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第5回手塚治虫文化賞
選考委員のコメント集

 | マンガ大賞 | マンガ優秀賞 | 特別賞投票結果 | 選考委員のコメント集 |

■本賞選考方法
 選考は、1996年中に発売された単行本を対象に、25人の本賞選考委員による一次選考を経て候補6作品を選び、さらに最終選考の投票で受賞作を決定しました(投票結果および選考委員のコメントもあわせてご覧ください)。また、特別賞は選考委員の推薦をもとに本社が慎重に審議、決定しました。

■選考委員(50音順、敬称略)
荒俣宏(評論家・小説家)、石上三登志(映画評論家)、いしかわじゅん(マンガ家)、大月隆寛(民俗学者)、岡田斗司夫(東大講師)、印口崇(評論家・マンガ専門店勤務)、唐沢俊一(評論家)、呉智英(評論家)、小松左京(SF作家)、斉藤由貴(女優)、里中満智子(マンガ家)、三代目魚武濱田成夫(詩人)、鈴木光司(小説家)、関川夏央(ノンフィクション作家)、高橋源一郎(小説家)、タケカワユキヒデ(ミュージシャン)、鶴見済(フリーライター)、長谷邦夫(マンガ家)、荷宮和子(評論家)、古川益蔵(マンガ専門古書店社長)、フレデリック・ショット(ノンフィクション作家)、村上知彦(評論家)、夢枕獏(小説家)、養老孟司(解剖学者)、米沢嘉博(評論家・コミックマーケット代表)


選考委員のコメント 複数作品をまとめて論じたコメントは 最も強く推薦された作品の項目に掲載しました。 2次投票時のコメントは「2次」と注記しました。

1次選考コメント(作品別)


刑務所の中
呉 智英  類例のない獄中記である。異様なまでの克明な獄中生活の描写と不思議な諦観が独特の作品世界を作り上げている。マンガ以外の表現形式では、このようなものを描くことはできなかったと思われる。
関川夏央  マンガとはものごとを見ることだという基本的態度を徹底して実証した傑作。
竹内オサム   刑務所の生活風景という、描かれる素材がまず特殊。その外側にいる人間には、ドラマの映像としてしか伝わってこない世界であるはず。そこに加え、描写の方法がおもしろい。毎日の生活をそのディテイルを、淡々と描写していく。そうしたゆるぎない毎日の生活風景の対極に、「おれ」の妄想が浮き彫りにされていく。いわば微細な生活そのもののドラマ化と言えるだろうか。ともかく作者の独自の感性が光っている。
細萱 敦  辺境におかれ壁の内と外とを意識せざるを得ない人間を描いていて秀逸である。花輪作品は、閉じ込められた内側の強制的な秩序の形をユーモラスを交えながらも執拗なまでの強迫的なタッチで再現した。彼の異界ものに劣らず、その細かい描き込みが哲学的に発揮されている。
米沢嘉博  出来事の記述だけであるにも関わらず、何度も読みなおしたくなる不思議な面白さは、ディテールの細かさだけのためではなく、覗き見的他者への好奇を刺激するからなのだろう。記憶によって紡がれた、その細密な世界は、花輪和一のまなざしによって、異世界の様相さえ呈している。彼でなければ描きえなかったし、またこれから描かれることもないであろうその題材は、唯一無二の作品をここに生み出したのだ。
荒俣 宏  久しぶりに花輪さんの作品群をまとめて読んだ。これまでのオドロオドロしい作品とは別の意味ですごかった。
いしかわじゅん  特殊な体験を描いた作品ではあるがそれだけに留まらず、表現というものの持つ意味を、もう一度描き手にも問いかけ、再確認させた作品だと思う。今までの作風とは全く違うようでいて、作品の中の作者の視点には、共通点があると思う。


ベルセルク
印口 崇  10数年にわたって男女問わず幅広い読者から支持されている骨太な大河ファンタジー。一見非情とも思える展開のなか、真正面から人の真価を描こうとする作者の姿勢に読者は感動する。
藤本由香里   今、連載されているマンガの中で一番面白い。
水野英子   グロテスクだが暗黒世界を描いて迫力がある。イマジネーションは豊富。
夢枕獏   毎回この作品を推薦してきた。その理由も書いてきた。今回も同じである。圧倒的な画力に加えて、オリジナルストーリーも、これだけの長期シリーズにもかかわらず破綻がない。コミックというジャンルをはなれ、物語として、たいへん高品質の作品となっていると思う。


陰陽師
藤本由香里  マンガとしての表現がすごい。
荒俣 宏   この作品は過去何回も推しに推した。コメントするのも気恥ずかしくなる。いまいちばん文芸に近い作品。
竹内オサム  魑魅魍魎が跋扈する幻想的世界を、華麗に描いている点がよい。原作が岡野の繊細な線によって、新しい物語世界となりえている。この作品を見ていると、やはりマンガというのは絵なのだなということを、つくづくと感じる。喧騒のなかにも静謐さが、怪奇のなかにも華麗さがただよう。やはりマンガ家の力量のなせる技だと思う。
米沢嘉博   基本的なスタンスとして、原作付作品はできるだけ入れないようにしているのだが、原作を読み替え、語り直していく志向がある作品は別だ。遅々とした展開ながら、絵巻物にも似たスタティックな画面で語られていくこの物語世界は、単行本でまとめて読む時、圧倒的な力を感じさせる。その力が何であるのかを、まだよく分からないのだが、じっくり読み続けていきたい作品としてあげておくことにする。


弥次喜多 in DEEP
呉 智英  死が見えにくくなった現代、ケレン芸の中にかえって真摯に死を描いている。この作品もまた、現代マンガでなくては出現しえなかったと言えよう。
竹内オサム   作者は80年代半ばから、独特のパロディ感覚で注目されてきた人。この作品では、ヤジさんキタさんを狂言回しに、奇想天外なときにはグロテスクな妄想がつづられる。その妄想も現実性がなく、とりとめなくバラバラな印象がいい。突き出ているのだ。さらに言えば、キャラクターが秀逸。特にキタさんの内面は複雑で、なかなかいい味を出している。絵のデフォルメもなかなかのものだと思う。
いしかわじゅん  漫画という表現方法が変わっていくものだとしたら、その一方向はこんな形であってほしい。 しりあがり寿は異形のようであってそうではない。突然変異なのではなく、確かにあるべき形のひとつなのだと思う。しっかりした技術に裏付けられた省略や飛躍、あるいは自由なストーリー展開は、手塚の名を冠した賞の候補にふさわしいと思う。
里中満智子  何といえばいいのか、これは(これだけでなく氏の作品すべて)マンガ表現の新風どころではなく、ひとつの革命だと考えたい。プロとしての覚悟を感じる。


バガボンド
いしかわじゅん  前作で獲得した場所を捨て、新しい分野に乗りこんでいくその創造欲を評価したい。まだ長い物語の端緒についたばかりだと思うが、旬の描き手である瑞々しさと楽しさが溢れていて、手応えがある。 表現には弱点もあるが、大きな画力は魅力的で素晴らしいと思う。
夢枕獏   漫画の時代劇に、まったく新しい地平を切りひらいた。吉川英治の宮本武蔵をベースにしながら、作品は井上オリジナル版ともいえるものになっている。この作者の才能の高さ、原作とどういう関わり方をするのか(描き手として)を決める感覚(スタンスのとり方)の確かさは、すばらしい。
米沢嘉博   とにかく、迫力のある絵によって時代劇、剣豪物という忘れ去られようとしていた世界が再生したことがうれしい。ケレン味なく、ストイックなスタイルで展開されていくことで、時代物の持っていた臭さは、モダンなそれへと変換された。見知ったストーリー、登場人物ながら引き込まれてしまうのは、一にも二にも作者の語り口とテクニックのためなのである。


グーグーだって猫である
関川夏央  70年代から80年代にかけてマンガをはげしくかつ静かに変革し成熟させた著者の、おだやかかつ静かな傑作。
村上智彦  愛猫の死と、新たに飼い始めた子猫との日々、そして作者自身の悪性腫瘍での入院と手術。エッセイまんが風の淡々とした語り口のなかに、病や死をめぐる、さまざまな思いが詰まっている。仕事を減らし、死んだ猫のことを思い、若い猫の成長を見つめ、自らの病と向き合う。軽い気分で読み進むうち、作者が感じとった命の秘密を伝えようとする張りつめた空気が伝わってくる。
竹内オサム   基本的に僕は猫ぎらいなのだが、このマンガを読んでかなり好きになってしまった。猫ってこんなにかわいいのだろうか。また飼い主というものは、こんなに深く猫とのドラマを生きているのだろうか。猫への親しみとともに、不思議な思いを抱かせるマンガだ。日常の観察記録という点では、一人称の語りによる「私マンガ」の枠の範囲にありながら、絵柄の簡潔さによって、あたたかな広がりを感じさせる。


愚か者の楽園
細萱 敦   現世を逃れた大人たちが集う温泉郷パラダイス。この作家にとってお手の物の世界であるが、彼らも決して逃げ込んだまま生をまっとうできるわけではない。世間を作ってきた戦後の大人たちへの挽歌として、大人の漫画読みがもっと評価すべき作品。
荒俣 宏   実におおらかな田園メルヘン。絵もよく合っている。この人に南方熊楠か熊野の民俗を扱った作品を描かせたい。


GOGOモンスター
村上知彦   不思議に大人びた子どもたちと、どこか子どもっぽく見えてしまう大人たち。見えないものの存在を感じ取る小学3年の少年・ユキの目に映る、現実と幻想の対比が鮮やかだ。高学年になるのと引き換えに、その力を失おうとする少年の不安や恐怖が、いまや大洋タッチと呼んでいいだろう独特の絵に込められて、豊かなイメージの世界を形作る。作品が妙に「閉じて」いないのがうれしい。
竹内オサム   少年期の他界への憧れや恐怖が、ストレートに語られている。大人は他界、妄想、幻想、異次元などと呼ぶが、当の子どもにとってはまさしくそれこそが現実なのだ。主人公ユキには見えない存在が見える。このマンガを読んですぐ思い出したのは、挿絵画家武井武雄の体験。ミトと名づけた存在と、幼少期ずっと遊び続けていたという。いつの時代にも少年は他界に片足を突っ込んでいる。しかし、いつかは離脱することを強いられる。その過程がこのマンガにはうまく描かれている。


女には向かない職業
いしかわじゅん   日本の漫画の表現方法に大きい影響を与えた。従来の4コマ漫画とは文法の違う、4つのコマがあれば、あらゆる物語が描けるという新しい表現手段を創り出した、その見本が本作だと思う。この1作が代表作というわけではないが、どこかできちんと評価しておきたい。
村上知彦  藤原先生は「タブチくん」以来、ひさびさにブレイクしそうな いしいキャラだ。それが新聞連載の「ののちゃん」ではなく、ミステリ界を舞台にした文壇ギャグという、マニアックな分野で起きるところがいかにも いしい らしい。小学校教師・藤原先生がミステリ作家・藤原瞳であるという、デビュー以来、一貫して採用するスターシステムは、むろん手塚治虫が残した「遺産」の正統な継承である。


ARMS
印口 崇   男女問わず、幅広い年齢層に楽しめるドラマ。主人公の葛藤を真摯に描く皆川の描写力に感動をおぼえる。
里中満智子   画面の表現がすばらしい。「気」を感じさせる線の一本一本に作者の美意識がこめられている。表面だけをとらえて「暴力的表現」で片づける声がいまだにあることが少しかなしい。


ヒカルの碁
水野英子   碁という地味な世界をまんがらしいファンタジーを加えることで面白く構成している。絵もきれいで可愛く好感の持てる作品。
藤本由香里   このマンガのおかげで小・中学生の間に囲碁ブームが巻き起こっているというが、囲碁という難しいテーマを題材に、ここまで面白く描けるというのはすごい。少年誌の連載なので、連載開始当時、主人公・ヒカルは小学校6年生なのだが、彼の成長と、大人とのかかわりが無理がなく、絶妙といえる配置になっている。なにより、帝の碁の指南役であったが碁仇に陥れられ非業の死を遂げた平安貴族の霊がヒカルに乗り移る、という設定が、碁の歴史や定石の変化を生きたものとさせ、しかもこの二重性が、後々の物語の伏線となって、話に奥行きとふくらみを与えている。連載ではヒカルが中学生でプロになってからますます面白みを増している。
犬夜叉
里中満智子   マンガ表現の普遍性を示してくれる作品。氏の作品世界には「流行のむなしさ」がみじんもない。なのに常に新しい。
村上知彦   戦国時代にタイムスリップした女子高生を主人公に、妖怪アクションでもあり、シリアスな大恋愛ロマンでもあるぜいたくな作品。ケレン味を感じさせない正攻法で、性別・年齢を問わず文句なく楽しませる、この間口の広さはいまどき貴重だ。コメディ・タッチとの配分も絶妙で、この作家の円熟した境地を感じさせる。


The World  Is Mine
呉 智英   現実離れした暴力描写と荒唐無稽な物語展開が、現代の荒廃した精神状況を反映し、すべてが否定された彼方に、生命の意味が見えてきそうである。作者の力業を評価したい。


Neko 2
石上三登志  奇想天外でありながら、きわめて現実的でもある展開。チャーミングかつユーモラスな表現。子どもにも大人にも積極的にすすめられる、新しいタイプの動物マンガだと思う。久々に登場してきた、手塚治虫直系のマンガ家として「アフター0」「大平面の小さな罪」「国立博物館物語」と着実に進歩してきた岡崎二郎の、これはとりあえずの大秀作! 将来が楽しみ!!


ハーイあっこです
水野英子  ほのぼのとしたタッチと生活感に大変好感が持たれる。健康で明るい内容は冴えない世相の中では希少かもしれない。


バクネヤング
米沢嘉博   バイオレンスは数限りなくマンガの中で描かれてきたが、ここまで徹底して描きながら、読者に妙なカタルシスを与える作品はまれだ。しかも、世界はやがて宗教的法悦へと至る。200枚以上に及ぶ描き下しを入れて、単行本でまとまるという形で完結したこの作品は、三部構成の中で変容を続け、魂の変転を描く。一部の凄絶さに目を奪われた読者は、描き下し部分に不満を抱くかもしれないが、主人公の死後のドラマこそ描かれなければならなかった物語かもしれない。
細萱 敦   悪魔と天使が同居する作風には今後大いに期待したいが、連載が中断し単行本の後半が描き下ろしになった分、作者の当初の意図とは展開が違ってきたのではないかと思う。


百鬼夜行抄
夢枕獏   毎回この作品を推薦してきた。その理由も書いてきた。今回も同じである。圧倒的な画力に加えて、オリジナルストーリーも、これだけの長期シリーズにもかかわらず破綻がない。コミックというジャンルをはなれ、物語として、たいへん高品質の作品となっていると思う。


マンガ ギリシア神話
石上三登志   西欧文化との接触に、たぶん欠かせない知識のひとつである<ギリシア神話>を、ダイナミックかつデリケートにまとめあげ、感動的である。とりわけユニークなヴィジュアル解説部分での、わが国の神話との共通性指摘は、グローバル時代におけるこの作品の意義を明快に読者に伝え、この作者のライフワーク的な意味での代表作となったと思う。


あたしンち
●世代を問わず親しめる、こういうものは時として無難な、毒にも薬にもならない世界に入りこみがちだが、この作品はほどほどの上品な毒を持っている。得がたい作品。心理ドラマの変形といってもいい。


カスミ伝△
荒俣 宏  いまいちばん過激で過剰な作品を書く人。パワーがあふれているうちに何とか顕彰したい。今年を逃すとこのギャグ作品にも疲れが出てくるかもしれないから。


こちら葛飾区亀有公園前派出所
里中満智子  一見バカバカしく見える世界をここまで誠実にかつ努力して描きつづけるのは並々ならぬ力量。玄人うけから遠いところにいるのが少しせつない、とつねに感じている。


サラリーマン金太郎
荒俣 宏   今回の候補作の顔ぶれに新味はない。ないなら、いっそベテラン本宮のきわめて漫画らしいストレートさを推す。漫画以外では、こういうキャラクターは生みだせない。


黄昏流星群
石上三登志   ともすれば安易な現実批評か感傷追及になりがちな高齢者テーマも、ユニークなアプローチと着実な描写で各エピソードを展開し、着地し、きわめて説得力あり。


できるかなリターンズ
村上知彦   紀行・体験ルポタージュまんがの一種ではあるのだが、西原理恵子の手にかかると、過激を通り越して感動すら与える表現へとたどりつく。世界中どこにでもいる庶民の愚かさとたくましさをみつめる作者の、親しみを込めつつシビアな視線は、小田実から沢木耕太郎を経て、関川夏央、山口文憲らに至る、放浪ノンフィクションの系譜に連なるものといってもいい。


鉄鍋のジャン!
米沢嘉博   料理については作るのも食べるのもちょっとうるさいのだが、数ある料理マンガの中で、先が読めない展開を見せたのは後にも先にもこれだけである。少年マンガの核でもあるバトル・勝負物に正面から取り組み、ピカロ的主人公を配し、さらに驚きのドラマを熱く語った変格少年マンガとして、特異な作品だったことはまちがいない。久しぶりに、週刊連載で次回を待ち遠しく感じさせてくれた少年マンガであるが故に推す。単行本最終巻に付けられた、もう一つの最終回もマンガ的な面白さにあふれていたといえるだろう。


破壊魔定光
印口 崇   新世代のヒロイズムに満ちた作品。単純なヒーローの活躍にとどまらない奥深いドラマ作りと世界観が読者を引きつける。


あずまんが大王
印口 崇   今、もっとも注目されている4コマまんが。誰もが親しめる内容、ネタ、2000年度のベストセラー1位。


王道の狗
細萱 敦   「虹色のトロツキー」などと並んで、近代日本の国際的な位置を示すとともに、スケールの大きい仕事をやってのけながら歴史に翻弄されていく人物たちを描く。この作家ならではの描写力が、忘れ去られ風化していきがちな20世紀の戦争と日本のあり方を新世紀に伝えてくれる。


天才柳沢教授の生活
いしかわじゅん   少女漫画から青年誌に移植した、最も成功したケースだと思う。うまくできたキャラクターをよく練られたストーリーの中で充分に生かしている。短編ばかりなのに、主役の教授の人生が通して見えてくるような見事な構成だ。


天馬の血族
藤本由香里   表と裏、光と影......。人間の二面性を描くのが生涯のテーマという著者の、面目躍如たる作品。SF的に設定された、チンギス・ハンの時代のモンゴルを舞台に、「草原」と「都」の争いに象徴される、"自然 vs. 人工"の闘いが、壮大なスケール、息をもつかせぬ勢いで展開される。人間ドラマとしても秀逸で、ラストの「恨みを晴らすのはそなたの責任。晴らすつもりもない甘えた恨みを持つのは間違っている!」という一言が忘れがたい。


なるたる
石上三登志   アニメーション映画にすればさぞや魅力的であろうと思われる、ファンタスティックな設定と展開が新鮮。


バカとゴッホ
細萱 敦   今どき珍しく真摯さが絵にもストーリーにも行き渡っている作品。主人公たちの恋と生き方と自己表現もさることながら、何よりこの作家自身がタイトルのようにバカでありゴッホであることが潔く心地良い。


最終選考コメント


荒俣 宏氏
 陰陽師はずっと推していたが、やっと最終候補に残った。今年受賞させないと旬切れになる。 弥次喜多 in DEEP はおもしろいが、むしろ受賞しないところに意味があるタイプの作品と思う。  バガボンドとベルセルクは力作だがいったい何時どういうときに「△△賞」とするか判らない。まんが作品の旬の問題がここにも出ていると思う。  ONE PIECEは良いところもあるが、ストーリー、絵とも際立った点がない。  グーグーだって猫である、は一種の惰性の魅力だと思う。もっとグウタラに描きつづけてほしいものだ。

石上三登志
 1位の「ONE PIECE」に関しては、すでに第4回手塚治虫文化賞の際に、以下の理由で推薦していることと変わりありません。 〝「海賊物」という魅力的な世界の再発見という意味でユニークである。ステイヴンソンやトウェイン以来の夢と遊びの心が、こんなところに受け継がれていたとは...〟  この時もこの作品は読者推薦の1位。だから今年はこれでもんくなし...です。  2位の「バガボンド」(私も参加しているメディア芸術祭の本年度の大賞受賞作)以下に関しては、特にコメントありません。もっといいものがあったという実感からであります。

いしかわじゅん
 「バガボンド」「刑務所の中」「弥次喜多 in DEEP」に関しては第1次選考で書いた通りです。  「陰陽師」は、いしいひさいちとしりあがり寿を入れたかったので1次選考では挙げませんでしたが、優れた作品だと思います。奇を描いて奇を衒わず、正面から娯楽に仕立てている手腕は、充分評価できると思います。

印口 崇
「バガボンド」   今週刊の青年まんが雑誌のなかでもっとも注目されている作品である。青年まんが誌のコミックにありがちな大人の読者層だけの支持にとどまらず、10代の男女からも支持され、幅広い読者層を獲得している。時代劇を今これほどおもしろく読ませてくれるのは作者の力量と今の若い読者を魅了するセンスの賜物だと思う。
「陰陽師」   原作の世界観をわかりやすくビジュアル化した画力とユーモアを交えながら独自の雅なテイストを構築したエンターテインメント性は賞賛される。そして若い読者にも受けるヒロイックな要素を盛り込んでいる点もまんがの醍醐味を堪能させてくれる。
「バガボンド」   第1次選考と同じ 「グーグーだって猫である」  ベテラン作家の日常の機微がほほえましく描かれていてリラックスして読める。構成面においても作家性の高い著者のうまさがあふれている。だから最近多く出版されるエッセイまんがとは一線を画す読み物となっている。
「弥次喜多 in DEEP」   摩訶不思議な世界を独特のブラックユーモアで描き読ませる。
「ONE PIECE」   スピード感あふれる展開、際立つキャラクター性。今のまんがなのだと実感させる。

呉 智英
 コメントなし

里中満智子
(1)陰陽師   原作は原作で充分面白く、それを絵の力によってまたひとつイメージをひろげている。 1コマ1コマがそれだけでイラストとして完成していて新しい形のマンガ表現を形成している。
  (3)グーグーだって猫である   大島作品の世界はこの世にここしかないひとつの世界をつくりあげている。これまでの作品と比べてこの作品を今どうこうというよりも私としては「大島弓子全作品」に対してなら文句なく大賞!!といいたいところだ。それだけぬきん出た作家性をもっている。その複雑な気持ちがつい(3)③という順位になってしまった。 この作品だけをとり上げるとすれば、これはこれで充分「ノンフィクションのひとつの理想の形」になっている。
(4)バガボンド   かつて「ロミオとジュリエット」が「ウエストサイド物語」に変身したのを見た時と同じ驚きがある。今という時代のただ中にいる作者のシャープな表現力が生んだエンターテインメント。  あちこちで充分評価されているので今さらと思うのはよけいなことだろう。  一見力わざに見えるが実はたいそうな努力作だ。
(5)ベルセルク  (6)ONE PIECE   共に読者からの熱い支持をうけつづけているのは構成力と画面作りの努力のたまもの。  (5)ベルセルクは絵のもつ力が説得力を生んでいる。  (6)ONE PIECEは画面のセンス、キャラクターの魅力が大きい。

関川夏央
 現代日本文学に大きな影響を与えた大島弓子の表現世界は端俔できない。生と死をこれほど淡々と、かつこれほど陰翳豊かに描いた「グーグーだって猫である」を大島弓子の新境地として高く評価したい。  「バガボンド」は原作より相当に汗臭い。しかるに原作以上にていねいに描いている。素朴さと巧妙さの合体は実力がないと表現として成就しないはずだが、この作品はたしかに一定の成功を見ている。  「ベルセルク」と「ONE PIECE」は、やはりそのおもしろさが私にはわからない。ゆえに評価を与えることができず。従って順位をつけることができない。  花輪和一「刑務所の中」の辞退は惜しんであまりある。これは不思議な傑作というべきで、辞退されなければ、私はこの作品を1位に推した。

竹内オサム
 以前と同じ

藤本由香里
1 三浦建太郎 『ベルセルク』
 私はこの作品を、少女マンガと青年マンガの、一種、理想的な結合だと思っている。ここまでやるか、というくらい深い闇を描きながら、その底にある、「まだ生きている」という、最後に残された、微かな髪の毛一筋ほどの希望。安易な救いの方向へ逃げるのではなく、また、単なるエンタテインメントに流れるのでもなく、登場人物たちの葛藤に、ここまでとことんつきあい続ける著者の気構えに頭が下がる。これは間違いなく、「読んだ後、自分の中の何かが変わる作品」である。それにしても、ここまでの物語がまだ前半戦とは驚きを禁じえない。これから展開される物語は、我々にさらに深い驚きを与えてくれるだろう。
2 夢枕獏・作 岡崎玲子・画 『陰陽師』
 陰陽の世界観というのは、「この世」に重なっている、もう一つ別な世界を見ることである。微妙に重なりあった世界が出入りし、ときにくるりと入れ替わる、その間合いの捉え方がこれ以上ないほど的確で、新鮮な驚きを感じさせる。思えば、リアルであるのに現実ではない、マンガという表現手段ほど、そういう世界観を表わすのに適したメディアはないのかもしれない、そのマンガのもつ表現特性を、最大限に生かしきった作品。巻を追うごとに深度を増すその宇宙観・世界観には、ときに茫然としてしまうほどである。
3 しりあがり寿 『弥次喜多 in DEEP』
 この作品の前身である『真夜中の弥次さん喜多さん』を読んだときには驚いた。おそろしくシュールなんだけれど、人間の無意識というのを絵で表わすとおそらくこうなんだろうな、というリアルさ。異才である。2000年の同氏の作品では、『ノア』もよかった。

4 井上雄彦 『バガボンド』
 絵に関しては、まったくもって「見事!」というよりほかない。いったい今、絵においてこの人にかなう人がいるのだろうか?ただ、あまりに『スラムダンク』の魅力が強烈だったゆえに、連載が始まってからしばらくはどうしても、「なんで、ただ人と斬りあってどっちが勝つかというだけの話なんか描くの? もっと別の描いてよ」と思わずにはいられなかった。だがそれが、巻を追うにつれて、「これほど武道の"気"というものを描けるのは凄い」という印象に変わってきてはいる。だがかそれならば、この作品はこの先もっと凄くなるのではないか。私はそれを待ちたいと思う。(しかし3位とは迷いました。今でも迷っています。)

5 大島弓子 『グーグーだって猫である』
 正直言って、こういう作品をリストに載せられるのは困る・・・・・・。私は大島さんが大・大・大好きだが、やっぱこれは代表作ではないでしょう。なのにこれを全体の中で位置づけろと言われてもなあ。  けれどこれがただのエッセイまんがでないことはたしかである。ことにグーグーと拾われてきた子猫ビーの関係などは「哲学的」とさえ言える。亡きサバの存在は擬人化されていたのに対し、グーグーもビーも終始猫の姿だ、ということから伝わってくるものもあるし、入院のくだりはやはり胸に迫ってくるし・・・。  でも、無事退院されて本当によかった。だけど私はこれを客観的には見れないなあ、やはり。

6 尾田栄一郎 『ONE PIECE』
 最初は、たしかに面白いとは思うけど、そんなには・・・・・・。続きを待って読もうとは思わないもんなあ・・・と思っていた。だが、長くなるにつれ、これだけ多彩なキャラクターを次々と出してきて、飽きさせず楽しませるというのはやはりたいしたものだ、と思うようにはなった。登場人物の造形は確かに子供を喜ばせるものになっているとは思う。でも、私の評価基準は、「これを読んで自分の中の何かが変わるか」 「単にウエルメイドというだけでなく、これはすごい!と思わせてくれるか」なので、やはり『少年ジャンプ』の連載の中では、『ヒカルの碁』や『HUNTER×HUNTER』の方が好きだし、評価している。だが、『封神演義』より『ONE PIECE』の方が数倍面白いのはたしか。

J・ベルント氏
 一時最終選考に挙がった花輪和一の『刑務所の中』を1位に推したかったが、「マイナーマンガ家」の花輪和一の辞退のため、選考できなくなったことは残念である。『刑務所の中』は、日本の刑務所(少なくとも私にとって、90年代後半と思われない)の在り方から、「学習用許可読み物」として認められていないマンガという細部に至るまでの物語内容が興味深い。また、その形がマンガという表現メディア自体を改めて実感させる。つまり、連なるコマやページからなるマンガを根本的に特徴づけるのが「時間」だとするならば、それはここで、「昔」のように見える「現在」、さらに、非歴史的に閉じられている「永遠の今」となっているからだ。メジャーなマンガの多くは、読者の眼を画面を走らせることによって歴史性を消去させるのに対して、『刑務所の中』は、マンガ特有の「別種の時間」を過去も未来もなく、根拠も展開もない場所の日常として描いている。この点では、手塚作品における「時間」とは一線を画する。しかし、例えば、刑務所において登場人物に安心感さえ抱かせる自主選択権の剥奪(あるいは放棄)などが、フィクションの世界だけでなく現実の社会へと接続可能なことは、手塚作品との接点になりうるだろう。
 一方で、この『刑務所の中』を、本賞の目的と選考過程の在り方を検討し直す機会とも捕らえられる。すなわち「文化賞」は、若年層における商業的成功に固執せず、何を「文化」として共有すればよいかについての議論を引き起こし、同時に何をマンガの表現力として評価し記憶すればよいかについての意見の交換を促進させる課題が与えられているからだ。商業的成功のため、いまさら「文化賞」に保証されるようなパブリックな注目を要しないマンガもあれば、主流から外れて発表されるため、少数派にしか知られていないマンガもある。「文化賞」は、後者を「国の文化」として高尚化するためではなく、むしろマンガの多様性が視野に入らない、あるいはもはやマンガを読まなくなった朝日新聞読者層の年代に具体的な(例えば松本大洋の『GOGOモンスター』あるいは畑中純の『愚か者の楽園』のような)作品を勧めるためにあると思われる。本賞をもって一体何を目指し、誰に(マンガ・ファン? マンガ業界? 「文化」と結び付く制度? 一般人?)アピールするのかという点を明確にするならば、「マイナーマンガ家」の辞退も避けられるのではないだろうか。
 残された最終ノミネート作の中では、マンガというメディアの誇張と折衷性を発揮しながら、「日本の文化」の高尚化や純化への憧れを裏切る形でおもしろおかしく描いている『弥次喜多 in DEEP』が、上記のような「文化賞」に最も相応しいだろう。このマンガは、長きにわたる海外のオリエンタリズムも、それと類似する日本国内における自己文化像も経験してきた外人を笑わせるだけでなく、現代文化の見方において、日本人と外人という「内と外」の境界がもはや当てはまらない共通性をも感じさせる。

マンガを含む「日本文化」に対して自覚的であるこのスタンスは『陰陽師』には、それが基づく原作のため、なかなか見当たらない。読み始めには、平安時代初期の物語設定や当時の都における生活の描写が興味をひき、すばらしい視覚言語や現代とは違う時間の流れ方に魅力をおぼえた。しかし読めば読むほど、安倍晴明というキャラクターは、正論で固めた全知全能の指導者として映り、シャーロック・ホームズよろしく博雅を啓蒙さえする話の展開に辟易してしまうところがある。

 長いひとりごとのような『グーグーだって猫である』は、猫好きという視点や、大島弓子の先行作品との比較からは一番おもしろいだろう。亡くなった猫サバが猫耳人物として登場することと、語りの過去型、また余白の多い高度にミニマルな絵柄は、昔の大島作品への思いとともに、時間の経過による微妙な距離感をももたらす。さらに、主人公のマンガ家が、新しい猫たちといっしょにおくっている社会的範囲の狭い日常生活からも、一見してごく小さな物語と思われるこのマンガが、極めて控え目な形で「マンガ/マンガ家」に自己言及しているという印象を受けた。

細萱 敦
 コメントなし。

水野英子
 コメントなし。

村上知彦
 「陰陽師」に圧倒される。安倍晴明・源博雅という「よいおとこ」ふたりのあいだの細やかな感情のやりとりの描写に、この作者ならではと思わせるクールで上質のユーモアが横溢していて、読みながらしばしば声に出して笑った。描かれた平安京の町並みや自然の存在感、画面の奥行きと広がりも圧巻で、これを眺めていると現代のまんがという表現もまた、絵巻物以来の日本美術の伝統の上にあるという俗説を、信じてもよい気持ちすら起きてくる。いまのまんがの多くが、めまぐるしい速度で消費されてゆく中で、悠然とした時間の流れのうえに、緊張感あふれるイメージの物語を造形した力は称賛に値する。
 「グーグーだって猫である」が示すのも、まんがが描きうる時間の多様さについての、表現上の冒険なのではないか。飼い猫と作者の日常を淡々と追いながら、そこで語られるのは、愛猫の死と新しい子猫との生活、自らの入院や手術の経験を通して、限りある日常の時間の向うに思いを致す作者の想像力のドラマである。かよわい命が寄り添う日常の時間を包み込む、生命という永遠の広がりに対する作者の慎ましい姿勢が、読むものを癒す力は大きい。

「弥次喜多 in DEEP」は逆に、死の床で見る末期の夢にも似た堂々めぐりの時間を描こうとする。「約束の地」お伊勢さんへと向かう同性愛関係にある弥次喜多の旅の途上に、さまざまな死の観念が浮かび美しい退廃絵図を映しだす冥界道中膝栗毛。不毛と絶望の果てにほの見える「希望」が、生への執着と甘美な死の誘惑のはざまにゆれる人間の業を思わせて、読むものの心を揺さぶる。時々はさまれる脱力ギャグも、深刻に陥りがちな世界をナンセンスへと巧みに異化している。祖父江慎の行きとどいた造本も見事だ。

 「ONE PIECE」が子供たちに人気があるのは、魅力的な大人が描かれているせいではないか。巨人島の永遠の好敵手、ドリーとブロギー。ドラム島の守護団長ドルトンやドクター・くれは。そして主人公ルフィーがあこがれる赤毛のシャンクス。精神の自由と、信念を貫く強い意思をもつ大人たちの存在が、この奔放な物語を支える陰の力となっている。

 「ベルセルク」の「断罪編」も、ようやく物語としての骨格が見えてきた。この巨大な叙事詩の中で、その占める位置はやはり、次なる主題の大きな展開に向けての、ひとつの布石であるようだ。より高い次元での評価に値する作品であると思えるだけに、いましばらくは時が満ちるのを待ちたい。

 「バガボンド」も、作品としての面白さに文句はない。吉川英治の原作を、現代の読者に手渡した功績も評価できる。ただその先に、想像もつかな かった世界が見えるのかどうか。これ以上なく魅力的な絵の速度に、物語が追いついていかないいらだちが残る。

夢枕 獏
 コメントなし。

米沢嘉博
 はっきり言って、今回のノミネート作品の中で、特に強力にプッシュしたい作品はない。後にも先にも、この作品しかないのではというギリギリの部分と、その年でなければならないという必然性を自分の中で納得させられるものが見つからなかったと言い代えてもいい。かろうじて、それを「刑務所の中」という実もふたもないタイトルの中に感じていたのだが、花輪氏の辞退によって、自分の中の構築が崩れてしまったような気もする。作品の力はどれもあり、一級品であることはまちがいないが、今回はどれも継続中の作品であったことも、ぼくの中でひっかかった理由かもしれない。完成された形で評価すべきだというのは、特に物語性の強い大長編の場合重要だと思っている。語り終えられることで、世界は閉じるのだし、ラストの1コマで、作品の意味が大きく変わっていくこともあるからである。とまれ、新世紀のスタートということもあって、今一度別の視点から、順位をつけなおすことになってしまったのが今回だった。

(1)「陰陽師」   基本的に原作付は極力はずすようにしているのだが、原作の世界を自在に膨らませ、独自の物語世界を展開しているという意味では、すごい。絵や語り口―スタイルのオリジナリティも突出しており、それが物語としっとりとなじんでもいる。陰陽師ブームの火付け役となったことも忘れてはならないだろう。エンターテインメントと表現の狭間ギリギリで、物語ることを選びとった姿勢そのものを評価すべきだろう。

(2)「弥次喜多 in DEEP」   物語のプロトタイプである道中物の枠組みの中で、脱マンガ的スタイルで展開されていくサイケトリップは圧倒的だ。見世物的好奇心を刺激しもする。個人的には大好きなのだが、このスタイルそのものに違和感を覚えてしまう人も多いに違いない。一方でのマンガの到達点ではあると思うのだが。

(3)「ベルセルク」   何度もノミネートされているので、多くは語らないが、どうもカタルシスに乏しいのだ。ラストにそれが解放される時まで待ちたい作品だ。

(4)「バガボンド」  読ませ、見せるという一点において、もっとも突出している作品であり、そのために選びとられた素材もツボにはまっている。ある意味、よく知られたヒーロー(人物)がどう逸脱し、解放されていくか、じっくりと描きつづけてもらいたい。そういう部分でも、評価は先にのばしたいマンガだ。

(5)「ONE PIECE」   テンション高く、パワフルに、少年マンガの楽しさを全面展開しており、相変わらず楽しめる。本来なら、こんなマンガに賞を与えるべきだという気持ちになるのだが、大人の部分がそれを拒否してしまう。子供たちに圧倒的に支持されている事実がある以上、いらぬものはもらわなくてもいいのかもしれない。

(6)「グーグーだって猫である」  大島弓子は、こうした作品で、賞をもらうべきではない。ただ、それに尽きる。


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