国民不在の自民党総裁選が終わり、約1か月後には総選挙が行なわれる。今度は国民が主役だ。総裁選には投票できなかった全国の有権者が「1票」を行使して政治に物言う番がやってくる。
「物言いたくても投票したい候補や政党がない」。そう歯がみする人も多いだろう。
総選挙で投票したい候補がいないなら、有権者が「ためにならない」と考える政治家を懲らしめる方法がある。それが落選運動だ。一言で言えば、国民が候補者の素行や過去の言動をチェックしてその事実を他の有権者に広く知らせ、当選させないようにする。やり方は、ネットやSNSでもいい。落選運動なら国民はいつでも政治家に「落選させるぞ」と主権者の力を示すことができるのだ。
「生まれ変わった自民党を国民にしっかり示す」。岸田文雄・新総裁は第一声でそう語ったが、国民注視の総裁選は逆にこの党が何も変わっていないことを露呈した。
岸田氏の背後に麻生太郎氏、高市早苗氏のバックに安倍晋三氏、河野太郎氏には退陣する菅義偉・首相、野田聖子氏には二階俊博氏と4人の長老がそれぞれ応援につき、決選投票は派閥の談合で勝ち馬の岸田氏に大勢が乗った。
自民党が自ら変わろうとしないのなら、国民の1票で変えるしかない。
新しい政治には、役割を終えた政治家たちはいらない。筆頭に挙げられるのが、コロナ禍の国民の苦しみを解決するより、自分たちの権力維持に走った4人の長老だろう。ジャーナリストの青木理氏が語る。
「コロナ対策を誤ったのは安倍政権です。対応が後手後手で検査も満足に行なわれずに感染者が増え、緊急事態宣言を出さざるを得なくなったが、やったことは国民にマスクを配っただけ。安倍さんは『国民の生命と財産を守る』と言いながら何も守れなかったのに、退陣後はキングメーカー気取りで政治を動かしている。こんな政治家は国会からお引き取り願うべきです」
副総理として政府のコロナ対策に責任を負う立場だったにもかかわらず、「外で飯を食うな、人に会うな等々、制限をいつまでされるおつもりなのか」など無責任な発言を続けた麻生氏も同罪だ。
「麻生さんは政界を自分の遊び場だと思っている」(評論家・小沢遼子氏)
菅首相の辞め方も無責任すぎる。
「自分が総裁を続けるためにあがき、勝てないと分かるとコロナ対策の途中で政権を投げ出した。国民のための政治ではない」(前出・青木氏)
あがく菅首相を安倍氏と麻生氏、それに二階氏が寄ってたかって引きずり下ろしたというのが“コロナ政変”の真相だ。
その4大長老に踊らされ、政治家としての資質のなさをさらけ出したのが次の3人だ。
野田氏は勝ち目もないのに「総裁選に出たい」という“見栄”のため二階派に兵を借りて出馬し、混戦に追い込んで長老支配の延命に手を貸した。
安倍側近の下村博文氏は出馬の意向を示しながら、菅首相に「出馬するなら政調会長を辞めろ」と一喝されると断念して覚悟のなさを露呈した。
もう1人は甘利明氏だ。経済再生相時代に政治資金問題で失脚し、「マネー疑惑で病院に逃げ込み、のこのこ戻ってきた鉄面皮」(前出・小沢氏)との評価があるが、復権のために安倍―麻生氏の意向を受けて立ち回り、幹事長の座を射止めた。
自民党の「長老支配」を国民の1票で終わりにするには、この7人は真っ先に標的になる。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号