公明現職に挑む自民元市議 大阪都構想での亀裂、立候補の要因に

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 19日公示、31日投開票の衆院選で、大阪3区は自民党の柳本顕・元大阪市議(47)が公明党現職の佐藤茂樹氏(62)に挑む構図となる。自公両党は柳本氏が立候補を断念するよう働きかけたが奏功しなかった。大阪都構想住民投票をめぐる亀裂が、自公の選挙協力に影を落とす。

 柳本氏は6日夜、朝日新聞の取材に「有権者に選択肢を示すため、無所属で立候補する。生まれ育った故郷に貢献したい」と語った。関係者によると、5日には東京・永田町自民党本部で党幹部と面会し、立候補する意向を伝えた。

 前回の2017年衆院選で、公明は8小選挙区で勝利した。そのうち6議席は大阪と兵庫で占めており、「常勝関西」とも呼ばれる。公明にとって関西の議席維持は重要テーマだ。

 8月20日には公明の西田実仁・選挙対策委員長が自民党本部を訪ね、当時の山口泰明・選対委員長と会談。西田氏は大阪3区の状況を説明し、「信義に反する」と訴えた。自民は公明候補がいる小選挙区には擁立せず、その代わりに、公明は他の小選挙区で自民候補を支援してきたからだ。

 大阪3区問題は、自公の選挙協力全体に影響しかねないとの懸念が自民側に広がった。自民府連の幹部によると、党側は柳本氏に対し、立候補すれば除名処分になると伝える一方で、来夏の参院選比例区に擁立する「対案」を提示。立候補断念を促したが、柳本氏は受け入れなかった。

 背景にあるのは、大阪維新の会が掲げた大阪都構想の是非を問う住民投票だ。15年の住民投票で自公はそろって反対し、都構想は僅差(きんさ)で否決された。しかし、維新は2度目の住民投票を掲げて19年の統一地方選で圧勝。維新は次期衆院選で公明現職がいる小選挙区に対立候補を擁立するとちらつかせ、公明は反対から賛成に転じた。

 20年の2度目の住民投票の告示後。公明の山口那津男代表が大阪市内の街頭で、当時維新代表だった松井一郎市長と一緒に都構想賛成を呼びかけた。

 再度、否決される結果となったが、自民府連幹部は「山口代表まで大阪入りするとは。公明の大阪自民に対する裏切り行為だった」と振り返る。

 大阪での自公の亀裂は深まり、都構想反対運動の先頭に立っていた柳本氏が今回、衆院大阪3区で佐藤氏に挑む要因の一つになった。

 一方、ある公明関係者はこう懸念を漏らす。「保守票が割れる。野党が候補者を一本化すれば野党勝利の可能性を高めるだけだ」(本多由佳)

  • 前田直人
    朝日新聞コンテンツ戦略ディレクター
    2021年10月07日08時36分 投稿

    【視点】注目すべき選挙区が、また一つ増えました。全国的に、自公協力が完全に成立しています。大阪ではさらに、維新という地域に定着した政党との関係も維持しながら、均衡を保ってきました。それが崩れるとなると、公明党にとっては穏やかではありません。公明の支援団体である創価学会は「勝利」の価値を重んじていますので、「完勝」は必達目標なのです。

    2017年衆院選の大阪3区の得票結果は次の通りです。

    佐藤 茂樹 公 83,907(54.1%)
    渡部  結 共 54,958(35.4%)
    中条栄太郎 無 16,231(10.5%)

    野党が候補者を一本化したうえで、自民支持層の票を柳本氏がおさえることになれば、三つどもえの大激戦になる可能性があります。現状では立憲と共産がともに立候補予定となっていますが、野党の一本化ができるかどうかも焦点です。…続きを読む

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