なぜ足関節捻挫は繰り返すのか?
1日に1万人に1人割合で発生すると言われいている、足首(足関節)の捻挫。その多くに足関節が内返しになることで生じる、足関節内反捻挫です。この足関節内反捻挫によって、足関節外側靭帯に損傷が起こります。
運動やスポーツを楽しんでいる方から、この足関節(内反)捻挫による足関節外側靭帯損傷は、診断よりも治療方針や競技復帰そしてその後の予防について詳しく知りたいという相談を良く受けます。
今回はその点について重点的に書いていきます。
(日本整形外科学会のサイト”外側靭帯損傷“を参考にしております。合わせてご覧ください。)
目次
- 足関節豆知識。
- 足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)とは?
- 足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の症状は?
- 足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の特徴は?
- 足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の診断は?
- 足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の治療は?
- まとめ
足関節豆知識。
① 足関節内反捻挫で損傷を受ける足関節外側靭帯には、前距腓靭帯・後距腓骨靭帯・踵腓靭帯の3つの靭帯がある。
② 足関節内反捻挫により損傷が起こりやすい足関節外側靭帯は、前距腓靭帯と踵腓靭帯の2つ。
③ 足関節周囲には距腿関節(狭い意味での足関節)と距踵関節の2つの関節がある。
④ 距腿関節は足関節運動の伸展・屈曲に主に関与し、距踵関節は足関節運動の内返し・外返しに主に関与する。
⑤ 靭帯損傷の程度によって初期の固定期間は異なるが、初期の固定が愁訴の低減に繋がる。
⑥ 可能な限り受傷早期からリハビリを開始することが、長期の愁訴低減に繋がる。
足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)とは?
3つの足関節外側靭帯
足関節の外側には腓骨(外くるぶし)と距骨(足関節の根元の骨)を繋ぐ①前距腓靭帯と②後距腓骨靭帯、そして、腓骨(外くるぶし)と踵骨(かかとの骨)を繋ぐ③踵腓靭帯の3つの靭帯があります。
足関節の構造上、足関節を伸展させる(足首を伸ばす)と足部は自然と内返し(足の裏が体の内側に向く)になります。
よって、足関節が強制的に伸展(伸ばされる)されると、足部が内返しになるため足関節の外側靭帯が引き延ばされ、これが足関節外側靭帯損傷の原因となります。
外側靭帯損傷の発生頻度が高い理由の一つに、足関節は屈曲よりも伸展しやすい構造になっているため(足関節の根元にある距骨の関節面は、足関節面前方が大きく後方が小さくなっており、屈曲時は前方の関節面が足関節に嵌り制限されやすい構造になっている)、足関節が過伸展しやすいことが挙げられます。他にもくるぶしの高さが内側と外側で違い、外側のくるぶしが高い為、内側に倒れやすくなっていることも大きな要因です。
足関節には2つの関節が存在する。
上記のように、足関節はその動きによって「伸展・内返し」と「屈曲・外返し」といった具合に2つの運動が同時に起こる関節であり、2つの関節の運動が関わっています。
2つの関節とは、距腿関節(狭い意味での足関節)と距踵関節のことです。
距腿関節は、距骨・脛骨・腓骨の3つの骨で作られ、足関節運動の伸展・屈曲に大きく関与しています。
距踵関節は、距骨と踵骨の2つで作られ、足関節運動の内返し・外返しに大きく関与しています。
前距腓靭帯と後距腓骨靭帯は距腿関節の安定に大きく関わっており、踵腓靭帯は距踵関節の安定に関わっています。繰り返し捻挫をすると靱帯が伸びてしまい、足関節の固定力が弱まる為ちょっとしたことで捻挫をしやすくなってしまうのです。
足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の症状は?
症状
- 外くるぶし周囲(特に前方の)の腫脹・疼痛・圧痛。
- 足関節の腫脹及び関節内側・外側の皮下出血。
もっとも損傷しやすい靭帯は前距腓靭帯のため、多くの方で外くるぶしの前方に腫脹や疼痛を認めます。
また、前距腓靭帯は足関節を包む関節包と連続しているため、靭帯損傷によって関節包が破綻すると関節内出血が生じるため、足関節全体の腫脹や皮下出血(特に足部外側)を認める場合があります。
足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の特徴は?
特徴
- 疼痛の増悪はあるも、歩行困難は稀。
足関節外側靭帯損傷によって足関節の安定性は低下しますが、それが原因で歩行ができなくなることはありません。疼痛はありますが荷重は可能です。よって、荷重できない場合は、関節面の軟骨損傷や骨折などを疑うべき所見の1つになっています。
足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の診断は?
診断
- 足関節前方引き出しテスト陽性。
- 足関節内反テスト陽性。
- ただし徒手検査は症状が落ち着いた時期に行うべき。
- 正確な損傷靭帯の判断にはMRIやエコー検査を用いる。
足関節外側靭帯は足関節の安定性確保に関わっているため、損傷に伴いその安定性が破綻します。
前距腓靭帯損傷では足関節前方引き出しテストが陽性になり、踵腓靭帯損傷では足関節内反テストが陽性になります。
一般的にはこれだけで損傷靭帯と判断できますが、より精度を高めたい場合はエコーやMRIを用いて損傷部位の判断を行います。
また、腫脹・疼痛が強い時期にこれらの徒手検査を行う場合は、患部に軽いストレスを掛ける程度に留めておいた方が無難かと思います。
足関節内反捻挫(足関節外側靭帯損傷)の治療は?
治療に関しては、初期治療とリハビリテーションに分けて考える必要があります。
急性期の初期治療
急性期の初期治療の重要なポイントは『損傷の程度に応じた初期治療の実践』です。
- 外くるぶし周囲に腫脹・疼痛を認める場合、1週間のシーネ固定+免荷およびRICE処置。
- 1週間後、腫脹の改善する場合(1度損傷。多くは前距腓靭帯または踵腓靭帯の単独部分損傷)、装具固定に変更。
- 1週間後、腫脹の改善ない場合(2度損傷。多くは前距腓靭帯または踵腓靭帯の単独完全断裂)、2~3週固定を継続し装具固定に変更。
- 1週間後、腫脹の改善なく足関節の不安定性が高い場合(3度損傷。前距腓靭帯及び踵腓靭帯損傷の完全断裂)、整形外科での手術加療を検討。
足関節内販捻挫(足関節外側靭帯損傷)の患者さんを診察した場合、前距腓靭帯部の腫脹が明らかに乏しく圧痛が軽度の方以外は、1週間のシーネ固定+免荷重およびRICE処置が必要になります。
RICE処置とは、外傷(怪我)の初期治療の頭文字ををまとめたものです。
R: Rest(患部の安静確保)患部の安静を確保することでさらなる損傷を防ぐことが目的です。
I: Icing(患部の冷却)患部の腫脹を抑制することを目的としています。15分程度、間欠的に患部を冷却します。
C: Compression(患部の圧迫)患部の腫脹予防のために軽度の圧迫を加えます。
E: Elevation(患部の挙上)患部の腫脹予防および軽減のために、理想的には心臓より高い位置に患部を挙上することを心がけます。
また、軽度の捻挫や個人の事情でどうしても固定と免荷重ができない方でも、サポーターでの固定とRICE処置をお勧めします。その理由は、受傷初期で固定とRICEを怠った場合、愁訴が残る可能性が高いためです。捻挫のように頻度の多い疾患こそ、早期復帰のために適切な初期治療を開始することが必要になってきます。
多くの方々は1週間の固定で症状は改善しますが、靭帯損傷に伴う足関節の不安定性が生じるため、装具もしくはサポーター固定を4~8週行い、合わせて足関節の安定性確保のためにリハビリテーションを行う必要があります。
1週間のシーネ固定+免荷重で腫脹の改善を認めず症状の改善の乏しい場合は、徒手検査による足関節の不安定性の評価やエコーを用いて損傷靭帯の再評価を行います。
足関節の不安性が強くない場合は、追加で2~3週間のシーネ固定+免荷重を行い、その後4~8週間の装具固定とリハビリテーションを行うと良いでしょう。
足関節の不安定性も強く前距腓靭帯及び踵腓靭帯損傷の完全断裂を認める場合は、整形外科での手術加療を検討する必要が出てきます。そのままにしておくと足関節だけでなく、膝や股関節に影響が出る可能性がある為です。
亜急性期のリハビリテーション
受傷から1〜2週間経過した亜急性期のリハビリテーションの目的は『早期の活動復帰』です。そのためには以下の2つが大切です。
- 受傷早期からの関節可動域訓練開始
- 足関節の剛性を高めるために足部外存筋のトレーニング
現在では、可能なかぎり早期から関節可動域訓練を行うことが血液循環を促し患部の腫脹を改善させ、腱や神経の癒着を予防し、かつ損傷靭帯の修復を早めると考えられています。
そのため、初期1週間の安静確保の後は積極的な関節可動域訓練を開始します。1度損傷であれば、内反予防のためのサポーター固定もしくは装具固定の上で、足関節の安定性確保のために足部外在筋肉(下腿から足部に伸びる筋肉)トレーニングを開始します。
2度損傷以上でも、損傷靭帯に負担をかけない範囲(足関節底屈10度・背屈10度)で早期の関節可動域訓練を開始します。固定終了後からはサポーター固定もしくは装具固定の上で足部外在筋肉(下腿から足部に伸びる筋肉)トレーニングを開始します。
有名な足部外在筋のトレーニング方法として、足の裏にタオルを敷き、そのタオルを足の指だけでたぐり寄せるトレーニング(タオルギャザリング)が挙げられます。
回復期のリハビリテーション
受傷から4週間ほど経過した回復期のリハビリテーションの最大の目的は、『再発予防』です。そのためには以下の2つが重要になります。
- 積極的な関節可動域訓練
- 深部感覚を高めるアスレチックトレーニング
この時期には積極的に関節可動域訓練を行うことで、正常可動域の獲得を目指していきます。
また、再受傷を予防するために、バランスボードを利用し、不安定な環境下でも正しく足関節を可動させられるようにアスレチックトレーニングを行い筋力をアップさせると再発防止に繋がるのでぜひ行ってほしいトレーニングです。
まとめ
なぜ足関節捻挫が繰り返しやすいのかが分かったと思いますが、大切なのは捻挫をしないこと、した場合にしっかり対処する事です。
足の捻挫は放っておくと将来的に不調の原因になるのでしっかり治しておきましょう。
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