自民党総裁選後、誰が新総裁になっても必ず起きること
1. 新自由主義と新自由主義者への「死亡宣告」
「新型コロナの世界的パンデミック」が新自由主義者のテーマソングの「小さな政府」を否定しました。
新型コロナのパンデミックが、アメリカをはじめとする西側先進国の指導者に「大きな政府でなければ国民も国も守れない」ことを痛いほど思い知らせたのです。
これが理解できている日本の政治家は、自民党では岸田文雄さんと、彼の所属する派閥の「宏池会」の政治家、または「郵政造反組」という汚名を着せられた「郵政民営化に反対した愛国議員」だけです。
★岸田文雄さんと十倉経団連会長が奇しくも一致した「新しい日本型資本主義」とは「ステークホルダー資本主義」のことです。
ステークホルダー資本主義とは・意味
ステークホルダー資本主義とは?
2020年1月のダボス会議(世界経済フォーラム)の主題となった、ステークホルダー資本主義。これは、企業は株主の利益を第一とするべしという「株主資本主義」とは違い、企業が従業員や、取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方である。
具体的には、環境破壊の防止や、企業がオフィスを構える地域社会への投資、従業員への公正な賃金の支払い、労働者間の格差の是正、適切な納税などが求められている。
この言葉が広まったきっかけは、2019年8月にアメリカの大手企業で構成される非営利団体「ビジネス・ラウンドテーブル(※1)」が、格差拡大や短期的な利益志向などこれまでの株主資本主義の問題点を指摘し、あらゆるステークホルダーにコミットする旨の声明を発表したことだった。
これを受けて、1月のダボス会議では、新たにステークホルダー資本主義を提唱する「ダボス・マニフェスト2020(原文は1973年作成)」が作られたほか、以下の6つが重要項目として議題にあがった。
★ステークホルダーとは「全ての利害関係者」と言う意味です。
世界は「新自由主義では資本主義と言うシステムが将来的に維持できない=持続可能ではない」と気が付いたのです。
★資本主義は人類が発明した「最も成功した経済システム」です。
しかし、ミルトン・フリードマンにより、新自由主義が唱えられ、それがアメリカ、イギリス、欧州諸国、日本に拡がり、定着するにつれ、国民の所得格差が拡大し、社会と国民が「分断」され、国内での紛争や治安の悪化をもたらしました。
★狙いは新自由主義で傷んだ資本主義を「再構築」することです。
★要するに「新自由主義の否定」と「ミルトン・フリードマンの否定」です。
★「資本主義の再構築」の為の最終目的地は、フリードマンの好敵手であったポール・サミュエルソンを経由してジョン・メイナード・ケインズに戻ることです。
★その第一歩として、ミルトン・フリードマンが唱えた「株主資本主義」の否定です。
ネットで検索すると、このステークホルダー資本主義を、グレタ・ツゥンベリと絡ませることによって否定しようとす経済評論家達がいますが、それこそ「剥き出しの陰謀論」に過ぎません。
彼等の論文を読むと、皆例外なく「ミルトン・フリードマンの熱狂的な信者」であることをてらいもなく明言しています。
要するに、竹中平蔵、岩田規久男(元日銀副総裁)、高橋洋一らの新自由主義者(リフレ派を含む)と同じ穴の狢なのです。
★東大名誉教授だった宇沢弘文先生は、かつてシカゴ大学の同僚だったフリードマンが死んだとき、はっきり「フリードマンが死んでよかった」と明言しています。
これ以上長生きしてやりたい放題やられてはかなわんと言うのが本音だったでしょう。
新自由主義の開祖のミルトン・フリードマンとは、その「死」が多くの同僚経済学者や政治家によって快哉を叫ばせるほどの「悪魔の経済学者」だったのです。
その辺は、拙著「新自由主義の兵隊⑤人類を不幸にしたインチキ経済学: 人類を不幸にした経済学者たち」を御参照ください。
フリードマン同様、やはりその「死」が、快哉を招いたのが、「鉄の女」ことマーガレット・サッチャーです。
※マーガレット・サッチャーと、高市早苗。高市は、マーガレット・サッチャーを尊敬し、サッチャーを目指している。
サッチャーは、第二次大戦後「実質的な敗戦国」として息も絶え絶えとなっていたイギリスを「人道にもとる」新自由主義を導入することにより、コミュニティ(共同体)レベルまで徹底的に「破壊」してしまいました。
サッチャーが政権に居座った12年間は、イギリス国民の徹底的な貧困化と地域の分断を招きました。
その結果、サッチャリズム(サッチャー型新自由主義)の最大の被害者となったスコットランドにUK(イギリス王国)からの「分離独立運動」が起きているのは有名な話です。
日本も「小泉―竹中構造改革」とアベノミクスにより「東京一極集中」と地方の衰退と言う「深刻な分断」が起きています。
★2003年、小泉純一郎が宮沢喜一元総理に「73歳定年制」を盾に引退を迫ったのは、宮澤喜一の「ケインズ主義的経済思想」が邪魔だったからと言われています。
宮澤喜一は岸田文雄さんの所属する宏池会の大先輩で、若いときは池田勇人元首相の下で、「所得倍増政策」に参画し、日本の高度成長を達成しました。
また、総理退陣後は、時の小渕恵三総理に請われて再び財務大臣となり、「平成の高橋是清」として、バブル崩壊後の日本経済を持ち前のケインズ的経済政策で、低成長ながらも、デフレに陥ることなく、かろうじて支えていました。
森喜朗が退陣後、アメリカのブッシュ政権の傀儡として発足した小泉純一郎にとって、竹中平蔵を使って、日本を一気に「新自由主義的経済体制」に転換させるにあたって、正統派経済学の伝統を継承する宮澤喜一が邪魔だったので、引退させたというのが今では定説になっています。
その辺は、傍で見ていた岸田さんはよく知っていたと思います。
2. 日本は「国家」「地方」ともに公務員の数が少なすぎます。
それは、今年の年明け以降、新型コロナのパンデミックで、厚労省を始めとして、霞が関の中央省庁の残業が異様に増えて「ブラック霞が関」と言われていることからも明らかです。
「新型コロナ」と「格差の拡大と再生産」「貧困化」を原因とする国民の「行政サービスへの需要の激増」に公務員が少ないために「行政サービスの供給」が追い付かないのです。
経済学で言うところの「行政サービスに対する需要と供給のミスマッチ」即ち、国家公務員も地方公務員も絶対人員数が少なすぎるために「行政サービスの供給力」が足りないのです。
国家と地方ともに公務員の絶対人員数を大幅に増員しなくてはなりません。
パソナから派遣できている「非正規の公務員」で優秀な人から、随時正規公務員に転換して「再雇用」しても良いでしょう。
その財源は、私は個人所得税の「累進税率」を引き上げることで十分確保できると思います。
例えば、過去記事の
高市早苗・サナエノミクスの検証⑫ 松下政経塾発「狂った思想」と変な日本語「御皇室」
で示したように、年収1億円以上は、税率を70%にしても良いと思います。
3・必ず起きる自民党内の「派閥の再編成」と「清和会支配」の終わり
今、自民党内で1955年の結党以来(保守合同、55年体制)、設立当初の「派閥名」と「設立理念」を維持しているのは、岸田文雄さんの率いる「宏池会」のみです。
2001年の小泉政権発足までは、同じく「保守本流」と並び称された、佐藤栄作→田中角栄→竹下登と続く、「経世会」は、
2003年に小泉の「切り崩し工作」を受け、野中広務が引退に追い込まれた後は、「平成研究会」と名称を改めて今は見る影も有りません。
★決選投票で支持する候補を「一本化」できない派閥は分裂して衰退します。
私が、注目しているのは清和会です。
憲政史上最長となった第二次安倍政権で、自派閥から総理を出したにもかかわらず、閣僚や党役員人事で冷遇され続けた清和会には「不満のマグマ」がたまり、福田康夫元総理の息子の福田達夫を中心とした「世代交代」と「派閥代替わり論」が出ています。
私は、派閥会長の細田博之と「影響力の強い」安倍前総理の呼吸が有っているのかどうか気になります。
いずれにせよ、細田会長か安倍前総理かいずれかが、決選投票で「支持候補を一本化」できなければ、分裂し衰退の道を歩むでしょう。
現在に至る「清和会の自民党支配」は厳密には2000年4月の森喜朗政権から始まりました。
「清和会支配」が固まったのは小泉純一郎政権以降です。
一言で言えば「清和会支配」が始まった2001年4月26日(小泉政権発足)以来、「新自由主義による日本制圧」で重苦しい、「出口の見えないデフレ」が続いています。
「多数派閥による金権支配」と言われた、竹下派経世会支配の時代の方が、まだ景気も良く、格差もほとんどなく我々日本国民は幸福でした。
誰が総理になろうと「一億総中流社会」の国民は関心が有りませんでした。
★正直「清和会支配」は終了して欲しいです。
そして、「暖かい人間の血が通った」岸田文雄さんに総理になり、我々国民に寄り添ってもらいたいです。
以上