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三つの塔

地鳴りがおさまり、洞窟も静まり返ったとき、百鬼も姿を消していた。一人に なった白鳥の前には砂丘が広がり、そこに三つの大きな塔がそびえ立っていた。

塔の方に歩みを進めていくと突然邪念が渦巻き、目の前に蜘蛛のような手足を した化け物が現れて行く手を塞いだ。

化け物に向けてサイコキネシスを放つが、コイツはこちらの念の力を吸い取る らしく、化け物の腹が大きくなるだけで全く効果がない。だが別にコイツに直 接念を送らなくてもいいのだ。白鳥は化け物の上にあった岩を物体移動で落と した。すると化け物はあっけなく消え去った。

塔の前まで来た白鳥は、とりあえず一番手前の塔に入ったみた。すると中には 眩しい光を放つ美しい女性がいた。

「私はベルガーダー。天界にいたのですが、百鬼に騙されてこの塔に閉じ込め られています。百鬼を倒さないことには天界に戻れません。百鬼は第2の塔に います。今なら百鬼が疲れて休んでいます。急いでください。」

だが白鳥はベルガーダーが百鬼の手下であることを見抜いた。ベルガーダーに 光のエネルギーを浴びせるとあっけなく消滅した。ヤツは第2の塔に百鬼がい ると言っていたが、恐らく罠だろう。白鳥は第3の塔に行くことにした。

第3の塔では、百鬼が馬鹿にするかのように両手を広げて待ち構えていた。白 鳥は有無を言わさず、破壊のエネルギーを百鬼に叩き付けた。

やった! 手ごたえがあった! しかし百鬼は言った。

「クリスタルナイト、貴様にまだこれだけのエネルギーが残っていたとは。俺 の不覚だった。この戦いは俺の敗けだが、この程度の傷では俺は消滅しない。 次の戦いが楽しみだ。」

百鬼が消えると同時に百鬼の世界も消えた。辺りには野原が広がり、目の前に 鷺姫が横たわっていた。

体が冷たい……鷺姫は死んでしまったのか。白鳥は有らん限りのエネルギーを鷺姫に注いだ。

鷺姫は生き返った!

「やはり私を助けてくださったのは白鳥さんでしたね。百鬼の意識の中に引き ずられていくとき、愛のエネルギーが私を包んで守ってくださいました。それ は優しく暖かく、すぐに白鳥さんのエネルギーだと分かりました。だから私は そのエネルギーに身をまかせました。ありがとうございました。」

鷺姫は助かった。だが彼女によると、風間は百鬼に連れ去られてしまったらし く、何処にも見当たらない。心配だが、新幹線のこともあるのでここは現界に 戻るしかないだろう。

白鳥たちが戻ると、新幹線は動き出した。乗客たちは、今までのことを夢か幻 のように思っているようだ。しかし目代所長は言った。

「百鬼がこの世に出たからには、夢よりももっと凄い現実が待ち構えています。 地獄の火が、地球を燃やしてしまうほどの。」


百時寺

時代が進むにつれ、人間の性格は少しずつ変化していた。他人を踏み台にして、 より楽なより高い位置を目指していった。百鬼との戦いから3日後、東京のこ の変化は急速になっていた。

人間が作った道徳は今、大きく塗り替えられた。誰もそれが不自然とは思わな かった。政治家は自分に都合の良い法律を作り、権力を傘に欲望をむき出しに した。警察は暴力と手を結び、住民を見殺しにした。脅し・殺人・略奪・強姦 は、新聞の片隅の記事にしかならなくなった。

人間はそれぞれ集団化して自分達を守る自警団を作っていったが、力の集団は その勢力の縄張りの戦いとなり、抗争は日増しに激しくなり、放火・殺人が日 常になっていった。一部の人間は元の社会を取り戻そうと努力を重ねた。しか しここまで来たからには無駄な努力でしかなかった。

百鬼との戦いの後、白鳥たちは所長を中心に考古学者・霊能力者を集め、『白 と黒の伝説』の解読を急いでいたが、短期間ではどれほどのページも解読でき なかった。悪霊に取り憑かれた社会を取り戻すことはできないのか。白鳥は徹 夜の連続で久し振りにアパートに帰ったが、そのままベッドに寝てしまった。

ベッドに入った白鳥は、1秒とかからず深い眠りに入った。その時、現実と思 えるほどリアルな風間の夢を見た。

「白鳥さん、私は風間です。起きてください。今ここにいる私は幽体離脱した 魂だけの姿です。百鬼に捕らわれて逃げることは不可能ですが、百鬼にせめら れることにより、こうして会える力が出てきました。これは夢や幻ではありま せん。悪霊から社会を取り戻すには、百鬼を倒す以外に方法はありません。」

風間はまだ百鬼に捕らわれて生きているのだ。それから彼は青山墓地の近くに ある百時寺に、先の戦いで傷ついた百鬼が悪霊を従えて潜伏していることを告 げ、消え去った。

翌日白鳥は皆と相談し、その夜鷺姫と二人で百時寺に向かった。武器は独鈷剣 だけだ。

百時寺に着いた。

不思議なことに今夜は暴動はなく、これから起こる何かを見つめているかのよ うに静まり返っている。

しかし門の前には邪念が渦巻いている。幽界から呼び出された悪霊が二人を殺 そうと息をひそめているのだ。白鳥は隠れていた悪霊を倒し、門をくぐった。

目の前には今出来たばかりのような立派な寺があった。見栄っ張りの百鬼が好 みそうな建物だ。鷺姫はこの中に風間がいるのが感じられるという。

中にはいると、天井に風間が磔にされている。潜んでいた。悪霊ゾンビの頭を 倒すと、風間は解放された。

風間を助け出すと百鬼が現れた。

「ゾンビたちがいなくなったと思えば貴様たちの仕業だな。性懲りもなく俺の 邪魔ばかりしてお前らの力では俺を消すことはできない。いい加減に諦めたら どうだ。」

百鬼はうんざりした顔だ。しかし鷺姫は言った。

「百鬼は独鈷剣に3人のエネルギーを集めたときの力を知らないのです。もち ろん私達にもどうなるのかは分かりません。でもきっと何かが起こる筈です。」

3人の力が独鈷剣に注がれたとき、辺りは真っ白に輝いた。次の瞬間、もう百 鬼は消えていた。

そして突然、目の前に何かが現れた。

「俺は天界の戦の神、不動神だ。お前達に独鈷剣を与えたのもこの俺様だ。天 界からお前たちの戦ぶりを眺めて楽しんでいたが、百鬼を地獄界に落としたか らには勝負あった。俺にとって百鬼が勝とうがお前たちが勝とうが、どうでも いいことだ。要は戦を起こし、英雄を生み出すのが俺の仕事だ。」

「戦いが終わった後にはもう独鈷剣は無用のもの。返してもらおう。その独鈷 剣は使い方を誤るとこの地球すら消してしまうだけの力がある。どうだ。クリ スタルナイト、いや、白鳥記者かな。」

この不動神に独鈷剣を渡してもいいのか。白鳥は悩んだ。

白鳥は神を信じることにした。恐らくそれは良いことなのだろう。しかし神の 中には人間を嫌っているものもいる。だから人間は干ばつなどの天変地異に悩 まされてきたのだ。しかし世界中の人々が人種を乗り越え愛のネットワークが 張り巡らされたら、地球は永遠に輝き続けるだろう……END


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