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姉上。スカートをまくって股を開いて見せてくれませんか? 作者:サクチル
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第2話

案の定「我こそは!」というご令嬢が溢れかえった。「私婚前交渉しました」っていう名乗りな訳だが、彼女らはそれでいいのだろうか。

髪は染めていたとしても、背丈が違う、瞳の色が違う、体格が違う、声が違い過ぎている…と落選していくご令嬢たち。

その中で選に残ったご令嬢たちにアルトは「絶対に自分こそ僕の探しているご令嬢だと神に誓えますか?」と尋ねた。「勿論です。」と答えたご令嬢たちに「では、スカートをまくって股を開いて見せてください。」と要求した。いかがわしいことが行われないか使用人が見張る最中にである。勿論ご令嬢方は大激怒。怒って帰って行った。勇気を出して言うとおりにしたご令嬢たちも、「あなたは僕の探していた女性ではないようです。」と言われてすごすごと帰って行った。

私にはアルトが何を探していたのかはっきりと分かった。私の右足の内腿には小さな黒子が3つある。3つを線で結ぶと丁度小さな正三角形になるような。それを探しているのだろう。普段誰にも見せないようなところだし、この黒子はある程度私が大きくなってから現れたものだから、この黒子の存在は母すら知らない。まさに私に股を開かせたことのある男性しか知らぬこと。

絶対見つけてみせると気負いこんでいたアルトは全女性が空振りに終わって落ち込んでいた。

私は偽物のチェリーイーターが現れずほっとした。アルトが騙されるのはすごく気持ち良くないし。


「ほほほ。女狐に騙されずに済んで良かったではないですか。」


慰めているつもりなのだが、アルトは憂鬱そうに溜息をついた。


「どうして名乗り出てくださらなかったのだろう。あんなに激しく愛し合ったのに…」

「……。」

「…?姉上…お顔が赤いようですが…」

「なんでもありませんわ。」


プイッと顔をそむけた。愛し合ったと言われると…確かに普段の私からは想像できないくらい甘い声で何度もおねだりしたもんね。正直自分の口走った台詞を脳内再生すると羞恥で死ねる。


「…姉上は、アドヴァンス殿からのご求婚、お受けになるのですか?」


アドヴァンス様はアドヴァンス・ドラレク公爵様のこと。28歳と私よりも10歳年上ではあるが、美男で優しく、ご令嬢方にはとても人気がある。どういうわけだか、私にご執心だ。先日私宛に婚約の申し込みが来た。


「まだ考え中ですわ。」


とりあえず次の月経が来ないと何も返答できない。まあ、処女膜は既に消失しているのだが。処女膜は馬に乗ったりなど、日常の動作で破けてしまうのもなくはないようだから何とかなると信じている。でも妊娠していたら婚姻は絶対に無理だと思う。婚約をお受けして、後から「別の男の子供を孕んでました☆」なんて言ったらどんな恐ろしいことになるか…


「……アドヴァンス殿は優しくても、女性に気の多い方だと聞きます。お勧めはしません…」


アルトが憂鬱な顔でそう言った。アルトは私の婚約には反対なようだ。


「まあ。あなたの事だからてっきりわたくしを家から追い出したがると思っておりましたのに。意外なことを仰るのね。どういう心境の変化?」

「……。」


アルトは真っ赤になって私を睨んだ。


「ほほほ。まるでヤキモチを妬いているみたいでしてよ。」


からかうとアルトはますます真っ赤になった。


「もう姉上なんて知りません…」


アルトは足早に立ち去ってしまった。まさか本当にヤキモチだったり?まさかだよね。

心配してくれたのだろうか。それともおねーちゃんがいなくなると思ったら寂しくなっちゃったのだろうか。私アルトにはきついことしか言ってないから寂しいはずもないと思うけど。前にアルトから「大嫌いです。」と言われたこともあるし。私たち姉弟の仲は評判の険悪さだ。主に私が悪いんだけどね。



***

ハラハラしたもののきちんと月経はやってきた。良かったー。孕んでたら絶対に「誰の子だ?」って聞かれるもんねー。馬鹿正直な答えを出せばアルトが傷つくかもしれないし。おねーちゃん安心です。

でもアドヴァンス様のこと真剣に考えないとなー…私ももう18。女性は20を超えると一気に行き遅れ感が出るもんね。あと2年しか猶予ないし、前向きに考えないと。アルトが「気が多い方」だって言ってたけど、本当かな?私、結構ヤキモチ焼きだがら、愛妾持ちとかはご遠慮願いたいのだけれど。


「どうしたんだい?ロレッタちゃん。ぼんやりして…」


お父様に尋ねられてしまった。朝食の席でスープスプーン片手にぼんやりしてたからなあ。コーンのポタージュは美味しいのだけれど。


「少し…アドヴァンス様のことを考えていただけですわ。」

「はっはっは。ロレッタちゃんも恋煩いか?我が家も春だなあ…」


お父様は笑った。


「……っ!御馳走さま!!」


アルトがガタンと席を立った。


「アルト、お行儀が悪いぞ。」

「……。」


アルトはお父様を無視して去って行ってしまった。虫の居所でも悪かったのだろうか。まだ料理も残っているのに。

お父様は、はあ…と溜息をついた。


「さっさと自覚せねば後悔することになるというのに…」


お父様は独り言をつぶやいた。お母様は苦笑していらっしゃる。


「それで、アドヴァンス殿とのお話は進めても大丈夫なのかい?」

「望めばすぐに手に入るほどわたくしお安くなくってよ。(訳:少し考える時間が欲しいです。)」

「じゃあ、その気になったら教えておくれ。ただ、あまり待たせすぎてはいけないよ。」

「お相手次第ですわ。(訳:よく見て考えます。)」


私の特殊な言語を聞いてお父様とお母様も笑っていた。


「お父様も、お母様も、このわたくしを嫁すに相応しい方かちゃんと御承知ですのよね?(訳:アドヴァンス様ってどんな人?)」

「調べさせてみたが、女性関係は割と華やかな方だよ。ただ、未亡人と上手に遊ぶとか、上手くやってる人だね。婚約まで申し込まれたご令嬢はロレッタちゃんが初めてだよ。」


女性関係が華やかと聞いて渋い顔になる。結婚して女遊びが治まる方なら、婚前のことまで口を出すつもりはないけれど、どういう思想の持ち主なのかしら?時々お会いするときは私の悪態を聞いて「可愛い」「可愛い」とメロメロしているけれど。


「お母様はどうお思いですの?」

「とても素敵な方ですけれど、私ならちょっとご遠慮したい方ね。家としては悪いお話でもないし、最終決定はミカルドとロレッタちゃんにお任せするわ。」


ミカルドというのはお父様の名だ。因みにお母様の名前はカーラだ。お母様はお勧めでないのかー…その評価はちょっと考えてしまうのだよ。


「俺はロレッタちゃんの意思を尊重するが、俺もあまりお勧めではないな。悪い方だとは思わんが…」


お父様もあまり乗り気でない模様。どことなく歯に物が挟まったような物言いをしている。

うーん…両親ともにお勧めでないとなるとちょっと…それでも私が恋焦がれるような人なら反対はしなさそうだけれど。アドヴァンス様なあ…






本編には出来てませんがアルトは16歳の設定です。

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