[一つ戻る] | [一つ進む] | [1] | [2] | [3] | [戻る] |
三つの塔 |
地鳴りがおさまり、洞窟も静まり返ったとき、百鬼も姿を消していた。一人に なった白鳥の前には砂丘が広がり、そこに三つの大きな塔がそびえ立っていた。 | |
塔の方に歩みを進めていくと突然邪念が渦巻き、目の前に蜘蛛のような手足を した化け物が現れて行く手を塞いだ。 化け物に向けてサイコキネシスを放つが、コイツはこちらの念の力を吸い取る らしく、化け物の腹が大きくなるだけで全く効果がない。だが別にコイツに直 接念を送らなくてもいいのだ。白鳥は化け物の上にあった岩を物体移動で落と した。すると化け物はあっけなく消え去った。 | |
塔の前まで来た白鳥は、とりあえず一番手前の塔に入ったみた。すると中には 眩しい光を放つ美しい女性がいた。 「私はベルガーダー。天界にいたのですが、百鬼に騙されてこの塔に閉じ込め られています。百鬼を倒さないことには天界に戻れません。百鬼は第2の塔に います。今なら百鬼が疲れて休んでいます。急いでください。」 | |
だが白鳥はベルガーダーが百鬼の手下であることを見抜いた。ベルガーダーに 光のエネルギーを浴びせるとあっけなく消滅した。ヤツは第2の塔に百鬼がい ると言っていたが、恐らく罠だろう。白鳥は第3の塔に行くことにした。 | |
第3の塔では、百鬼が馬鹿にするかのように両手を広げて待ち構えていた。白 鳥は有無を言わさず、破壊のエネルギーを百鬼に叩き付けた。 | |
やった! 手ごたえがあった! しかし百鬼は言った。 「クリスタルナイト、貴様にまだこれだけのエネルギーが残っていたとは。俺 の不覚だった。この戦いは俺の敗けだが、この程度の傷では俺は消滅しない。 次の戦いが楽しみだ。」 | |
百鬼が消えると同時に百鬼の世界も消えた。辺りには野原が広がり、目の前に 鷺姫が横たわっていた。 体が冷たい……鷺姫は死んでしまったのか。白鳥は有らん限りのエネルギーを鷺姫に注いだ。 | |
鷺姫は生き返った! 「やはり私を助けてくださったのは白鳥さんでしたね。百鬼の意識の中に引き ずられていくとき、愛のエネルギーが私を包んで守ってくださいました。それ は優しく暖かく、すぐに白鳥さんのエネルギーだと分かりました。だから私は そのエネルギーに身をまかせました。ありがとうございました。」 鷺姫は助かった。だが彼女によると、風間は百鬼に連れ去られてしまったらし く、何処にも見当たらない。心配だが、新幹線のこともあるのでここは現界に 戻るしかないだろう。 | |
白鳥たちが戻ると、新幹線は動き出した。乗客たちは、今までのことを夢か幻 のように思っているようだ。しかし目代所長は言った。 「百鬼がこの世に出たからには、夢よりももっと凄い現実が待ち構えています。 地獄の火が、地球を燃やしてしまうほどの。」 |
百時寺 |
時代が進むにつれ、人間の性格は少しずつ変化していた。他人を踏み台にして、 より楽なより高い位置を目指していった。百鬼との戦いから3日後、東京のこ の変化は急速になっていた。 人間が作った道徳は今、大きく塗り替えられた。誰もそれが不自然とは思わな かった。政治家は自分に都合の良い法律を作り、権力を傘に欲望をむき出しに した。警察は暴力と手を結び、住民を見殺しにした。脅し・殺人・略奪・強姦 は、新聞の片隅の記事にしかならなくなった。 | |
人間はそれぞれ集団化して自分達を守る自警団を作っていったが、力の集団は その勢力の縄張りの戦いとなり、抗争は日増しに激しくなり、放火・殺人が日 常になっていった。一部の人間は元の社会を取り戻そうと努力を重ねた。しか しここまで来たからには無駄な努力でしかなかった。 百鬼との戦いの後、白鳥たちは所長を中心に考古学者・霊能力者を集め、『白 と黒の伝説』の解読を急いでいたが、短期間ではどれほどのページも解読でき なかった。悪霊に取り憑かれた社会を取り戻すことはできないのか。白鳥は徹 夜の連続で久し振りにアパートに帰ったが、そのままベッドに寝てしまった。 | |
ベッドに入った白鳥は、1秒とかからず深い眠りに入った。その時、現実と思 えるほどリアルな風間の夢を見た。 「白鳥さん、私は風間です。起きてください。今ここにいる私は幽体離脱した 魂だけの姿です。百鬼に捕らわれて逃げることは不可能ですが、百鬼にせめら れることにより、こうして会える力が出てきました。これは夢や幻ではありま せん。悪霊から社会を取り戻すには、百鬼を倒す以外に方法はありません。」 風間はまだ百鬼に捕らわれて生きているのだ。それから彼は青山墓地の近くに ある百時寺に、先の戦いで傷ついた百鬼が悪霊を従えて潜伏していることを告 げ、消え去った。 翌日白鳥は皆と相談し、その夜鷺姫と二人で百時寺に向かった。武器は独鈷剣 だけだ。 | |
百時寺に着いた。 不思議なことに今夜は暴動はなく、これから起こる何かを見つめているかのよ うに静まり返っている。 しかし門の前には邪念が渦巻いている。幽界から呼び出された悪霊が二人を殺 そうと息をひそめているのだ。白鳥は隠れていた悪霊を倒し、門をくぐった。 | |
目の前には今出来たばかりのような立派な寺があった。見栄っ張りの百鬼が好 みそうな建物だ。鷺姫はこの中に風間がいるのが感じられるという。 | |
中にはいると、天井に風間が磔にされている。潜んでいた。悪霊ゾンビの頭を 倒すと、風間は解放された。 | |
風間を助け出すと百鬼が現れた。 「ゾンビたちがいなくなったと思えば貴様たちの仕業だな。性懲りもなく俺の 邪魔ばかりしてお前らの力では俺を消すことはできない。いい加減に諦めたら どうだ。」 百鬼はうんざりした顔だ。しかし鷺姫は言った。 「百鬼は独鈷剣に3人のエネルギーを集めたときの力を知らないのです。もち ろん私達にもどうなるのかは分かりません。でもきっと何かが起こる筈です。」 | |
3人の力が独鈷剣に注がれたとき、辺りは真っ白に輝いた。次の瞬間、もう百 鬼は消えていた。 そして突然、目の前に何かが現れた。 「俺は天界の戦の神、不動神だ。お前達に独鈷剣を与えたのもこの俺様だ。天 界からお前たちの戦ぶりを眺めて楽しんでいたが、百鬼を地獄界に落としたか らには勝負あった。俺にとって百鬼が勝とうがお前たちが勝とうが、どうでも いいことだ。要は戦を起こし、英雄を生み出すのが俺の仕事だ。」 「戦いが終わった後にはもう独鈷剣は無用のもの。返してもらおう。その独鈷 剣は使い方を誤るとこの地球すら消してしまうだけの力がある。どうだ。クリ スタルナイト、いや、白鳥記者かな。」 この不動神に独鈷剣を渡してもいいのか。白鳥は悩んだ。 | |
白鳥は神を信じることにした。恐らくそれは良いことなのだろう。しかし神の 中には人間を嫌っているものもいる。だから人間は干ばつなどの天変地異に悩 まされてきたのだ。しかし世界中の人々が人種を乗り越え愛のネットワークが 張り巡らされたら、地球は永遠に輝き続けるだろう……END |
[一つ戻る] | [一つ進む] | [1] | [2] | [3] | [戻る] |