社会

ジャパンライフ被害者「金の流れを包み隠さず話して」 元会長初公判

警視庁が押収したジャパンライフの健康グッズやパンフレット=東京都千代田区の警視庁で2020年9月18日午前9時33分、斎藤文太郎撮影

 磁気健康器具の販売預託商法で顧客から現金をだまし取ったとして詐欺罪に問われたジャパンライフ(本社・東京都、破産手続き中)の元会長、山口隆祥被告(79)は22日、東京地裁(浅香竜太裁判長)で開かれた初公判で起訴内容を全面的に認めた。

 「悪いことをして謝るのは当然で、全額返済してほしい」。約570万円を出資した神奈川県の無職女性(88)は、起訴内容を全面的に認めて謝罪した山口隆祥元会長に憤った。

 経営破綻した2017年12月に元会長が顧客に送った「おわび」には、「絶対に償います。10倍も20倍も頑張って絶対に全額お返しします。全部、私の責任です」と書かれていた。女性は「その言葉を信じている。罪を償ってほしい」と語気を強めた。

 元会長は19歳で行商を始め、1971年に健康食品などを扱う会社を創業した。だが、国会に招致されるなど「マルチ商法」との批判を受け、76年に約40億円の負債を抱えて破綻した。一方で74年にはジャパンライフを創業。羽毛布団の販売で85年には売上高が1500億円を超えたが、再び強引な商法が国会で取り上げられ、売り上げは激減。自転車操業が続いた。

 約8000万円を出資した別の無職女性(80)は、破綻直前までの約1年半の間に「孫の教育資金と老後の備え」を失った。元会長が宣伝材料として使っていた安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」の招待状を見て「信用していいと思った」と振り返る。「破綻直前までだまされていたことが悔しい。裁判では元会長が得ていた高額の報酬がどこに消えたのかも明らかにしてほしい」と期待する。

 ジャパンライフの破産手続きは現在も続く。破産管財人は今年7月、配当財源として約26億円を確保したと明らかにしたが、債権額は約7000人の計約1593億円に上り、配当は少額にとどまる見通しだ。

 ただし、未解明の金の流れもある。逮捕後、元会長の妻名義の貸倉庫からは現金6000万円超が押収された。全国被害弁護団連絡会代表の石戸谷豊弁護士は「申し訳ないという気持ちがあるなら、金の流れを包み隠さず話してほしい」と語った。【柿崎誠】


(毎日新聞)









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