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 2014年8月5日、朝日新聞が吉田清治の慰安婦強制連行証言を虚偽だと認めた後、朝日新聞はこの歴史的な報道犯罪のインパクトを薄めるべく、2つのデマを流した。一つは、吉田の証言に基づく済州島での慰安婦狩り報道を「捏造」ではなく「誤報」だと言い張ったこと。二つめは、吉田証言がその後の慰安婦問題や日韓関係に与えた影響はほとんどないと強弁したことである。

 前者に関しては、吉田証言を報じた北畠清泰・元論説委員が、証言を覆しそうになる吉田を電話で必死に説得していた現場を、元朝日新聞の長谷川煕氏が目撃したと著書『崩壊 朝日新聞』に記ていることから、誤報ではなく捏造の可能性が濃厚である。また、97年3月31日に朝日新聞が吉田証言に関し、「裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない」と報じた時、吉田証言報道を主導してきた清田治史・元取締役が訂正記事を敢えて出さない判断したことに鑑み、嘘だと分かっていながら意図的に20年近くも訂正・謝罪から逃げ続けてきたことは明白である。

 一方、後者に関して、朝日新聞は第三者委員会を設立して検証しているが、委員の一人、東大教授の林香里がまとめた『データから見る「慰安婦」問題の国際報道状況』24頁に次のような記述がある。
吉田清治氏が、欧米メディアではさほど知られていないことは、他にも証言がある。東京在住ベテラン英国人特派員 D. マクニール氏(エコノミスト)と J.マカリー氏(ガーディアン)は、「私たちは今年に入るまで吉田を知らなかった。しかしこの 10 年ほど、韓国やそれ以外の国の、多数の当事者の女性たちにインタビューしてきた」と、慰安婦報道の経験の所感を述べている。以上に見たとおり、結論としては、吉田清治氏は各国主要紙には、きわめて限定的にしか言及されていないと認定できよう。
 このページの脚注に証言の出典が明記されてある。
“Sink the Asahi!” in Number 1 Shimbun. November 2014, Vol.46 No.11. p7. マカリー、マクニール両氏ともに 2000 年代初頭から東京特派員として駐在している。

 エコノミスト誌のマクニールも、ガーディアン紙のマッカリーも、現地採用記者であり、本当の意味での特派員ではないが、それはさておき、“Sink the Asahi!”(『朝日を潰せ!』外国特派員協会会報2014年11月号)の原文を見てみよう。これは、朝日新聞社長の衝撃的な謝罪から2か月後に書かれたもので、徹底した朝日擁護論である。
In fact, the Kono Statement was the product of years of campaigning by Korean and other former military sex slaves. Likewise, the discredited Yoshida memoir and Asahi’s reporting of it had nothing to do with Resolution 121. 

実際、河野談話は韓国などの元性奴隷が声を上げた賜物である。 同様に、信用を失った吉田証言や朝日新聞の報道は、アメリカ合衆国下院121号決議と全く関係がない。
After the Asahi’s retraction, we were approached by several Japanese news organizations asking the same question: Wasn’t the Asahi coverage of the comfort issue a major influence on reporting by foreign correspondents? We both have a clear answer: no. Neither of us had even heard of Yoshida until this year. 

朝日新聞の吉田証言訂正後、日本の複数のメディアから「外国メディアの慰安婦報道は、主に朝日の報道から影響を受けたのか?」と聞かれた。 我々は明確に「ノー」と回答した。我々は吉田清治の名前さえ、今年になるまで聞いたことがなかった。

 日本に十数年滞在し、慰安婦問題を報じてきた外国人記者が、二人とも吉田清治の名前を全く聞いたことがなかったなんてことがあるのだろうか?もし事実なら、恐ろしく不勉強な記者というしかない。元慰安婦によるいい加減な証言なら腐るほどあるが、日本側で軍による強制連行を証言した例は吉田清治しかいないのである。吉田の証言が嘘だということは、強制連行を証明する日本人は皆無ということになる。

 マクニールはただのジャーナリストではない。歴史問題で日本を糾弾する論文を発表するサイト・ジャパンフォーカスのエディターであり、多くの欧米学者や日本の左翼活動家の論文に精通している。その中に、嘗て吉田清治に言及した記事がないか調べてみたら、案の定、あった。Philip Seatonという北海道大学の准教授で、小林よしのりの『戦争論』を批判した論文を2010年8月に掲載している。

Historiography and Japanese War Nationalism: Testimony in Sensōron, Sensōron as Testimony
歴史編纂と日本の戦争国家主義−−戦争論における証言、証言としての戦争論
Kobayashi continues by trumpeting the recantation of the testimony of Yoshida Seiji, a soldier who said he abducted women to work as “comfort women” in a book titled Watashi no Sensō Hanzai (My War Crimes, published by Sanichi Shobō in 1983). Yoshida’s testimony, in Kobayashi’s view, is a classic example of “testimony” as “fiction”.
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 ご丁寧なことに、小林よしのりの漫画付きである。無論、マクニールもマッカリーも、この程度の日本語なら読めるはず。これ以外にも、小林よしのりに言及する記事がジャパンフォーカスにあり、マクニール自身も小林に言及した記事を書いたことがある。
インデペンデント紙 2005年12月
Anti-China comics head Japanese bestseller lists

 10年以上前、小林よしのりの戦争論は大変なブームになり、日本の右傾化の象徴として外国メディアの注目の的だった。あの主要論点の一つが慰安婦問題であり、吉田証言の否定だったのだ。マクニールやマッカリーが吉田清治を知らないはずがない。彼らは、朝日新聞の訂正・謝罪によって慰安婦問題が根底から崩れることを恐れ、「吉田なんて知らなかった。」と意図的に嘘をついたのではないか?「吉田清治の証言なんて、強制連行を証明する何百の証言のほんの一つに過ぎず、それが偶々ウソだと判明したところで、強制連行の事実は全く揺るがない」と言うために、「外国人記者は吉田清治の名前すら知らない」という事例を自ら演じているのであろう。何のため?慰安婦問題は、安倍政権を叩く大事な武器の一つだから。そして、当然のことながら、己の過去の誤報を認めたくないから。自分で取材もせず、朝日新聞だけ読んで、記事を書いてましたと認めたくないから。などなど、イデオロギーと保身が入り混じった動機があるのでしょう。

 嘘つきは、吉田清治や元慰安婦、朝日新聞だけはないようである。マクニールの嘘が崩れるということは、マクニールの証言を根拠にした朝日新聞の言い訳も崩れるという訳だ。



【後日談】
 


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