人口ボーナスとか人口オーナスとかいう考え方があります。国民の中の労働力人口が増える時代を人口ボーナス期と言って、この時期はその国の経済が高度成長する時期となり、逆に国民の中の労働力人口が減る時代を人口オーナス期と言ってその時期を迎えた国は経済の成長率が低くなるという考え方です。
私は端的に言ってこの考え方は間違っていると思います。むしろ逆に、人口ボーナスの方が経済成長が低くなり、経済成長が高くなる可能性すらあると思います。
上記の表を見てください。日本の高度成長期におけるにおける労働力人口の増加率と経済成長率の関係です。これを見ると、労働力人口の伸びは概して1%であるにもかかわらず、経済成長率は概して10%以上です。労働力人口と経済成長率には何の関係もない事がわかります。
私は過去にも言っているように、よっぽど内戦をやっていて生産力が破壊されてとかそういう状態でない最低限の技術や資本がある国であれば、供給力が経済成長に影響を与えることはないと考えています。経済成長に影響を与えるのは需要がどれだけ伸びていくかが経済成長であると考えます。需要さえ伸びれば、企業にとって設備投資を行った方が儲けが大きくなるという事になりますから、自然と供給力は増えるのです。ですから供給力の一要素である労働力人口が伸びたところで経済成長とは関係ないのです。
では、一般的に労働力人口が伸びている国の方が経済成長率が高いように見えるのはなぜでしょうか。それは、労働力人口が増えている国というのは基本的に多産少死の発展途上国です。発展途上国の国民はまだまだ満たされない欲望がたくさんあるわけですから需要が伸びやすいのです。いずれにしても経済成長に影響を与えているのは需要だという事です。
さて人口オーナス期であるとされている日本で経済成長率が良くないのは何故でしょうか。第一の理由は財務省や日銀が適切な総需要拡大政策を取ってこなかった事が原因である事は言うまでもありません。ですが、第二の理由として高齢者が消費しない経済主体である事も理由であると思います。とにかく日本の高齢者は消費をせずにお金を溜めこむのです。
もし日本の高齢者が旺盛な消費を行う経済主体であれば、逆に高齢者のような人口オーナス(お重荷)の増加は経済成長の促進材料となるのです。ですがそうなっていません。