社長とはもう30年以上のつきあいだ。
合宿で一緒に泊まって語り合ったり、外
の店で酒を酌み交わしながら刀剣論議を
したり。まだ、互いに独身の頃から。
歳もいっこ違いでウマもあう。
波長が合うのだ。
今でも毎日のようにメールが来る。
取り止めもない雑談だ。
さりげなくごく自然にそこにいる。
友というのはそういうものだろう。
私は彼を下の名の愛称で呼ぶ。
彼は私を以前はジャニーズのように君
付けで呼んでいが、今はさん付けにな
っている。理由は知らない。
一度、出店ブースの店番を任された
ことがある。
「わるい。◯◯君、俺めし行って来る
から、店番してて」
「待て。お客さん来たら出納どうすん
だよ」
「任せるから、適当にやっててよ。金庫
そこ」
そうは言われても、人様のお店のお金の
出し入れをやる訳にはいかない。
彼が不在の間、客はかなり来た。
物も結構売れた。
しかし、全て、店主不在ゆえ取り置き、
という扱いにして、客には後ほど再訪
してもらうことでさばいた。
32年の付き合いというのは、存外長い
付き合いに入る事だろう。
根が真面目な男で、いつも、どんな話題
でも真剣に話を聞く。
俺らの間では、商売気は抜きだ。
自然とそうなる。
いい男だ。