ひいきのアイドルや俳優、キャラクターなど(=推し)を、心ゆくまで堪能し、応援する「推し活」。読者がいま夢中になっているのは誰なのか? 本誌・女性セブンでは読者1175人にアンケートを実施したところ、「あなたには『推し』がますか?」という質問には“いる”が72%という結果だった。散財など悩みはあるものの、「生きがいができた」「ワクワクする」などプラスの効果が圧倒的。コロナ禍に打ち克つ最強のワクチンは、「推し活」かもしれない。

人はなぜ「推し」にハマるのか?

 大人になってもアイドルやイケメンにトキメクのは、なぜなのだろうか? 心理カウンセラーの浮世満理子さんは、「彼らは自分を投影した存在だから応援したくなる」と語る。

「たとえば、実生活で頑張っている人は努力型アイドルや苦労している物語のドラマなどの登場人物に感情移入しやすい。癒されたい人は、のんびりとマイペースなキャラクターに惹かれることが多い。ハマる理由は容姿だけではありません」(浮世さん・以下同)

“推し”のどこが好きなのか、その理由に、その人が大切にしている価値観が潜んでいるというわけだ。

「若いアイドルにキュンとなるのも自然なこと。なぜならアイドルは、現実の外にあるファンタジー(空想)の世界の人だからです。少女の頃に叶わなかった願望って誰にでもありますよね? 推しは、その願望をファンタジーの世界で叶えてくれる存在です。その世界では、誰もが10代の少女に戻り、心がトキメクのです」

 アニメや漫画上の実在しない“推し”に対しては、恋愛感情を超えた“理想の生き方モデル”として尊敬の対象になることも多いという。

「心理学では、ファンタジーは私たちを精神的に豊かにしてくれるとされています。ドキドキしたり、励まされたり。落ち込んだときは逃げ場にもなってくれる。それにより、『ライブに行くために頑張って働くぞ!』などと生きる目的ができ、『推しにふさわしい自分になる』というモチベーションにつながります。コロナ禍で世の中が不安定ないま、推し活は心の救いになっていると思います」

 コロナ自粛で、『愛の不時着』をはじめとする韓流ドラマに「沼落ち(ハマる)」した人も多かったが……。

「実は『韓国ドラマなんて』と言っていた私が偶然見た『トンイ』にハマってしまった。いまでは史上最高のドラマです」

 そう語るのは脳内科医の加藤俊徳さん。物語と自分の人生が重なり、毎日涙が止まらなかったという。

「日常がマンネリ化すると脳が成長せず、新鮮なものに対する感度が落ちるため、“韓流なんて”という先入観が、自分の心の琴線に触れるものを妨げていたのでしょう。でも、『トンイ』にハマったのを契機に脳が成長し始め、新しい脳の扉を開くことができたのだと思います」(加藤さん)

 加藤さんは、次は主演女優のほかの作品を見るつもりと言うが、先入観を捨てたとき、あなたも沼に落ちるかも?

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2021年1月28日号