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不定期更新のブロマガもついに3回目。果たして次はあるのでしょうか。
今回は、人力ボーカロイドを作る上で常に直面する問題「その文字の素材が1つもない」「あるにはあるけど素材としては使い物にならない」をクリアするための(半ば苦し紛れの)技術のお話です。わずかな素材で遊び倒している音MAD界隈の皆さんにとってはお馴染みの技術かもしれませんが、改めて記録として残しておきます。
まず前提として、人間が文字を話すときに口から発せられた音は、いわゆる「子音」と「母音」の組み合わせで表現されます。日本語は母音は「アイウエオ」の5音であり、この前に子音をくっつけることで五十音(実際は50音以上あるけど)の文字として区別される訳ですが、主に歌声を素材として用いる人力ボーカロイドでは、「歌詞によく出てくる文字」と「そうでない文字」の差がクオリティにダイレクトに影響します。
素材の選択肢が少ないときはもちろん、そもそもその文字の素材が全く無い場合どうするか。「諦める」のも手ですが、その前にまず考えるのが「音の合成」です。たとえば「タ」が無い場合、別のサ行から取ってきた t と ア段の a の素材をくっつけて「ta」を作り出す、という考え方です。
これが上手くいけば何の問題もありませんが、子音と母音の境界が曖昧だったりすると、「それっぽいけどなんか不自然」「子音と母音がうまく融合していない」という状態になったりします。
そんなときに重宝する(こともある)のが、「子音を削ってみる」という技術です。たとえば、「サ」の「s」部分の摩擦音の波形を削ると、「タ」に聞こえます。「t」はどこから出てきたんだよ、と言いたいところですが、そういうものなので気にしてはいけません。
(口の形や舌の動きなど理屈としては色々考えられますが、あくまで結果が重要です)

「サ」の波形(如月千早)。ラインの辺りから前の波形をバッサリ削る
ということで、そんな「子音の波形を削ることで代用可能な文字」についてこの記事でまとめてみようと思います。ほぼ完全互換のものもあれば、「聞こえなくもない」レベルもあります。そのときそのときの発声によって異なる結果が出るケースが多いので、あくまで参考程度でお願いします。
なお、子音に破裂音、摩擦音、破擦音が含まれる文字のみ取り上げます。それ以外の文字は子音を削ったら大体「アイウエオ」かせいぜい「ヤユヨ」です。
・サ、ス、セ、ソ → タ、トゥ、テ、ト
上で挙げたように、摩擦音部分を根っこからバッサリいくと、サ行はタ行にコンバートできます。非常に互換性が高く、「セ」が足りない場合に逆に「テ」の頭に摩擦音を加えるなど、合成加工の基礎知識としても役立ちます。「ス」は「ツ」ではなく「トゥ」になります。
・シ → リ、ディ
サ行でも「シ」だけは他と発音の仕方が違うため、違う結果になります。上のケースと比べると互換性はやや低めで、「代用品として使えるケースもある」程度で押さえておくとよいでしょう。
・カ → タ
カは頭の破裂音を削ると大体「タ」になります。
・キ → リ、ギ、ティ、ヒ、ピ
キは破裂音をほぼ全部削ると「リ」に聞こえるケースが多いですが、人によって「ティ」だったり「ヒ」や「ピ」に聞こえなくもなかったりさまざまです。ちょっと長めに(2~3割くらい)残すと「ギ」に聞こえるケースが割とあります。その辺りの文字に困ったら、試してみる価値はあります。
・ク → グ、フ、プ、トゥ
クもケースバイケースで色々な文字に聞こえます。「トゥ」の代用品としては「ス」のほうが圧倒的に優秀なので、それ以外の用途で掘ってみると金脈があるかもしれません。
・ケ → ゲ、ヘ
キやクと比べて、代用品としては使い勝手がイマイチです。「ヘ」に聞こえなくもない、というケースは割とレアなので、根気よく探すか、子音を削ったうえで更に「吐いているように聞こえなくもないブレス音をちょいと重ねてそれっぽい感じにする」という手法もあるっちゃあります。問題は、「吐いているように聞こえなくもないブレス音」自体がそこそこレアだということです。
・コ → ホ、ゴ
ケと同様ですが、意外と「ホ」に聞こえるケースも多く、ケより利便性高めです。
・チ → リ、ジ
チはタ行ですが、発声はシに近いので、結果も似ています。「ジ」を作るならこちらが優秀です。
・ツ → トゥ、ドゥ
「ツ」は発音全体に摩擦音が含まれるケースも多々あるのですごく使い勝手が良いとは言えませんが、場合によっては「ス」「ズ」から削るよりもハマることもあるので、試してみるのも良いでしょう。
・ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ → パ、ピ、プ、ペ、ポ
ハ行は摩擦音の頭の部分を削る(全部ではなく後半は残す)と、大半のケースでパ行に近くなります。これは意外と使えるので(パ行の素材はかなり少ないので)、覚えておくと役に立つかもしれません。
・ヒ → キ
ヒに関しては、「ピ」よりも「キ」に寄っているケースも多いです。ケースバイケース。
※ここから濁音・半濁音コーナーですが、ザ行(ジ以外)とバ行を除いてほぼ全滅です(子音を削るとほぼ母音しか残らない)ので、それらは割愛します。
・ザ、ズ、ゼ、ゾ → ダ、ドゥ、デ、ド
サ行とほぼ同じ要領でダ行にコンバート可能です。ズ→ドゥがやや精度低めで、「ブ」に近い変な音になるケースも多いです。「ゾ」は結構なレア素材なので、「ド」に摩擦音を合成するのがよい、と覚えておくと良いでしょう。使う機会があればですが。
・バ、ビ、ブ、ベ、ボ → ワ、ウィ、ウ、ウェ、ウォ
バ行は破裂音を削ると大体ワ行(ワウィウウェウォ)に近い発音になります。発音時の口を想像するとなんとなくわかると思います。「ワ」自体が「ウァ」みたいなものなので、合成で作るか削って作るかはお好みで。(組み合わせも可)
以上です。
あくまで一例なので、実際に試して「使えねー」となっても苦情は一切受け付けません。共感、同情はします。
なお、子音を削って作った音は子音部分が弱めになることが多いので、アタック強めにするなり合成で補強するなり工夫すると良いでしょう。
また、サスセソのところでも書いてありますが、削ってこう聞こえるということは、結果のほうの文字を合成のベースとして子音をくっつければ「アイウエオ」に子音をくっつけるよりは自然になるはずです。その場合、ベースの子音部分は少し音量を弱めておいたほうがより自然に聞こえることが多いでしょう。たぶん。
とりあえず、実際はぜんぜん違う音でも聴く人の耳を騙せればそれでいい!世界を騙せ!のオカリン精神で創意工夫を凝らしましょう。では次があればまた。
今回は、人力ボーカロイドを作る上で常に直面する問題「その文字の素材が1つもない」「あるにはあるけど素材としては使い物にならない」をクリアするための(半ば苦し紛れの)技術のお話です。わずかな素材で遊び倒している音MAD界隈の皆さんにとってはお馴染みの技術かもしれませんが、改めて記録として残しておきます。
まず前提として、人間が文字を話すときに口から発せられた音は、いわゆる「子音」と「母音」の組み合わせで表現されます。日本語は母音は「アイウエオ」の5音であり、この前に子音をくっつけることで五十音(実際は50音以上あるけど)の文字として区別される訳ですが、主に歌声を素材として用いる人力ボーカロイドでは、「歌詞によく出てくる文字」と「そうでない文字」の差がクオリティにダイレクトに影響します。
素材の選択肢が少ないときはもちろん、そもそもその文字の素材が全く無い場合どうするか。「諦める」のも手ですが、その前にまず考えるのが「音の合成」です。たとえば「タ」が無い場合、別のサ行から取ってきた t と ア段の a の素材をくっつけて「ta」を作り出す、という考え方です。
これが上手くいけば何の問題もありませんが、子音と母音の境界が曖昧だったりすると、「それっぽいけどなんか不自然」「子音と母音がうまく融合していない」という状態になったりします。
そんなときに重宝する(こともある)のが、「子音を削ってみる」という技術です。たとえば、「サ」の「s」部分の摩擦音の波形を削ると、「タ」に聞こえます。「t」はどこから出てきたんだよ、と言いたいところですが、そういうものなので気にしてはいけません。
(口の形や舌の動きなど理屈としては色々考えられますが、あくまで結果が重要です)
「サ」の波形(如月千早)。ラインの辺りから前の波形をバッサリ削る
ということで、そんな「子音の波形を削ることで代用可能な文字」についてこの記事でまとめてみようと思います。ほぼ完全互換のものもあれば、「聞こえなくもない」レベルもあります。そのときそのときの発声によって異なる結果が出るケースが多いので、あくまで参考程度でお願いします。
なお、子音に破裂音、摩擦音、破擦音が含まれる文字のみ取り上げます。それ以外の文字は子音を削ったら大体「アイウエオ」かせいぜい「ヤユヨ」です。
・サ、ス、セ、ソ → タ、トゥ、テ、ト
上で挙げたように、摩擦音部分を根っこからバッサリいくと、サ行はタ行にコンバートできます。非常に互換性が高く、「セ」が足りない場合に逆に「テ」の頭に摩擦音を加えるなど、合成加工の基礎知識としても役立ちます。「ス」は「ツ」ではなく「トゥ」になります。
・シ → リ、ディ
サ行でも「シ」だけは他と発音の仕方が違うため、違う結果になります。上のケースと比べると互換性はやや低めで、「代用品として使えるケースもある」程度で押さえておくとよいでしょう。
・カ → タ
カは頭の破裂音を削ると大体「タ」になります。
・キ → リ、ギ、ティ、ヒ、ピ
キは破裂音をほぼ全部削ると「リ」に聞こえるケースが多いですが、人によって「ティ」だったり「ヒ」や「ピ」に聞こえなくもなかったりさまざまです。ちょっと長めに(2~3割くらい)残すと「ギ」に聞こえるケースが割とあります。その辺りの文字に困ったら、試してみる価値はあります。
・ク → グ、フ、プ、トゥ
クもケースバイケースで色々な文字に聞こえます。「トゥ」の代用品としては「ス」のほうが圧倒的に優秀なので、それ以外の用途で掘ってみると金脈があるかもしれません。
・ケ → ゲ、ヘ
キやクと比べて、代用品としては使い勝手がイマイチです。「ヘ」に聞こえなくもない、というケースは割とレアなので、根気よく探すか、子音を削ったうえで更に「吐いているように聞こえなくもないブレス音をちょいと重ねてそれっぽい感じにする」という手法もあるっちゃあります。問題は、「吐いているように聞こえなくもないブレス音」自体がそこそこレアだということです。
・コ → ホ、ゴ
ケと同様ですが、意外と「ホ」に聞こえるケースも多く、ケより利便性高めです。
・チ → リ、ジ
チはタ行ですが、発声はシに近いので、結果も似ています。「ジ」を作るならこちらが優秀です。
・ツ → トゥ、ドゥ
「ツ」は発音全体に摩擦音が含まれるケースも多々あるのですごく使い勝手が良いとは言えませんが、場合によっては「ス」「ズ」から削るよりもハマることもあるので、試してみるのも良いでしょう。
・ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ → パ、ピ、プ、ペ、ポ
ハ行は摩擦音の頭の部分を削る(全部ではなく後半は残す)と、大半のケースでパ行に近くなります。これは意外と使えるので(パ行の素材はかなり少ないので)、覚えておくと役に立つかもしれません。
・ヒ → キ
ヒに関しては、「ピ」よりも「キ」に寄っているケースも多いです。ケースバイケース。
※ここから濁音・半濁音コーナーですが、ザ行(ジ以外)とバ行を除いてほぼ全滅です(子音を削るとほぼ母音しか残らない)ので、それらは割愛します。
・ザ、ズ、ゼ、ゾ → ダ、ドゥ、デ、ド
サ行とほぼ同じ要領でダ行にコンバート可能です。ズ→ドゥがやや精度低めで、「ブ」に近い変な音になるケースも多いです。「ゾ」は結構なレア素材なので、「ド」に摩擦音を合成するのがよい、と覚えておくと良いでしょう。使う機会があればですが。
・バ、ビ、ブ、ベ、ボ → ワ、ウィ、ウ、ウェ、ウォ
バ行は破裂音を削ると大体ワ行(ワウィウウェウォ)に近い発音になります。発音時の口を想像するとなんとなくわかると思います。「ワ」自体が「ウァ」みたいなものなので、合成で作るか削って作るかはお好みで。(組み合わせも可)
以上です。
あくまで一例なので、実際に試して「使えねー」となっても苦情は一切受け付けません。共感、同情はします。
なお、子音を削って作った音は子音部分が弱めになることが多いので、アタック強めにするなり合成で補強するなり工夫すると良いでしょう。
また、サスセソのところでも書いてありますが、削ってこう聞こえるということは、結果のほうの文字を合成のベースとして子音をくっつければ「アイウエオ」に子音をくっつけるよりは自然になるはずです。その場合、ベースの子音部分は少し音量を弱めておいたほうがより自然に聞こえることが多いでしょう。たぶん。
とりあえず、実際はぜんぜん違う音でも聴く人の耳を騙せればそれでいい!世界を騙せ!のオカリン精神で創意工夫を凝らしましょう。では次があればまた。
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