これまではモデルの使用規約に書いていたのですが、規約がややこしくなって
どんどん長くなってきたため、分離してこちらにTipsとしてまとめておきます。
拙作モデルに限らず、最近MMD界隈で配布されているモデルは、髪やスカート、
コートにリボンや胸まで、随所に物理演算が仕込まれたものがほとんどです。
物理演算の設定は多様で、モデラーのこだわりが詰まっていると言っても過言
ではないでしょう。
配布されているモデルは、モデルユーザーがある程度大雑把に扱っても破綻し
ないように物理演算の調整されている場合もありますが、それでも扱い方に
よっては破綻します。
少しだけ破綻しているのをそのままにするというのはともかく、足がスカート
からずっと突き抜けていたり、絡まってぐちゃぐちゃになったりしているまま
の動画を見ると切なくなります。
以下に、よくある物理演算が滅茶苦茶になる原因をいくつか挙げておきます。
拙作モデルにしか当てはまらないところもありますが、ひらひらと風に舞う
美しいスカートを撮るためにも、知っておいて損はないと思います。
【再生の一番最初に特に髪が急に動く】
→MMDの物理演算の設定が「再生時のみ演算」になっていると、再生を
はじめた1フレーム目は、物理演算が動いていない状態で始まり、2フ
レーム目から物理演算が始まります。
(というか、1フレーム目は再生(と動画出力)をする直前に画面に
映っている画像をそのまま再生録画するようです)
例えばモデルの髪の最初の形状が重力を無視して造形されていた場合、
2フレーム目で、いきなりそこからストンと落ちることになります。
MMDの物理演算の設定を「常に演算」にしてから、(そして再生や
動画出力を始めたい部分の最初のフレームを画面に表示した状態から)
動画を再生or出力してください。
(また、初期姿勢で少々足がスカートから突き抜けている場合でも、
突き抜けが少しであれば「常に演算」にすることでスカートが正し
い位置に来てくれることがあります。ですので、動画出力の直前だ
けでも「常に演算」にすることを強くお勧めします)
【非表示モデルが重なっている】
→MMDでモデルを非表示にした場合でも、そのモデルとの「当たり判
定」は消えません。そのため非表示モデルにぶつかるとスカートや髪は
荒ぶります。非表示モデルは当たらないところに移動するか、非表示モ
デルを一度削除し、その非表示モデルを使う箇所は別のpmmに分離して
別々に書き出したあと、動画編集ソフトでつなげてください。
※ この件に関しては、のののPのブログの説明が詳しいと思います。
【床より低い位置にモデルがある】
→MMDの物理演算の設定から「床」のチェックを外してください。とり
あえず床との当たり判定がなくなります。ただし、ここでいう「床」は
Y=0の平面という意味なので、ステージなどの形で目に見える床とは
異なる場合があります。
場合によってはその後、ステージに合わせて床の代わりに当たり判定用
の剛体を仕込んでやる必要があります。
【モデルがいきなり動く】
→スカートや髪は、体よりも少し遅れて動きます。そのため、モデルが1
フレームで急激に移動したりすると、上手くついていけずにぐちゃぐち
ゃになってしまいます。MMDからの出力を、いきなり動く場所の前の
部分と、いきなり動いてから後の部分で分けて、動画編集ソフトでつな
いでください。
【初期姿勢で足がスカートから突き抜けている】
→そりゃ足が突き抜けたままになりますよ! 当然じゃないですか!!
上述のようにたまに「常に演算」にすることで勝手に修復してくれます
が、基本的には初期姿勢で足がスカートを突き抜けないように、スカー
トボーンを回転させてフレーム登録しておいてください。少々オーバー
に足を避けるくらいがちょうどいいと思います。そのあとで「常に演算」
にすると、ちょうどいい位置にスカートが落ちてくると思います。
【回るとおかしい回ったあとにおかしくなる】
→モデルによって、勢いよく回るとスカートやコートの上のほうが捩れて
おかしくなることがありますが、言ってしまえば、そのモデルの仕様です。
カメラでごまかしてください。
(スカートの場合、回転によってスカートがめくれることが多いですが、
パンモロしないようなカメラをつけるなら相当注意してください。
ぶっちゃけて言えば真上から映すしかないときもあります……)
回った後にスカートが絡まったままになってしまうことがあります。
あきらめて回る箇所の前後でMMDからの出力を分けるか、スカートの
物理演算設定をいじって直すか、そのモーションをそのモデルに読み込
むのを諦めてください。
【しゃがみこむor蹴り上げるモーションで足がスカートから出てくる】
→スカート演算に無茶振りしないでください。以上。
……と言って終わらせたい気もしますが、一応、改善策もあります。
しゃがみこむ場合は、しゃがむ深さを浅くするのが一番いいです。後は
上半身や立てた膝など、スカートの邪魔になりそうなものをスカートから
遠ざけるように動かします。(上半身は前に倒れこんでいるのを少しでも
起こす、足ボーンを回転させて膝を立てずに座らせる、等)
蹴り上げる場合の基本は、足IKの動き(特にY軸移動)を小さくすること
です。蹴り上げ始めから、地面に足が戻るまでの足IKのキーフレームを
全て選択して、「フレーム編集」タブの「フレーム位置角度補正」を使う
と楽です。移動の位置Yのところに、0.4~0.8あたりの数値を入力して、
Y軸移動を小さくします。(X軸やZ軸の移動は変えなくても構いませんが、
無理がある体勢になっているならそれぞれ適宜調整してください)
いずれの場合でも、修正できないならカメラでごまかすか、少なくとも
スカートから足が貫通する部分のモーションを使うのを諦めてください。
→また、拙作モデルの一部は「スカートセンター(あるいは裾センター)」
というボーンを仕込んであります。蹴り上げやしゃがみこみの箇所だけ、
スカートセンターボーンをX軸回転等、いじってみてください。
結構上手くいくようになります。拙作ベラルーシモデルのようにスカート
から足がかなり突き抜けやすいモデルでも、マトリョシカのコサックダン
スをまあ見れる程度に修正できたので、大抵の動きは大丈夫だと思ってい
ます。
【後ろの髪の毛が肩より前に出てくる】
→拙作モデルだと髪の毛の物理演算は自由度を優先したため、激しく動く
モーションでは変にあらぶって見えることがあります。気になる場合は
ご自身でサイドガードの剛体を入れるなりJointの制限を強めるなりして
ください。
【その他】
→何度か出力していると、上手くいくこともあるかもしれません。おかし
かったらとりあえずもう一度出力してみてください。
また、速い動きのモーション、キレのある動きなどはどうしても破綻し
やすくなります。モーションのフレームを拡大してゆっくりした動きに
変換し、動画編集ソフトで通常の速さに早送りするのをおすすめします。
例:30秒のモーションを2倍に拡大し、60秒でその動きをするよう
修正して、MMDから出力し、その後動画編集ソフトで再生速度を
2倍にして30秒の動画にする。
どんな風に動かしても破綻しない物理演算が最高だという意見もありますが、
私が物理演算を設定する時に目指しているのは、「ある程度破綻しやすくても
構わないから、とにかく理想通りの動きをすること」です。
そのせいだとは思いますが、拙作モデルはかなり破綻しやすいモデルになって
います。
しかし、そんなモデルが配布動画では、かなり無茶な動きでも難なくこなして
います。多分「破綻しにくい素晴らしい物理演算」に見えると思います。
つまり配布動画の製作の裏では、かなり細かいモーション修正と、理想の演算
結果になるまで繰り返すリテイクがあるということです。
(例えば、うちのモデルは袖が長めの子が多いのですが、配布動画では絶対に
手首が袖に埋まらないよう、ほぼ全ての手首のキーフレームに袖モーフのキー
フレームが打ってありますww)
モデラーがどんな風に物理演算を設定しようとも、最後にそのモデルを使って
動画に仕上げるときには、モデルユーザーさんの手腕が大きく問われます。
ため息が出るほど美しい物理演算のモデルというのは、案外、モデルユーザーの
ちょっとした工夫で完成するということ、知っておいていただければ幸いです。
この情報が、皆様の素敵なライフの一助となりますように。
その他のTips→モデルやアクセサリの描画順について(ar234462)