――今の日本では、日本人は「民度」が高い、一方中国は無責任に新型コロナウイルスをまき散らしているといった論調が見受けられます。
協力社会のカギとなるのは「最低ライン」をどこに置くかです。「あらゆる人を分け隔てなく大切にしろ」というのは現実的ではありません。誰にとっても一番大切なのは、自分の家族や身近な友人ですから。重要なのは、守るべき最低ラインをどこに引くかということ。たとえば誰かのことが嫌いでも、その人にもあなたと同じ医療を受ける権利があると考えることです。最低ラインとはそういうことです。
たとえ自分とは意見の合わない、敵対する相手に対しても、少なくともこれだけの権利を認めるという「最低ライン」をどこまで引き上げていけるかが重要なんです。
――日本企業や日本人はグローバリズムを推進するうえで、どんな貢献ができると思いますか?
日本企業にできることはたくさんあります。日本政府も署名した国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」には、世界のあらゆる国が合意した事柄が書かれています。移民や課税といった反対意見が出るものではなく、あらゆる人に教育機会を与えるといった全世界が合意できるイシューで、ここにはビジネスチャンスがあります。この枠組みの中で企業ができることは色々あって、国連も企業のためのプログラムを数多く用意しています。
個人のレベルでは、皆がアフリカに飛んで貧しい人たちの支援をすべきとは思いませんが、メディアに接するとき、周囲の人と話をするとき、投票に行くときに、「すべての人間には同じ価値がある」という理念を頭の片隅に置くのが大事だと思います。あなたが投票しようとしている政治家は、世界中の人々に最低限の敬意を持っているか? 小さなことに思えるかもしれませんが、日本人のうち数百万人が少しでもそのような発想を強めれば、とても大きな力になるんです。
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