「いんちき保護命令」中間報告 0. はじめに 本シリーズのエントリがしばらく途絶えておりましたが、中間報告として出せるだけの情報が集まりましたので、ぼちぼちアップしていこうと思います。 で、いきなり話が逸れるのですが、ここで一冊の本をお目に掛けたいと思います。 本来は、アップ予定・順調に遅延中の『参考文献エントリ』で紹介する予定の本だったのですが、この『いんちき保護命令シリーズ』で出しておかなければっ!的な記載がたっぷりあるので、いつ完成するかわかんない『参考文献』に先駆けての紹介となりました。 ※著作権を盛大に侵害してるっぽいエントリですが、当方としては『超おすすめ!買おう!』としか言ってないわけですから、大きな心と広い視野で見ていただきたく思います(・・・細かい話は勘弁してくださいね)。
そして、判事の「抑えに抑えた口調の中から漏れ出る弁護士への怨嗟」が、悪趣味な面白さをかきたててやみません(汗 要するに、『おまえら弁護士みんなバカ』 『勉強して出直して来い』 としか言ってなかったりして(苦笑)
スゴいでしょ? マジものの苦情ですよ、コレは。 ※受講者席の反応が書かれていないのが惜しまれます。(・・・「沈黙」だけはやめて欲しい、せめて「一同苦笑」であって欲しいと願われてなりません) で、この苦情っぷりを苦笑しながら読むだけでも、価格の半分(1,500円)くらいの値打ちはあります。記載内容の役立ちっぷりは値段分あるので、価格の1.5倍のバリューがあるお買い得本ってことです。 お勧めです! ところで、『離婚訴訟ワールド=ダメ弁・バカ弁の集まるゴミ溜め』という、当方の(当初は荒唐無稽だったはずの)仮説をぶっ潰すような話、一度でいいから出会ってみたいです。ホントに無いですか? で、この第Ⅱ章も出色でしてね。 「DV事案への対応(保護命令申立てを中心に)」 と題して、当時東京地裁でDV事案の対応をされていた、判事ご本人の講義が掲載されています。 もう、立場とか組織とかいろんなものを越えて、この判事さんの憤りやDV法への疑問が漏れる漏れる。 まず、東京地裁の現職判事という肩書きを背負ったヒトが、前置きに、
という注釈を入れて話しはじめているあたりから、『異例中の異例』アンテナがビンビン反応するわけですよ。 ところで、DV法での保護命令手続は、(なぜか)民事保全*関連の条文をまるパクしたような内容なんですが、そこからしていきなり俎上にあがります。 *民事保全=仮処分・仮差押え等、迅速性が要求されるネタを対象にしてるルールなんですが、いずれも間違いだったことが判決後に判っても、カネで済む話ばっかなんですよね。なぜこれがDV法に流用されているかはホントに理解不能です。
この民亊○部ってのは、DV法保護命令の専属部門じゃなくって、民亊保全をメインの仕事としているところです。そういう部で、書類にハンコをつけるヒトが5名しかいないってのは本当にスゴい話でして。 ・・・東京地裁ですよ!? 支部*じゃないんですよ!? 23区が所轄ですよ? ・・・日本の経済の中心部ですよ!? 人口比では1割でも経済規模は2~3割ですよ!? そこで民亊保全事件を扱ってるのが、たった5名!? 日本全国に引き直せば、総勢15人とか20人で日本中の民亊保全を処理してるってこと!? えええええええっ!? あり得なさ過ぎます。ここの判事、ほぼ過労死寸前なんじゃないでしょうか。(そもそも民亊保全なので)後でカネで精算できるような案件ばっかりとは云え、どう考えてもムチャすぎます。 *23区外の市部は、離島をのぞき立川支部で扱われます。 で、DV法の保護命令セクションが民亊保全のまるパクであることを踏まえ(?)、各地裁においては民亊保全を担当する部署に割り振られています。 もちろん、その部署でのメインの仕事はあくまで民亊保全ですので、それに基づいた要員配置が行われているのだろうと思います。東京地裁本部で独立の部署(民亊○部)が与えられて専属判事5名ですから、他の地裁なんかだと、独立部署じゃなかったり、兼任だったりするのでしょうか。 いずれにせよ、忙しかったり、メインの仕事がある上に乗っかってくる「余計な」仕事なんだろうな、という様子が伺えます。(このあたりは裏づけ可能な話ですので、いずれ調べます) さて、この講義自体は平成21年度に行われたものですので、この統計資料*(20行目)に載っている3,100件の保護命令 の中にある『東京地裁扱い198件』が、この判事氏が関与したかも知れない事件だってことになります。 ただし、東京地裁は(離島部を除き)本部と立川支部で案件を分け合いますので、それを考慮する必要がありますね。(人口比で割ってしまいますね) 198件÷1,320万人(都の総人口)×900万人(23区内総人口)≒135件 で、この統計資料によれば 、ざっと1/6が申立人による取下げ&残りの1/15が棄却になるので、この135件は、 申立135件 → 取下げ23件、却下7件、発令105件 なのだろうと概算できます。 「東京23区では、年100件くらい発令してるんだね」と覚えておいてください。 *この統計資料から得られる管区ごとの保護命令件数をピックアップすると、本当に面白い結果が出たりします。 以下、軽い余談です(苦笑)
で、話を進めますね。 冒頭1~2ページめでしかないのに、さらに爆弾発言が出ます。
特に解説はいらないでしょう。サクサク先に進みます。 次もいい感じですね。要するに、「(マトモに吟味すれば)3割は却下される事案」だということです。 これ、『だろうと思います』で結んでいますが、『リアルに案件に対応しているホンモノの担当者』が、組織の看板を背負って行った弁護士会の研修で、用意周到に「個人的意見」と前置きした上で発言した内容なんですよね。
さすが判事さんと云うべきか、直截には何も言わずに、伝えるべきことをキッチリ伝えてくれるわけです。 ※で、この講義録のうち、DV法のザルっぷりに悩んでおられる部分は一般論として、個々の事例のインチキっぷりを明かしておられる部分は上述の3割の部分の話だとして読まれると良いかと思います。
次の話も、キッチリ読むとホントに強烈な話です。強調したい部分こそ、伝聞形に推測表現を重ねて、見た目は弱く弱くなるようにしていただいてるわけですが(苦笑)
単に「弁護士がついている割合が高い」だけなら、わざわざ章立てしてしゃべる必要もないわけです。 ・・・じゃあ、どうしてワザワザ?と聞くのも白々しいですね(苦笑)。 さて、保護命令の発令に関するリアルな話が始まります。 このザル法のおかげで、強烈な人権侵害が生じうる、という「法に対する批判」を、「法に従うことを強制される」判事の立場から、最大限の頑張りで発言していることがわかります。
この判事氏は、保護命令自体の実効性も考慮して、申立ての認容/却下を判断している、とのことです。 DV法の枠内でも、出来うる限り中立的に判断していこうとする、判事としての矜持を感じる一節です。 少なくとも、この方が担当判事であったなら、この『いんちき保護命令シリーズ』を書く必要は一切無かったでしょうね。
さすが判事さん、ありとあらゆる問題点に目配りが効いています。 年100件余りのお仕事の中で、思いっきり作為的なインチキ事例に、いったい何回出合ったのでしょうかね。
あと、注意して読んでいただきたいのは、この判事氏が、基本的に冤罪の可能性を捨象して話しているということです。すなわち、これらの大半が真っ当な(?)加害者を念頭に置いた発言だということです。もちろん、「シリアスなDVについては刑法の範疇のはずだ」という当然の認識が土台にある発言でしょうね。
ガンガン行きます。もう、端から端まで現DV法に対する問題提起ばっかりです。
よく知られた事実ですが、リアル判事・リアル従事者の口から出ている発言だというのが重いですね。 当方は、裁判官の人事ローテーションが1年なのか2年なのかは存じませんが、この判事さんは、H21ごろに東京地裁本部でDV案件を所轄する部署において、5人中1人の判事として、確かに仕事をしておられました。(現在は別の地裁に異動しておられます) 事実上、どれだけの方を冤罪被害から救ったのか、ということを考えると、最大級の感謝を申し上げたく思うほどです。
このタイトルで一章を設けた事実から、この判事氏の並みならぬ決意が伺えます。 下記引用部分に関しては、当方による解説など不要でしょう。 なお、「本当に夫を恐れる妻は~」以降に誤認と思しき発言がありますが、これは同判事氏の経験した事例限定の話を一般的なもののように語ってしまったというケアレスミス的なものだと思われます。 ただ、この部分で注目すべきは、そのような誤認の有無なんかではなく、現職判事のコメントとして、『救うべき者を救えなかったことが2回ある』と明言されている、という事実です。
奥歯にモノの挟まったような口調のまま、ようやく結びの言葉となりました。 マトモな判事氏、ここまで本当にお疲れ様でした。 なお、この「DV法の目的に異論があるわけではなく~」以降のセリフは、DV法の内容を理解したヒト全てが異口同音に言うものだったりしますね。
以上、引用ばかりのエントリとなりました。 なぜ、「いんちき保護命令(中間報告)」を書き始める前に、このような本の紹介を長々としたのかと申しますと、今回のいんちき保護命令が、このマトモな某判事氏と同じ東京地裁に属し、同様の環境の中に置かれ、同じ程度の能力を持ち、同じような問題点を感じているはずの、同じくらいの件数をこなしている某判事によって発令された、という事実を、まずはじめに念押ししておきたかったからです。 すなわち、次エントリ以降において、今回のいんちき保護命令の発令により明らかとなった、その某判事がどれほどまでにいい加減な仕事をしているかという事実、そして、その某判事がどれほどの案件をこなしているか=DV冤罪を量産しているのか、という事実を、確固たる証拠資料に基づき示していくことになる、ということです。 →「いんちき保護命令」中間報告(その1)につづく |
テーマ:DV冤罪
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