逆に、中国に批判的な与党政治家の批判を煽るために、野党政治家や政権批判系のメディアなどに対して中国側が「インフルエンス・オペレーション」を仕掛けてくることもある。
こうした海外による工作活動は、日本も他人事ではないと考えておくべきだ。
仮に筆者も中国などの依頼を受けて工作活動に関わるジャーナリストであれば、岸田政権の要の一人である甘利氏を徹底攻撃するだろう。
甘利氏は16年1月、金銭授受の問題を受けて内閣府特命担当大臣(経済財政担当)を辞任しているが、いわゆる「政治とカネ」の問題を鉾にすれば世論を誘導することは比較的容易だ。
「政治とカネ」と「経済安保」
甘利氏の金銭授受の問題を改めて取材すると、受け取った金銭100万円は政治資金として適正に処理されている。問題視されているのは、甘利氏が知らないところで秘書が別の金を受け取って一部を個人で使ったり、過剰接待を受けていたりしたことだ。
この問題について、検察は刑事告発を受けて捜査したが、甘利氏を不起訴にした。検察審査会でも甘利氏は不起訴とされ、秘書は不起訴不当となった。その結果、秘書のみが再捜査されたが、そこでも不起訴となった。
甘利氏が経済財政担当相を辞任したのは、自身の金銭授受によってではなく、秘書の問題で世間を騒がせたとして使用者責任を取ったのである。その後、甘利氏は選挙での禊も受けた。
いったい何が飛び出すか Photo/gettyimages
「政治とカネ」の問題については、「経済安保」の世界の趨勢があることも考慮に入れる必要があるだろう。
全般的に日本のメディアは経営体力が劣化している。そうしたメディアに中国マネーが渡り、中国にとって不都合な日本の政治家を報道によって社会的に抹殺してしまう動きを仕掛けることは十分にあり得る話だ。
外国に「情報操作」されていないか…?
メディアに限らず、野党政治家に中国マネーが流れる可能性もあり、その金を受け取った政治家が国会で追及するかもしれないし、経済安保政策は「愚策だ」と国民にアピールするかもしれない。
「インフルエンス・オペレーション」は決して絵空事ではないのだ。
「経済安保」をいかに進めるのか注目されている Photo/gettyimages
野党は、与党を追い詰める本格的なネタがないからと言って、検察が不起訴処分にして司法的にはケリがついた過去の問題をほじくり返していると、国民からは国益を損なっていると見られかねなくなっている。
世界が新しい秩序構築に向けて綱引きをしている中で流れる政治関連のニュースを見る時には、外国に情報操作されていないかといった視点も必要になっていることを頭の片隅に入れておいた方がいい。