この記事の制作に至った経緯として、歴史合作の制作の為に監修を務めていた砂鉄兄貴が合作参加者に向けて解説書を制作した事で、同じく監修を頼まれていた私も合作参加者に向けてこちらの記事を解説書として制作しました。
砂鉄兄貴のものとはまた違った解説になりますので、読み比べてみてもいいかもしれません。
淫夢と風評被害
元々淫夢はTDNのスキャンダルが発端となって生まれた経緯もあって様々なものを淫夢と結び付ける「風評被害」という文化が発達していた。
特にニコニコ動画では本来淫夢とは関係ない動画に何かしらの淫夢との関連性を見出し、淫夢語録で埋め尽くしていくネタが2010年には既に定着していた。
クッキー☆前
魔理沙とアリスのクッキーKissへのコメント侵略(2010年2月15日~)
後にクッキー☆と呼ばれる「【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss」もそうした風評被害を受けて淫夢語録でコメントを埋め尽くられた動画であった。
この動画は40人以上が関わった大型合作であったが、そのクオリティの低さから東方側からの評価は散々なものであった。
その評価の一つである「声優の棒読み」という点で、2章の存在によりかねてから棒読みをネタにしていた「真夏の夜の淫夢」がタグとしてつけられたとされている。
(当時は淫夢だけでなくジブリやオンドゥルと言ったタグも一緒になって付けられていたという証言が淫夢スレにあり、本来これは別に淫夢に限った事ではなかったようです。ただそのログはどこにあったか覚えていません。)
こうしたタグ付けやコメント侵略は淫夢側からも荒らし行為として批判も多く見られ、特に3月2日に動画説明文にてこの行為についての苦言が書き込まれたことをきっかけに問題行為として度々話題にされるようになった。3月13日には淫夢コメ歓迎版と称した、避難所(隔離用)動画も投稿されている。
しかし、長期に渡ってしつこくタグが付けられ続けたため、この動画へのコメント侵略もまた一つのネタとして淫夢内に定着していった。
淫夢コメ歓迎版の投稿も、この行為が理不尽な迷惑行為である事を自覚しつつも、既にネタとして定着していた事を物語っている。
このタグ付けは淫夢とは関係ない動画に淫夢タグを付けたり、淫夢と関係ない動画を投稿して淫夢タグをロックするなどの荒らしを行っていた「乱射魔」によるものだと当時は扱われている。
MAD暗黒時代と削除騒動(2010年2月後半~2010年10月前半)
2010年2月27日にはクッキー☆を題材とした初のMAD「魔田所とトオノのアイスティーkiss」が投稿されたものの、MADとしての動きはこれ以降ほとんど無く、たまに淫夢動画にネタの一つとして使われていたと程度であった。
この時点ではクッキー☆は数ある淫夢の風評被害の一つとして程度の存在であったようだ。
しかしそんな状況の中、9月後半(17日?)に蓮奈理緒によってクッキー☆を使用したMADが大量に削除される事態になる。
クッキー☆へのコメント侵略は淫夢でも問題視されていたものの、MADに少しでも使用すれば削除する過剰な対処は淫夢内で蓮奈理緒に対して反感を強めることとなった。
元動画への気遣いとして投稿された淫夢コメ歓迎版もこの一連の削除騒動の際に削除されており、こうした配慮すら不意にしたことも反感を集めた。
また9月15日には淫夢語録を「クッキー☆」に変えるフィルターをかけるという対策が取られている。ここから現在使用される「クッキー☆」という呼称が生まれた。
逆に言えばこの時点まで「クッキー☆」という単語は存在しておらず、「TOHO合作」や「アイスティーkiss」など呼び方は安定していなかった。
ラット辞典と手描き夏淫夢(2010年5月~)
東方夏淫夢とは淫夢と東方のコラボ動画に見られたタグである。同じようなタグはニコニコオールスターの多くに見られ、これ自体は別に淫夢特有のものではなかった。
しかし、2010年5月5日からラット辞典兄貴による「淫夢異変シリーズ」が投稿され人気を呼んでいた。
これによりそれまで他のMADジャンル同様、東方楽曲を題材とした音MADが主体であった東方夏淫夢に淫夢を題材した東方二次創作とも言える「手描き夏淫夢」の動画が注目を集め、淫夢と東方の間に特別な関係を淫夢内に印象付けていった。
また、淫夢異変シリーズは当時ほとんど動画の題材にされていなかった中、クッキー☆をネタにした数少ない動画の一つであり、それだけでなく後述するバッコイの登場を受けてはたても登場させるなど、この新たな東方夏淫夢は東方への風評被害ネタの相性の良さも現れていた。
その他の風評被害(2010年8月~)
元々風評被害という文化が既に淫夢で形成されていたことからわかるように、同様の動きはクッキー☆以前からあるもので、クッキー☆以降もTDNOLなど様々な動画が風評被害に遭っていた。
その中でも8月後半には「はたてのバッコイ殺人事件」、秋には「しゅわスパ大作戦☆」といった東方動画が風評被害に遭っており、これらもまた「【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss」と共に言及されており、同列の存在として認識されていたようだ。
まとめ
タグ付けやコメント侵略はクッキー☆投稿間もなく活発に行われていたが、この時点では固有のジャンルとしてはおろか、動画のネタとしてすらほとんど活用されず、淫夢側からも淫夢の荒らし行為として、数ある風評被害の一つ程度の存在であった。実際にこのような風評被害は珍しいことではなく、他にも多くの動画が侵略を受けていた。
またこの時点でラット辞典兄貴の登場により東方夏淫夢に新たな動きが見られるようになった。
古典的クッキー☆
セスジPからひと☆ごみ(2010年10月14日~2010年10月30日)
10月半ばにセスジPが「闘うホモたち」を投稿すると、クッキー☆MADでは大きな変化がみられるようになる。これは基本的に淫夢MADではあったもののクッキー☆がMAD素材として有効に活用されていた。これを皮切りに多くの投稿者がクッキー☆のMAD素材としての興味を持ち、次々とMADが投稿されるようになる。
こうした動きによりニコニコ大百科で10月23日には「シンメトリーRIM」、24日に「クッキー☆」の記事ができた。
10月30日にひと☆ごみ兄貴が「霊夢 so クッキー☆(投稿時タイトルはI’m so クッキー☆)」を投稿すると、この動画がニコニコ全体で幅広い人気を集めることとなった。これに伴いクッキー☆の知名度は大きく向上し、クッキー☆MADやその投稿者の増加も大きく加速していった。
こうした連鎖的な投稿者の参入は、当時すでに投稿者同士の交流が発達していた音MAD投稿者のコミュニティの影響も強く受けたと考えられる。
セスジPはそうした音MAD投稿者との交流を好んでいた人物であり、実際にひと☆ごみ兄貴は次のMADのネタに悩んでいた中、セスジPに触発されて霊夢 so クッキー☆を制作するに至ったと語っている。
また10月09日には乱射魔によりクッキー☆(sm12371379削除されているが内容は国会の映像にクッキー☆の音声を合成したもののようである。)が投稿され工作によりランキング1位にされていた。
注目度とタイミングから見てこの動画もこうした流れにある程度影響があったと考えられる。
クッキー☆騒動(2010年11月8日~)
11月8日に淫夢スレにて出演者のUDK姉貴が生放送内で淫夢語録を使われ騒いでいたこととそれによりUDK姉貴が喚き出した事が話題となる。この話題は淫夢スレでも大きなものとなり、その後もUDK姉貴の生放送を見に行く、UDK姉貴の経歴が調べられるなどの活動が行われ始める。
この行為にはドン引きする住人が多かったが、その痛い人物像や特徴的な活動の面白さもあって、痛い行為や淫夢を拒絶する姿勢への批判も含めて盛り上がった。
淫夢の話題すら押し流す勢いにまで発展したため11月11日に隔離されるように「【ニコ生】宇月幸成スレ【魔理沙】」が立てられ独立した。
UDK姉貴へのヲチ行為から始まったUDKスレであったが、その後同月14日から15日にかけて淫夢を拒絶するUDK姉貴へのバッシングよりも、UDK姉貴に迷惑をかけていったホモガキ(桜雪)への批判へとシフトしていった。それに伴いヲチスレから批判スレ、批判の為の特定スレとしての側面が強くなる。
話題がUDK姉貴だけにとどまらなくなっていった事でスレタイも現在本スレとして知られる「クッキー☆総合スレ」に変わる。
桜雪への批判とそれに伴う特定行為を受けて17日にはnisiの仲介からUDK姉貴が泣きながら桜雪を援護する配信が行われ話題になった。
しかし、その決死の声明も虚しく、桜雪に反省の色が見えなかったことから特に本スレの活動に影響は及ばさなかった。
その後「やっちゃん(YCN兄貴)」の活躍から桜雪の釈明放送にまでに至ったが、許されることもなくスレの話題はHZNの話題へとシフトしていった。
かねてから問題行動を示唆するような情報が度々発見されていたHZNであったが、NDK姉貴によるHZNへの苦言をきっかけにスレがHZNへの攻撃を行うこととなった。
削除騒動により元々HZNに対する反感が強かったことに加え、この特定活動はNDK姉貴を始めとした被害に遭った声優陣からも支持を受けたことで大きな騒動へと発展していった。
結果として孤立したHZNは12月に引退し、騒動そのものは終焉を迎える。
その後はYCN兄貴やnisiと言った騒動解決で活躍した人物にも批判の矛先が向かい、失踪させるなど動きもあったが、再び声優の配信の話題を中心としたヲチスレの側面が強くなった。
新夏淫夢(2011年)
2011年に入るとラット辞典兄貴による淫夢異変シリーズの影響を受けて多くの投稿者が手描き夏淫夢を投稿するようになっていく。ラット辞典兄貴自身もそうした手描き夏淫夢投稿者を集めて「【東方夏淫夢】お嬢様が淫らな夢に犯されています【合作】」を3月6日に投稿している。
これにより「淫夢を題材とした東方二次創作」という存在がジャンルとして定着していくこととなる。
これらは淫夢異変シリーズがそうであったようにホモビとしての淫夢ネタは勿論、風評被害ネタも積極的に取り入れられた。
特にクッキー☆のような東方への風評被害は作品内、コメント問わずネタにされており、ALISON兄貴やSUSHI兄貴のような大々的にクッキー☆を取り入れた作品も見られた。
こうして東方夏淫夢は単なる音MADの形式ではなく、淫夢兼東方民による新たな二次創作ジャンルになったと言える。これは同じく淫夢と東方と縁の深いクッキー☆MADとも関係の強いものであった。
愛無双ブーム(2011年3月~)
2011年3月23日にキャー!DBの短小包茎TNKー!兄貴により「魔理沙 so クッキー☆」が投稿されると、それを皮切りに様々なクッキー☆に登場する東方キャラで霊夢 so クッキー☆のリスペクト動画を作るI’m so クッキー☆ブームが生まれた。この動きは「一転攻勢」という音MADの新たな手法の確立もあってクッキー☆内だけに留まらず、他のMADジャンルでもリスペクト動画が投稿されていった。それらは「クッキー☆リスペクト」と呼ばれた。
これによりクッキー☆の存在が淫夢内に留まらず、ニコニコ全体に広まることとなった。
また、クッキー☆リスペクトというタグが示すようにこの頃はクッキー☆=愛無双という図式が出来上がるぐらい、クッキー☆と愛無双の関係は強いものとして認識されていた。
各種東方への風評被害とクッキー☆(2011年~2012年)
2010年にはクッキー☆、バッコイ、しゅわスパ大作戦☆と様々な東方動画が風評被害に遭ってきたが、そうした動きは2011年にも見られ、つるぎのまいシリーズ、コスプレ例大祭、野獣妻、満ち、解き放たれる光などむしろ活発化していた。
特に早苗といっしょにトレーニングは意図的にクッキー☆や淫夢ネタを扱ったものでありMADの方でもよく活躍した。
意図的にクッキー☆を扱っただけあって作者のkasuya兄貴も淫夢民とは友好的に交流を行っていた。
この頃はクッキー☆という存在が大きくなり、知名度が高かったことから、淫夢による東方への風評被害全般がクッキー☆と一緒くたにされていた。
NDK姉貴叩きとクッキー☆☆(2011年3月~12月)
HZN引退以降nisiやYCN兄貴が失踪して声優以外の騒動の関係者がほとんどいなくなった中、相変わらず声優の生放送でスレの話題を持たせていたがそれもUDK姉貴たちが高校卒業した頃には行われなくなり、スレの話題にされていた人物の動きがほとんど見られなくなったことでスレとしての機能は失われていった。
そんな中まだ活動しており、クッキー☆と積極的に協力関係を結んで持て囃されたNDK姉貴の過去が調べられ、荒んでいた中学生活が話題となり、NDK姉貴を叩く動きになっていく。これは暇を持て余した姑息な策ではあったが、かつてのUDK姉貴を調べたような流れは大いに盛り上がり、NDK姉貴はネット上から姿を消し、本スレに残っていた住人でもこうした傍若無人な活動に呆れて去って行くものもいた。
NDK姉貴も去った事で完全に新たな話題を失った本スレであったが住人の一人Ziが全く関係ない東方ボイスドラマを、魔理沙役のMZ姉貴が棒読みだったという理由で動画を晒したことで、新たな動きに繋がっていく。
最初は困惑の声がほとんどで内容も酷かったことから視聴もままならない状態だったが、出演者のTIS姉貴、MZ姉貴、BNKRG姉貴が生放送をやっていたことから彼女らの放送を侵略することで、生放送の視聴という本スレの原点的な面白さを再発見し、その後はこのクッキー☆☆が本スレ内で中心的な話題となっていった。
まさにクッキー☆騒動再来と言える状況ではあったが、今回の場合はHZNのような声優からも非難されるような絶対悪はおらず、クッキー☆総合スレは完全に声優の生放送を中心としたネット活動のヲチスレとしての面のみの存在となった。
ただ絶対悪の存在がいないとはいえ、企画者であるTIS姉貴に風評被害の責任を追及するように批判する、TIS姉貴やBNKRG姉貴のファン同士による対立煽りも見られるといった攻撃的な活動は見られた。
こうした攻撃性はそれまで評価の高かったYCN兄貴やNDK姉貴を叩く、目的の無い叩き行為の延長として見ることもできる。
音MAD黄金期、ほのぼの神社アレンジブーム(2012年)
2011年の間に愛無双ブームと様々な東方への風評被害を受けてクッキー☆はMADジャンルとして大きな存在となっていた。同時期には淫夢がニコニコでも急成長を遂げており、その余波も強く受けた。
特に2012年は淫夢でも活躍していた2号兄貴を始めとした48兄貴、なで肩兄貴、海老ルーミア兄貴と人気の高い音MAD投稿者が次々とクッキー☆でも活躍するようになっている。
この時期のトレンドとしてクッキー☆音MADではシンセ化とそれによる音合わせと美しい旋律が評価され、特にそれらと相性の良い音ゲー楽曲の人気が高かった。こうしたシンセ主体の音ゲー音MAD人気はひと☆ごみ兄貴から始まっているクッキー☆音MADの歴史に影響された事が窺える。。そしてこのトレンドに対して上質な音質と加工のしやすい棒読みというクッキー☆の特徴は音MADの題材として相性が良く、こうした面も人気に繋がっていたと考えられる。
またそれまでたまに投稿されていたほのぼの神社アレンジが「雨上がりのほのぼの神社.omg」が投稿された辺りの11月から連日のように投稿されるようになる。
これによってほのぼの神社がDTMのジャンルとして定着していった。
クッキー☆☆☆(2012年2月~)
本スレの新たな中心的な話題となっていたクッキー☆☆であったが、こうした関係ない動画をクッキー☆として取り込んでその出演者を話題にしていく流れはその後も行われ、2月後半にはクッキー☆☆☆が晒上げられてAZS姉貴が注目を浴びた。
ニコニコ動画ではバッコイに始まる風評被害が相変わらず行われていたが、それとは動機も経緯も違う形で本スレ側からの風評被害が生まれていった。
クッキー☆☆☆☆(2013年1月~)
TIS姉貴叩きもあって一度失踪していたTIS姉貴であったが、突如として再び姿を現し、新たな企画を立ち上げることとなった。
人気の高かったMZ姉貴の続投や、クッキー☆☆☆で人気を集めたAZS姉貴の起用もあり新たなネタになるのかと元々期待は高かったが、KNN姉貴という特徴的な声優の存在が大きな話題を呼び、瞬く間にこの動画の出演者が新たな本スレの中心的な話題となった。
KNN姉貴はその反応の良さもあって瞬く間に新たな注目株として君臨したが、その後KNN姉貴はすぐにアカウントを消して失踪してしまった為、本スレでの人気は高いものの話題にされる事は減った。一方でそれ以外の声優や生放送を再開したTIS姉貴に注目が集まることとなる。
特に配信もしていたAZS姉貴は元々の人気もあって、AZS姉貴の周辺人物にまで注目が集まるほどKNN姉貴の穴を埋めるように話題にされていった。
この時代はお正月企画の印象が強いものの、同時期に風評被害を受けた秋葉散策の面々も配信をしていたことから並行してよく話題にされ、別にクッキー☆☆に限定されるような状況ではなかった。
またこの時期YMN姉貴がクッキー☆について言及していたことも話題にされたが、人気配信者であったこともあってそこまで大々的に話題にはされていなかった。
クッキー☆☆ブーム(2013年1月)
お正月企画の話題性はニコニコでも大きかった。特に投稿から数日でMMD版が投稿されると、MAD素材として使用できるようになり、I’m so クッキー☆☆シリーズが作られるなど多くのクッキー☆☆MADが作られた。
ただし、そのブームは数カ月程度で落ち着き、爆発力こそあったものの一過性のものであった。KNN姉貴以外のキャラの出番も少なかった。
まとめ
この時点のクッキー☆MADは音MADとその投稿者の影響が強く、音MAD投稿者の傾向として、影響力のあった投稿者であってもクッキー☆専属という事は少なく様々な音MADを投稿している中、クッキー☆でも活動しているといった投稿者が多かった。
特に淫夢全体で見てもブルーベリーシリーズやキルミーベイベー、アマガミ、まどか☆マギカと流行りのサブカルチャーが風評被害と称して積極的に取り入れており、こうした淫夢の派生ジャンルの一つとして楽しまれる傾向が強かった。
この時点でのニコニコ動画でのクッキー☆はMAD動画ジャンルとしてニコニコオールスター的な存在であったと言える。
一方、クッキー☆騒動によって淫夢スレから本スレが生み出され、関係者への特定行為やヲチ行為がスレの文化として発展していった。
東方への風評被害は変わらず続けられていたが、クッキー☆の存在感が増すほど、クッキー☆と一緒くたにされていき、クッキー☆がMADジャンルとして確立していった事に伴い、動画のネタとして組み込まれるようにもなっていった。特にしゅわスパ大作戦☆は萃香と野獣妹と言うクッキー☆と淫夢どちらにも扱いやすいネタから頻繁にネタが共有されていった。
更に東方夏淫夢の影響からクッキー☆は淫夢を題材とした東方二次創作の場としても活用されていた。
この時代は一口にクッキー☆と言っても
・乱射魔(とさる)発端の「風評被害という名目のコメント侵略」
・ラット辞典兄貴発端の「東方二次創作としての東方夏淫夢」
・ひと☆ごみ兄貴発端の「音MADを主体としたMAD素材」
・クッキー☆騒動に始まる「ネット声優(配信者)へのヲチ行為」
と時期も理由もバラバラに様々な要素がジャンルとしてそれぞれ確立した。これらは互いに多少認識はされていたものの、それぞれが自己完結しており、目的も大きく異なった事からあまり影響を与え合うこともなく独自発展を続けていた。
現代クッキー☆
2013年秋
キャラソンブーム
2013年09月08日に「「こちら、幸福安心委員会です。」歌ってみた(再up)」が投稿されると、そのまるでクッキー☆☆での関西おばさんが歌っているかのような歌唱力が話題を呼んで、次々とKNN姉貴を中心としたクッキー☆☆声優の歌ってみた動画が転載されていき、クッキー☆キャラソンというカテゴリーが生まれた。
これはただ動画内のブームというだけでなく、声優の活動の特定と晒上げと言う本スレ的な行為と、動画のコメントやタグによるネタや、MAD素材と言ったニコニコ的な行為という、これまで関連の薄かった要素を同時に内包した文化であった。また、これにより、それまでKNN姉貴に人気が集中していたニコニコでのクッキー☆民の間に他のクッキー☆☆声優への注目を集めることとなった。
それに伴いこれまでクッキー☆キャラを二次創作的なキャラクターとして扱う傾向の強かったニコニコで、本スレのような中の人を意識する傾向が強まった。
BBクッキー☆劇場ブーム
2013年11月06日にケモ兄貴による「いたずらSIK」、2013年11月17日にはOh兄貴による「転んだSIK.mp4」が投稿され人気を呼んだ。この2人の投稿者は競い合うように次々と人気BBクッキー☆劇場を投稿し、彼らに続いて多くの投稿者もBBクッキー☆劇場を投稿するようになり、BBクッキー☆劇場ブームが到来した。
BBクッキー☆劇場自体は古くから見られたものの投稿者が少なく、投稿頻度も極めて低かった。しかし、2013年に入るとケモ兄貴が投稿した「SIREN cookie」が人気を得て少しずつ注目されていった。そして11月に入ってようやくブームと言える状況にまでなった。
BBクッキー☆劇場という形式は音MADや本編改造クッキー☆では扱いにくかった、声優のネタを、配信音声を素材にすることで扱いやすくしていき、同時期のキャラソンブームの影響でニコニコでも声優への関心が高まっていたことから、動画内にもこうした本スレ的なネタが組み込まれることが増えていった。
また、ストーリ性の強いBBクッキー☆劇場はそれまで手描き夏淫夢が中心となっていた淫夢を題材とした東方二次創作という側面を吸収していき、二次創作的な活動としての性格を強めていった。
このBBクッキー☆劇場の発展によって素材の少なかったSIKの需要が高まると、以前本スレで話題にされたクッキー☆を言及したYMN姉貴の動画が投稿され、注目を集めた。これもまた、ニコニコ的な要素と本スレ的な要素が噛み合った結果の動きであった。
クリスマス企画とハロウィン企画
丁度キャラソンブームによって声優人気が高まっていた2013年9月24日に、それまでしばらく姿を晦ませていたTIS姉貴が復活し新しいクリスマス企画を立ち上げていたことが話題になった。お正月企画の成功もあってこれを新たなクッキー☆と期待された中、出演者であるDIR兄貴(どこぞの代理)をきっかけに「ハロウィン企画」なる企画も進んでいたことも発見された。
こちらも新たなクッキー☆として注目を集めたものの、ハロウィン☆の話題が盛り上がっていくと、露骨にクッキー☆を意識MK兄貴の言動も手伝って、ハロウィン☆を話題にすることに反感を持つ住人も本スレ内で見られるようなる。
ここから「クッキー☆を狙った作品をクッキー☆とすべきではない」という主張が見られるようになり、何をクッキー☆とすべきかと言う議論が活性化していった。ハロウィン☆そのものは内容のつまらなさから、投稿後すぐに話題にされなくなり、逆に期待されていた新クリスマス企画もKNN姉貴のような逸材が居なかったとしてそれほど盛り上がりを見せなかったが、この議論はその後も続いていった。
ポストTISと養殖批判
出だしの悪かった新クリスマス企画であったがTIS姉貴というネームバリューもあって、こちらはハロウィン☆と違って熱心に話題にするよう心掛けられていた。そしてTIS姉貴の今後の活動にも期待が高まっていたが、フル勃ち兄貴の特定作業をきっかけに突如としてそれまでどんなに特定されても失踪の気配の無かったTIS姉貴がアカウントを消してしまった。
その後TIS姉貴の後継者の座を争うように次々とクッキー☆を企画する人物が現れることとなる。これはMK兄貴の登場がクッキー☆側の人間でも企画者となることを印象付けた結果と言える。
しかし、ハロウィン☆の発見から行われたクッキー☆の定義の議論も勢いを増しており、こうした作品は「養殖」とレッテルを貼り、反感を持つ者も増えていった。
反対にTIS姉貴の方はそれらと対比させるため評価が高まっていった。特に彼女が失踪してからはこれまでHZNの代わりになる悪役として本スレ内で代表的な嫌われ者にされていたはずのTIS姉貴が神格化されていくようになった。
養殖の対義語として「天然」という言葉も生まれたが、この天然という言葉は明らかにクッキー☆☆シリーズ(+クッキー☆)を指したものであった。また、この言葉はクッキー☆を意識せずに風評被害を受けた作品と言う事であったが、そもそもクッキー☆☆はお正月企画以降から明らかにTIS姉貴がクッキー☆を狙っていると本スレが批判しており、既に意味と実情が破綻していた。
クッキー☆を定義付けするために生まれた養殖、天然という言葉であったが、その本質はクッキー☆☆を持ち上げそれ以外を拒絶する為のレッテルであり、現状として養殖となるものがネタに出来ないとされ、天然とされるものが求められているわけではなかった。実際2014年以降、多くの企画が発見され養殖批判が盛り上がっていた中、
2015年5月23日に「【東方古ボイス】樂園の天使たち」が風評被害を受けていたが、こちらの動画が本スレで持ち上げられる事は無かった。
これ以前は秋葉散策やポッキー☆、クッキー☆ZEROとクッキー☆やクッキー☆☆以外の関係者が本スレで話題にされる事も少なくなかったが、養殖。天然という言葉が生まれて以降、話題はクッキー☆とクッキー☆☆に限定していく傾向が強くなった。
ちなみに新たに登場した企画者の多くは投稿までに至らず頓挫しており、2014年で実際に新たな企画者として活動したのはハロウィン☆以降も活動を続けていたMK兄貴に加え、ATUD兄貴とKZY兄貴ぐらいであった。
この段階ではクッキー☆側がクッキー☆を企画することが実績として影響を与えていたものの、まだそれはハードルの高いものであったことが窺える。
クッキー☆☆静画とRIM一家、UDK姉妹(2014年~)
2014年に入るとそれまで素材投稿やコラ画像が主であった静画でクッキー☆の絵が多く描かれるようになっていった。これはBBクッキー☆劇場ブームに伴い、手描き夏淫夢のような東方二次創作としての側面がクッキー☆で強くなったことも影響していると考えられる。特にこの発展の初期に大きな人気のあったek兄貴の「かんなと申します。」は明らかにケモ兄貴やOh兄貴を始めとしたBBクッキー☆劇場でのSIKやKNN姉貴のキャラクター像を色濃く受けていた。
更にチョコアイス兄貴とUMO兄貴がRIM一家、UDK姉妹のイラストを投稿するようになると、これらグループ絵が高い人気を得るようになった。RIM一家、UDK姉妹というネタ自体はどちらも2014年01月22日の「お正月童話劇場 『シンデレラ』」、2013年02月09日の「【MMD】UDKとAZSの確執」から生まれたものだったが、この2人の絵師が描写したRIM一家、UDK姉妹はクッキー☆、クッキー☆☆のRIM役、UDK役を上手く描き分けキャラクターを立たせたものであり、従来のRIM一家、UDK姉妹を一新させ、彼らの家族構成がその後のグループの基本となった。
ナッシャーク兄貴とNENEの確執(2014年3月頃?)
BB素材動画で人気を得ていたナッシャーク兄貴がツイッターにて本スレ民のNENEと喧嘩する状況がクッキー☆動画スレを中心に話題にされた。
内容は主に声優に攻撃的な本スレを批判するナッシャーク兄貴に対して、NENEがMAD投稿者もそれに加担していると言及するものであった。
この喧嘩は2人の間だけに留まらず、クッキー☆の攻撃的な面を批判するクッキー☆民とその批判者を偽善者と批判するクッキー☆民による対立が生まれていった。
これは2013年秋に入ってそれぞれ独自発展を続けていた本スレ的なクッキー☆とニコニコ的なクッキー☆との接点が急激に増えたことによる、双方の認識のズレが引き起こした対立であったと考えられる。
ポストATUDと新勢力
養殖・天然の分類はできた時点で定義に反したものであったが、RIM一家・UDK姉妹の流行もあり、しばらくはそれほど違和感なく受け入れられていた。
しかし、クッソー☆☆☆の登場から明らかにクッキー☆を狙った養殖とされる作品でもRRM姉貴という新たな声優がクッキー☆全体で話題となっていった。特に本スレではRRM姉貴に続いてクソクリ☆の声優陣が積極的に配信を行っていたことから、それまでのクッキー☆☆に代わって中心的な存在となっていった。
これにより元々曖昧だった養殖の定義は更に揺れることとなり、企画者が狙っていても、声優が意識していなければ天然といった、もはや発端であるはずのハロウィン☆ですら天然になってしまいかねない新しい解釈が生まれるような事態にまでなった。
またクッソー☆シリーズの成功からそれまでと比べても新しい企画者が多く生まれることとなった。
ネタや声優などクッキー☆で人気のある要素を積極的に作品に取り込んでいくATUD兄貴のわかりやすい作品構成は、他のクッキー☆民が企画を立てる上でそのハードルを下げる効果があったと思われる。
その為当時企画された作品にはRRM姉貴を始めとした多くのクッソー☆声優が採用されており、それまでTIS姉貴の後継争いという側面が強かった新作がATUD兄貴を倣ったポストATUDともいえる作品群となっていった。
また、こうした積極的な他の作品との声優の共有は、声優とクッキー☆の間に強いつながりが生まれていき、結果的にクッキー☆と知って、失踪や応募の取りやめといった企画の頓挫に繋がっていたトラブルへの対策にもなった。
一方でこうした声優とクッキー☆の関係性の強化は養殖批判をさらに強めることにもなった。
まとめ
2013年秋はキャラソン、BBクッキー☆劇場、ハロウィン☆と多くのその後に影響を与える出来事が頻発しており、それまでのクッキー☆から大きく変化した時期であった。
主な変化はそれまで関係の薄かった、ニコニコ的なクッキー☆と本スレ的なクッキー☆の接点が増え、双方の要素を兼ね備えた文化が大きな存在となっていった点がある。
こうした異なる文化の合流は、MAD文化に深みと人気を与えた一方、その認識のズレから投稿者や本スレへの批判や対立が激化するようにもなった。
また養殖というレッテルからクッキー☆とはどうあるべきかという議論も積極的に行われるようになった。この論戦は上記の投稿者、本スレの対立とも関連付けられていき共に話題性を増していった。
総括
クッキー☆がクッキー☆というコンテンツとして成り立ったのは実質2010年の秋からであった。
この頃のクッキー☆とは「関係ない動画を淫夢と関連付ける侵略行為」であり「淫夢と東方を組み合わせた二次創作」であり「優秀な音MADの楽器」であり「ネット配信者へのヲチ行為」であった。
そしてこれらはお互いに認識こそされるもあまり影響を与えず発展していった。
故にニコニコでのクッキー☆は淫夢が巻き込んだ派生ジャンルであり、淫夢で二次元の女の子を扱う淫夢原理主義者が嫌うオタク的なニコニコオールスターであった。
そして本スレはネットで活動する人物を友好的、批判的にアイドル視するヲチスレであった。
こうした古典的なクッキー☆に大きな変化を与えたのが2013年の秋で、これによりこれらの文化がそれぞれ強く意識されるようになった。
キャラソンはガン掘りという特定行為に動画素材としての需要を上昇させた。
BBクッキー☆劇場の流行は音MADにより音楽的な要素の強かったクッキー☆MADにストーリ性や設定の需要を高めて二次創作的な側面を強くした。これに伴いそれまで様々なジャンルを嗜んでいたクッキー☆民がクッキー☆への専門性を増すこととなった。
ハロウィン☆の登場はクッキー☆らしさを問う論争へと発展した。
10年の長い歴史の中でもクッキー☆は様々に変化したように思えるが、その内容は古典的クッキー☆と現代クッキー☆の二分にまとめることができる。
そしてその変化も形ではなく内容で見ると、キャラソンはかつてのコメント侵略の延長であり、BBクッキー☆劇場はかつての手描き夏淫夢の延長であり、クッキー☆を企画することもまた風評被害や夏淫夢の延長と見ることができる。
実のところ発表の形式や場所、量、言葉こそ変化したものの、その目的となる本質は古典的クッキー☆に既にあった事の延長に過ぎず現代クッキー☆との内面的な変化はそれほど大きくなかったように思う。
むしろ古典的クッキー☆と現代クッキー☆を隔てる最も大きな変化は、それまで他のクッキー☆の文化をあまり意識していなかった各地のクッキー☆がそれぞれの存在を意識するようになったという、クッキー☆民の視野にあると考えられる。
これにより自分の知るクッキー☆とは異なる認識でクッキー☆を捉えているクッキー☆民が眼に入るようになり、認識の違いによるトラブルや自分が知るクッキー☆を知らないと見てのにわか叩き、クッキー☆とはどういうものかと言う主張や論戦が行われるようになった。
そして近年はそれまで配信の場の中心であったニコ生がツイキャスなどに移り、クッキー☆スレは本スレから派生していき、静画が主だったイラストは勿論、MAD投稿の場ですらツイッターなどが台頭してきた。活動場所という点ではそれまで中心を担っていた、ニコニコ動画とクッキー☆総合スレの存在感はどんどん希薄になり、それぞれの場所で小さなコミュニティが形成されていく文化の細分化が進んできている。
こうした細分化はコミュニティ同士の認識の違いを更に生み、本来のクッキー☆について語られる事も増えていくと予想される。しかし、クッキー☆の歴史を見て分かるのは、クッキー☆を発展させていったのは多くのクッキー☆民がクッキー☆騒動で活躍したNNTNやYCN兄貴の存在を知らないように、これまで積み上げてきた歴史を意識することではなく、今自分が何をしたいかと言う欲求であった。そしてそれは時代が変わっても「風評被害」「音楽」「二次創作」「ヲチ行為」という点に集約されていた。
そしてこれからのクッキー☆を発展させる力もまた、クッキー☆とはこういうものだという主張でも、これはクッキー☆ではないという選別でも、昔はこうだったという歴史にすがることでもなく、自分がこれから何をしたいかと言う根本的な欲求や目的意識であると考えられる。
要はクッキー☆の歴史にクッキー☆とはどういうものかを主張したい人が求めているようなものなんて無いし、そんなものにすがるぐらいなら過去なんて気にせず、今自分のやりたいことをクッキー☆に費やしてれば良いうんこ
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