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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

コロナの急激な収束をもたらした要因とは ワクチン、行動自粛、そして……

「第6波」に備えて

 ただし、日本の第5波がワクチンと「ノリ」で急速に減少し、収束していったのであれば、それはハッピーエンドを意味するとは限りません。似たような構造で感染がおさまったイギリス――ただしイギリスは「ノリ」ではなく、ロックダウンでしたが――も、社会制限を解除してからは感染者が激増しています。

 ワクチン接種が日本よりもずっと普及しているのに、です。毎日万単位の感染者が出現、「いやいや、死者は増えてないし」といつものように文句を言う人はいましたが、(いつものように)ほどなく死者も増え始めて、毎日100人程度の死者が出ました。英国もようやく、ここ数日で入院や死亡が減少に転じましたが、そこに至るまでにはけっこう大変だったのです。
https://coronavirus.data.gov.uk/
(閲覧日 2021年9月28日)

 第5波を収束させたのがワクチンと「コロナ怖い」の「ノリ」だったとすれば、次の第6波で起きそうなことも予測できます。僕は予測屋ではないので、予測なんて本来はしないほうがよいのですけど、あえて言ってしまうと、恐怖の閾値(いきち)は上がっていくのです。

 ご存じのように、日本では波が来るたびにそのピークは上がっていきます。第1波よりも2波、2波よりも3波、3より4、4より5波のほうが大きくなっています。

 これは、少ない数で恐怖した過去の体験に「もう慣れてしまい」、ちょっとやそっとの数では驚かなくなってしまっているからです。

 よって、第6波のピークは、第5波よりも大きくなってしまう可能性が高いように僕は思います。今のイギリスが毎日万単位の感染者が出ていても、「ま、もう、いいんじゃない」というノリになっているように。

 それでも、ワクチンでリスクの高い人を守り、抗体カクテル療法でやはりリスクの高い人の重症化を防げば、6波の波は今までの波よりも「もっとマシな波」になるかもしれません。すなわち、感染者が増えるんだけど、重症者や死者が増えなくなるという。

 これまでは「感染者を増やしても大丈夫」的な策は皆無だったのですが、「感染者が増えても大丈夫」な世界がやってくるかもしれません。

 とはいえ、やはり個人的には、波が巨大になるのを待ってから対応するより、小さい波のうちに収束させてしまった方が、(経済的にも)合理的だとは思っています。第6波が起きない、あるいは小さなママで収めてしまうか。これまで通り、巨大になってから対策をとって、さらに巨大なピークが来るまで看過するか。

 どちらが正しい予測になるかは、次の政権次第、という言い方もできるでしょうね。(岩田健太郎 感染症内科医)

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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