わら人形論法(ストローマン)とは?種類と例 | 詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ

わら人形論法とは、ストローマン、ダミー論証とも呼ばれる詭弁の1つ。相手の意見を歪曲して、その歪曲した意見に基づいて論破する、というテクニックだ。Twitterなどでの言い争いでもよく見られる。実際にどんなものか、種類とそれぞれの例を見ていこう。

わら人形論法は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法

わら人形では、相手の意見を歪曲、誇張、言い換えなどをし、本人の本来の意見でなく、都合よく歪曲した意見を叩く。あたかも本人でなく、自分で作り出したわら人形を攻撃するかのようにだ。これにより、相手を論破したことにしようとするテクニックだ。これは一種の論点のすり替えでもある。

相手の意見の歪め方には、複数のパターンや特徴がある。多くのわら人形論法は、以下のパターンを複合的に使っている。いくつか見ていこう。

 

パターン① 極端な逆のことを主張していることにする

以下の例を見てみよう。

Aさんの主張:「子供を道路で遊ばせるのは危ない。」
わら人形論法:「Aさんは、子供を家に閉じ込めておけと言っている。果たしてそんな教育が正しいのでしょうか。子供が外で遊ぶのはいいことだ。」

明らかにAさんは、子供を家に閉じ込めておけなどとは言っていない。もっと言うと、外で遊ぶのがいけないとも言っていない。主張しているのは、道路で遊ぶのが危ないということだけだ。
ここでは、まず道路で遊ぶのが危ないという意見を、外で遊ぶのがよくないと言っているとことにしている。「道路で遊ぶ」はあくまで「外で遊ぶ」の中の1ジャンルだ。その上で、つまり子供は家に閉じ込めておくべきだと主張したことにしている。

他にも以下のような例がある。
Aさんの主張:「世界中の民主主義国家で、ポピュリズムが台頭している。なんとかしなくてはならない。」
わら人形論法:「独裁国家を肯定するというのか!」

Aさんの主張:「軍事予算を減らすべきだ。」
わら人形論法:「Aさんは国を守らなくてもよいと言っている。」

 

パターン② 拡大解釈する

Aさんの主張:「警察は容疑者のメール履歴を見る権限を持つべきだ。」
わら人形論法:「疑わしいというだけで、国家が人のメールを見れるだなんて、とんでもない制度だ。これは明らかに市民のプライバシーの侵害だ。Aさんは監視国家を作ろうとしている。これを止めなければ日本は人権のない国になってしまう。」

Aさんは、そこまで言っていない。この論法は、論点を監視国家の是非や人権の話に摩り替えている。
このように、Aということは、Bも言っている、ということはCも言っている、とどんどん拡大解釈していき、最後のCを叩くのがわら人形論法の1つのやり方だ。

以下のような例も拡大解釈の一種だ。
Aさんの主張:「刑務所に年間5000億円かかっている。制度改革が必要だ。」
わら人形論法:「刑務所は必要だ。犯罪者を社会に出しておくことは、どう考えても容認できない。」

 

パターン③ 間違った例を持ち出す

Aさんの主張:「アンケートの結果、70%がXXに反対でした。アンケートでは、各年代からランダムで選択肢、合計800サンプルに聞きました。」
わら人形論法:「たった一部の人たちに聞いただけでそれを皆の意識というなんておかしい。だったら次の選挙もほんの数百人の一握りで決めればいい。そんなの民主主義と呼べるか。そんなアンケート無効だ。」

確かに選挙は、一握りの人たちだけに聞いたら、民主主義として終わっている。だが、アンケートで一部のサンプルに聞くことの是非と、選挙で一部のサンプルに聞くことの是非は、別の話だ。このように間違った例に当てはめて、相手の主張を否定するのも、1つのわら人形論法だ。

以下の会話も同じような手法が使われている。
「火の扱いは気をつけなさい。怪我するかもしれないでしょう。」
「それを言ったら、サッカーをしてても怪我するかもしれない。そんなこと気にしてたら何もできないよ。」

 

パターン④ 発言の一部を取り出す

Aさんの主張:「資本主義が競争を促して結果格差ができることは悪いことではない。重要なのは、結果の格差でなく、機会の格差を減らすことだ。皆が平等な機会を持った上で、努力の結果格差ができるのは悪いことではない。もちろん程度もあるが。」
わら人形論法:「Aさんは、格差社会を良いことだと言っている。」

発言の一部を取り出して、それが本人の主張であるかのように話すのも、一種のわら人形だ。意見を故意に単純化しているという見方もできる。

ただの例え話に噛み付くのもその1つのやり方だ。たとえその例があまりよい例じゃなかったとしても、主張自体が間違っていることにはならない。

 

パターン⑤ 関連する別のものを主張していることにする

Aさんの主張:「トランプの施策には、実際悪くないものもある。」
わら人形論法:「Aさんは、人種差別を肯定している!」

Aさんはトランプの一部を肯定しただけだ。この論法では、トランプの別の要素も肯定していることにしている。

有名な例では、かつてニクソン大統領も、このようなわら人形を使って批判を退けた。簡単に要約すると、以下のような話だ。
批判:「ニクソンがふところに納めた選挙資金$18,000は違法で返却すべきだ。」
回答:「確かに私は支持者から犬を譲り受けた。とてもかわいい犬で、子供も気に入っている。誰がどう批判しようと、私はこの犬はキープする。」
誰も、譲り受けた犬のことは批判していない。批判しているのは着服した金だ。しかし、こんなロジックでもうまく世間の目を批判からそらすことに成功したらしい。しかも犬と子供を持ち出して感情に訴えるのは、さすが政治家といったところだろうか。

 

わら人形論法では、冷静に相手の間違いを指摘しよう

わら人形論法を使われたら、一番の対策は、相手の論理展開の間違いを指摘してやることだ。例えば最初の道路で遊ぶ例であれば、「家に引きこもっていろとは一言も言っていません。外で遊ぶことも否定していません。道路で遊ぶのが危ないと言っただけです。」といった形だ。自分がいない場で使われるのが一番たちが悪いのだが。
わら人形論法(ストローマン)は、相手の主張を歪めて、それを攻撃する手法だ。勢いで押し切れる場合もあるだろうが、論理的に間違っていることは認識しよう。

 

「詭弁を見抜く!論理の間違いシリーズ」では、他にも以下を紹介している。
循環論法とは?具体例と悪用方法
もっともらしいが間違った比較7種
軽率な一般化とは?例と気をつけ方