親民社

France

 結成宣言

戦後来我が国は、主権の本義と国家及び民族の歴史的正統性を見失い、自由と独立の存続に不可欠な精神的基盤を顧ることを怠ってきた。

確かに戦後期は我が国に未曾有の経済的繁栄を齎したものの、国家の指針を定める責任を負う主体性の意識は遠のくばかりであった。70余年のうちに提議された多くの根本的問題も、国民の公論として審議されることは終ぞなかった。 このことは、国際情勢の文明論的布置が激動を迎えたいま、我が国に根源的な危機を齎している。国家及び民族の実体的基盤はその物質的基体の面において脆弱化し、精神的存在の面においてその人倫の意識は止まることなく希薄化し続けている。

 市場原理主義を推し進める新自由主義の台頭によって肥大化した欲望の体系は国民の生活基盤と社会的紐帯を揺るがし、社会の大衆化を促進している。この潮流は資本家による私的専制を生み出し、庶民一般は交換価値を盲目的に追従するも敢え無く貧困化の一途を辿っている。 それに対抗するために啓蒙と人権を抽象的に絶対化せんとする急進的左翼進歩主義は、国家と社会の重層的な発展を蔑することにより、この破滅的状況に歯止めをかけるどころか寧ろ助長する。 この勢力は人々の交わりを媒介する文化を破壊し、多様な人間による理性的対話と具体的自由を阻害している。

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いま、国民一人一人が自然と歴史における主体の全体性を恢復し、その美的陶冶において道徳的使命を自覚することは、国家と文明の基礎を再興し、政治的叡智の指し示す未来像を構築するに不可欠な事由である。 目指されるべきは、社会においてその真の公共性を確立し、文化においてその伝統を創造へと接合することにより、世界の健やかなる発展と平和に寄与することである。

 しかし我等は愚者である。

我等は痴愚であるというこの切なる思いを徹底し決断する時にこそ、我等は一縷の光明を摑む。 有限者による絶望の覚醒は超越者による愛と慈悲の救済に感応し、万民に忠恕の心を呼び起すと信じなければならない。 その時、共同体の精神たる仁は、単に法のみならず義と礼にまで具現するであろう。それは智慧と信を具備する高邁の徳を以て、人民の具体的なる自由と平等を潤沢なる富と調和させ、奴隷的苦役の行使を厭い人間的幸福の実現を希求する。

 私かに惟みるに、昨今急速に進行するグローバリズムという名の世界の一元化とは、世界各国の多様性と多元性、そしてその独自的自立性を消失させる新たなる形態の全体主義的および帝国主義的支配に他ならない。
それに対し一つの特殊的世界である我が国家民族は、飽く迄その個性的な歴史的生命を生きて追求しつつも別の個性的な歴史的生命である他の国家民族と交わり協同することにより、一つの普遍的世界に貢献する己の世界史的使命を全うすべきである。

 かくして古の天業の恢弘を継ぐという経綸の雄志を胸に抱く者は、古人の述べる如く、明徳を明らかにし、民に親しみ、至善に止まることを第一の心術とし、またその厳粛なる格率を我が無上の栄光と見做すであろう。
この清明なる主体にこそ、産霊の牧人となり、随神の道を恪循せんとする敬虔と至誠は息衝く。斯様に覚醒する者は、国も人も草木国土悉皆成仏としてその絶対の価値と尊厳を持ち、人為の中の人為たる所の全ての行為と制作は、その行為的直観の真諦において神のまにまに、自然法爾に行われることを見るのである。

我等は、上記の理念と趨勢を鑑み、道理の感覚の存する所を信じ万世の為に太平を開く為、歴史的現実の改善に資する公共的議論を喚起せんことをここに宣言する。 

令和三年五月一日
親民社 總裁 山内雁琳