菊地合板木工、欧州や台湾に組み立て式和室を輸出

地域発世界へ 秋田県

和室主体の住宅内装材メーカー、菊地合板木工(秋田県五城目町)が海外販路の拡大に力を入れている。国内で和室の需要が落ち込むなか、持続成長の基盤を築く狙いがある。職人の技を生かした組み立て式の和室を欧州や台湾に輸出、和紙を使った障子スクリーンはロシアで販売した。将来的には東南アジア市場の開拓も計画している。

オーストリアや台湾に組み立て式和室を販売した(2019年、ウィーン)

「フランスの自宅のリフォームに合わせ、和室コーナーを造りたい」。1月、英国在住の男性から、海外営業を担当する菊地けい子取締役の元に問い合わせが入った。

欧州最大のインテリア・デザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」にオンライン出展していた組み立て式和室を購入したいという連絡だった。新型コロナウイルス禍で男性との取引は完了していないが、菊地取締役は定期的に連絡を取り合い、準備を進めている。

青森のヒバや木曽のヒノキと並び、「日本三大美林」の一つに数えられる秋田スギ。その産地の秋田県は木材加工が盛んな地域だ。菊地合板木工の菊地成一社長によると、1990年代後半には、和室主体の内装材メーカーが県内に25社ほどあった。

だが、消費者の生活様式が変化し、国内の住宅の主流は洋室に置き換わった。需要の急速な縮小で同業者の廃業などが相次ぎ、県内に残るのは菊地合板木工だけだという。

厳しい事業環境下で海外に目を向ける契機になったのは、メゾン・エ・オブジェだった。2009年に日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援を受け、職人の建具づくりの技術を生かした「障子スクリーン」を出展した。

障子スクリーンは室内を仕切るパーテーションとして使う。日本の伝統的な和紙を生かす一方で、海外の消費者の好みに対応するため、和紙に施すデザインをオランダの風車の絵柄にしたり、白木で縁取る塗装に改良を加えたりした。この結果、ロシア・モスクワの家具卸売・小売業者との商談につながり、計486セットを販売した。

13年に出展した台湾の展示会をきっかけに販促したのは組み立て式和室だ。建具や障子などをセットで販売し、現場作業の手間を軽減、2人の大人が3~4時間で組み立てられるという。価格は4畳半タイプが100万円前後で、これまでに台湾とオーストリアで販売した。4月には一回り小さい3畳タイプを製品化、コンパクトさを求める需要に対応する。

足元では東南アジアの富裕層向けに、組み立て式和室を販売する準備を進めている。「和室の文化や技術を継承するには、海外市場の販路開拓は欠かせない」と菊地社長。コロナ禍に翻弄されながらも需要掘り起こしに全力を注ぐ。

(秋田支局長 磯貝守也)

会社概要 1949年創業。2021年8月期の売上高は前の期比23%減の5億2700万円を見込む。和室用の造作材や建具、天井材などを製造・販売。フローリングなども販売。従業員は52人。

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