食パン(しょくパン)とは、大きな長方形の箱型の型で焼いたパンのこと。
概説
食パンとは、生地を発酵させ、大きな長方形の箱型の型に入れて焼いたパンのことである。薄く切ってトーストにして食べたり、サンドイッチに用いたりされる。
形により「山型食パン(ラウンドトップ)」「角型食パン()」「ワンローフ」などに分類される。18世紀頃にで、産を原料としてに入れて焼いた山型食パンの製造が開始された。イギリス系のや食文化が世界に拡散するとともに、の箱(tin box)で焼くパンも全世界規模で広まった。別名「ティンブレッド(tin bread)」はこれに由来する。
英国の山形白パンやフランスのなどに起源を持つ日本の食パンであるが、日本人は日本人の食感で、材料比率・形・焼き加減などを変え、英仏の原型とはいささか異なった独特のパンにして食べている。
原型になっている英仏のパンと、日本流の「食パン」をひとまとめにしてしまうのは多少問題があるが、日本語の体系で言えば双方が「食パン」に分類されてしまうので、あわせて説明する。
「食パン」はにおける呼称で、日本でのである。日本人が型に入れて焼いた軟らかいパンのことを「食パン」と呼ぶようになった理由については、「美術のの時に描いた線を消すのに用いるパンを『消しパン』と呼称し、それに対して食用のパンを『食パン』と呼称し始めた」とするものや、「明治初期に外国人がとして用いていること(『主食用パン』であること)を示す言葉として使われるようになった」とするものなど、いくつもの説がある。
では日本語教育が行われた歴史があり、日本語の影響を強く受けたでは食パンとトーストを「ショッパン」(:sio̍k-pháng)と呼称している。一般的にはが使われるので吐司(tǔsī)と呼ばれている)。焼いていないものは白吐司。同じく日本の影響を受けたでは食の漢字音のみ朝鮮語読みして「シッパン」(シパン、식빵 / 食빵、sikppang)と呼ばれる。そもそもパンそのものを「パン」(빵、ppang)と呼んでいる。
パンの外皮の内側にある気泡を多く含む軟らかい部分をクラムまたは内相という。
食パンはのに相当する。このmieはで中身を意味し、クラムの部分を楽しむタイプのパンとして嗜好され、日本でも「パン・ド・ミー」の名称で販売されることがある。
かつて、軟らかく中が白いパンは豊かさの象徴だった。製パン工場で大量生産される廉価なローフブレッドによって、貧困層も従来より高品質な食事で命をつなぐことができるようになり、自家製パンの労働からも解放された。その半面で、手間のかかるやホームベイク文化の消失にも繋がっている。
パンの外側の硬く焼き色がついた部分はクラスト(crust)または皮(表皮)というが、食パンの場合は「耳」ともいう。英語ではを意味する「heel」という呼び方もある。
サンドイッチなどに使う時は耳の部分のやや硬くパサパサした食感を避けるため、日本では切り落として白い部分だけを用いることことが多い。パンをまとめて焼き、サンドイッチに加工したりする街のベーカリーや大手の製パン工場にとって「パンの耳」は一種の中途半端な余剰物にあたる。古くから動物園や農家などの動物・家畜の餌()として活用されてはいたものの結局は捨てられることが多く、それらをどう活用するのかは課題であった。近年では別の商品としての活用例が増えている。
家庭などではオーブンなどで軽く焼くとカリカリとした食感になり、ラスクやの代用品とすることができる。また、パンの耳を揚げて砂糖やで味つけをし、に似た食感の菓子として供することもある。
食パンには次のような分類がある。
では、四辺が直線の食パンを「角食」(かくしょく)と呼び、一辺が丸い食パンを「山食(やましょく)」と呼ぶ人も多い。
なお、小麦粉に全粒粉を用いたものは全粒食パン(ブラウンブレッド、グラハムブレッド)という。
イギリスでは焼き型に蓋せず上部が盛り上がった山形である。
近年、イギリス大都市部のパン職人はフランスや流のパンを主流とする。伝統的なローフブレッドは田舎町のパン工房や観光地で探した方が見つけやすい状況にある。
食パンはの「」に相当する。フランスはパンの種類が多様であり、その多くが外側が濃い色にパリパリと固く焼き上げられたものである。フランス語で「mie ミー」というのは中身のことであり、ハードなクラスト(皮)ではなく、ソフトなクラム(中身)を楽しむパンという意味である。フランスでは日本の食パンに比べてやや小振りなタイプが広く嗜好されている。とは言ってもフランスでは朝食ではなどが主流であるし、サンドイッチに使うパンはあくまで類が主流なので、全体の流通量に占めるパン・ド・ミーの割合はかなり小さい。
初期に日本へイギリスの山型白パンが伝わり、主に外国人向けに製造された。ではを期に食パンが朝食用に用いられた。後、サンドイッチを食する兵士の要望を受けて、角型食パンが8枚に切り分けて販売される。後年に食パンの食感が日本人の嗜好へ調整されるようになった。での供食に好まれる6枚(20mm)、5枚(24mm)、4枚(30mm)など厚切りや、サンドイッチなど調理加工に好まれる10枚(12mm)、12枚(10mm)など薄切りが販売されるなど切り分け厚は多様である。
消費は関西が特に多い。都道府県別の消費量で見ると、の2府4県が上位10位内に入っており、廉価品より高級品、薄切り(6・8枚切)より厚切り(4・5枚切)の販売額が高い。
欧州各国ではとだけで練られることが多いのに対して、日本の食パンはや、、、など類の添加されているものも多い。こうした日本の製品はに分類される場合がある。
現代日本において、食パンは主食の1つとして社会の隅々まで普及し切っており、様々な事業者により生産・販売される。大手製パン会社がやチェーン等から依頼を受けた(PB)商品として生産し、特にスーパーやコンビニを中心に卸しているほか、街中のでも独自に製造し販売している。家庭ので作られる事もあるが、炊飯とは異なり、一般的とは言い難い。
日本の食パン基本配合の一例は次のとおり
工程はおおまかに言うと、ミキシング(材料を混ぜること)→ 発酵 → 切り分け・丸め → ベンチタイム → 成形・型詰め → 焼成 → 型からの取り出し、といった順になる。
製粉類を焼成すると重量は約1.5倍に増加する。用いられる長い箱型の型は、日本では「食パン型」と呼ばれている。
日本の家庭で食パンを作ろうとしても、以前はなかなか困難であった。生地をコネたり発酵させたりといった工程の管理も大変であったが、長い金属型を入れて焼くことができるような大型のオーブンなどを持つ賃貸・分譲・戸建てなどの家庭用住宅の物件が不動産業界から例外的と見なされるほどに少なかったためである。近年、日本の家庭ではも普及するようになってきており、そのほとんどが工程のコースを選べるようになっており、おおむね基本コースとして「食パン」コースを用意している。家庭用パン焼き機の内部には、加工などのこびりつかない金属型とヒーターがあり、生地をコネることや発酵も含めて工程のほとんどが自動的に行われるようになっている。
食パンの重量は「1斤(きん)」「2斤」……と数える。のから派生した「」(120=450)に由来し、製品重量の時代毎の変遷(シュリンクフレーション)とを考慮して1斤当たりの重量は350 - 400グラムであるのが一般的で、製パン業界のでは340g以上と定めている。切り分け前の棒状食パンは1本、2本と数え、切り分け後は1枚、2枚、または1切れ、2切れと数える。
およびそれに適した用紙を用いるデッサンの場合、描いた線を修正する時にを使うと硬くて用紙を傷める。このため前述のように、軟らかく油分の少ない食パンが広く用いられている。が安価に広く流通している現在でも、木炭デッサンでは最適の道具として食パンが用いられることが多いのである。
- 『パンの文化史』〈〉、2007年、236頁。 。
- 『パンの事典―おいしいパンのある幸せな生活』成美堂出版編集部、、2006年、60,90。 。
- 「神戸のケーキとパン」『聞き書 兵庫の食事』日本の食生活全集兵庫編集委員会(編)、農山漁村文化協会〈日本の食生活全集〉、1992年、61頁。 。
- 「ローカルフード」『よそ見津々』、2010年、123頁。 。「「八枚切り」の存在を大阪の友だちに言うと、「ああー、だからが【漫画やラブコメに】あるんや」という。確かに、五枚切りではくわえて走るのは、無理ではないがちょっと難しい。あごが疲れそうだ。四枚切りではさらに難易度が上がる。」
- ウィリアム・ルーベル『パンの歴史』堤梨華 訳、、2013年。 。