――自分がどれだけ恵まれているか、認識していない人も多いと思います。日本をはじめ先進国に住む人は、「結局、自分には何ができるんだ?」と無力感を覚えがちです。
消費者としては好きなものを選ぶ権利がある一方で、こと政治についてはひとり1票しかない、何も変えられないと無力感を覚えるのもわかります。でも本にも書いたとおり、社会を変える一番の方法は、やっぱり選挙で投票することなんです。
そして、自分の投票について、周りの人と話すことも大事です。誰もが家族や友人から影響を受けます。つまり、あなたがごくふつうの人であっても、少なくとも周囲の10~15人に影響を与えることはできるわけです。
もうひとつ、社会学にとても面白い研究結果があります。誰かのことを思う気持ちは「ゼロサム」ではない、という研究結果です。世界のことを大切に思う人ほど、地元の慈善事業にもたくさん寄付をする。世界のゆくえに関心を寄せる人ほど、地元の選挙に積極的に足を運ぶ。
だから日本に住んでいれば、日本のことを第一に考えるのは当然ですが、それに加えて世界のことにも思いを寄せることが重要なんです。反対に、世界に無関心な人とは、あらゆることに無気力な人です。
――本の中で「日本人は、自分が思うよりはるかに世界に対して開かれている」と指摘しています。そう考える根拠は?
そもそもあなたが今ぼくにインタビューしているという事実、ぼくの本を翻訳してくれたという事実が、ひとつの根拠ですよね。
ぼくが会う日本人はきまって、「日本人はとても閉鎖的だけど、自分はそうじゃない」と言います。でも、ぼくの仕事柄接する人が偏っていることもあるでしょうが、「内向きの日本人」にお目にかかったことがありません。もちろん選挙のときなどにナショナリスト的な主張をする政治家はいますが、それはどの国も同じです。
今年の2月にアブダビで講演したんですが、ぼくの本をたまたま読んでいて、感銘を受けたという日本人起業家に会いました。彼は自らNGOを立ち上げ、ガーナで農業支援の活動をしているそうです。こうした積極的な日本人はたくさんいます。
「日本人は閉鎖的」というのもそうですが、どんな国にも自分たちについてのステレオタイプがあります。イギリス人はよく「自分たちイギリス人は自信がなく、シャイだ」と言います。でもかれらだってスペインに旅行すればべろべろに酔っぱらって、はしゃいでいますよ(笑)。実際にはみな同じ人間です。大差はありません。
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