今回は応援企画をしようと思います。

酒屋さんや量販店、スーパーなどを見ると、シングルモルトウイスキーでもサントリーの山崎や白州はノンエイジでも売り切れ、在庫があっても通常4000円ほどのノンエイジでも8000円近いプレミアがつき、山崎12年で2万円弱、白州12年になると3万円近く値段に跳ね上がっています。

一方でニッカはと言うと、余市、宮城峡共にほぼ定価の4500円ほどで売られていて在庫も十分、札幌市内のコンビニだと余市のフルボトルが棚に並んでいることも珍しくありません。
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ニッカのシングルモルトが在庫十分な理由

では余市、宮城峡は山崎、白州に比べて劣っているのでしょうか。
個人的には、現行の山崎、白州よりもしっかりとした個性があって評価は上の扱いです。
それでもこれだけの在庫の差があるのは、中国からの需要、そしてそれに合わせて大量に買い付ける中国人転売屋の存在があると言われています。

そこで、改めてニッカのシングルモルトの2つを紹介したいと思います。

シングルモルト余市

シングルモルト余市は、北海道余市町にある余市蒸溜所で作られたモルトのみを使っているウイスキーです。

余市モルトの特徴は、世界でも珍しくなった石炭を使っての直火炊き蒸溜を採用していることです。
現在ではガスやスチームを使い、制御もコンピューターで行う方法が多くなっていますが、余市では火加減や釜の中の温度を職人が目視しながら調整を行う伝統的な手法を続けています。

また、ヘビーピートと言われる、強い香りのある泥炭を使ってモルティングされた大麦麦芽を原料にすることで、正露丸を思わせる香りと潮の香りを伴ったスモーキーさもあり、パンチの効いた香り、味わいがあります。

シングルモルト余市では、このパンチのある原酒を新樽とシェリー樽でそれぞれ熟成させてヴァッティングすることで、広がりのある香りを持たせています。

シングルモルト宮城峡

一方でシングルモルト宮城峡は、宮城県仙台市にある宮城峡蒸溜所で作られたモルトのみを使っています。

宮城峡モルトは、ポットスチルとしてスチーム加熱のものを使うことで、余市モルトよりも穏やかで華やかさのある香り、味わいを引き出すように作られています。

モルト自体も主なモルトとしてライトピートタイプを使い、スモーキーさを抑える方向にあります。
使用する樽は新樽とシェリー樽になります。

実際に飲み比べると

余市

余市は、シャンパンゴールドのような淡い液色です。
ストレートで飲むと、正露丸を思わせる香りと潮の香りが伴うスモーキーさが広がり、それと同時にレーズンのフルーティな香りが続きます。そして残り香的にバニラの甘い香りが締めます。
味わいは、アルコールからの辛みと共に塩辛さが感じられ、奥から酸味が広がっていきます。
加水をしても癖のあるピートの香りは健在で、ハイボールでもパンチの効いた香りと味わいを得られます。

宮城峡

一方で宮城峡は、黄金色の液色を持っています。
ストレートで飲んでみると、軽くスモーキーな香りが訪れるものの、余市ほど塩気や正露丸っぽさはありません。その後は熟したブドウの香りが訪れ、リンゴ、バニラの香りが続きます。
味わいは、アルコール度数が45度と高いにも関わらず、辛みは少なく、軽いほろ苦さの後に甘みと柔らかい酸味が口に広がります。
加水してもフルーティさがしっかり感じられ、ハイボールにしても甘く飲みやすいものになります。

まとめ

サントリーにおいても、山崎は比較的荒々しく、白州は穏やかでフルーティな印象がありますが、ニッカも荒々しい余市と穏やかな宮城峡で棲み分けられています。
ただ、ニッカのほうが個性が強く出ていて、宮城峡でもピートによる癖を残す出来になっている印象です。

ニッカも近年になって生産量を増やしていますので、一気に枯渇する恐れは少なくなっているものの、これらも中国人の目にとまってしまうと、品薄になってしまうかも知れません。

まだ飲んだことがないのであれば、一度は飲んでいただきたいと思います。