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ホテルプロデューサー龍崎翔子が考える、選択肢を知ることの重要性と楽しみのサムネイル

ホテルプロデューサー龍崎翔子が考える、選択肢を知ることの重要性と楽しみ

「CHOOSEBASE SHIBUYA」の空間演出・メディアディレクションを担当したL&G GLOBAL BUSINESSの龍崎翔子さんに聞く、「CHOOSEBASE SHIBUYA」の可能性と楽しみ方。

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CHOOSEBASE編集部
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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
ホテルプロデューサー龍崎翔子が考える、選択肢を知ることの重要性と楽しみのサムネイル

「CHOOSEBASE SHIBUYA」がいよいよオープンしました。半年ごとのテーマに沿って商品やブランドが変わっていくという新しいお店の空間演出やメディアディレクションを担当したのは、HOTEL SHE,など新しい体験空間を作り続けるL&G GLOBAL BUSINESSの龍崎翔子さん。ホテルプロデューサーとして活動してきた龍崎さんは“選択肢を知る”という「CHOOSEBASE SHIBUYA」の役割にどんな可能性を感じているのでしょうか。

龍崎翔子/L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表、CHILLNN, Inc.代表、ホテルプロデューサー1996年生まれ。2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を設立後、2016年に「HOTEL SHE, KYOTO」、2017年に「HOTEL SHE, OSAKA」を開業したほか、「THE RYOKAN TOKYO」「HOTEL KUMOI」の運営も手がける。2020年にはホテル予約システムのための新会社CHILLNN, Inc.を本格始動。また、2020年9月に一般社団法人Intellectual Inovationsと共同で、次世代観光人材育成のためのtourism academy "SOMEWHERE"を設立し、観光業の新たな可能性に挑戦している。

 

あらためて、龍崎さんは普段どのような仕事をされているのですか。

龍崎:私は「ホテルプロデューサー」というイメージが強いかと思うのですが、“ホテルをやるため”に会社をやっているわけではないんです。私たちの根本には「社会に新しい“選択肢”を作りたい」という思いがあります。世の中には、自分の輪郭にフィットする選択肢が少ない業界ってたくさんあると思うんです。

ホテル業界も、今でこそいろんな宿がありますが、私が起業した5年前、さらに遡ると起業を志した15年前には、選択肢が全然ない領域でした。もちろん当時も素敵なホテルや旅館はたくさんあったのですが、ちょっと旅行に行く時、比較的リーズナブルに泊まりたいと思っても、いわゆるビジネスホテルやシティホテルぐらいしか選択肢がなかった。ホテルを選ぶ時に、機能や料金といった定量的な指標で選ぶだけではなく、思想や空気感など定性的なものとのマッチングをベースに選べてもいいのにと、欲しい選択肢がなくて満たされない感覚がずっとあったんです。そうして、ただの旅先の寝床ではないホテルの選択肢を作るところから始めて、今では、住宅や保育、教育などホテル業界以外の領域においても、色々な方とコラボレーションもさせていただきながら、“選択肢を作る”ことに取り組んでいます。

今回の「CHOOSEBASE SHIBUYA」も“選択肢”がキーワードになっていますよね。

龍崎:「CHOOSEBASE SHIBUYA」も、その一つだと思います。“CHOOSE”という名を冠する通り、お客さまの“選ぶ”を提示する場所という、今までなかった新しい形の百貨店です。今回ディレクションされている辻さんが「未来の“選ぶ”を提案する」とおっしゃっていたのですが、空間だけでなく取り扱う商品もすべてにおいて“選ぶ”がベースになっていて、お客さまにとってより自分らしい選択肢を発見していただけるような場所になっていると思います。

「社会の選択肢を作る」を今までやってこられた龍崎さんと、「“選ぶ”を提案する」この「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、すごく重なる部分があるのですね。「CHOOSEBASE SHIBUYA」では、どのような関わり方をされているのでしょうか。

龍崎:L&Gとしては主に空間演出やメディアに関わらせていただいており、お客さまがお買い物をするだけではないような場所作りをしています。土台となっているのは「空間型メディア」という考え方です。私たちは「ホテルはメディアである」「ホテルはライフスタイルを試着する場所である」という言葉をよく使うのですが、ホテルは生活のあり方そのものを人に提案する「空間型メディア」だと考えています。言い換えれば、プライベートとパブリックが入り混じった、衣食住をすべて体験できる総合演出空間。お客さまは、ホテルでの滞在を通して、自分の中にこれまでなかったライフスタイルを一時的に試着し、気に入ったものを持ち帰ることができるんです。

同じように、店舗も「空間型メディア」と捉えて、ただの売場でなくお客さまに何かを伝えたり実感してもらえる場になれば、より面白いですよね。そういう意味で、辻さんが提案してくださった「メディア型の百貨店」という考え方にはすごく共感しました。

龍崎さんがホテルにかかわらず、場所づくりする上で大事にしてることはありますか。

龍崎:何かを売ろうという時、お店としてのイデオロギー(思想)を決めた上で、それに照らし合わせて商品やその使い方をおすすめするということが多いのではないでしょうか。だけど私は、そのイデオロギーのあり方も含めて選択肢をお客さまに提示することに大きな意味があると考えています。最初からその選択をするために十分な量と質の情報をお渡しし、最後の決断までをお客さまに委ねるということですね。

「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、お買い物をするだけではなく、ある一つのテーマに沿ったいろいろな選択肢を知ることができるお店になっています。そのメインテーマは半年ごとに変わり、商品も雰囲気も内装もそれに伴って変わるという、この点でもメディアのようなショップといえますよね。

例えば、「サステナビリティ」というテーマに対して、「化学繊維ではなくコットンを使うことが重要だ」と考える人もいれば、逆に「コットンは環境へのダメージが大きいから、再生資材の化学繊維の方がいい」と考える人もいます。そのどちらが正しいのかジャッジするのも、「サステナビリティ」におけるイデオロギーを定めるのも、ショップ側ではなくお客さまだと思うんです。「CHOOSEBASE SHIBUYA」では、そのテーマについての情報や選択肢を提示することで、それについて考えるきっかけを作り、そこでお客さま自身に選んでいただけるようなショップになっていけたらと思っています。

では最後に、お客さまにどのように「CHOOSEBASE SHIBUYA」を楽しんでいただきたいかを教えてください。

龍崎:テーマごとにその時ホットなブランドのさまざまな商品を取り揃えており、見ているだけでも楽しいショップです。購入目的でなくても「今こういうのが話題なんだ」「こういう新しいものがあるんだ」という選択肢を知るために来ていただくだけでもいいと思います。

また、百貨店では販売員が商品のセールスポイントやアドバイスをお話しすることが大きな特徴ですよね。「CHOOSEBASE SHIBUYA」は、そういう商品についての情報はもちろん、目では見えないような、そこにある思いや背景なども含め、メディアを通して伝える設計になっています。一人でじっくり考えたいという方や、人と接するのは苦手だという方、買うか分からないけどとりあえず見てたいという方でも、いろんな知識や情報を得ながら吟味できるので、気軽に立ち寄っていただけると嬉しいです。メディアでも、商品やブランドの紹介はもちろん、テーマに沿った読みものを定期的に配信しますので、ぜひのぞいてみてください。

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Photo:
Eichi Tano
Text:
Yurie Nishioka
Edit:
Takahiro Sumita