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【月間人力ボカロ合宿・10月】人力ボカロのためのミックスそれこれ

2015/10/17 23:59 投稿

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・はじめに
この記事は『月間人力ボカロ合宿』10月お題「人力師ブロマガ+α」に寄せて書いたものです。
ボカロ向けのミックス講座や書籍、知人からのアドバイス、これまでの経験などを元に自分なりのやり方をまとめてみていますので、明らかに間違えていたりわかりづらいところなどあるかもしれませんがご了承ください。
間違えてるよココなツッコミは切実にお待ちしていますのでコメントや@komainu_utauまでよろしくお願いします。

・筆者について
UTAUを使用した人力暦五年目(2010年9月以降現在まで活動中)、BASARALOIDタグ中心で活動しています。



合作などでミックスを担当させて頂く事が多く、主だった動画だとこちらや、


最近ですとこちらも担当しています。



・ミックスについて

・ミックス(ミキシング)とはなんぞや
ミキシング (Mixing) とは、多チャンネルの音源をもとに、ミキシング・コンソールを用いて音声トラックのバランス、音色、定位(モノラルの場合を除く)などをつくりだす作業である。元のチャンネル数から少ないトラックに移行させるため、同義語としてトラック・ダウンとも呼ばれる。
(「ミキシング」wikiより)

要するに:下ごしらえしてきた材料(UTAUから書き出したボーカル音源とオケ音源)を味付け(プラグインによる加工)、調理(バランス調整など)しながらお好み程度に仕上げて盛り付ける(mp3などに書き出す)だけのお仕事です。

・使用ツール
REPER
http://www.reaper.fm/

使い方や導入の仕方などについてはこちらなども参考に合わせてどうぞ。

Reaperの使い方【一番わかりやすい説明書】
http://dtm-nodakoubou.net/dtm/reaper/

・材料
前提として、普段私はUTAU上ではほとんどフラグをかけていません。ミックス段階で調整していくスタイルになります。

使用エンジン:resampler
b値:10

この数値で書き出したwav音源、そして各所からお借りしてきたオケ音源を用意して、調理場(REPER)に放り込みます。


・味付け
使用するプラグインですが、私が愛用しているのが「KJAERHUS audio classic」シリーズになります。読めません。
すでに開発が終了しており公式ページは閉鎖されていますが、最終バージョンのソフトはダウンローダサイトに残されているためまだ入手が可能なようです。

http://publisher.brothersoft.com/kjaerhus-audio.html

http://wikiwiki.jp/kitkat3/?%A5%D5%A5%EA%A1%BCVST%A5%D7%A5%E9%A5%B0%A5%A4%A5%F3

いつ消えてしまうか不明なので早めに入手しておくことをおすすめします。


※ボーカルトラック
>必ず入れるもの
Classic EQ
Classic Compressor
Classic Reverb
Classic Delay
SPITFISH de-esser

>よく入れるもの
Classic Chorus

>たまに入れるもの
Classic Flanger
Classic Phaser
Classic Auto-Filter
Doublinger
VocaScreamer

・マスタートラック
Classic Master Limiter


1.マスタートラックの準備



初めに行うのはマスタートラックにClassic Master Limiterを入れる事です。
これを入れておく事によって音割れを抑えたり全体の音圧(ボリューム的な)が上がります。
後からこれを入れるとそれまでとはまったく音のバランスが変わってしまうので、私は最初に行っています。
まだ特に数値などをいじる必要はないのでこのままの状態で次に進みます。


2.ボーカルトラック(メイン&コーラス)
Classic EQ



まず最初に入れるのがEQ(イコライザ)。特定の周波数を削ったり増幅させたりします。
つまるところ耳障りだったりこもって聞こえる部分などはざっくりカットし、逆にもっと前に出てほしい部分を盛って聞こえやすくクリアにすることができます。

じゃあ全部にただ盛ればいいというわけでもなく、同じ音域同士がぶつかりあうとかえってノイズのように耳障りな仕上がりになってしまったりします。
この辺各解説サイトや本によってカットすべきか盛るべきかなど意見が真っ二つに割れるところらしく、私はここぞという箇所以外は基本的にカットするものとして使っています。
またメインのボーカルとコーラスとで多少盛り方を変え、持った箇所がぶつからないように調整をくわえています。

メインボーカルだと630~2k付近が主にボーカルの芯となる音域らしいのでそこを重点的に盛り、それ以外をざっくりカットしています。




音源によっては高音域を盛ってやると音の抜けがよくなることがあるので最近のミックスでは盛り気味だったりします。

コーラスボーカル



630~2k付近以外を緩やかなお椀型に削っています。
ちなみに20~63の低音域はほとんど聞こえ方に影響してこないらしいので、メインにせよコーラスにせよざっくりカットしてしまっても問題ないそうです。

ちなみにUTAU上のフラグ機能に該当する役割を果たしているので、フラグをじっくり詰めている方は630~2kだけ気持ち持ち上げてやる程度でもいいかもしれません。

さらにオケ音源にも630~2kだけいくつか程度目盛りを下げてやると、ボーカルの入る隙間が生まれるそうです。
メインがなかなか前に出てこない音圧の高いオケ音源などに有効かもしれません。
カットしすぎると明らかに違和感が出てくるので実際聞きながらお好みでどうぞ。

Classic Compressor



音域を整えたらかけるのがコンプレッサー。ボーカルが太くなります。
これはプリレンダの「vocal」を選んでおけば大丈夫だと思います。

音のばらつきを抑えて音全体を圧縮する効果があるため、UTAU上でエンベロープの調整を丁寧に行っている場合潰れてしまうことがあります。

SPITFISH de-esser



k音やs音、t音などの子音がきつい場合にはディエッサーを入れます。
耳障りな歯擦音や破裂音をカットしてくれるプラグインです。
これもプリレンダのmale voice(男性)、famale voice(女性)辺りをまず選んでおいて、実際に聞きながら主に「sense」つまみをいじって調整してやります。



listen」ランプをクリックしてある状態でカットする音が確認できます。
この状態で悪目立ちしている子音だけが聞こえる状態が理想的。

Classic Reverb
Classic Delay

・リバーブとディレイの違い
お風呂で歌った時の響きがリバーブ、カラオケのマイク的な反響、こだまがディレイ。


……と二つの違いとしてはよく解説されてます。
さらに言うならば、はっきりと遅れて反響してくるのがディレイ、元の音にかぶせて反響しているのがリバーブ。
あとは実感試してみてフィーリングでおねがいします。

イメージとしてはボーカルをの輪郭をぼかせ膨らませながらオケ音源と馴染ませ、ディレイで奥行きを出す感じ。



まずリバーブですがこれもプリセットから「Vocal Ambient」を選んでいます。
合唱系のような教会の聖歌隊的な効果が欲しい時は「Small Hall」や「Vocal Hall」などを選んでおくとそれっぽくふわっとな感じになります。
反響のかかり具合は「OUTPUT」の「MIX」つまみを右に動かすことで大きく、左に動かすことで小さめに調整することができます。



いろいろ遊びながら確認してみてください。

もう一種類別のリバーブを置く、つまり二種類のリバーブを薄くかけることでより複雑な反響っぽくさせて広がりを感じさせる、といった効果も狙えたりするらしいです。




次にディレイですが、またまたプリセットの「Vocal Slap-back」を選択。
個人的な好みとしてメインへのかかり方はもう少し抑え目の方が好きなので「OUTPUT」の「MIX」つまみを九時ぐらいの方に絞って使っています。




コーラスの場合は逆にぼかしておきたいのでそのままで使います。

Short Analog」もよく使います。実際の程は試しながら確認してみてください。



いくつかの目盛りを調整する事によっていろいろな効果をかける事もできます。

こだまのテンポを変えるには「DELAY」の「TYPE」つまみの横にある「1/8」などの目盛りをドラッグしたまま上下に動かすと変わります。母数が大きくなる程早く、少なくなる程こだまはおそく返ってくるようになります。
また「FEEDBACK」の「LEVEL」つまみを右に動かすと長い間反響し続け、左に動かすと逆に短い反響回数で終わります。
どの程度がいいのか、どういうところでどういう効果をかけてやればいいのかを知るには実際の曲のボーカルを真似してみるとよくわかります。
VOCALOID曲などの場合はオケ音源も配布されている事が多いので、うたごえりっぷなどを使ってオケを消してやると実際はどんなかかり具合になっているのかもわかりやすいです。

ここからはミックス再現などでたまに使うプラグインを紹介していきます。

Classic Chorus



音に厚みを持たせるプラグイン。実はよく使ってます。
オケの音圧が高めでなかなかボーカルが前に出てこない時や軽く音を歪ませながら厚みをだしたい時などに活用する事が多いです。
Vocal SpreadVocal OverdubRock Singerなど

Classic Flanger



Classic Phaser



Classic Auto-Filter



音を歪ませたりといった効果を持つプラグインです。ディストレーション代わりによくこの辺を使います。
Auto-Filterは少々趣が異なり、一定の間隔で左右などにパン振りが行ったり来たり変化するような効果(Panning Peak, Panning Nocth)をかけるためなどに使用しています。

Doublinger
http://aikelab.net/dtm/




一本のボーカルをそれぞれ左右から聞こえるような効果が出せます。

VocaScreamer
http://aikelab.net/dtm/




叫ぶようなシャウト効果を与えるプラグインです。歪ませる目的でつまみをいじりながら使っています。
シンプルな構成でいろいろ試しやすいのも魅力のひとつです。

・パンの位置取り
基本はメインは中心(0)から動かしません。しかし、デュエットやそれ以上の人数で歌っている曲の場合には多少左右に位置を振ることがあります。
二つの声が溶け合うのを気持ち防げるような気がします。
10~50程度の幅でRとLとにそれぞれボーカルを配置します。

・ノーマライズ(音量正規化)
音が歪まない範囲で音量を最大限にあげてくれる機能です。
オケに負けないボーカル作りには必須だと思っているのですが、あらかじめClassic Choursなどをかけている場合はすでに十分音量が稼げている事も多く、改めて行う必要がない場合もあります。

・音量バランス調整
全体を見ながらコーラスを抑えたり逆に聞こえづらい場合はオケを抑えたりと細かな音量調整を加えていきます。
曲によってはエンベロープ機能で細かく変化させながら詰めます。


緑の線がボリューム、赤の線がパン

ちょうどいいバランスとは:
ここまでの作業で曲を聞きすぎてしまいもうバランスがよくわからない……という状態に陥ってしまう事がよくあります。
実際長時間同じ音源を聞き続けていると耳が知らず知らずのうちにノイズを除去していたり、ボーカルの音量差などを勝手にカバーしながら聞かせているといった事も起こります。
一晩から数日ほど放置してしばらく耳と感覚をリセットさせてから改めて聞き直す、誰かに聞いてもらうなどの手段が有効です。
またマスターボリュームをぎりぎり聞こえるか程度の極限まで絞ってみると、オケが大きかったりその逆があったりなど新たな発見がある事もあります。
この時点で一旦mp3などに書き出してからスピーカーやイヤホンなど作業時とは別の再生機器を通して聞いてみるのもおすすめです。


3.マスタートラックの最終調整
全体の調整が一段落ついたところで最後にマスタートラックに入れておいたClassic Master Limiterの調整を行います。



音源を再生しながら「COMPRESSIN」メーターが振り切れない程度まで「THRESHOLD」つまみをあげていくことにより音圧を高めていきます。

4.書き出し
mp3ファイルやwavファイルなど形式を指定して書き出します。ここまで来たらあともうちょっと!

5.確認と発表
全体のバランスはもちろん、抜けているパートやプラグインなどがないか等のチェックを行って音源完成です!
さらに数日ほど寝かせておいてから改めての最終チェックを行うのもおすすめです。
あとはひたすらリピートしてにやにやするもよし、動画やtmboxにアップして発表するもよし。
お疲れ様でした!

・終わりに
人力合宿については以前からもちらちら覗かせてもらっていました。
それが今月のブロマガ企画で面白い記事をあれこれ読ませてもらい、「自分でも何か書いてみたいな」と思ったものの、いざ真っ白なブロマガの投稿画面を前にすると何を書いたらいいのかピンとこない。
そんな中「ぜひ人力音源向けのミックス講座的なものを! お願いします!」と言ってくださった某方からの一言がきっかけで筆をとる運びとなりました。
いざ書き始めてみたらまあ書いても書いても終わらない地獄に陥り、こうして期間ぎりぎりの投稿となってしまいましたがひとまずの手順は書ききれたので満足ですたぶん。
気づけばこんなに長々とした文章になってしまいましたが、最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました。
この記事が少しでも人力ライフの助けになれば幸いです。
そしてぜひBASARALOIDタグとうちの子動画も合わせて今後ともどうぞよろしくお願い致します。




2016/10/17 Haku

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