子どもたちのインターネット利用に
正面から向き合う

―市内小中学校前項の情報モラル指導の底上げを目指してオリジナル教材を制作

桑名市教育委員会事務局様 導入事例

導入の目的 子どもたちが情報モラルを正しく身につけられず、トラブルに巻き込まれてしまうような事態を未然に防ぐためにも、市教委としては必要最低限の指導の水準を示したいとの考えから導入。
導入の決め手 一般的な情報モラルの教材セットは網羅性には優れていますが、分量が多いため全てを扱うことや、現場の教員に内容の取捨選択を任せることは現実的ではなく、オリジナル教材の制作が必要と判断。
得られた効果

実際に授業で使った学校からは、指導のポイントや流れがまとまっており、利用しやすいといった声が多く聞かれ、今回利用してみたことで、自分が指導すべき方向性が見えてきたという教員もいた。

桑名市教育委員会では、当社と共同で小中学校向けのオリジナル教材を制作し、
平成27年度より生徒指導の一環として、
子どもたちのインターネットリテラシー向上を目的とした情報モラル指導を開始している。

子どもたちに向けた提示資料だけではなく、教員向けに指導の方法やポイントを解説した資料も作成し、市内の小中学校全校の代表者に教材の活用方法を解説する説明会を催したことで、
完成から年度末まで短期間だったにも関わらず、2/3近くの学校の授業で実際に利用された。

今回、桑名市教育委員会事務局に、企業と連携してオリジナル教材を作成するに至った背景や課題、
教材導入後の状況について話を伺った。

「スマートフォンを持たせない」から「スマートフォンとの上手な付き合い方」へ

―今回、市教委として情報モラル教材を作成されましたが、作成することになった背景として、どのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。

今回、教材制作を考えることとなった背景には、三重県における子どもたちのスマートフォン利用事情がありました。三重県の中学生のスマートフォン所持率は全国平均と比較してもかなりの上位にあります。桑名市の状況も県と同じで、1日4時間以上インターネットを利用している子どもが14%もいるといった調査結果も出ており、市教委としては、この状況を非常に危惧していました。

また、情報モラル教育の実施は学習指導要領に盛り込まれているものの、各校バラバラな対応となっていました。技術・家庭などの科目で情報モラルを扱うことが普通になった中学校と比べて、小学校では、道徳の授業内で教育する学校もあれば、外部講師を呼んで安全教室を開催する学校もあり、そこで触れられる内容も様々でした。子どもたちが情報モラルを正しく身につけられず、トラブルに巻き込まれてしまうような事態を未然に防ぐためにも、市教委としては必要最低限の指導の水準を示したいという思いがありました。
桑名市教育委員会事務局 指導課
主幹 :谷岡伸悟様
生徒指導係 指導主事 :山本康伊様

―なるほど。情報モラルに関しては、現在様々な教材も販売されていると思いますが、桑名市がオリジナル教材の作成を選択されたのは、どのような理由でしょうか。

わずか数年前まで、学校現場の多くは「子どもたちに情報機器を持たせないことで安全を確保する」考えでしたが、インターネットの活用が当たり前の社会になりつつある今、子どもたちをインターネットから切り離すだけでなく、どのように上手く付き合うのか発達段階に合わせて教えることが重要です。その一方、学校現場の実情として情報モラル指導だけに多くの時間を割くことも難しい。一般的な情報モラルの教材セットは網羅性には優れていますが、分量が多いため全てを扱うことや、現場の教員に内容の取捨選択を任せることは現実的ではありませんでした。この問題に対する市教委の姿勢や指導範囲の考え方を示したかったこともあり、オリジナル教材の作成が必要と判断しました。

インターネット利用に関する指導を「日常」の中で行いたかった

―ご指摘の通り、最近はどの地域でも、ただインターネットの利用を禁止するのではなく、「正しい使い方の教育」を重視している印象があります。とはいえ、市オリジナルの教材作成となると、苦労される部分もあったかと思いますが、いかがでしょうか。

今年度(平成27年度)の期中に作成が決まった上、年度内の学校現場への展開までを予定していたため、実質的なスケジュールは約3か月間と非常にタイトでした。市教委としては、比較的コンパクトかつ、学級担任が使えるような、子どもたちに問いかけながら指導できる教材を当初からイメージしておりましたが、情報モラルの教材セットを販売している企業などに相談しても、この短期間で納得できるものを作るのは難しいだろうと考えておりました。また、子ども向けの提示資料だけがあっても、肝心の指導方法が現場の教員任せになってしまうと、指導内容にバラつきが生まれます。教員の負担が大きくなることで教材を活用しきれない可能性からも、問題の理解や具体的な指導のポイントなども含めた指導資料も合わせて作成する必要がありました。
そのような中、ピットクルーには、子どものネット問題に詳しい実務家として桑名市いじめ問題対策連絡協議会にも参加してもらっていましたので、桑名市の子どもの状況も理解した上で柔軟に対応頂けるのではないかと思い、相談を持ちかけたわけです。また、専門家会議「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」の運営に参加して、教育啓発に関わる様々な取り組みをされていたことも、安心してお願いできた理由の一つです。教材作成においては、子どもたちに教えるべき内容を決定する上で市教委だけの判断ではなく、インターネットの専門家による客観的な視点が入ったことで、現場の教員にも価値がある教材と感じてもらえたと思います。

―当社としても、今回の教材作成に携われたのは非常によい経験でした。教材については、当初からコンパクトなものにするというコンセプトがあったとのことですが、どのような狙いがあったのでしょうか。

子どもとインターネットの問題は幅広く、家庭での日常的な子育てに関わる部分も少なくないので、そもそも全てを学校だけでは引き受けられません。学校で指導すべきことの中でも、特に優先度の高い要素に教材の範囲を絞り込むことで教員の負担が減り、情報モラル指導の実施率が上がることや、子どもたちの理解度も向上することを期待していました。

また、45分間、50分間といった一コマの授業を全て使った指導だけでなく、帰りの会などで複数回に分割して実施できることも重要視したポイントです。情報モラル教育には、外部講師を招いて全校生徒を体育館に集める講演型など、様々なやり方がありますが、日常的に学級担任が機会をとらえて繰り返し指導することも大切だと考えています。学校内や学年にわずかしか居ない情報担当や生徒指導担当だけではなく、情報技術についての知識が少ない教員でも気軽に活用できる教材にすることを意識しました。

子どもたちが安心・安全にインターネットを利用するために

―教員の方々にとって利用しやすい教材を目指したとのことですが、実際に導入された教育現場での反応は如何でしょうか。

教材の完成した正月休み明け早々に各校の代表を集めた説明会を開き、内容や活用方法を伝えました。2月中旬までの実践校数は全体の2/3程度でしたが、3学期スタートにしては、現場は頑張ってくれたというのが本音です。実際に授業で使った学校からは、指導のポイントや流れがまとまっており、利用しやすいといった声が多く聞かれました。今回利用してみたことで、自分が指導すべき方向性が見えてきたという教員もいます。情報モラル教育の分野は教員の抵抗感がまだ大きいと考えられる中、実施状況を見ても及第点だったのかなと考えています。教員向け教材資料の中では、小学生、中学生それぞれに向けた情報モラル教育で、はじめに必ず教えるべきポイントやその背景を解説した上で、インターネット利用について子どもたち自身に考えさせる重要性を説いています。情報モラル指導について、これまでより一歩進んだ姿勢を学校現場に示せたことは非常に大きな成果と考えています。
三重県桑名市教育委員会事務局
右:指導課 主幹 谷岡様
左:指導課 生徒指導係 指導主事 山元様

※部署名、役職等は2016年3月時点のものです。
―実際に利用される教職員の方々にも好印象とのことで、我々としても非常にうれしく思います。この教材をどのように活用しつづけるか、今後の展望をお聞かせください。

平成28年度はこの教材を使った指導の全校での実施を目指しています。今年度中に実施した教員の声などもフィードバックしながら、日常的・継続的に活用してもらえる状況まで進めたいですが、むやみに内容を増やしてしまうと、教員の負担が増えてしまい活用されなくなる恐れもありますので、まずは本教材を見直しながら継続して利用し、教育現場での浸透を図りたいですね。その中で、インターネットという新しい分野に対して苦手意識のある教員にも、自信を持って指導できるようになってもらいたいと考えています。
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