千曲の車券売り場 千曲市や長野県は懸念に向き合って

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 「地域のにぎわいを生み出す」と歓迎する市民と、事業者の情報開示が不十分などとして反発する市民。この溝は埋まることなく、千曲市の競輪の場外車券売り場は30日の開業を迎えた。施設は本当に地域振興につながるのか。ギャンブル依存症の増加につながる―と不安視する声もある。長野県内初となる公営ギャンブル施設の影響に、市や県は主体的に向き合うべきだ。

 県内ではこれまでも須坂市や駒ケ根市などで競輪や競馬などの券売り場の計画が浮上し、地元の反対などで立ち消えてきた。今回、事業者は地元各区に年30万円の協力金の支払いを提案。空き店舗が活用される利点などもあり、千曲市議会も地元に押される形で早期整備に向けた国への意見書を賛成多数で可決した。事業者は「利益はなるべく地域に還元したい」とする。

 だが30日の「誘致に反対する市民の会」の記者会見で会員らは、地域や家庭内で施設への賛否が割れて「分断が生じてしまった」と主張。「ギャンブル施設は地域おこしにつながらない」とも訴えた。小川修一市長は「住民の心配や不安に思う部分を解消できることは(事業者に)お願いしていく」、県保健・疾病対策課は「ギャンブル依存症などの影響がどれだけ出てくるか注視していく」とする。

 信州大経法学部の武者忠彦教授(都市政策)は、事業者が施設周辺の限定的な区域を「地元」と捉えて調整を図ってきた一方、施設に反対する人が思い浮かべる地元は市全体を指し、認識にずれがある―と指摘。今後は営業実態を踏まえて「両者の言い分を市が聞き取り、歩み寄る道を探すのが現実的だ」としている。

(鈴木淳介、渡辺司馬)

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