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今回は思考パターン別のモチベーション向上法についてお話していきましょう。
まず,以下の質問に直感で答えてみてください。
あなたにとって仕事とは何ですか?
自分の頭の中に浮かんだ言葉を,そのまま紙に書いてみてください。どんな答えが出てきたでしょうか?
人間には様々な「思考パターン」がありますが,「言葉の使い方」によって,そのパターンを見分けることができます。そして,モチベーションを高める方法を,思考パターン別に考えることができます。
言葉の使い方で思考パターンを見分ける方法のことを,NLP(神経言語プログラミング)という心理学では「メタモデル」と呼んでいます。ここで紹介するのは,最も代表的なメタモデルの一つである,「目的志向型」と「問題回避型」を見分ける方法です。
さて,先ほどの質問に対して,どのような答えが出てきましたか?
「仕事とは自分がやりたいことを実現するための手段」というように「何かが欲しいから仕事をする」と表現した人は「目的志向型」の思考パターン,「自分や家族を路頭に迷わせないための手段」というように「何かを避けるために仕事をする」と表現した人は「問題回避型」の思考パターンを使っていると言えます。皆さんはどちらのタイプだったでしょうか?
それぞれのタイプの特徴は表の通りです。
| 目的志向型 (~へ向かって) | このタイプの人は,目的意識が明確で,ゴールを定めたら迷うことなく一直線に突っ走ります。課題を達成した時の喜びや可能性に目を向けて目標に向かうタイプです。過去を振り向かず,あまり過去の経験や失敗から学ぶということがないために,後で問題を起こすことがあります |
|---|---|
| 問題回避型 (~しないように) | このタイプの人は失敗しないように,問題が起きないように慎重によく考えてから行動します。慎重なために迅速な対応が取りづらく,その間により問題を大きくしてしまうことがあります。問題を回避することに集中して目的が不明確になり,さらに深い問題にはまることもあります。問題を想定しすぎて,大きなチャンスを逃がすこともあります |
注意して欲しいのは,目的志向型はポジティブで「デキル人」,問題回避型はネガティブで「デキナイ人」というわけではない,ということです。単純に「違う思考パターンを使っている」と思ってください。実際,問題回避型の人には,綿密に計画を立てて,あらゆるリスクを想定して確実に業務を遂行する,デキル人が大勢います。
実は,人は常にどちらかだけの思考パターンを使っているわけではありません。たいていの人は,問題回避型の思考パターンと目的志向型の思考パターンを無意識に使い分けています。会社では問題回避型,趣味では目的志向型というように,環境や役割によって異なる思考パターンを使う場合もあります。
問題に悩んでいるときは「何が問題か」を明確にする
次に,問題回避型と目的志向型のタイプごとに,モチベーションを向上させるポイントを説明します。
まずは,問題回避型から見てみましょう。ちなみに,筆者の経験では,ITエンジニアには問題回避型の人が多いように思います。正確さを求められる仕事であるため「問題が起こらないように」というリスク回避の思考になりがちだからでしょう。
これまでの連載で,モチベーションを上げるためには,自分自身で目標を設定することが有効と述べました。しかし,問題回避型の人は,とかく目の前の問題を解決することに集中してしまいがちです。こうなると,「自分がどうなりたい?」という目標が浮かばず,結果的にモチベーションも上がらない状態に陥ります。
実際,「目標設定しようとしてもどうも目標が浮かばない」「目標を設定してもどうも腰が引けてしまいモチベーションが上がらない」という場合は,潜在的に身の回りの「問題」に悩んでいることが多いものです。
こんなときは,まず問題を問題としてしっかり「受け止める」ことです。これは,問題を解決する,という意味ではありません。
1 何が本当の問題なのか?
2 それはなぜ問題なのか?
3 どういう状態が理想的なのか?
4 理想に近づけるためにあなたができることは?
を明確にする,ということです。
人がなんらかの問題に悩んでいるときは,意外に「何が問題か」に気づいていない,あるいは気づいているつもりになっていることが多いものです。もし,皆さんが何かの問題で悩みに悩んでいるとしたら,安心して相談できる人に話を聞いてもらうなどして,上の4つを明確にすることをお薦めします。問題を問題として受け止められたら,問題に対して冷静になれます。その結果,目標を立てやすくなるのです。
我々がコンサルティングに携わったIT企業のA社で,こんなことがありました。A社は,圧倒的に問題回避型の社員が多い会社でした。ある会議(ある事業のビジョンを決める会議でした)にオブザーバーとして参加したのですが,会社の問題にばかり焦点が当たり,「どうしていきたい」というビジョンがなかなか出てきません。というより,問題回避型の思考パターンがあまりにも強いため,そもそもビジョンを描くという発想すら出てこないのです。
話が進まない状態に,目的志向型のマネジャーは悩んでいました。しかし問題回避型の人に「問題を無視して目的(理想の姿)を描け」と言っても,なかなか思考は切り替わりません。そこで,その会議では徹底的に問題について議論を交わし,「何が問題なのか」を整理していくことにしました。そのうえで,「どうしたいのか」というビジョンを描く方向に話を誘導していったところ,ようやく「具体的に何をしていくか」が明確になってきました。つまり,問題を「受け止めた」結果,ようやく「目標」設定が可能になったわけです。
問題を受け止めたら,「問題を解決した結果どうなりたいのか」といった「目標」を明確にしましょう。これが,モチベーション向上につながります。
目的志向型は夢を膨らませる
一方,目的志向型の場合はどうでしょうか。
目的志向型の人は,はじめから目的意識が明確なので,その目的が達成できたとしたらどんなに素晴らしいか,イメージを膨らませていきましょう。このタイプの人は,夢が大きければ大きいほどワクワクしてくるので,とにかく夢を膨らませます。
そのうえで,そのためには何が必要か?想定される障害・リスクは?具体的にどのように進めていくか?というように,具体策やリスク・問題点を考えるようにすれば,目的を達成する可能性が高まり,その分モチベーションが上がります。
モチベーションを向上させるうえで大切なことは,「今自分がどの思考パターンになっているのか」を認識することです。そして,「問題回避型モードに入っているな」と思ったら問題を受け止めるところから,「目的志向型モードに入っているな」と思ったら目的のイメージを膨らませるところから始めきましょう。
次回は「やる気の高まるコミュニケーション」についてお話します。


















