トヨタ「カローラ」再び王者狙う準備が整った理由

SUVカローラクロス追加の「合わせ技」が始動

ドイツには速度無制限区間のあるアウトバーンがあり、また一般道においても、郊外の道路では時速80~100kmで走行するのが日常的で、日本では考えられない高い速度から衝突事故が起こる。それでも乗員を守るには、堅牢な客室構造だけでなく、衝突の衝撃を吸収する余裕が車体に必要で、それが大型化につながった。

一方、初代カローラの時代に日本のモータリゼーションが拡張したように、国内の道路や駐車枠などは5ナンバー小型車を軸に整備がすすめられた。3ナンバー化は、歴代カローラを愛用してきた所有者にとって乗り換えの不便さをもたらす。

12代目カローラから3ナンバー車に

そこでトヨタは、国内向けとして5ナンバーカローラの存続に尽力したのだ。しかしそれも前型11代目までとなり、現行12代目カローラはいよいよ3ナンバー車となった。現在のカローラは、3ナンバー車に見合うさらなる上級さを内外装や走行性能にもたらし、4ドアセダンはハイブリッド専用車の「SAI」の代替としても遜色ない仕上がりである。ステーションワゴンの「カローラツーリング」は、欧州の競合と見劣りしない水準にある。

カローラツーリング(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

それでも国内の多くの消費者にとって、5ナンバーの意味は大きく、カローラは前型と併売のかたちをいまもとっている。そこに、新しくカローラクロスが加わった。

いま、トヨタにはSUVの品揃えが多い。5ナンバー車では「ライズ」があり、3ナンバー車には「ヤリスクロス」「C‐HR」「RAV4」、そして「ハリアー」がある。カローラクロスに近いのは、ヤリスクロスやC‐HRだろう。RAV4とハリアーは、車格が一つ上の位置づけになる。

競合することにより、トヨタ車同士で食い合いにならないのか懸念するかもしれない。ところが、明確な性格分けがある。

ヤリスクロスは、ガソリンエンジンが直列3気筒だ。ハイブリッド車も同様である。カローラクロスは、直列4気筒エンジンを搭載している。

次ページC-HRとのすみ分け
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
  • 本当に強い大学
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
トレンドライブラリーAD
人気の動画
年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差
年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差
日本人が知らない「ビタミンD」不足の怖さ
日本人が知らない「ビタミンD」不足の怖さ
「上司の品格」を疑われる、やってはいけない7つの質問
「上司の品格」を疑われる、やってはいけない7つの質問
「ズレた結論を出す人」と出さない人の決定的な差
「ズレた結論を出す人」と出さない人の決定的な差
トレンドウォッチAD
12のスキルを完全レクチャ<br>ー! 無敵の話し方

ビジネスシーンで大きな武器になる「話し方」。スピーチや交渉、会議など12のスキルを徹底解説します。『世界最高の話し方』著者による共感力スピーチの極意、TED流のノウハウが2時間で身に付くプレゼン術、自民党総裁選候補者のスピーチ診断も掲載。

東洋経済education×ICT